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また会う日まで
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それから、ハキムの伝言通りに王城へ向かった双子を衛兵が謁見の間へ通すと、その中にいた面々が彼女たちの来訪に表情をガラッと変えつつ迎えてくれた。
「スターク、フェアト。 呼び立ててすまない」
「気にすんなって。 そうだ、野盗《アホども》は狩っといたぜ?」
「あぁ、ありがとう。 手間を取らせたな」
まずは玉座から最も離れた位置に立っていた二人のうちの一人、騎士団長のクラリアが双子に近寄り呼びつけてしまった事への謝意を申し訳なさげに告げて。
「これだけ分かりやすい来訪者もいないよね。 本人たちは精霊が見えていないのに、こんなに好かれてる」
『『『────♪』』』
「そ、そうなんですか……私も見てみたいですね」
もう一人であるところの冒険者の集会所長、森人《エルフ》のガレーネは双子が姿を現す前から精霊たちが楽しげに宙を舞っているのを見て、『流石は世界の希望の血を引く娘たちだね』と自分の事の如く嬉しそうに笑い。
「改めて感謝を、お二人とも」
「もう何回も聞いたっての」
王族の二人を除けば最も玉座に近い位置に立っていた近衛師団長のノエルは、もはや何度目かも分からない感謝の意を示すも、スタークとしては耳にタコができるほどであった為、『分かった分かった』と流し。
「よくぞ来てくれた、勇敢なる双子よ。 此度は──」
そして、ようやく全てから解放された国王陛下のネイクリアスが、あれから多少は回復したのか痩せこけているわけでもないシワの刻まれた顔を緩ませて、ジカルミアを救ってくれた双子へ感謝の意を述べんと。
──した、その瞬間。
「スターク、フェアトぉ……ほんとに、もう行っちゃうのぉ……? まだ一週間しか経ってないのにぃ……」
「あーあー、泣くなって」
ここまでは何とか我慢していたものの、どうにも我慢しきれなかったらしい小さな王女、リスタルのポロポロと翠緑の瞳から玉のような涙を流しての双子との別れを惜しむ声に、ネイクリアスの言葉が遮られる。
初めてできた人間で同性の友達が去ってしまうというのは、リスタルにとって哀しみしかなかったのだ。
「……私たちの目的は並び立つ者たちを──元魔族を倒す事。 これでも滞在期間は伸ばした方なんですよ」
「うぅ、でもぉ……」
そんな王女に対してスタークが桃色の髪を撫でる一方で、フェアトがその小さな身体をぎゅっと抱きしめつつ自分たちの旅の目的を告げて宥めるも、リスタルは涙声とともに抱きしめ返して引き止めようとする。
伸ばした──というのは冗談でも何でもなく、フェアトととしては騒動を収めた翌日にでも王都を発たんとしていたのだが、それを『あと一日、一日だけ』と結局のところ一週間も足止めしたのが、リスタルだ。
「ん"ん"……っ、リスタル。 先に話をさせてくれまいか? もう間もなく魔導国家《このくに》を出るというなら尚更だ」
「……うん。 ごめんなさい、お父さま」
そのやりとりを見たネイクリアスは、とりあえず自分の話を終わらせてから時間を与えようと考えて咳払いし、それを受けたリスタルは素直に引き下がった。
「さて……スターク、フェアト。 此度の騒乱を解決してくれた事、誠に感謝する。 ナタナエルに憑依されていた身としては望む限りの褒賞を授けたいと思──」
ネイクリアスは玉座に腰掛けたままの姿勢で深く頭を下げ、それを止める者がいないという事もあってか感謝の意を示す事に集中しつつも、ラキータとナタナエルを討った事への褒美を授けんとしたのだが──。
「いらねぇな」
「いりませんね」
「……な、何?」
双子らしく殆ど同時に国王陛下からの褒賞を固辞した事で、ネイクリアスは図らずも呆然としてしまう。
「褒賞は……もう貰っていますから。 ね? 姉さん」
「あぁ、こいつで充分だ」
「し、しかし……」
とはいえ双子としては神晶竜の欠片を前払いしてもらった時点で満足しており、これ以上に何かを欲するのはどうなのだろうと考えたからこそ固辞していたのだが、それでもネイクリアスは諦め悪く食い下がる。
それほどに、スタークたちへの謝意は大きかった。
「いーんじゃないですか? 他でもないこの娘たちが言ってるんですから。 それこそ無理に渡すのも、ねぇ」
「む……そう言われるとな……」
