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シィータソルト

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第1章 優唯の初仕事は恋愛成就!?

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地上では、人間をはじめとする様々な生物が生きている。

人間もその他の動物の社会をつくっている。

ここにも中学校という小さな社会で恋をしている。女の子がいる。

彼女は花園美咲。年は15歳。星空中学校3年生である。

受験生となり、勉強、勉強で受験教科のことで頭がいっぱい……ではなかった。

唇を尖らせ、その上にシャープペンシルをのせ、受験勉強に多くの時間を割かねばならないことに不満を抱いていた。

美咲「あぁ~受験勉強しろ、受験勉強しろと周りの大人が口を揃えて、そればっかりでうんざりよ! つまらな~い。受験生には青春はできないのかな~。どこかに私を迎えに来てくれる白馬に乗った王子様はいないかしら?」

美咲は幼馴染の百合と桃と共に、放課後に教室で受験勉強をしていた。

美咲が恋愛話をしだして、また、いつもの展開が繰り広げられたとうんざりし始めた桃に、

「まぁまぁ」と百合が宥めていた。

百合「みさちゃん、現実逃避してばかりしちゃ受験勉強できなくなっちゃうよ~。学生は勉強がお仕事なんだから~」

桃「そうよ、美咲。百合の言う通りよ。私だって、恋したいけど、やっぱり勉強大事だし……」

美咲「はぁ~、みんな固いわ~。女の子は恋をしたら素敵な人になれるのよ!」

桃「そういうのって、やるべきことをしっかりやっている人がなれるものじゃない?」

美咲「うっ」

美咲は桃の言葉が心に刺さり、言葉につまった。

美咲「で、でも私、恋しないと勉強が手につかな~い!!」

百合「でも、その人と恋が成就したら今度はその人との関係性に悩んだりして勉強が手につかなくなるんじゃない? あの人に愛想つかれてないかな。上手くやれているかな。みたいに」

百合の言葉も心に刺さり、ますます困惑する。さすが、幼馴染。図星をついてくる。

美咲「じゃあ、私どうすればいいのよっ!!」

百合「どっちか重視じゃなくて、うまく両立させる方法を取ろう! 勉強頑張ってその一生懸命さで成績を収めて、頑張り屋なところを好きな人にアピールするの。そして、うまく付き合えるようになったら、悩みを打ち明けたり、一緒に悩みを解決し合ったり……同じ学生同士なら、悩むことも似ているだろうし、支え合える関係って結婚してからも大事だし」

美咲「でも……頭のでき悪いから……」

百合「私と桃ちゃんが勉強教えるから、ね」

美咲「ありがとう、ゆりり~ん!」

百合「がんばろ~ね!」

美咲「うんっ♪」

桃「私と百合の教え方が良くても、美咲が理解できるかしらね……」

美咲「なんですって~~~!!」

桃「まぁ、その負けず嫌いなのが部活では大変生かされているから、勉強にも情熱注いでちょうだい」

美咲「いちいち、私を挑発すんじゃないわよーー!!」

そう言い合っている彼女達は勉強の手が止まり、この時しか味わえない青春を楽しんでいた。

優唯「あぁ~あの子かなぁ」

凛「そうみたいね。でも、誰に恋しているのかしら?」

マナー「王子様いないかしら~って言ってたから恋人はいないんじゃないか?」

またたび「とりあえず、もう少し、話を聞いてみようよ」

地上に降りてきた天使達は、学校の外から美咲達の様子を眺めていた。

ちなみに、天使達は生きている人間達には、触ることも話すこともできなく直接干渉ができない。

もちろん、人間から姿を見られることはない。

ちなみに、マナーが美咲の真似をしていたとき

(王子様いないかしら~)>(*ᵒ̴̶̷ωᵒ̴̶̷*人)

と乙女になりきっていた。

美咲「私ね、実はねある人に恋をしているんだ!」

桃「なんで毎回、きりだすのが初めて見たいに言うのかしらね」

百合「卒業した龍二先輩だよね。生徒会長、部長、委員長、クラス会長とあらゆる長の位に君臨してた」

桃「あの先輩、超人だったわね。あと成績優秀で運動神経抜群!! イケメンでモテモテ!! って、美咲の押し売りを暗記しちゃったじゃない!」

美咲「さすが、幼馴染達ね! 私の好きな人の魅力わかってる~!! 龍二先輩に私なんかが不釣り合いかもしれないけど、諦められないの! 私はあの人に心を奪われたの。近くにいたときも、こうして離れてしまっても。四六時中、思考回路はあの人しか流れてこなくて。もう、先輩は泥棒よ! 私の心を占領しちゃって!」

