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登場人物紹介:その4

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◆イザイアス(享年37・♂)

 15年前、勇者によって斃された魔族の一体。

 一人称は『俺』。

 身長は188センチ。
 体重は76キロ。

 ボサボサな焦げ茶色の髪と無精髭が特徴の男性。

 あらゆる魔法も物理も通さない自分の守備力を、彼が触れたもの全てに付与する事ができる力を覚醒させた【金城鉄壁《インタクト》】という称号を魔王より授かっていた。

 また、並び立つ者たちシークエンスの序列九位でもあった。

 【闇蘇《リザレクション》】とともに魔王からの命令が下るも、どの種族に転生するかを迷っていたせいで遅れをとる。

 ゆえに、人間として転生したのは割と最近の事。

 魔族だった頃から自堕落だった彼は常に魔王城に居座り、その態度は決して褒められるものではなかったが、それでも圧倒的な効力と範囲を誇る【闇壁《バリア》】の防衛力を買われて並び立つ者たちシークエンスの九位に選定される。

 称号を授かってからは魔法が使えなくなったが、それを補ってなお余りある守備力を得た事で、名もなき女性魔族を侍らせ橋者淫逸の限りを尽くしていた。

 しかし、いざ天空に浮かぶ魔王城に乗り込もうとするべく全力で勇竜剣《リントヴルム》を振るった勇者の一撃で城の正門が破壊された事で、城そのものに守備力を付与していた彼にもダメージが入り、深手を負ってしまう。

 ふらふらと城内を歩いていたところを勇者に見つかり、イザイアスは激昂しつつ魔族の膂力を活かして襲撃するも、残念ながら返り討ちとなり命を落とした。

 人間である勇者ディーリヒトに自分の鉄壁の守備力を打ち破られてしまった事で、彼は勇者を──もっと言えば、人間という種族そのものを逆恨みしていた。

 同族殺しの汚名など構わず凶行を起こし、あえて悪を赦さない類の強者を呼び寄せる事で自分の守備力を証明する為にも、人間への転生を強く望んでいた。

 その兼ね合いで、本来なら微塵も傷つかない筈の攻撃を受ける事でわざと捕まり、いざ処刑されるという時に『あれは恣意的だったんだ』と知った人間たちの絶望の表情を見るべく、ヒュティカにてそれを実行。

 しかし、そこに現れた仲間である筈の序列三位、セリシアの一撃のもとに両断されてしまい、上半身だけになりながらも恨み言を叫び続けたが、その後すぐに首を刎ねられた事で実りのない二度目の生を終えた。

 魔族だった頃も転生してからも称号によって得た力頼りであり、努力などはした事もなかったようだ。

 好きな食べ物は女体(性的な意味で)。
 嫌いな食べ物は酒に合わないもの。

◆セリシア(31・♀)

 15年前、聖女によって斃された魔族の一体。

 一人称は『私』。

 身長は192センチ。
 体重は76キロ。
 
 顔がハッキリ見えない、真紅の外套が特徴の女性。

 およそ剣士であれば必ず行う動作である、『剣の柄を握り』『腰だめに構えて』『鞘から剣を抜き』『対象を斬り払う』といった斬撃の一連の過程を全て飛ばし、ただ『斬った』という結果だけを残す力の覚醒を促す【一騎当千《キャバルリー》】という称号を授かっていた。

 また、並び立つ者たちシークエンスの序列三位でもある。

 魔族だった頃は魔王に従いながらも決して善人や弱者には手を出さず、されど悪の心を持つ人間や獣人には容赦なく剣を振るう自分なりの正義感と、たった一体で国一つを制圧するほどの強さを併せ持っていた。

 称号を授かってからは、それまで愛用していた長剣が消失してしまっていたものの、その長剣は消えたのではなく自分に宿ったのだという事と、その称号によって得た新たな力の事を彼女は本能で理解していた。

 魔王城に乗り込んだ勇者が序列二位の魔族と戦う中で、レイティアや三人の仲間たちとの激戦を繰り広げるも、『斬った先から無限に治す』という聖女でなければできない策を打たれた事で惜しくも敗北する。

