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王都の悲劇と前払い
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──それから数分後。
謁見の間の喧騒は──どうにか収まっていた。
「先程は、すまなかった。 あの一件以来、王家の事となるとどうにも感情的になってしまうようでな」
その王たる者の一喝によって、ノエルを除く近衛兵たちや自らの腹心たる宰相を『話が進まないから』と退室させていたネイクリアスは、どことなく意味深な台詞とともに臣下たちの非礼を詫びてみせたのだが。
「……元はと言えば姉さんの失言のせいですから」
「ぅ……わ、悪かったって……」
非礼と言うなら先程のスタークの『あんた』呼ばわりの方が明らかに非礼であり、それを痛いほど理解していたフェアトは弱々しい力で姉の頭を押さえ、スタークは抵抗しようともせず二人揃って頭を下げる。
一応、彼女なりに反省はしているのだろう。
「……そうしていると我が国の誇る騎士団の恩人には見えないが──あぁ、疑っているわけではない。 クラリアの報告に虚偽はないと分かっているからな」
「……光栄です」
そんな風に片膝をついて謝罪する双子の少女が、ヴァイシア騎士団の危機を救ったとは初見では決して思えないものの、およそ十五年以上も仕えてくれているクラリアが嘘や冗談を言う筈もないと信頼していた彼が微笑むと、クラリアは少し面映そうに返答した。
それを見て満足げに頷いたネイクリアスは──。
「……さて、まずは──スタークと申したな。 つい先程の其方からの質問に答えておくとしようか」
クラリアからスタークの方へと視線を移しつつ、この謁見の間に喧騒を巻き起こす原因となった質問についての回答をせんと重々しい声音を発したものの。
『忘れっぽいうえに学習しない』、それこそがスタークの最大の欠点である事は明白であり──。
「先程の? あぁ、あんたが思ったより若ぇって──」
「ちょ、だから……!」
「あ、あぁ違ぇな。 貴方? それとも国王様か?」
きょとんとした表情を浮かべた姉が、またしても国王に対して敬語もなしに応答してしまった事に、フェアトは声を大にして姉を諫め、そこでハッとなったスタークは何とか二人称だけでも言い直さんとする。
だが、ネイクリアスは怒りを露わにする事もなく。
「構わんよ。 式典のような公の場でもない以上、言葉遣い一つで臍を曲げるほど私は狭量ではないからな」
「そ、そうか? ならいいが……」
クラリアが口にしていた通りに寛大な性格なのだろう、くつくつと喉を鳴らして彼女の不敬を許容した事で、スタークはホッと安堵の息を漏らしていた。
「私のような若輩者が王座に就いている理由……それは、一月《ひとつき》前に起きた悲劇が全ての始まりだった──」
その後、浮かべていた笑みを消して真剣味を帯びた表情へと変えたネイクリアスは、この国にて一ヶ月ほど前に起きたという出来事について語り出す──。
それは──ちょうど一ヶ月前の正午の事。
よく晴れたその日は、この東ルペラシオの王太子であったネイクリアスと、その妃であった“シトリィ=フォン=グリモワル”の間に産まれた一人娘の誕生日。
記念すべき十回目の誕生日という事もあり、この王都を一周する形でパレードをする事となっていた。
およそ百万人ほどの民の祝福の声を受けて絢爛で大きな馬車に乗っていたのは、ネイクリアスとシトリィと主役の一人娘、そして当時の国王と王妃を含めた五人の王族であり、それはとても幸せな光景だった。
そう、幸せな光景だったのだが──。
それは、パレードも終盤に差しかかった頃。
突如、悲劇は起きる。
最初に声を上げたのは王都民のとある女性だった。
「ひっ──きゃあぁああああああああっ!?」
「「「!?」」」
そんな声に驚いた王都民たちは、その女性が指を差している方へと視線を向けると──そこでは。
「な、あ……!? し、シトリィ!? 父上! 母上!」