そんな折、蚊帳の外から黙って聞いていたガレーネが頭の後ろで腕を組みつつ、『無理強いはどうなのかなーって』と軽い口調で提案すると、ネイクリアスは思わぬ人物からの思わぬ正論に口ごもってしまう。
何せ、ガレーネは御年五百歳。
魔族の影響で随分と数を減らした霊人の生き残りの中では、ほぼほぼ最高齢といって差し支えない猛者。
王族ゆえに敬語を使ってはいるが遥かに年下の小僧である事に間違いはなく、それを誰より自覚しているからこそ、ネイクリアスも気まずげにしているのだ。
「ま、そんな事より──はい、これあげる」
「ん?」
「え?」
そんな悩める国王を尻目に、ガレーネは王の許可がない移動への不敬など気にする事もなく双子に近寄って、スッと懐から取り出した二つの何かを手渡すも。
「……何ですか? これは」
それが何なのか、スタークはもちろんフェアトでさえ知らなかった為、とりあえず聞いてみる事に──。
「それは、“免許証《ライセンス》”っていってね? ちゃんと意味を分かっている人に見せれば、『あぁ、この人は冒険者なんだ』ってなる証明書なんだよ。 もちろん名前も記されてるから身分証明にもなる。 役立つと思うよ?」
ガレーネが言う事には、そのカードのようなものは冒険者である事の証明書であるらしく、ほんの十五年前までは取得するだけなら誰であろうと可能だった。
しかし、冒険者という職業が少数精鋭となってからは国が認可する厳しい試験を突破しなければ取得できない為、今回は特例なんだよとガレーネは苦笑する。
「な、なるほど……? あ、ありがとうございます」
「……まぁ、持っとく分には問題ねぇだろうしな」
尤も、スタークとフェアトは別に冒険者になりたいわけではなかったが、それでも感謝自体はしていた。
「我々からの話は、もう一つありますが……それは後でも問題ありません。 陛下、残りの時間は王女様に」
「……うむ、そうだな」
用件を終えたガレーネが一歩下がった後、双子に謝意を示してからは沈黙を貫いていたノエルが、もう一つの用件は別れの際でも構わないものだと告げて王女を気遣い、それを受けたネイクリアスが了承すると。
「……ねぇ、ほんとにもう行っちゃうの? やっとお友達ができたと思ったのに、こんなに早く……う"ぅ」
先程からフェアトに抱きついたままだったリスタルは、その潤みに潤んだ翠緑の瞳で双子を交互に見遣りつつ、またも二人を引き止める旨の涙声を上げたが。
「「……」」
それでも双子の意思は揺らぐ事なく、どうにかしてリスタルを説得する為の材料をアイコンタクトだけで打ち合わせた双子は頷き合い、スタークが口を開く。
「これは言ってなかったんだけどな、リスタル。 あたしらは魔導国家《このくに》に一つ、やり残した事があるんだよ」
「やり残した、事……?」
そんな彼女が告げたのは、その中身こそ明瞭にせずとも明らかに序列一位《アストリット》との再戦についてであり、当然それを知らないリスタルはきょとんとしてしまった。
ちなみに、およそ五日ほど前のスタークは『今なら勝てるんじゃねぇか』と息巻いていたが、『私は無理だと思うので、お一人でどうぞ』とフェアトが口にした事により、スタークも渋々だが再戦を諦めている。
「えぇ、そうです。 だから、いずれは戻ってくる事になるんですよ。 その時、必ず会いに行きますから」
もちろん先程のアイコンタクトで姉が何を言い出すか分かっていた為、抱きしめる力を緩めて少し屈みつつ目線を合わせてから、フェアトは再会を約束した。
「ほん、とうに……?」
「あぁ、約束だ」
二人の事は信用も信頼もしていたリスタルが、それでも確認の為にとフェアトからスタークへと視線を移すと、ニカッと笑って妹と同じく約束をしてみせる。
それを受けて、ようやく諦めがついたリスタルは一歩前に出て双子の間に挟まるように抱きつきながら。
「うん……! 二人とも、大好き……!」
友達として──いや、もしかすると友達以上の想いがあるようにも感じる震えた声音で好意を示し、そんな王女を双子も優しく抱きしめ返していたのだった。
「では、もう一つの話についてだが……クラリア」
「はっ」
その後、リスタルが落ち着いてきた頃を見計らって声を出したネイクリアスは、もう一つの話を進める為に最もその話に詳しいらしいクラリアへと話を振る。
すると、クラリアは何とも真剣な表情を湛え──。
「……結論から言わせてもらおう。 君たち双子に、まともな出立の仕方は不可能だと思っておいてほしい」