百合「みさちゃんは今のままでも魅力的だよ。不釣り合いなんてことないよ! 運動得意なところ先輩と同じだよ!」

桃「そうよ、美咲。あんたの魅力で先輩をメロメロにするのよ! 好きなことにはとことん貪欲のあんたは先輩の心を捕まえられる!!」

美咲「も~、ゆりりんも桃もそんなに褒めちぎんないで~!!」

百合「みさちゃん、先輩と結ばれるためにも勉強頑張って、先輩の入学した月光高校に入学しよう!」

美咲「月光高校って、進学校じゃなかったっけ?」

百合「そうだね、確か有名大学に進学させた実績多いね。海外の有名大学行った実績も多かったかな?」

美咲「よしっ、大学進学は今は興味ないけど、賢くなることは損ではないわね。でも、なにより、先輩と過ごせる時間を増やせることよね! 先輩の心手に入れてみせるるわ!」

桃「美咲、推薦でより有利に入ることだって利用してもいいんじゃない?推薦は部活の実績も評価してもらえるんだから。あと、3ヶ月で引退だもの。最後にまたあんたの雄姿、記録に残してみたら?」

美咲「そうね! 勉強と部活両立よ!」

美咲は勉強への熱意を高ぶらせ、教科書、ノートに向き合う。

百合と桃はその光景を見てくすりと笑い、美咲に勉強を教え始めた。

優唯「へぇ~、すごいね。龍二先輩さんって」

凛「そうね。あらゆる才能に恵まれているのね。神様は彼を愛しすぎているくらいね」

マナー「なんだろう、この自分から感じる黒いオーラは……」

またたび「嫉妬しているんじゃない?」

マナー「そうだな……羨ましすぐる才能ばっかし……さぞかし、さぞかしリア充なのだろう……」

またたび「だね」

凛「よしじゃあ、今回の精神修行の目的の人間、そしてその好きな人間がわかったことだし。次は月光高校とやらに言ってみましょ!」

天使全員「お~~~~!!!」

~月光高校~

土地は広く、3階建ての校舎。体育館はもちろん、各種の運動部専用の部室が揃えられてある。

そして、校門をくぐると噴水がお出迎えをする。

優唯「おぉ~なんかすごく場違いなところに来てしまったような気がする……」

凛「天国に負けないぐらい綺麗な場所ね……」

マナー「まっオレっちには負けるけどな」

またたび「どこが勝っているんだ?」

優唯「じゃあ、さっそく龍二先輩さんを探しに行こ~う」

凛「ちょっと待って。優唯、二手に分かれて探した方が効率的だわ。私とマナーはこっちから見ていくわ。見つけたらエンジェルコールに電話して」

優唯「うん、わかった! またたび、行こう!」

またたび「はーい、優唯ちゃん!」

凛と別れ、エンジェルコールを片手にまたたびと周囲の人間の顔を観察していく。

エンジェルコールとは、天使達の精神修行の仕事に役立つ電話機器である。

見た目は、人間が使っているガラケーと似ている。

電話機能はもちろん、メール、その他、便利機能がある。

優唯は、ふと、あることに気付いた。

優唯「ねぇ、またたび~」

またたび「な~に~?」

優唯「気づいたことがあるんだけどね」

またたび「うん」

優唯「私達、龍二先輩さんの顔知らないよね?」

またたび「あ、確かに。特徴を何も聞いてないしね」

優唯「どうしよ~。仕方ない。凛ちゃんに相談してみよっ」

優唯はエンジェルコールで、凛の番号にかけた。

数回の呼び出し音が鳴り、凛がでる。

凛『もしもし! 見つかったの!? どこにいた!?』

優唯「あ~えと、見つかっていないよ……」

凛『じゃあ、なんで電話したの!?』

優唯「私達、龍二先輩の顔知らないからどうやって探したら良いかわからなくて……凛ちゃんは何を手掛かりに探しているの?」

凛「そっか、優唯は今まで、エンジェルコールの機能、電話以外使ってないものね」

優唯「うん、クピドの時はミカエル様が目的の人間の写真を持たせてくださって、仕事中わからない時は、電話をしてお聞きしていたから……」

凛「じゃあ、まず、アプリ開いて。開いた? そうしたら、検索っていうアプリ開いて。あとは、その子が教えてくれるわ!」

優唯「その子??」

凛「じゃ、また連絡ちょうだい!」

凛との通話が切れ、教えてくれたアプリのアイコンをタッチした。アプリの画面はnow loadingの文字がしばらく続いている。

~♫

起動音が流れた。

???「Hi!! はじめましててん!!」

エンジェルコールの画面から、小さな天使のホログラムが現れた。

その見た目は新生児を思わせ、髪の毛が2本しか生えていない。

目のところは心電図を思わせる図が流れているグラスをかけている。

くちぐせは「~てん」と言うことだてん。

優唯「うわぁ、小さい天使さんが現れた!?」

またたび「優唯ちゃん、僕の後ろに! ふぅ~~~~~!!!!!」

サーチ「そ、そんなぁ。僕のこと威嚇しないで~。僕はエンジェルコールの機能の1つ、検索機能を任されている映像天使「サーチ」ですてん」