「お、お母さま? お祖父さま、お祖母さま……?」
これでもかと取り乱したネイクリアスが、『心臓だけを削り取られた妻』と、『首から上を削り取られた両親』の遺体を見て叫び、そんな絶望的な光景を目の当たりにした一人娘は呆然としてしまっている。
その場にいた多くの一般人や、クラリアを始めとしたヴァイシア騎士団、及びノエルを中心とした近衛兵たちは──その悲劇の瞬間を見逃してしまっていた。
それも無理はないだろう。
もはや人間の肉眼では捉えられないほどの超高速で王族たちを襲撃したのは──【ジカルミアの鎌鼬《かまいたち》】であり、もし仮に正体を知っていたとしても防ぐ事などできなかったと考えれば彼らに非はないと言える。
【ジカルミアの鎌鼬《かまいたち》】の最初の被害者は──。
奇しくも──ジカルミアの王族だったのだ。
「くっ……」
「……」
そう語り終えたネイクリアスの話を片膝をついたまま聞いていたクラリアとノエルは、いかにも口惜しげな表情を湛えつつ血が滲むほど唇を噛み締めている。
自らの不甲斐なさを心から悔いているのだろう。
(あの一件……が、これの事なのかな)
その一方、先程ネイクリアスが口にしていた『あの一件』というのがこの事なのかもと考えていたフェアトをよそに、スタークは何やら首をかしげており。
「この国には、王妃様? ってのがいねぇままなのか」
それからすぐに、『するってーと』と前置きして王様が謁見の間にいるのに王妃が一緒ではない事を彼女なりに疑問に思っていた事を明かしつつ問いかけた。
「その通りだ。 無論、新たに何某かを娶る選択肢もあったが……それは私が却下した。 シトリィ以外の女性を後釜にするなど……私にはできなかったのだよ」
「……そうか」
それを受けたネイクリアスは、つい先程までこの場にいた宰相や、この王都に住まう貴族たちから別の王妃を用意するべきだと提案されたものの、それはシトリィへの裏切りに他ならないと断固として拒否した結果、王妃もいないまま国王へと即位したのだと語る。
それについては、スタークも何となく理解できた。
きっと、勇者ディーリヒトを失った聖女レイティアも、今の彼と同じだったのだろうと直感したから。
それから、しばらくの沈黙の後──。
「……其方らは、かの【ジカルミアの鎌鼬《かまいたち》】の討伐に手を貸してくれると聞いている。 それは真か?」
「……あぁ、あたしらはその為に来たからな」
ネイクリアスは、その僅かに窪んだ眼窩に指を添えて、クラリアから双子の協力を得たと聞いたのか再確認するように尋ねると、スタークがそれを首肯する。
「其方らの勇気に感謝を──いや、謝意を口にするだけなら幼子でもできる。 ノエル、あれをここに」
「はっ」
それを見たネイクリアスは深く感謝しようと──したのだが、『口だけの王だと思われたくはない』と言って、ノエルに何かを取ってくるように言付ける。
その後、謁見の間の奥にある扉から戻ってきたノエルは、やけに仰々しい装飾の頑丈そうで小さな箱のようなものを双子の前に差し出し、それを開いた。
「……? これは……?」
そこには、どこか見覚えのある二つの半透明な菱形の水晶が置かれており、されどそれが何かまでは分からないフェアトが首をかしげて問いかけてみる。
「最古にして最強の竜種、神晶竜の存在は其方らも知っているだろうが……かつて、かの竜は魔導国家《このくに》の地下深くに存在した神代の遺跡を棲家としていた。 これらは、その遺跡から発掘された始神晶《ししんしょう》の欠片だ」
すると、それを持ってきたノエルではなくネイクリアスが直々に、その二つの水晶は──かつて、この東ルペラシオの地下深くに存在した遺跡に棲んでいた世界最古にして最強の魔物、神晶竜の欠片だと語った。
この国が魔導国家と呼ばれるゆえん──それは他でもない神晶竜が棲家としていた為に、その身体から溢れる魔素が国中に溶け出していたからだったのだ。
「神晶竜って……マジか……?」
((りゅー!!))