「「……はっ?」」
今日これから王都を──というか魔導国家を去ろうとしているというのに、どういうわけか出立方法を狭めるといった口振りの彼女に、どのみち一回では理解できないスタークはともかく、フェアトまでもが困惑して姉と同じ疑問の声とともに首をかしげてしまう。
無論、クラリアとしても『その疑問は当然だ』と考えていたのだろう、こくりと首を縦に振ってから。
「当事者であるフェアトは分かるだろうが、あのヴェールという聖神々教の神官が他の信徒とともに『聖女に似た少女』の確保に動き出したと情報が入り──」
「……私のせいで、この国どころか王都からでさえ普通に出立する事が難しくなった──という話ですか」
「ち、違うぞ! 断じて君のせいではない!」
どうやら冒険者の集会所にてフェアトに『貴女は聖女様では!?』と詰め寄ってきたあの神官が、フェアトの確保に乗り出し始めているようで、それを聞いたフェアトが『まともな出立が不可能に近い』状況になったのは自分のせいかと僅かに肩を落としてしまう。
もちろん、フェアトのせいなどではないと分かっているクラリアが、『言い方が悪かったな』と焦った様子でフェアトを元気づけようとする、その一方──。
「じゃあ、どうすりゃいい? 突っ切るか? それとも転移の魔法でも使うか? 【移《ジャンプ》】とか【扉《ゲート》】みたいな」
ここで、ようやく普通に王都や国を出る事が難しいと理解できたスタークは、いくつかの代替案として神晶竜に頼らない強行突破だったり、【移《ジャンプ》】や【扉《ゲート》】といった転移の支援魔法による出立方法を口にするも。
「……それだと私が置いていかれるんですけど……」
「あ? あぁ、そうか……んー」
前者は騒ぎになるから論外だし、だからといって後者だと魔法が効かないフェアトだけがその場に置いていかれる事になってしまい本末転倒だと暗に告げた事で、きょとんとしていたスタークも再び思案を──。
「案ずるな。 何の策もなく呼び立てたわけではない」
「……何か妙案があるのですか?」
「無論だ。 スタークとフェアト以外、少し下がれ」
し始めんとする中で、『コォン』と錫杖で床を叩いた音で全員の注目を集めたネイクリアスは、どういう意図かは分からないが双子以外の全員を謁見の間の中央から少しだけ下がらせ、その行動に意味があるのかと双子が疑問を抱く一方、彼は双子の下へ歩み寄り。
「この錫杖は、ただの錫杖ではない。 何を隠そう、かの勇者一行に属していた“賢者”と呼ばれた明人《ディアナ》が拵えたという珠玉の杖にして──とある力を秘めている」
「お父さんや、お母さんの仲間の一人が……」
その手に持った錫杖は、どうやら勇者や聖女の仲間の一人であった光の精霊が派生して生まれた霊人が創り上げた者であり、それを聞いたフェアトが仲間たちに想いを馳せる時の母の物憂げな瞳を思い返す中で。
「さぁ、刮目せよ! これぞ魔導国家の王に与えられし錫杖と──そこに秘められし力! 天蓋よ、開け!」
ネイクリアスは、リスタルと同じく六花の魔女と同じ数の適性を持っており、その中でも特に強い光の魔力を込めた錫杖を高く掲げるとともに謁見の間の天窓へ目を向けると、その天窓が錫杖の放つ光と呼応し。
天窓の中心から八方向へ真っ直ぐに光の亀裂が入ったかと思えば、その亀裂はゆっくりと扇状に広がっていき割れる事なく日の光を直に謁見の間へと届ける。
「これは、どういう……」
神秘的とも言えるその光景に目を奪われていたフェアトが思わず声を潜めて問いかけると、ネイクリアスはリスタルを呼び寄せてから顔を見合わせ頷き合い。
「我らジカルミアの王族には精霊の血が流れているのだ。 そして、この王城が造られたのも精霊の力によるところが大きい。 この錫杖は、そんな精霊たちの力を借りる事で城を自在に操る事を可能とさせるのだよ」
「そんな事が……では、リスタル様も……?」
「うん。 いつかは、だけどね」
かつて、この魔導国家を建国して城を造り上げたのは間違いなく彼らの祖先ではあるのだが、どうやらその中に勇者の仲間だった明人《ディアナ》もいたようで、それゆえに彼らはこうして精霊の力を使い城を自由自在に形を変えたりできるのだと語り、それは次代の王──リスタルにも可能なのかとフェアトが問うと、リスタルは何とも気恥ずかしそうにはにかみつつ肯定していた。
翻って、スタークは沈黙を貫いたままに──。
(……ナタナエルは、これを知ってたのか……?)
