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双子の日常
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──ここは、とある世界の。
とある辺境の地──。
「本気でいくぞー!? いいか、本気だからなー!?」
「……御託はいいので、さっさとどうぞー」
ある日、どこにでも居そうな短髪の少女が、どこにでもありそうな平民服を着た状態で、もう片方の一つ結びの少女に対して大声で話しかけている。
髪型や口調どころか、その髪や瞳の色までが違う二人ではあるが、それでも彼女たちは間違いなく双子。
姉である短髪の少女の髪は栗色、瞳は緋色。
妹である一つ結びの少女の髪は金色、瞳は空色。
年齢は十五、身長は平均より少し高い程度。
人間の髪や瞳が色鮮やかになりがちなこの世界においては、まさしく普通の姉妹であると言える。
敢えて、普通ではない点を挙げるとするのなら。
「いい度胸だぁ! じゃあ──いくぜぇ!!」
短髪の少女が立っているのは、飛行手段を持たない魔物が寄り付かないほど高度の断崖絶壁であり。
そんな断崖絶壁から……崖下にいる一つ結びの少女を目掛けて短髪の少女が今、飛び降りた事くらいか。
「うっ──らぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「……っ」
短髪の少女は次第に増していく落下の速度を利用しつつ、その身体が球状に見えるほどに高速で回転しながら見た目にそぐわぬ強靭さを持つ右脚を前に出す。
そして、一つ結びの少女が無抵抗なのをいい事に。
……崖下に立つ彼女の脳天に右の踵を叩きつけた。
瞬間、超巨大規模の爆弾でも投下されたのかというほどの衝撃が発生し、一つ結びの少女が立っていた筈の地面は広範囲のクレーターとなってしまっている。
先ほどまで短髪の少女が立っていた断崖絶壁も、もはや崩壊寸前というところまでひび割れていた。
「っ、どうだ!? あたしの新技、【断頭落とし】!! 流石のお前も擦り傷くらい負って──」
その後、土埃の向こうの一つ結びの少女に対して短髪の少女が咳き込みつつかけた声は、彼女を心配するようなものでも自身の所業を謝罪するものでもなく。
……自らの体術の威力を、誇るものだった。
普通なら間違いなく命を落としている筈なのに。
……だが生憎、一つ結びの少女も普通ではない。
「──ませんよ」
「うおぉっ!?」
一つ結びの少女は、まるで何事もなかったかのように土埃の向こうから姿を現し、それを見た短髪の少女は予想していたとはいえ驚きを隠せないらしかった。
「身体の表面はもちろんの事、骨にも内臓にも異常はなさそうですし。 まだまだ威力不足ですね、姉さん」
「……っ、だぁああああっ!! やっぱ駄目かぁ!!」
その後、身体どころか服にすら傷のない一つ結びの少女が、パンパンと埃を払うように服を叩きつつ自らの健常をアピールすると、短髪の少女は心から悔しそうに大声で叫びながら深く抉れた地面に寝転がる。
──これは。
──天を突くほどの巨大な竜を隙間なく覆う、あまりに頑丈な鱗を拳一つで全身ごと粉砕する長女と。
──海を割ってしまうような威力を誇る竜の息吹の中でさえ、しれっと無傷で生還する次女の。
至って普通の双子の日常風景である──。
とある辺境の地──。
「本気でいくぞー!? いいか、本気だからなー!?」
「……御託はいいので、さっさとどうぞー」
ある日、どこにでも居そうな短髪の少女が、どこにでもありそうな平民服を着た状態で、もう片方の一つ結びの少女に対して大声で話しかけている。
髪型や口調どころか、その髪や瞳の色までが違う二人ではあるが、それでも彼女たちは間違いなく双子。
姉である短髪の少女の髪は栗色、瞳は緋色。
妹である一つ結びの少女の髪は金色、瞳は空色。
年齢は十五、身長は平均より少し高い程度。
人間の髪や瞳が色鮮やかになりがちなこの世界においては、まさしく普通の姉妹であると言える。
敢えて、普通ではない点を挙げるとするのなら。
「いい度胸だぁ! じゃあ──いくぜぇ!!」
短髪の少女が立っているのは、飛行手段を持たない魔物が寄り付かないほど高度の断崖絶壁であり。
そんな断崖絶壁から……崖下にいる一つ結びの少女を目掛けて短髪の少女が今、飛び降りた事くらいか。
「うっ──らぁああああああああああああああああああああああああああああああああああああっ!!!」
「……っ」
短髪の少女は次第に増していく落下の速度を利用しつつ、その身体が球状に見えるほどに高速で回転しながら見た目にそぐわぬ強靭さを持つ右脚を前に出す。
そして、一つ結びの少女が無抵抗なのをいい事に。
……崖下に立つ彼女の脳天に右の踵を叩きつけた。
瞬間、超巨大規模の爆弾でも投下されたのかというほどの衝撃が発生し、一つ結びの少女が立っていた筈の地面は広範囲のクレーターとなってしまっている。
先ほどまで短髪の少女が立っていた断崖絶壁も、もはや崩壊寸前というところまでひび割れていた。
「っ、どうだ!? あたしの新技、【断頭落とし】!! 流石のお前も擦り傷くらい負って──」
その後、土埃の向こうの一つ結びの少女に対して短髪の少女が咳き込みつつかけた声は、彼女を心配するようなものでも自身の所業を謝罪するものでもなく。
……自らの体術の威力を、誇るものだった。
普通なら間違いなく命を落としている筈なのに。
……だが生憎、一つ結びの少女も普通ではない。
「──ませんよ」
「うおぉっ!?」
一つ結びの少女は、まるで何事もなかったかのように土埃の向こうから姿を現し、それを見た短髪の少女は予想していたとはいえ驚きを隠せないらしかった。
「身体の表面はもちろんの事、骨にも内臓にも異常はなさそうですし。 まだまだ威力不足ですね、姉さん」
「……っ、だぁああああっ!! やっぱ駄目かぁ!!」
その後、身体どころか服にすら傷のない一つ結びの少女が、パンパンと埃を払うように服を叩きつつ自らの健常をアピールすると、短髪の少女は心から悔しそうに大声で叫びながら深く抉れた地面に寝転がる。
──これは。
──天を突くほどの巨大な竜を隙間なく覆う、あまりに頑丈な鱗を拳一つで全身ごと粉砕する長女と。
──海を割ってしまうような威力を誇る竜の息吹の中でさえ、しれっと無傷で生還する次女の。
至って普通の双子の日常風景である──。
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