 十六歳の人間の少女に転生した後は、しばらく魔導国家を拠点とする冒険者として自分たちの影響で悪の因子を宿してしまった魔物の始末に取り組んでいた。

 ある日、『生物であり生物でない何か』が東ルペラシオに攻め込んできた事を感じ取り、その気配の正体であった『機械化した人間や獣の群れ』を殲滅。

 遅れた到着した者たちはその惨憺たる光景に、ある者が恐怖で打ち震えて、ある者が血生臭さから胃の中のものを吐瀉する一方、未来のヴァイシア騎士団十五代目団長だけは彼女に強い畏敬の念を抱いていた。

 その後は彼女の力に目をつけた魔導国家の有力者たちの手によってフリーの処刑人となり、それから十五年が経過した今でも処刑の依頼は絶えず、ヴィルファルト大陸を駆け回って咎人を処刑し続けている。

 イザイアスも、そのうちの一人にすぎなかった。

 好きな食べ物はサンドイッチを始めとした軽食。

 嫌いな食べ物は無駄に凝った接待料理。
 そんなものを味わって食べる暇など彼女にはない。

◆アストリット(8・♀)

 15年前、勇者と聖女に斃された魔族の一体。

 一人称は『ボク』。

 身長は120センチ。
 体重は31キロ。

 濡れ羽色の長髪と、まるで羅針盤であるかのような模様が刻まれた透き通る紺碧の瞳が特徴の美少女。

 全てを知り、全てを能う──そんな文字通りの力を覚醒させ、この世界のあまねく理《ことわり》を知識として修めながら、その全てを魔王と同等の力を持って再現できる、【全知全能《オール》】という称号を授かっていた。

 取りも直さず、並び立つ者たちシークエンスの序列一位である。

 二十六体の優れた魔族である並び立つ者たちシークエンスの中にあっても唯一、魔王と対等な立場にあった魔族。

 それもその筈、彼女は魔王カタストロによって最初に生み出された魔族であり、それゆえか魔力も知能も後に生まれたどの魔族たちをも遥かに凌駕していた。

 ……とある三体の異形の魔族を除いて。

 魔族だった頃、彼女は一度も城の外へと足を運んだ事はないが、それでも【全知全能】の力でこの世界で起きている全ての事象を城にいながら把握し、それを基に戦略を立てる参謀としても彼女は優秀だった。

 また、イザイアスやジェイデンといった魔族の中での問題児、或いは上述した異形の魔族たちを扱いかねていた魔王に代わって、それらとの連携を図る事も多く、まさしく緩衝材のような役割も担っていた。

 ある時、勇者たちが城に乗り込み二位と三位を倒した時点で彼らの前に姿を現し、『この一撃を耐えられたなら』という条件で彼女にとっての最強の魔法を放ったが、勇者一行は死に体になりながらも生き残る。

 もちろん、その魔法を放ったところで超高確率で耐えられる事も、その魔法以外に解がなかった事もアストリットは【全知全能《オール》】の力で知っていたのだが。

 その後は大人しく勇者の刃を受け入れようとしたのだが、それを見た勇者は彼女を苦しませたくないと考えてレイティアにその場を任せた事で、そんな彼に同調したレイティアの光魔法にて一瞬で消滅する。

 結局、彼女は一度も苦痛を感じる事はなかった。

 とある貴族の赤子として転生した彼女は、すぐに元序列一位としての頭角を現したが、すでに魔族との戦いを終えた今の世界に彼女の存在は刺激が強すぎたらしく、幼い彼女は着の身着のまま追放されてしまう。

 それから、そんな自分が一緒にいても違和感のない何某かの存在を【全知全能《オール》】にて探した結果、港町に住む魔女に目をつけたのが今の生活の始まりだった。

 極端に魔法に打たれ弱く、また自慢の力でさえ自分に劣るスタークや、ちょっと他の竜種より強い程度にしか感じないパイクやシルドには微塵も興味がない。

 しかし、そんな自分の力が全く及ばないばかりか考え一つすら読む事もできないフェアトに対しては興味津々であり、ゆくゆくは研究対象にしたいらしい。

 魔族だった頃から勇者と同じく全属性の魔法を扱えており、それは魔王でさえ不可能な事だったようだ。

 好きな食べ物は特になし。
 嫌いな食べ物も特になし。

 魔族だった頃に、わざわざ経口で栄養を摂取せずとも世界の心臓ワールドコアから必要な量の魔素を吸収する事で身体を保つ術を知った為、食事には大して興味がない。

 ……が、フルールの料理は嫌いではないらしい。
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