もし、ネイクリアスと【契約】を交わしていたナタナエルが錫杖の力を知っていたとすると、これほどの規模を誇る力を使わない手はない筈であり、まさか手を抜いていたのかと苦々しい表情で訝しんでしまう。
ただ、その憶測は──不正解だった。
精霊の【契約】は【月下美人《ノクターン》】と違って記憶を覗く事はできず、また人格が入れ替わる弊害で感覚で分かる適性はともかく錫杖の事は知る由もなかったのだ。
「ここから神晶竜で飛び立てば、その神官や信徒とやらも追ってはこれまい。 そして光の精霊たちが総出で光を屈折させるゆえ其方らの移動が目立つ事もない」
「……何から何まで、すまねぇな」
そんな風に邪推して勝手に不機嫌になるスタークをよそに、あの開いた天窓から神晶竜に乗って飛ぶ事で追手を巻くと同時に精霊たちの力を借りて存在を隠蔽すると告げた事で、スタークは素直に謝意を示した。
「構わんさ。 さぁ精霊たちよ──力を」
『『『────!』』』
ネイクリアスはスタークの謝意を受け入れた後、謁見の間にいる──いや、この城にいる全ての光の精霊ウィスプに力を借りる為に改めて錫杖を掲げ、それと同時にウィスプたちはこぞって【光眩《ブラインド》】を行使する。
眩ませるのではなく、誰の目にも映らないようにする為の淡く優しい光の粒子が双子を包み込んで──。
「征くがいい、世界の希望の血統よ! どうか、この安寧な世界を二度目の魔族の脅威から救ってくれ!!」
先程の光景よりも更に神秘的といっていい双子たちを見たネイクリアスは、まだ若輩だというのにシワが目立つ顔を晴れやかな表情に変えつつ、いずれ世界を元に戻してくれるだろう双子に激励の言葉を贈った。
「……言われるまでもねぇ。 行くぞ、パイク!」
「その為の旅ですしね。 行きましょう、シルド」
『『りゅあーーーーっ!!』』
そんな王よりのエールを受けた二人が何ともそれらしい返し方をしたうえで相棒に声をかけた事で、パイクとシルドは矛と指輪の状態から以前よりも荘厳さや流麗さの増した姿に変化して甲高い咆哮を轟かせる。
「スターク、フェアト! 必ず、また会おう!!」
「精霊たちの加護がありますようにー!」
「お二人とも、どうか壮健で!」
そして、クラリア、ガレーネ、ノエルの三人が各々の別れの言葉を今にも飛び立たんとする双子に向ける一方、小さな王女はそんな三人よりも前に出て──。
「……っ、またね! スターク、フェアトっ!」
最後は泣き顔より笑顔の方がいい──そう考えたのだろう、リスタルは今できる最高の笑みを湛えつつ手を振り、スタークとフェアトに一時の別れを告げた。
「おぅ、またな!」
「えぇ、また!」
もちろん双子もリスタルに釣られるように笑顔になり、しっかりと見えるように手を振りながら同じく別れを告げた後、二体の神晶竜は神々しく輝く半透明な四枚の翼を大きく広げて飛び立ち──城を後にする。
謁見の間に居合わせた五人は、そんな二体の竜が見えなくなる──その瞬間まで見送っていたのだった。
多大なる──そう、多大なる感謝の意を込めて。
並び立つ者たち、残り二十一体──。
「スターク、フェアト。 呼び立ててすまない」
「気にすんなって。 そうだ、野盗《アホども》は狩っといたぜ?」
「あぁ、ありがとう。 手間を取らせたな」
まずは玉座から最も離れた位置に立っていた二人のうちの一人、騎士団長のクラリアが双子に近寄り呼びつけてしまった事への謝意を申し訳なさげに告げて。
「これだけ分かりやすい来訪者もいないよね。 本人たちは精霊が見えていないのに、こんなに好かれてる」
『『『────♪』』』
「そ、そうなんですか……私も見てみたいですね」
もう一人であるところの冒険者の集会所長、森人《エルフ》のガレーネは双子が姿を現す前から精霊たちが楽しげに宙を舞っているのを見て、『流石は世界の希望の血を引く娘たちだね』と自分の事の如く嬉しそうに笑い。
「改めて感謝を、お二人とも」
「もう何回も聞いたっての」