またたび「もしかして、この子が、凛ちゃんが言っていたアプリ開いたら教えてくれるといった子……?」

優唯「ほぇ~、じゃあサーチ君! 探して欲しい人がいるんだけど、お願いしてもいいかな?」

サーチ「お任せてん!その人の名前は?その他わかる情報は?」

優唯「えーと、この月光高校に在学中で高校1年生の龍二先輩さん」

サーチ「しばらく、お待ちくださいてん…」

サーチのグラスの図が波のように揺れる。

サーチ「ふむ、ふむ……龍二先輩さんの音が聞こえる。音が流れてくる。今、僕の中で、先輩さんの姿が構成されていっている……でましたてん。この人がその先輩さんてん」

サーチのグラスから、さらに、ホログラムが現れ、龍二の全体像を映している。

優唯「ありがとう、サーチ君!」

サーチ「どういたしましててん!また困ったらいつでも呼んでくださいてん。じゃあ、お仕事頑張ってくださいてん。またね~」

サーチはエンジェルコールの中に消えていった。

優唯「よし、またたび、学校の中を探索だよ!」

またたび「龍二先輩さん、どこですか~」

またたびは龍二の名前を学校中に響き渡るくらいの声量で呼んだ。

だが、誰も驚くようなことはない。

先程も述べたが、天使は人間に干渉できないからだ。

優唯「あっ、龍二先輩さんいたよ!凛ちゃんに電話しなきゃ!」

エンジェルコールで凛にかけるが、

ツー、ツー、ツー……

通話中の音声が返ってくる。

優唯&凛「凛ちゃん!」「優唯!」

凛「同時に見つけたのね!」

優唯「そうだね~」

凛「よし、龍二さんについて調べるわよ! 今回は美咲ちゃんが仕事の目的となる人だから美咲ちゃんと結ばれることが修行の目的。龍二さんに恋人がいないか……調べないとね」

優唯「いないといいけど……できれば、2人が両想いだったら……」

マナー「そんな都合が良いことあるわけないだろー。ギャルゲーかよ」

またたび「でも、恋人いたら、精神修行ってだされるのかな……?」

凛「そうよね、またたび! 2人が結ばれる可能性があるからこそ、私達が後押しをするのよね!略奪愛を応援するわけじゃないわよね……」

モナー「凛たん、人間寿命14歳で止まっているくせに、略奪愛とか、おっとなーな言葉をご存じで。おしゃまな女の子ですこと~」

凛「あぁ~私は本読むの好きだから、耳年増かもね……っていちいち茶々いれるんじゃないわよ!」

マナー「いて~、親父にも殴られたことあるのに~!!」

またたび「あるのかよっ!」

天使達で盛り上がっていると、放課後になったようで、廊下は生徒達で溢れている。

そこに、龍二の姿があり、携帯をいじり始めた。

メールを読んでいるようで、読み終えると、階段のある方へ歩き出している。

凛「追うわよ!」

天使達は龍二の姿を見失わないように、飛んで追いかける。

龍二は、階段を上がり、2階と3階の踊り場で止まる。

そこへ、年上らしき女の子が現れた。

女先輩「ごめんなさいね。部活前に呼び出してしまって」

龍二「いいえ、僕、個人的に用があるのでしたらここでゆっくりお話ししましょう。ところで、話とは部活のことでよろしいでしょうか?」

女先輩は、龍二の所属している陸上部のマネージャーである。

だが、部活の話題ではないという意思で横に首を振り、俯いてしまう。

そして、深呼吸してから、口を開く。

女先輩「あっあのね、龍二君……私はあなたの部活で一生懸命な姿を見てて、それで……それで」

龍二「……それで?」

女先輩「あの、えと……好き……、好きになりました! 私と付き合ってください!」

天使全員「ななな、何だって~~~~~!?」

天使達は驚愕した。ここで、成立してしまっては自分達が現世に来た意味がなくなる。

どうすれば……

龍二「あの、お言葉はとても嬉しいです。身近で見守っていただいて好意をもってもらえたこと。ですが、申し訳ありません。お気持ちには応えられません。僕には、想い人がいるのです」

女先輩「えっ……」

天使全員「一体誰~~~~~~!?」

龍二「かつて想っていた人がいました。その人はこの世から遠いところへ旅立ってしまいました。でも、また新たに好きな人ができました。その人も現在は離れてしまっていますが、中学生の時はいつも僕のことを尊敬してくれ、見守ってくれて、切磋琢磨できる仲でした。後輩だけど、僕もその天真爛漫で好きなことへの情熱の高さはとても尊敬できました。また、一緒になれるのなら共に部活に励みたいくらいです」

優唯「この後輩ってもしかして……」

凛「美咲ちゃんの可能性が高いわね……!!」

またたび「両想い……なのかも!?」

マナー「さっきの{そんな都合が良いことあるわけないだろー。ギャルゲーかよっ}は撤回するぜ! オレっち、両想いの可能性にwktkが止まんねーぜ!! 少しでも望みがあるならオレっちはそこへ飛び込む!」