それを信じられないといった表情で覗き込むスタークに対し、そんな彼女の腰に差さる半透明な剣と、フェアトの左手に嵌められた四つの指輪が反応する。
まず間違いなく本物なのだろう──。
──双子は、それを殆ど同時に理解した。
「これを其方らに賜与するつもりだ」
「しよ? あぁ、くれんのか?」
翻って、そんな風に頷き合う双子をよそにネイクリアスは、この二つの世界最古の鉱石──始神晶を譲ると口にし、『賜与』という言葉に一瞬だけ首をかしげたスタークが意味を察して手を伸ばそうとするも。
「待ってください。 それは結果を出してから──」
当然と言えば当然だが、まだ何も解決していないのに報酬だけ貰うのはどうなのだろうと考えたフェアトが姉を制し、ネイクリアスに懐疑的な視線を向ける。
何か企みでもあるのでは──という風に。
「レコロ村を壊滅させたのは魔族──いや、元魔族なのだろう? ゆえに、かの通り魔もそうなのではないかと私は踏んでいる。 もし、この考えが正しかったとするのなら戦力の強化は必須だと思うが……如何に?」
しかし、ネイクリアスにもちゃんとした考えがあったらしく、どうやらすでに並び立つ者たちの存在と復活を知ったうえで、スタークたちと同じように通り魔も並び立つ者たちなのではと推測し、ただでさえ強い双子の戦力を強化する意味でも──という話だった。
「……そう、ですね。 では、ありがたく──」
フェアトは、『それもそうかも』と何となくだが彼の言う事も理解できたようで、おずおずと手を──。
伸ばそうとした──その瞬間だった。
──バンッ!!
「「!?」」
突如、途轍もない勢いで開いた謁見の間の扉が立てた音に、スタークとフェアトが驚いて振り返ると。
「クラリアたちが帰ってきたって本当!?」
そこには──ネイクリアスと髪の色は違えど瞳の色は同じ、この謁見の間を照らす魔石の光を反射する桃色の長髪と、どこまでも透き通るような翠緑の瞳が特徴的な、いかにも高貴な出で立ちの美少女がいた。
謁見の間の喧騒は──どうにか収まっていた。
「先程は、すまなかった。 あの一件以来、王家の事となるとどうにも感情的になってしまうようでな」
その王たる者の一喝によって、ノエルを除く近衛兵たちや自らの腹心たる宰相を『話が進まないから』と退室させていたネイクリアスは、どことなく意味深な台詞とともに臣下たちの非礼を詫びてみせたのだが。
「……元はと言えば姉さんの失言のせいですから」
「ぅ……わ、悪かったって……」
非礼と言うなら先程のスタークの『あんた』呼ばわりの方が明らかに非礼であり、それを痛いほど理解していたフェアトは弱々しい力で姉の頭を押さえ、スタークは抵抗しようともせず二人揃って頭を下げる。
一応、彼女なりに反省はしているのだろう。
「……そうしていると我が国の誇る騎士団の恩人には見えないが──あぁ、疑っているわけではない。 クラリアの報告に虚偽はないと分かっているからな」
「……光栄です」
そんな風に片膝をついて謝罪する双子の少女が、ヴァイシア騎士団の危機を救ったとは初見では決して思えないものの、およそ十五年以上も仕えてくれているクラリアが嘘や冗談を言う筈もないと信頼していた彼が微笑むと、クラリアは少し面映そうに返答した。
それを見て満足げに頷いたネイクリアスは──。
「……さて、まずは──スタークと申したな。 つい先程の其方からの質問に答えておくとしようか」
クラリアからスタークの方へと視線を移しつつ、この謁見の間に喧騒を巻き起こす原因となった質問についての回答をせんと重々しい声音を発したものの。
『忘れっぽいうえに学習しない』、それこそがスタークの最大の欠点である事は明白であり──。
「先程の? あぁ、あんたが思ったより若ぇって──」
「ちょ、だから……!」
「あ、あぁ違ぇな。 貴方? それとも国王様か?」