王族の二人を除けば最も玉座に近い位置に立っていた近衛師団長のノエルは、もはや何度目かも分からない感謝の意を示すも、スタークとしては耳にタコができるほどであった為、『分かった分かった』と流し。
「よくぞ来てくれた、勇敢なる双子よ。 此度は──」
そして、ようやく全てから解放された国王陛下のネイクリアスが、あれから多少は回復したのか痩せこけているわけでもないシワの刻まれた顔を緩ませて、ジカルミアを救ってくれた双子へ感謝の意を述べんと。
──した、その瞬間。
「スターク、フェアトぉ……ほんとに、もう行っちゃうのぉ……? まだ一週間しか経ってないのにぃ……」
「あーあー、泣くなって」
ここまでは何とか我慢していたものの、どうにも我慢しきれなかったらしい小さな王女、リスタルのポロポロと翠緑の瞳から玉のような涙を流しての双子との別れを惜しむ声に、ネイクリアスの言葉が遮られる。
初めてできた人間で同性の友達が去ってしまうというのは、リスタルにとって哀しみしかなかったのだ。
「……私たちの目的は並び立つ者たちを──元魔族を倒す事。 これでも滞在期間は伸ばした方なんですよ」
「うぅ、でもぉ……」
そんな王女に対してスタークが桃色の髪を撫でる一方で、フェアトがその小さな身体をぎゅっと抱きしめつつ自分たちの旅の目的を告げて宥めるも、リスタルは涙声とともに抱きしめ返して引き止めようとする。
伸ばした──というのは冗談でも何でもなく、フェアトととしては騒動を収めた翌日にでも王都を発たんとしていたのだが、それを『あと一日、一日だけ』と結局のところ一週間も足止めしたのが、リスタルだ。
「ん"ん"……っ、リスタル。 先に話をさせてくれまいか? もう間もなく魔導国家《このくに》を出るというなら尚更だ」
「……うん。 ごめんなさい、お父さま」
そのやりとりを見たネイクリアスは、とりあえず自分の話を終わらせてから時間を与えようと考えて咳払いし、それを受けたリスタルは素直に引き下がった。
「さて……スターク、フェアト。 此度の騒乱を解決してくれた事、誠に感謝する。 ナタナエルに憑依されていた身としては望む限りの褒賞を授けたいと思──」
ネイクリアスは玉座に腰掛けたままの姿勢で深く頭を下げ、それを止める者がいないという事もあってか感謝の意を示す事に集中しつつも、ラキータとナタナエルを討った事への褒美を授けんとしたのだが──。
「いらねぇな」
「いりませんね」
「……な、何?」
双子らしく殆ど同時に国王陛下からの褒賞を固辞した事で、ネイクリアスは図らずも呆然としてしまう。
「褒賞は……もう貰っていますから。 ね? 姉さん」
「あぁ、こいつで充分だ」
「し、しかし……」
とはいえ双子としては神晶竜の欠片を前払いしてもらった時点で満足しており、これ以上に何かを欲するのはどうなのだろうと考えたからこそ固辞していたのだが、それでもネイクリアスは諦め悪く食い下がる。
それほどに、スタークたちへの謝意は大きかった。
「いーんじゃないですか? 他でもないこの娘たちが言ってるんですから。 それこそ無理に渡すのも、ねぇ」
「む……そう言われるとな……」
そんな折、蚊帳の外から黙って聞いていたガレーネが頭の後ろで腕を組みつつ、『無理強いはどうなのかなーって』と軽い口調で提案すると、ネイクリアスは思わぬ人物からの思わぬ正論に口ごもってしまう。
何せ、ガレーネは御年五百歳。
魔族の影響で随分と数を減らした霊人の生き残りの中では、ほぼほぼ最高齢といって差し支えない猛者。
王族ゆえに敬語を使ってはいるが遥かに年下の小僧である事に間違いはなく、それを誰より自覚しているからこそ、ネイクリアスも気まずげにしているのだ。
「ま、そんな事より──はい、これあげる」
「ん?」
「え?」
そんな悩める国王を尻目に、ガレーネは王の許可がない移動への不敬など気にする事もなく双子に近寄って、スッと懐から取り出した二つの何かを手渡すも。
「……何ですか? これは」
それが何なのか、スタークはもちろんフェアトでさえ知らなかった為、とりあえず聞いてみる事に──。