女先輩「そうなの……。困らせてしまってごめんなさいね。でも、良かったらお友達になってくれませんか? 先輩、後輩と堅苦しい関係じゃなくて、ね」

龍二「あはは、ではまずはこうして、個人的にお会いする機会を増やすところから始めましょうか……では、また部活でお会いしましょう。お先に失礼いたします」

優唯「2人はお友達になれたんだね! 女の先輩さんは恋愛が芽生えなかったけど、友情は花が咲いたから良いよね!」

マナー「まぁ、ある意味ハッピーエンドではあるなぁ。ギャルゲーならノーマルエンドだけど」

凛「龍二さんの様子を見たことだし、美咲ちゃんの中学校、星空中学校に戻りましょうか」

天使達は気づいていなかった。

女先輩はまだ龍二のことを諦めていなかった。

女先輩「龍二君、私はまだあなたのこと、諦められない……私はもう少しで引退だけど、それまでに……あなたを振り向かせてみせる! 過ごした日数は少ないけど、その後輩の子には負けたくない!」

~戻って星空中学校~

凛「優唯。ちょうどいいわ。中学校でも部活が始まるわ! 陸上部見に行ってみれば、噂があるかもしれないし!」


優唯「龍二先輩さんは後輩さんに告白しているのかな…?」

凛「それがわからないからね。とにかく、見るのが1番だわ!」

天使達は、校舎裏にあるグランドに設置されている陸上部部室に来た。

部長「さぁ、部活始めるわよ! 目指すは夏の陸上大会! 今日も日々鍛錬、そして向上よ!」

部員全員「はい!」

部長「良い返事ね! みんな、体調は大丈夫みたいね! もし、悪い人いたらいつでも言って。無理はさせないから。さぁ、まずは準備体操よ! 体を温めるわよ!」

優唯「あれ? 部長さんって美咲ちゃんじゃない?」

凛「本当だ。龍二さんから引き継いだのね」

優唯「同じ部活だから先輩さんと過ごす時間が多かったから惹かれていったのかもね!」

凛「そうね、よし調査開始!」

天使達は陸上部の部員達の話を聞いていた。

だけど、部活に関する話題ばかりで龍二のことを話題にだすものはいない。

当然である、卒業した者への感情をいつまでも引いていては、今に集中できなくなってしまう。

しかし、休憩時間では別である。むしろ、休憩の時には、集中しているものから離れてみることが大切である。

でなければ、休憩の意味がない。

陸上部員達は、水分補給、ストレッチをしつつ、部員同士の仲を深めるべく会話をすることも取り入れている。

女部員「美咲先ぱーい、知ってますかぁ?」

美咲「なになに、何か面白い流行りのものでも教えてくれるの?」

女部員「恋愛の噂話ですよ! 男子に聞いたんですけど、元部長の龍二先輩に好きな人がいるそうですよ!」

美咲「えっ誰、誰なの!?」

女部員「この陸上部の中にいるみたいですよ! キャ~~~~!! あの方にモテるなんて幸せ者ですよね!!」

美咲「私も気になるわ! その教えてくれた男子って誰!?」

女部員「彼です。お~い、美咲先輩が呼んでる~~!」

男部員「何でしょうか? 先輩!!」

美咲「龍二先輩が好きな人って何年? いや、もう回りくどいのなんて面倒! ずばり、この中の誰!?」

美咲は自分より背の高い後輩の肩に手を伸ばし、上目遣い……ではなく、睨みつけ脅迫しているように見える。

男後輩は委縮しながら

男部員「さぁ……俺も龍二先輩に「後輩を好きになってしまった。どうしたらいい?」って相談されただけで誰かまでは……。でも、とりあえず、新入生以外で龍二先輩にお世話になった人……じゃないですかね」

美咲「まぁ、そうなるわよね……でも、これはもしかしたら私って可能性だって十分ありうるってことよね!! もし、そうだったら両想い!!!キャ~~~~私ったらみんなに自分の好きな人を教えちゃった~。てへっ☆私ってばうっかりさん♡」

部員全員「……」(始まった美咲先輩の妄想癖……)(ていうか、前にもこんなこと言ってたから全員、美咲先輩の好きな人知ってると思う……)(また、休憩時間が美咲先輩の龍二先輩の素敵なところ列挙かな……)