きょとんとした表情を浮かべた姉が、またしても国王に対して敬語もなしに応答してしまった事に、フェアトは声を大にして姉を諫め、そこでハッとなったスタークは何とか二人称だけでも言い直さんとする。
だが、ネイクリアスは怒りを露わにする事もなく。
「構わんよ。 式典のような公の場でもない以上、言葉遣い一つで臍を曲げるほど私は狭量ではないからな」
「そ、そうか? ならいいが……」
クラリアが口にしていた通りに寛大な性格なのだろう、くつくつと喉を鳴らして彼女の不敬を許容した事で、スタークはホッと安堵の息を漏らしていた。
「私のような若輩者が王座に就いている理由……それは、一月《ひとつき》前に起きた悲劇が全ての始まりだった──」
その後、浮かべていた笑みを消して真剣味を帯びた表情へと変えたネイクリアスは、この国にて一ヶ月ほど前に起きたという出来事について語り出す──。
それは──ちょうど一ヶ月前の正午の事。
よく晴れたその日は、この東ルペラシオの王太子であったネイクリアスと、その妃であった“シトリィ=フォン=グリモワル”の間に産まれた一人娘の誕生日。
記念すべき十回目の誕生日という事もあり、この王都を一周する形でパレードをする事となっていた。
およそ百万人ほどの民の祝福の声を受けて絢爛で大きな馬車に乗っていたのは、ネイクリアスとシトリィと主役の一人娘、そして当時の国王と王妃を含めた五人の王族であり、それはとても幸せな光景だった。
そう、幸せな光景だったのだが──。
それは、パレードも終盤に差しかかった頃。
突如、悲劇は起きる。
最初に声を上げたのは王都民のとある女性だった。
「ひっ──きゃあぁああああああああっ!?」
「「「!?」」」
そんな声に驚いた王都民たちは、その女性が指を差している方へと視線を向けると──そこでは。
「な、あ……!? し、シトリィ!? 父上! 母上!」
「お、お母さま? お祖父さま、お祖母さま……?」
これでもかと取り乱したネイクリアスが、『心臓だけを削り取られた妻』と、『首から上を削り取られた両親』の遺体を見て叫び、そんな絶望的な光景を目の当たりにした一人娘は呆然としてしまっている。
その場にいた多くの一般人や、クラリアを始めとしたヴァイシア騎士団、及びノエルを中心とした近衛兵たちは──その悲劇の瞬間を見逃してしまっていた。
それも無理はないだろう。
もはや人間の肉眼では捉えられないほどの超高速で王族たちを襲撃したのは──【ジカルミアの鎌鼬《かまいたち》】であり、もし仮に正体を知っていたとしても防ぐ事などできなかったと考えれば彼らに非はないと言える。
【ジカルミアの鎌鼬《かまいたち》】の最初の被害者は──。
奇しくも──ジカルミアの王族だったのだ。
「くっ……」
「……」
そう語り終えたネイクリアスの話を片膝をついたまま聞いていたクラリアとノエルは、いかにも口惜しげな表情を湛えつつ血が滲むほど唇を噛み締めている。
自らの不甲斐なさを心から悔いているのだろう。
(あの一件……が、これの事なのかな)
その一方、先程ネイクリアスが口にしていた『あの一件』というのがこの事なのかもと考えていたフェアトをよそに、スタークは何やら首をかしげており。
「この国には、王妃様? ってのがいねぇままなのか」
それからすぐに、『するってーと』と前置きして王様が謁見の間にいるのに王妃が一緒ではない事を彼女なりに疑問に思っていた事を明かしつつ問いかけた。
「その通りだ。 無論、新たに何某かを娶る選択肢もあったが……それは私が却下した。 シトリィ以外の女性を後釜にするなど……私にはできなかったのだよ」
「……そうか」
それを受けたネイクリアスは、つい先程までこの場にいた宰相や、この王都に住まう貴族たちから別の王妃を用意するべきだと提案されたものの、それはシトリィへの裏切りに他ならないと断固として拒否した結果、王妃もいないまま国王へと即位したのだと語る。
それについては、スタークも何となく理解できた。
きっと、勇者ディーリヒトを失った聖女レイティアも、今の彼と同じだったのだろうと直感したから。