「それは、“免許証《ライセンス》”っていってね? ちゃんと意味を分かっている人に見せれば、『あぁ、この人は冒険者なんだ』ってなる証明書なんだよ。 もちろん名前も記されてるから身分証明にもなる。 役立つと思うよ?」
ガレーネが言う事には、そのカードのようなものは冒険者である事の証明書であるらしく、ほんの十五年前までは取得するだけなら誰であろうと可能だった。
しかし、冒険者という職業が少数精鋭となってからは国が認可する厳しい試験を突破しなければ取得できない為、今回は特例なんだよとガレーネは苦笑する。
「な、なるほど……? あ、ありがとうございます」
「……まぁ、持っとく分には問題ねぇだろうしな」
尤も、スタークとフェアトは別に冒険者になりたいわけではなかったが、それでも感謝自体はしていた。
「我々からの話は、もう一つありますが……それは後でも問題ありません。 陛下、残りの時間は王女様に」
「……うむ、そうだな」
用件を終えたガレーネが一歩下がった後、双子に謝意を示してからは沈黙を貫いていたノエルが、もう一つの用件は別れの際でも構わないものだと告げて王女を気遣い、それを受けたネイクリアスが了承すると。
「……ねぇ、ほんとにもう行っちゃうの? やっとお友達ができたと思ったのに、こんなに早く……う"ぅ」
先程からフェアトに抱きついたままだったリスタルは、その潤みに潤んだ翠緑の瞳で双子を交互に見遣りつつ、またも二人を引き止める旨の涙声を上げたが。
「「……」」
それでも双子の意思は揺らぐ事なく、どうにかしてリスタルを説得する為の材料をアイコンタクトだけで打ち合わせた双子は頷き合い、スタークが口を開く。
「これは言ってなかったんだけどな、リスタル。 あたしらは魔導国家《このくに》に一つ、やり残した事があるんだよ」
「やり残した、事……?」
そんな彼女が告げたのは、その中身こそ明瞭にせずとも明らかに序列一位《アストリット》との再戦についてであり、当然それを知らないリスタルはきょとんとしてしまった。
ちなみに、およそ五日ほど前のスタークは『今なら勝てるんじゃねぇか』と息巻いていたが、『私は無理だと思うので、お一人でどうぞ』とフェアトが口にした事により、スタークも渋々だが再戦を諦めている。
「えぇ、そうです。 だから、いずれは戻ってくる事になるんですよ。 その時、必ず会いに行きますから」
もちろん先程のアイコンタクトで姉が何を言い出すか分かっていた為、抱きしめる力を緩めて少し屈みつつ目線を合わせてから、フェアトは再会を約束した。
「ほん、とうに……?」
「あぁ、約束だ」
二人の事は信用も信頼もしていたリスタルが、それでも確認の為にとフェアトからスタークへと視線を移すと、ニカッと笑って妹と同じく約束をしてみせる。
それを受けて、ようやく諦めがついたリスタルは一歩前に出て双子の間に挟まるように抱きつきながら。
「うん……! 二人とも、大好き……!」
友達として──いや、もしかすると友達以上の想いがあるようにも感じる震えた声音で好意を示し、そんな王女を双子も優しく抱きしめ返していたのだった。
「では、もう一つの話についてだが……クラリア」
「はっ」
その後、リスタルが落ち着いてきた頃を見計らって声を出したネイクリアスは、もう一つの話を進める為に最もその話に詳しいらしいクラリアへと話を振る。
すると、クラリアは何とも真剣な表情を湛え──。
「……結論から言わせてもらおう。 君たち双子に、まともな出立の仕方は不可能だと思っておいてほしい」
「「……はっ?」」
今日これから王都を──というか魔導国家を去ろうとしているというのに、どういうわけか出立方法を狭めるといった口振りの彼女に、どのみち一回では理解できないスタークはともかく、フェアトまでもが困惑して姉と同じ疑問の声とともに首をかしげてしまう。
無論、クラリアとしても『その疑問は当然だ』と考えていたのだろう、こくりと首を縦に振ってから。