部員達はいつものことに飽きれ顔だ。

だが、これも美咲先輩の引退するまで。そう考えたら後は短い。

とことん、付き合うか。これも美咲先輩との思い出の欠片だから。

かつて一緒に部活に励んでいた龍二先輩との青春も思い出され、美咲先輩が卒業しても……また、きっと思い出したい先輩だろうなと思った。

好きなことに一生懸命で、それは部活にも、そして龍二先輩にもそうだったってことは、身近で見ていた私達が見ていたから知っている。

きっと、龍二先輩が言う、後輩とは彼女を指していることだろう。

優唯「凛ちゃん! これは両想いだよ! 間違いないよ!!」

凛「問題は2人をどうやって会わせるかね……そのきっかけを作らなきゃ……」

美咲「よ~し、私、この話を糧に、龍二先輩に告白するわ!!」

部員全員「え~~!?」

それはそれは、大胆な宣言だった。

美咲「もうすぐ来る夏休みに高校体験入学の時、先輩のいる月光高校に行くの! その時、私は先輩に告白する!!」


部員全員「え……と~。頑張ってください……」

美咲「ありがとう、みんな! 私、自分の恋を応援してくれる同級生と後輩をもってとても嬉しいわ!  さて、休憩時間終わったわね。練習再開!」

優唯「凛ちゃん……」

凛「優唯……」

優唯&凛「チャンス到来!!」

優唯「じゃあ、しばらく美咲ちゃんを見守るということだね! まだまだ天国には帰ることはできないね」

凛「修行内容によっては、しばらく帰ることはできないわよ~。それも、忍耐力つけるためかしらね?まぁ、天使になってからの現世も悪くないわよ」

優唯「そうだね! 凛ちゃんとなら、退屈しないや!!」

凛「ちょっ……///// いきなり、何よ! 私だけでも別にこの修行できるけど、優唯が1人でいきなりこんな初仕事は無理だろうから……」

またたび「凛ちゃんは優しいよね~」

マナー「そうだろ~、素直ではないが、大変優唯ちゃん想いだぜ? オレっちが妬けるほどな」

天使達は、美咲達のことを離れたところで見守っていた。

美咲にとって、最後の大会が夏休み後にある。優勝を取るために。

だが、その前に自分の気持ちを先輩に告白する。

2つの決意が渦巻いている。まず、先輩の気持ち、手に入れるために。

美咲は今日の練習で最高記録をだした。

本番での成功に繋がる自信がまた1つ積み重なった。

~高校体験入学の日~

月光生「……では、私達からの案内は終わりです。昼休みは1時間ありますので、他の生徒の迷惑にならないようにするならばどこを見学しても構いません。そして、1時間経ちましたらまたここに集合してください。よろしいですか?」

星空生達「はい!」

いよいよ、先輩に気持ちを伝える日が訪れた。

部活においては、自信がついた。記録は日に日に伸びている。

だけど、告白の練習なんてちっともできてない。

鏡の前でしようとは思った。けど、恥ずかしくて言葉を紡げない……

けど、ぶっつけ本番!想いは即席でできたものじゃない。

先輩への想いだって日に日に募っていく。それをぶつければいい。

美咲「ゆりりん、桃! 先輩のところについてきてもらえる?」

百合「もちろんだよ!」

桃「さぁ、ぐずぐずしてたら時間なくなっちゃうわよ!」

美咲「はぅ!?」

百合「どうしたの? みさちゃん?」

美咲「先輩、何部かわかんない…」

桃「高校生になっても陸上部続けているかもよ、とにかく行ってみよう!」

美咲「うん!」

美咲達は近くにいた月光生に陸上部の場所を教わり、陸上部のあるグランドに来ていた。

美咲「ゆりりん、桃! いたわ! 龍二先輩!! 部室の中にいる!!」

指さした先には、部室の中で水分補給をしている龍二とその同級生らしき者達で話合っている。

百合「でも部活中の先輩に話かけられるのかな?」

美咲「私、先輩に告ってくる!!」

桃「ちょっと!! 美咲!!……あぁ、行っちゃった……」

美咲は2人の注意を聞かず、見つけた先輩のところへ駆け出した。

けど、部室へ入ろうとしたとき、1人の男の生徒が出てきた。

陸上部部長「おや? 君、見かけない顔だね。あっ! もしかして体験入学で来ている星空中生の子かな?」

美咲「はっはい! 私、花園美咲と申します! じっ実は、龍二先輩に用があるのですが……」

颯人「へぇ、花園美咲ちゃんかぁ。可愛い名前だね。俺は疾風颯人。陸上部部長さ! 美咲ちゃん、悪いけどあと、10分待ってもらえるかな?今日はこうして体験入学があるから特別日課で早く部活が終わるからさ!」

美咲「はい!」

~10分後~

颯人「以上だ。今日の練習はここまでとする。しっかり休みまた明日に備えろ! 気をつけ、礼!」

陸上部部員全員「ありがとうございました!!」

颯人「龍二、来い」

帰り支度をしようとした龍二を颯人が引き止める。

龍二「何でしょうか、颯人先輩! 個人的にご指導していただけるのでしょうか!」

颯人「お前の出身中学の可愛い後輩が会いに来ているぞ。ほら、あそこだ。行ってやれ」

颯人は親指を立て、後ろにくいっくいと手を動かし、早く行くよう促す。

その指の先には、美咲が顔を赤くもじもじしながら待っていた。

龍二「……!? 僕に用がある後輩は美咲さんですか…」

美咲「はい、そうです。先輩に会いたかったから……です」

龍二「……///// 嬉しいな……また美咲さんに会えるなんて」

美咲「あの……先輩……私、先輩のことが……」

桃「美咲~~~~~!! あと5分で集合時間よ~~~~!!!」

百合「急がないと! みさちゃん!!」

グランドの上から、桃と百合の呼び声が響いてくる。

今なら勇気をだして告白できそうだったが、2人の掛け声で好きの言葉が引っ込んでしまった。

しかし、このまま続行するわけにもいかない。

美咲「えぇ~~!! どうしよ、先輩、あの!!」

龍二「美咲さん、今は集合場所に戻らないと! 高校見学は高校の先生達が見学に来た中学生の態度を見ているんだ。遅刻したら、この高校に入学するのに相応しくない生徒と見なされるかもしれない」