それから、しばらくの沈黙の後──。
「……其方らは、かの【ジカルミアの鎌鼬《かまいたち》】の討伐に手を貸してくれると聞いている。 それは真か?」
「……あぁ、あたしらはその為に来たからな」
ネイクリアスは、その僅かに窪んだ眼窩に指を添えて、クラリアから双子の協力を得たと聞いたのか再確認するように尋ねると、スタークがそれを首肯する。
「其方らの勇気に感謝を──いや、謝意を口にするだけなら幼子でもできる。 ノエル、あれをここに」
「はっ」
それを見たネイクリアスは深く感謝しようと──したのだが、『口だけの王だと思われたくはない』と言って、ノエルに何かを取ってくるように言付ける。
その後、謁見の間の奥にある扉から戻ってきたノエルは、やけに仰々しい装飾の頑丈そうで小さな箱のようなものを双子の前に差し出し、それを開いた。
「……? これは……?」
そこには、どこか見覚えのある二つの半透明な菱形の水晶が置かれており、されどそれが何かまでは分からないフェアトが首をかしげて問いかけてみる。
「最古にして最強の竜種、神晶竜の存在は其方らも知っているだろうが……かつて、かの竜は魔導国家《このくに》の地下深くに存在した神代の遺跡を棲家としていた。 これらは、その遺跡から発掘された始神晶《ししんしょう》の欠片だ」
すると、それを持ってきたノエルではなくネイクリアスが直々に、その二つの水晶は──かつて、この東ルペラシオの地下深くに存在した遺跡に棲んでいた世界最古にして最強の魔物、神晶竜の欠片だと語った。
この国が魔導国家と呼ばれるゆえん──それは他でもない神晶竜が棲家としていた為に、その身体から溢れる魔素が国中に溶け出していたからだったのだ。
「神晶竜って……マジか……?」
((りゅー!!))
それを信じられないといった表情で覗き込むスタークに対し、そんな彼女の腰に差さる半透明な剣と、フェアトの左手に嵌められた四つの指輪が反応する。
まず間違いなく本物なのだろう──。
──双子は、それを殆ど同時に理解した。
「これを其方らに賜与するつもりだ」
「しよ? あぁ、くれんのか?」
翻って、そんな風に頷き合う双子をよそにネイクリアスは、この二つの世界最古の鉱石──始神晶を譲ると口にし、『賜与』という言葉に一瞬だけ首をかしげたスタークが意味を察して手を伸ばそうとするも。
「待ってください。 それは結果を出してから──」
当然と言えば当然だが、まだ何も解決していないのに報酬だけ貰うのはどうなのだろうと考えたフェアトが姉を制し、ネイクリアスに懐疑的な視線を向ける。
何か企みでもあるのでは──という風に。
「レコロ村を壊滅させたのは魔族──いや、元魔族なのだろう? ゆえに、かの通り魔もそうなのではないかと私は踏んでいる。 もし、この考えが正しかったとするのなら戦力の強化は必須だと思うが……如何に?」
しかし、ネイクリアスにもちゃんとした考えがあったらしく、どうやらすでに並び立つ者たちの存在と復活を知ったうえで、スタークたちと同じように通り魔も並び立つ者たちなのではと推測し、ただでさえ強い双子の戦力を強化する意味でも──という話だった。
「……そう、ですね。 では、ありがたく──」
フェアトは、『それもそうかも』と何となくだが彼の言う事も理解できたようで、おずおずと手を──。
伸ばそうとした──その瞬間だった。
──バンッ!!
「「!?」」
突如、途轍もない勢いで開いた謁見の間の扉が立てた音に、スタークとフェアトが驚いて振り返ると。
「クラリアたちが帰ってきたって本当!?」
そこには──ネイクリアスと髪の色は違えど瞳の色は同じ、この謁見の間を照らす魔石の光を反射する桃色の長髪と、どこまでも透き通るような翠緑の瞳が特徴的な、いかにも高貴な出で立ちの美少女がいた。
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