「当事者であるフェアトは分かるだろうが、あのヴェールという聖神々教の神官が他の信徒とともに『聖女に似た少女』の確保に動き出したと情報が入り──」
「……私のせいで、この国どころか王都からでさえ普通に出立する事が難しくなった──という話ですか」
「ち、違うぞ! 断じて君のせいではない!」
どうやら冒険者の集会所にてフェアトに『貴女は聖女様では!?』と詰め寄ってきたあの神官が、フェアトの確保に乗り出し始めているようで、それを聞いたフェアトが『まともな出立が不可能に近い』状況になったのは自分のせいかと僅かに肩を落としてしまう。
もちろん、フェアトのせいなどではないと分かっているクラリアが、『言い方が悪かったな』と焦った様子でフェアトを元気づけようとする、その一方──。
「じゃあ、どうすりゃいい? 突っ切るか? それとも転移の魔法でも使うか? 【移《ジャンプ》】とか【扉《ゲート》】みたいな」
ここで、ようやく普通に王都や国を出る事が難しいと理解できたスタークは、いくつかの代替案として神晶竜に頼らない強行突破だったり、【移《ジャンプ》】や【扉《ゲート》】といった転移の支援魔法による出立方法を口にするも。
「……それだと私が置いていかれるんですけど……」
「あ? あぁ、そうか……んー」
前者は騒ぎになるから論外だし、だからといって後者だと魔法が効かないフェアトだけがその場に置いていかれる事になってしまい本末転倒だと暗に告げた事で、きょとんとしていたスタークも再び思案を──。
「案ずるな。 何の策もなく呼び立てたわけではない」
「……何か妙案があるのですか?」
「無論だ。 スタークとフェアト以外、少し下がれ」
し始めんとする中で、『コォン』と錫杖で床を叩いた音で全員の注目を集めたネイクリアスは、どういう意図かは分からないが双子以外の全員を謁見の間の中央から少しだけ下がらせ、その行動に意味があるのかと双子が疑問を抱く一方、彼は双子の下へ歩み寄り。
「この錫杖は、ただの錫杖ではない。 何を隠そう、かの勇者一行に属していた“賢者”と呼ばれた明人《ディアナ》が拵えたという珠玉の杖にして──とある力を秘めている」
「お父さんや、お母さんの仲間の一人が……」
その手に持った錫杖は、どうやら勇者や聖女の仲間の一人であった光の精霊が派生して生まれた霊人が創り上げた者であり、それを聞いたフェアトが仲間たちに想いを馳せる時の母の物憂げな瞳を思い返す中で。
「さぁ、刮目せよ! これぞ魔導国家の王に与えられし錫杖と──そこに秘められし力! 天蓋よ、開け!」
ネイクリアスは、リスタルと同じく六花の魔女と同じ数の適性を持っており、その中でも特に強い光の魔力を込めた錫杖を高く掲げるとともに謁見の間の天窓へ目を向けると、その天窓が錫杖の放つ光と呼応し。
天窓の中心から八方向へ真っ直ぐに光の亀裂が入ったかと思えば、その亀裂はゆっくりと扇状に広がっていき割れる事なく日の光を直に謁見の間へと届ける。
「これは、どういう……」
神秘的とも言えるその光景に目を奪われていたフェアトが思わず声を潜めて問いかけると、ネイクリアスはリスタルを呼び寄せてから顔を見合わせ頷き合い。
「我らジカルミアの王族には精霊の血が流れているのだ。 そして、この王城が造られたのも精霊の力によるところが大きい。 この錫杖は、そんな精霊たちの力を借りる事で城を自在に操る事を可能とさせるのだよ」
「そんな事が……では、リスタル様も……?」
「うん。 いつかは、だけどね」
かつて、この魔導国家を建国して城を造り上げたのは間違いなく彼らの祖先ではあるのだが、どうやらその中に勇者の仲間だった明人《ディアナ》もいたようで、それゆえに彼らはこうして精霊の力を使い城を自由自在に形を変えたりできるのだと語り、それは次代の王──リスタルにも可能なのかとフェアトが問うと、リスタルは何とも気恥ずかしそうにはにかみつつ肯定していた。
翻って、スタークは沈黙を貫いたままに──。
(……ナタナエルは、これを知ってたのか……?)