美咲「でも、まだ先輩に伝えていないことが……」

龍二「お互いのことが終わってから月光高校の校門前に集合。僕も帰り支度してすぐ行きます。伝えていないことは僕にもあるのでね。では、校門の前でまた会いましょう」

美咲「……はい!」

今急いで告白する必要はない。あとで、ゆっくりと今まで重ねた想いを紡ごう。

美咲は龍二の手を振る姿に見送られ、百合と桃のところに駆け出した。

桃「美咲、遅い!!」

百合「みさちゃん、急ご!!」

美咲「2人共、ごめ~ん」

桃「口動かしてないで、足を速く動かせ!」

美咲「わかってるって! てか、私が1番速いに決まってんじゃん!!」

百合「2人共、置いてかないでよ~」

3人は笑いながら集合場所へ走っていった。

集合時間1分前につき、事なきを得た。

月光生「全員、集まりましたね。では、これにて体験入学を終わりに致します。お疲れ様でした。気をつけてお帰りください」

桃「はぁ~疲れた。慌ただしかったけど、高校の校風など知れて楽しかったわね。」

百合「そうだね、みさちゃん、桃ちゃん、帰ろう」

美咲「あの2人共、私……龍二先輩のところへ行かなくちゃいけないの」

百合「もしかして、さっき告白できてない? まぁ、時間足りなかったよね」

美咲「うん……、約束して校門のところで待っててくれてるから」

桃「やるじゃない!! ご無沙汰しておりますの挨拶で終わってたかと思ったわ。行ってきなさい、美咲。じゃ、百合、2人で帰りましょうか」

美咲「うん……って待っててくれないの!?」

百合「先輩と帰ってくればいいんじゃないかな? そのためにも、告白、ファイト!!」

桃「そうよ、お邪魔虫はさっさと帰るわ。冷やかすような野暮なこともしないわ。帰り道から2人の思い出また1つ増やしなさい」

美咲「……もう!ありがとう!! 私、行ってくるね!!」

2人に背中を押された美咲は臆病を置いていくほど速く、愛する龍二先輩のところへ駆け出した。

月光高校校門前では、龍二が帰り支度を済ませ、先に待っていた。

龍二は、先程の顔を赤くして待っててくれた後輩の顔を思い出し、

自分の顔もつられて赤くしているのではと照れくさくなっていた。

美咲「龍二先ぱ~~~~い!!」

龍二「美咲さん!」

美咲「すみません、待たせてしまいまして……」

龍二「大丈夫、僕も今来たところです。それに、急いできてくれたことは見てわかりますから」

美咲「えへへ、早く会いたくて。それで、あっあの、先輩……」

龍二「美咲さん、僕も言いたいことがあります。だけど、これから紹介したい場所がありますので、お互い、そこで言いたいこと話しませんか?」

美咲「……はい」

なんだか、焦らされた気分だ。また、好きの言葉が表に出せなかった。

この気持ち、早く言いたい。好きの気持ちが心臓をせかして動かさせているみたいだ。

次の展開を知りたいとノックしている。

優唯「どこに行くのかな?」

凛「とにかく、ついていきましょ。優唯、準備しときなさいよ」

読者の皆さんはお忘れだったかもしれませんが、天使達はちゃんと美咲達についていっていた。

決して、作者が天使達のセリフを書き忘れていたわけではない。

美咲「先輩、これから行くところはどんなところですか?」

龍二「そうだね……もしかしたら、その場所の噂を聞いたことあるかもしれませんよ」

美咲「噂……このへんで噂になってる場所なんてありましたっけ……?」

龍二「まぁ、行けばわかるよ」

美咲「楽しみですね」

2人はしばらく歩いたが、会話をしようにも互いに口を噤んでしまっていた。

しかし、2人の心拍数は同じ瞬間・早さで刻んでいた。

手など接触していれば同じ状況であることを感じられたかもしれない。

また、歩幅もいつのまにか合わさっていた。

同じことをしようと心の準備を整えている。

龍二「さぁ、着きましたよ」

美咲「橋?」

そう、2人は小さな橋であるが、噂がある有名な場所である。

そして、その小ささは2人の距離を縮めるにちょうどよい規模である。

龍二が橋からの景色が綺麗だよと指を指し、2人で眺める。

川が夕日を反射し、オレンジ色に染まっている。

川のまわりは草が豊かに生い茂っている。

景色に見惚れている間、川のせせらぎが心臓の動きを緩めてくれていた。

自然と溶け込んでいるみたいと錯覚している中、龍二の声がかけられ現実に引き戻される。

龍二「美咲さん。いかがですか」

美咲「えっはい、とても綺麗ですね。最近、自然をちゃんと見てる時間ってなかったから」

龍二「ええ、そうですよね。僕も高校生になって帰りにここを通るようになってから自然に目をやるようになりましたよ。最近、自分のやりたいことに夢中でそれ以外に関心を向けていなかったなって。ところで、この橋の噂、御存じないですか?」

