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閑話:神の眼さえも欺く焔
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──……ふぅ。
どうやら何とかなったようですね。
賭博の街ズィーノに潜入したまでは良かったものの、まさか元魔族の支配下にあって。
そこで行われた博打に参加する事になるとは、思いもよりませんでした……全くもう。
修道服もボロボロになってしまったし。
……それにしても色々驚きました。
一つ目は──そう、あれですね。
まさか、あの少女の連れていた名も知らぬ竜種が私と同じ手段で四方世界《スモールワールド》とやらの死を回避するとは思わなかった、という事です。
そう、魔力や魂の半分だけを駒とする事で死を回避する、あの屁理屈にも近い手段で。
はっきり申し上げて、あの少女は脳味噌まで筋肉で構成されているのではというほどの阿呆に見えましたし、ならば連れている竜種も似たり寄ったりだと高を括っていました。
しかし、あの竜種は賢かったようです。
……おそらく、おそらくではありますが。
向こうも、私に気づいていたようですし。
私と、あの荒々しい海人《セイレーン》との戦いの最中。
目、合いましたもんね。
そして二つ目は、もはや言うまでもなく。
当代女王陛下の介入です。
【神の眼】と【神の書物庫】でしたか?
王族にのみ許された異能で、この遠く離れた廃墟を根城とする元魔族の魔力を観測し。
かつての救世の英雄たる聖女レイティア様の神々しい魔力で以て、討ち滅ぼしました。
真似事とはいえ中々美しい光景でしたね。
……一介の王族如きが──。
『──その辺りにしなさい、“フランメ”』
……え? あぁ、申し訳ありません。
感情が盛り上がってしまいまして。
『いいのですよ、そこに関しては私も変わりませんし。 それで──……どうでしたか?』
はい、やはり貴女様の予想通りでした。
貴女様が魔導国家で対話したという、かの聖女レイティア様に瓜二つな少女の──姉。
かの勇者ディーリヒト様に瓜二つな栗色の髪の少女は──勇者様と聖女様の娘でした。
『……! では、やはり……!』
えぇ、あの少女と双子だという金髪の少女も必然的に勇者様と聖女様の娘という事に。
『素晴らしい! 素晴らしい朗報ですよ、フランメ! 貴女に頼んで正解でした……っ!!』
お褒めに与り恐悦至極。
それで、この後は如何様に?
『……貴女からの情報だと、あの双子には今あろう事か真紅の断頭台が護衛についているのでしたね? ならば今は静観に徹しなさい』
……宜しいので?
何であれば拐かす事も可能ですが。
『やめておきなさい。 貴女は疑いようもなく優秀ですが、いくら何でも真紅の断頭台は相手が悪すぎます。 また、あの双子も一般的な人間の強さを遥かに凌駕していますから。 もう少し
……了解です。
では私は、あの双子を追いかけ──。
『お待ちなさい、フランメ』
えっ?
『偽装は教義に反する。 それは脱ぎなさい』
……あぁ、そうでした。
潜入の為とはい、こんな程度の低い宗教の修道服なんて身に纏いたくなかったですよ。
『ごめんなさいね。 けれど、それを進んで実行してくれる貴女はやはり得難い人材です』
……あんまり褒めないでください。
調子に乗っちゃいますよ?
『あらあら、それはいけませんね。 では、そんな貴女に命じます。 折を見て、あの金髪の少女を──フェアト様を、お連れしなさい』
承知いたしました。
では引き続き、任務を遂行いたします。
『頼みますよ。 従順なる灼人《イフリート》、フランメ』
かしこまりました、代行者様──いいえ。
聖神々教、教皇──“ヴェール”様。
どうやら何とかなったようですね。
賭博の街ズィーノに潜入したまでは良かったものの、まさか元魔族の支配下にあって。
そこで行われた博打に参加する事になるとは、思いもよりませんでした……全くもう。
修道服もボロボロになってしまったし。
……それにしても色々驚きました。
一つ目は──そう、あれですね。
まさか、あの少女の連れていた名も知らぬ竜種が私と同じ手段で四方世界《スモールワールド》とやらの死を回避するとは思わなかった、という事です。
そう、魔力や魂の半分だけを駒とする事で死を回避する、あの屁理屈にも近い手段で。
はっきり申し上げて、あの少女は脳味噌まで筋肉で構成されているのではというほどの阿呆に見えましたし、ならば連れている竜種も似たり寄ったりだと高を括っていました。
しかし、あの竜種は賢かったようです。
……おそらく、おそらくではありますが。
向こうも、私に気づいていたようですし。
私と、あの荒々しい海人《セイレーン》との戦いの最中。
目、合いましたもんね。
そして二つ目は、もはや言うまでもなく。
当代女王陛下の介入です。
【神の眼】と【神の書物庫】でしたか?
王族にのみ許された異能で、この遠く離れた廃墟を根城とする元魔族の魔力を観測し。
かつての救世の英雄たる聖女レイティア様の神々しい魔力で以て、討ち滅ぼしました。
真似事とはいえ中々美しい光景でしたね。
……一介の王族如きが──。
『──その辺りにしなさい、“フランメ”』
……え? あぁ、申し訳ありません。
感情が盛り上がってしまいまして。
『いいのですよ、そこに関しては私も変わりませんし。 それで──……どうでしたか?』
はい、やはり貴女様の予想通りでした。
貴女様が魔導国家で対話したという、かの聖女レイティア様に瓜二つな少女の──姉。
かの勇者ディーリヒト様に瓜二つな栗色の髪の少女は──勇者様と聖女様の娘でした。
『……! では、やはり……!』
えぇ、あの少女と双子だという金髪の少女も必然的に勇者様と聖女様の娘という事に。
『素晴らしい! 素晴らしい朗報ですよ、フランメ! 貴女に頼んで正解でした……っ!!』
お褒めに与り恐悦至極。
それで、この後は如何様に?
『……貴女からの情報だと、あの双子には今あろう事か真紅の断頭台が護衛についているのでしたね? ならば今は静観に徹しなさい』
……宜しいので?
何であれば拐かす事も可能ですが。
『やめておきなさい。 貴女は疑いようもなく優秀ですが、いくら何でも真紅の断頭台は相手が悪すぎます。 また、あの双子も一般的な人間の強さを遥かに凌駕していますから。 もう少し
……了解です。
では私は、あの双子を追いかけ──。
『お待ちなさい、フランメ』
えっ?
『偽装は教義に反する。 それは脱ぎなさい』
……あぁ、そうでした。
潜入の為とはい、こんな程度の低い宗教の修道服なんて身に纏いたくなかったですよ。
『ごめんなさいね。 けれど、それを進んで実行してくれる貴女はやはり得難い人材です』
……あんまり褒めないでください。
調子に乗っちゃいますよ?
『あらあら、それはいけませんね。 では、そんな貴女に命じます。 折を見て、あの金髪の少女を──フェアト様を、お連れしなさい』
承知いたしました。
では引き続き、任務を遂行いたします。
『頼みますよ。 従順なる灼人《イフリート》、フランメ』
かしこまりました、代行者様──いいえ。
聖神々教、教皇──“ヴェール”様。
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