もし、ネイクリアスと【契約】を交わしていたナタナエルが錫杖の力を知っていたとすると、これほどの規模を誇る力を使わない手はない筈であり、まさか手を抜いていたのかと苦々しい表情で訝しんでしまう。
ただ、その憶測は──不正解だった。
精霊の【契約】は【月下美人《ノクターン》】と違って記憶を覗く事はできず、また人格が入れ替わる弊害で感覚で分かる適性はともかく錫杖の事は知る由もなかったのだ。
「ここから神晶竜で飛び立てば、その神官や信徒とやらも追ってはこれまい。 そして光の精霊たちが総出で光を屈折させるゆえ其方らの移動が目立つ事もない」
「……何から何まで、すまねぇな」
そんな風に邪推して勝手に不機嫌になるスタークをよそに、あの開いた天窓から神晶竜に乗って飛ぶ事で追手を巻くと同時に精霊たちの力を借りて存在を隠蔽すると告げた事で、スタークは素直に謝意を示した。
「構わんさ。 さぁ精霊たちよ──力を」
『『『────!』』』
ネイクリアスはスタークの謝意を受け入れた後、謁見の間にいる──いや、この城にいる全ての光の精霊ウィスプに力を借りる為に改めて錫杖を掲げ、それと同時にウィスプたちはこぞって【光眩《ブラインド》】を行使する。
眩ませるのではなく、誰の目にも映らないようにする為の淡く優しい光の粒子が双子を包み込んで──。
「征くがいい、世界の希望の血統よ! どうか、この安寧な世界を二度目の魔族の脅威から救ってくれ!!」
先程の光景よりも更に神秘的といっていい双子たちを見たネイクリアスは、まだ若輩だというのにシワが目立つ顔を晴れやかな表情に変えつつ、いずれ世界を元に戻してくれるだろう双子に激励の言葉を贈った。
「……言われるまでもねぇ。 行くぞ、パイク!」
「その為の旅ですしね。 行きましょう、シルド」
『『りゅあーーーーっ!!』』
そんな王よりのエールを受けた二人が何ともそれらしい返し方をしたうえで相棒に声をかけた事で、パイクとシルドは矛と指輪の状態から以前よりも荘厳さや流麗さの増した姿に変化して甲高い咆哮を轟かせる。
「スターク、フェアト! 必ず、また会おう!!」
「精霊たちの加護がありますようにー!」
「お二人とも、どうか壮健で!」
そして、クラリア、ガレーネ、ノエルの三人が各々の別れの言葉を今にも飛び立たんとする双子に向ける一方、小さな王女はそんな三人よりも前に出て──。
「……っ、またね! スターク、フェアトっ!」
最後は泣き顔より笑顔の方がいい──そう考えたのだろう、リスタルは今できる最高の笑みを湛えつつ手を振り、スタークとフェアトに一時の別れを告げた。
「おぅ、またな!」
「えぇ、また!」
もちろん双子もリスタルに釣られるように笑顔になり、しっかりと見えるように手を振りながら同じく別れを告げた後、二体の神晶竜は神々しく輝く半透明な四枚の翼を大きく広げて飛び立ち──城を後にする。
謁見の間に居合わせた五人は、そんな二体の竜が見えなくなる──その瞬間まで見送っていたのだった。
多大なる──そう、多大なる感謝の意を込めて。
並び立つ者たち、残り二十一体──。
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