婚約者の態度が悪いので婚約破棄を申し出たら、えらいことになりました

神村 月子

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24 殿下からのご褒美(ラウル視点)

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「殿下、どうかそのへんで……」

 見るに見かねて、マルセルが間に入ってくれた。殿下は「言い過ぎましたわ」と仰ると、悲しそうな顔をした。

「……あなたなら、アリスを救ってくださると信じて、親友を託しましたのよ。レオンに任せるべきだったのか、などと思わせないでくださいませ」

「……レオンとは、まさか」

 マルセルが息をむ。

「『建国の盾』の誉を持つ、ティータ家のご子息ですわ」

 レオンは『かなともの会』の現会長で、最大のライバルだ。大会の最終審査で結果が発表されたとき、燃えるような目で「絶対に諦めない!」と叫んでいた。

「彼は、すでに動いていますわ。公爵家は総力を上げて、巻き返しを図るでしょうね」

「……レオンが」

 彼には、家柄では勝てない。頭脳明晰で眉目秀麗な彼は、国民からも広く愛されている。


 それに対して、俺には何もない。


「今、アリスを追う以外に、あなたに何ができまして?」

 ここで諦めたら、二度と彼女の婚約者を名乗れなくなる、と言われたのだ。
 アリス殿とレオンが並ぶ姿を、俺は笑って見ていられるのだろうか。



(……そんなこと、できるわけがない!)



 かぶりを振って背筋を伸ばし、殿下の正面に立つ。

「不甲斐ない姿をお見せして、申し訳ありません。アリス殿のもとへ参ります」

 殿下は、嬉しそうに微笑む。

「頑張るラウル様に、一つご褒美を差し上げますわ。あなたのお気持ちを、周りの方々が代弁出来ないのは、ご存知ですわね」

「はい。例の妨害のことですね」

 詳しくは知らないが、第三者が、俺とアリス殿の仲を取り持とうとすると、必ずわざわいが起こるのだ。

 ギルツ家はもちろん承知していて、婚約を結ぶ際に、彼女と近しい人物を集めて説明している。
 なぜか、それが彼女には知らされていないし、俺も直接聞いたわけではない。

 
 だが、禍は確かに存在する。


 親切心から世話を焼こうとした者が、次々と被害に遭ったからだ。特に、『かなともの会』のメンバーからは、被害者が多数出たと聞いて、大変申し訳なく思った。おそらく、ギルツ家の関係者も同じだろう。

 禍の深刻度は人それぞれで、肥溜こえだめに落ちるという軽微なものから、命に関わる甚大なものまであったらしい。どうやら、話す内容が重ければ重いほど、ひどい禍に見舞われると考えられる。

 その噂は一気に広まり、皆が口をつぐむようになった。俺も、これ以上の被害者を出したくなかったから、自分のおかしな行動で悩んでいることを、マルセル以外には話していない。

「そうですわ。その禍が、違う形でラウル様にも作用しているとしたら、どうかしら」

 殿下の目が、キラリと光った。
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