美咲「ええ、知らなかったです……もしかしたら月光高校内だけで有名な話かもしれません」

龍二「はは、そうかもしれませんね。僕も部活の仲間から聞いた噂ですから」

美咲「ほら~やっぱり。そうだ、龍二先輩、高校でも陸上続けられてたんですね」

龍二「はい、走ることが好きですから。中学から始めた陸上ですが、高校でも新たな仲間とまた今までに取り組んだことのなかった練習メニュー、筋トレ方法などたくさん知ることができて入って良かったなと思えます。でも、かつての仲間ともうできないんだなと思ったら寂しい気持ちも残っているんです」

美咲「先輩も寂しいって思ってくれてたんですね。私も先輩が卒業してから寂しいです。先輩から引き継いだ部長やってますけど、私が務まっているのかいまだに疑問です」

龍二「僕1人だけで決めたのではありませんよ。あなたは部員みんなから信頼され、あなたの指導で陸上を極めたいと思った部員達みんなからの賛同で部長になったのですから。もっと自分に自信をもってください。もうすぐ、最後の大会を控えているのでしょう?」

美咲「はい、そうですよね! みんなから選んでもらったことに誇りを持たないと! 記録も日々新記録ですよ!! 褒めてください!」

   
龍二「素晴らしいですね。最後ですから悔いのないよう実力発揮してきてください。そういえば、さっき、美咲さん僕に何か言いかけてた続き、聞かせてくれませんか?」

龍二は顔を美咲に向けて、問いかけた。

美咲も龍二に顔を向け、2人は対面した状態となる。

美咲「はぇっ!? はっはい…」(うぅ……またドキドキしてきた……ファッ、ファイトよ美咲!! ゆりりんと桃が背中を押してくれてやっぱダメでした。ヘタレました。なんて報告できないわ! 可能性はあるんだもの! 実る可能性自分で枯らしちゃうのはもったいないわ!!)

美咲「あっ……あれ!?」

そう、美咲は確かに龍二と一緒に橋の上に立っていたはずだった。

だが、下を向いて目を瞑り、自分を励ましている間に別のところに来てしまったみたいだ。

美咲「ここ、どこ? どこを見ても、白色の世界……」

見渡す限り、白色が続き、白以外何もない。

けど、床はあるようだ。足はしっかりと土を踏みしめているような感触がある。

ふと、目の前に何か落ちてくる。

美咲「天使の……羽根?」

美咲は羽根を触れてみようと手を伸ばす。

だけど、それは龍二の手だった。

美咲&龍二「あ……」

美咲「ごっごめんなさい!」

龍二「いっいえいえ!」

美咲(いつの間に戻ってきたんだろう……まぁ、いいや。大胆に手掴んじゃったくらいだもの、告白だってこの勢いで……!)

深呼吸をして、先輩を見つめる。

美咲「龍二先輩! 私は……私は……あなたのことが好きです!!」

龍二「……」

美咲「あっこんなこといきなり言われても迷惑ですよね? ごめんなさい! ただ、気持ちを伝えたかった……」

龍二「あははっ、何だ……」

龍二は美咲の言葉を遮り笑い出した。

美咲「??」

なぜ、笑われているのかわからない美咲。

笑い涙を指で拭いながら龍二は続けた。

龍二「まさか、言おうとしていたことが同じなんて……」

美咲「それって……」

龍二「そうです。僕も美咲さんのことが……好きです!!」

美咲「……や……やった……」

美咲の目から嬉し涙が溢れる。

美咲「嬉しい、私達両想い……だったのですね…」

龍二「美咲さん……泣かないで……」

龍二は美咲を抱きしめる。

そして、指で涙を拭ってあげながら

龍二「僕は美咲さんに笑っていてほしいです……。部活の時に、僕を応援してくれた笑顔。自分の記録が停滞期の時も決して絶やさない笑顔。どんな時も天真爛漫なあなたの笑顔に惚れてしまったから……」

美咲「はっはぅぅぅぅぅ……」

美咲の顔は真っ赤であり、心臓が共に歩いてた時より高らかに鳴っている。

でも、それは龍二も同じであった。同じ体の状態を、気持ちを共有している。

龍二「美咲さん、もしかしたら僕は時々あなたのことを傷つけてしまうかもしれません。本当に僕なんかで良いのですか?」

美咲「絶対に傷つけあわない関係なんて誰もできませんよ。その時はとことんぶつかり合いましょうよ。陸上だって、怪我を恐れてたら記録つくれませんよ? お互いのこと知るという準備運動の期間を経て、私達、恋人という記録手に入るかもしれませんよ。目の前にあるのに誰かに譲るなんて絶対しません。それに、私の心はもう許可なんか取らなくたって、先輩に盗まれています!! 四六時中、取り返そうにも逃走されてしまいます。責任取ってくださいね! 私は先輩だから、盗むのを許したんですから」

龍二「……喜んで。ならばこれからも盗み続けます」

美咲「そういう先輩こそ、私なんかで良いのですか?」

龍二「僕だって、美咲さんと離れても心は常に美咲の近くにいたいと願ってましたよ。高校の練習で挫けそうになったとき、真っ先に励まして欲しい人、それは美咲さんでしたから。僕には美咲さんしかいない、あなたでなければダメだと思っておりました」

美咲はますます顔を赤くして、龍二の胸にうずくまる。

美咲「先輩……殺し文句の威力すごすぎです……」

龍二「えっ!?」

美咲「もう、先輩にメロメロですよ」

龍二の美咲を抱きしめる力が少し強くなる。

龍二「み、美咲さん唐突だけどいいですか?」

美咲「な、何でしょう?」

龍二「その……キス……しても良いですか?」

美咲「ふぇ!? ええと、その、あの、私もしたい……ですけど……。ま、まだ、心の準備が…!」

龍二「ははっそうですよね。僕も心の準備がなかなか整いません。やはり、経験していないことに挑むのは緊張します」

美咲は龍二の胸にうずくまりながら、先輩の顔がどうなっているのか知りたくなった。

緊張してると言いつつ、いつもの冷静沈着で爽やかに微笑んでいるのではないか。

そんな先輩を驚かせてやりたい。他の人が知らなそうな表情を知りたい。

美咲「せっ先輩、目を瞑ってください!」

龍二「……? はっ、はい」

龍二は目を瞑る。

美咲「本当に目を瞑りました?」

龍二「はい、瞑ってますよ」

美咲「絶対に目を開けないでくださいね」

美咲は一瞬で顔をあげ、そして龍二の首に腕をのばし顔を近づけた。

チュッ


龍二「……!?」

頬に柔らかで温かな感触が当たった龍二は驚き目を見開く。

そして、唇の温度が残っている頬に手を当て、その余韻に浸る。

無邪気な後輩が歯を見せて、照れくさそうに笑いごまかす。

龍二「美咲さん……」

美咲「えへへ、口は今度にしましょう。龍二先輩。あと、私に敬語を使わないで『美咲』って呼び捨てで呼んでください!」

龍二「あはは、これは一本やられたよ。わかったよ。み、美咲」

美咲「やった。呼んでもらえた! これからもよろしくお願いします!」

龍二「こちらこそ、よろしく」

天使達は新たな関係を築いた2人を見て、仕事を達成できたことに喜ぶ。

優唯「大成功だね! 凛ちゃん!!」

凛「初めてにしては良かったわ! 優唯!」

またたび「初々しくて羨ましいな」

マナー「キタキタキタキタキタ━━━━(゚∀゚)━━━━!! 恋愛フラグ立ったな~~~~~~~~~~~! いいね~この純粋恋愛、ギャルゲーみたいに甘々フ・ラ・グ!グヘヘヘヘッ2828《ニヤニヤ》が止まらね~」

またたび「うわぁ……モナーがおかしくなった……まぁ……もとからおかしいこと言っているか……」

マナー「オレっちが言っているのはオタ用語だぜ! またりん! おかしくない! そういうのは偏見って言うのだ・ぜ☆」

またたび「ご、ごめん……」

こうして、美咲と龍二は天使たちの龍二の手を天使の羽根に見せる幻をきっかけに恋人同士となった。

ちなみに、龍二が紹介した場所は豊作をを約束する橋である。

昔、この地域では自然災害や天候が悪く凶作に苛まれていた。

そのため、米や野菜などができず、人々は餓死してしまう人々が増えていった。

だが、ある時、橋職人の「撓 実(たわ みのる)」が夢で神からのお告げを聞いた。

『川に橋をつくるがよい。その周辺は穂がたくさん実るだろう』

そのお告げを信じた実はさっそく橋づくりに取り掛かった。

橋が出来上がってしばらくすると自然災害は収まり、天候に恵まれ穂がたくさん実った。

そして、この橋は製作者の撓を取り、子孫達にも豊作の実りが恵まれるようにと祈って

「撓橋(たわわばし)」と名づけられることになった。

過去の風流は廃れ忘れられるというが、橋は新たな伝説も生み出している。

それはこの橋の上で告白したら恋が実るというものだ。

若者の間では、デートスポットとなっている。

しかし、今に始まったことではなかったのだ。

橋ができてから川境で交流できなかった村達を繋ぎ、互いの文化が混ざり合う。

そして、発展し村が繁栄する。もちろん住む人々の心も豊にしたのだ。

知らないものを持っているものに惹かれ合う。村も心も境界線をなくしたのだ。

実はこの地域が豊作になったのも、恋が実るようになったのも

天使が悪戯をし、いつも見守っている証を残しているのはここだけの話。

まぁ、今は悪戯ではなく、精神修行のためですが。

時々、無邪気な天使がうっかり落としているかもしれません。

天使の羽根を見かけたら、好きな人に触れられる機会が訪れたのかもしれませんね。
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