血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
1,210 / 1,268
第46話

(11)

しおりを挟む
「――入れるぞ」
 背後から鷹津が掠れた声をかけてくる。体はよく覚えていて、和彦は、鷹津にとって具合がいいように、より大きく足を開き、腰を突き出した姿勢を取っていた。内奥の入り口に、ぐっと押し当てられたものは燃えそうに熱い。
 自分が少し緊張していること気づいた和彦は、ゆっくりと息を吐き出す。その間に、鷹津は侵入を開始した。
「ふっ……、うっ、ううっ、んっ」
 鷹津の形だと、まっさきに露骨な感想が頭に浮かんだ。
 数か月ぶりの和彦の肉の感触を確かめるように、鷹津はゆっくりと腰を進める。内奥を押し広げられながら、襞と粘膜を強く擦り上げられ、和彦は喉を鳴らす。馴染みのある重苦しい感覚が訪れるが、痛みはない。腰を抱え込まれてただひたすら緩やかに突きあげられながら、繋がりを深くしていく。内奥深くまで鷹津を受けれるのに、さほど時間は必要なかった。どちらも、狂おしいほどの情欲に駆り立てられていたからだ。
 興奮し、淫らな蠢動を始めた部分を、ぐうっと突き上げられた。内から焼かれそうなほど、受け入れたものは熱い。
「気持ちいいか?」
 返事の代わりに、きつく欲望を締め付ける。鷹津が小さく声を洩らした。
 てのひらで背を押さえつけられて、乱暴に内奥を突かれる。たまらず呻き声を洩らしたが、もう一度突かれたときは自分でもわかるほど、潤んだ嬌声となっていた。背を撫で上げられ、後ろ髪を手荒くまさぐられる。そんな感触すら心地いい。
 そこから数度腰を突き上げられ、和彦の欲望は呆気なく絶頂の証を噴き上げた。間欠的に声を洩らし、腰を震わせて快感の余韻に浸る。一方の鷹津も、軽く腰を揺すったあと、いまだ激しい収縮を繰り返す内奥深くに精を放った。
「ひあっ……」
 この瞬間、和彦の意識は舞い上がり、閉じた瞼の裏で鮮やかな光が飛び交う。体の隅々にまで快美さが行き渡っていた。鷹津が大きく息を吐き出してから、慰撫するように再び背を撫でてくる。
 和彦は、内奥でまだ力強く脈打つ鷹津のものを感じながら、明け透けだが、もっと欲しいと率直に感じた。
 和彦の呼吸が落ち着くのを待ってから、鷹津のものがズルリと内奥から引き抜かれる。すぐに、注ぎ込まれたばかりの精が溢れ出し、うろたえた和彦が身じろぐと、卑猥な音を立ててさらに溢れる。鷹津が腕を伸ばしてティッシュを取る姿を、うつ伏せの姿勢のまま和彦は眺める。
「寒いなら、電気毛布を入れるか?」
 和彦の下肢の後始末をしながら、何事もなかったように鷹津が尋ねてくる。まだ余韻に浸っている身としては、この甲斐甲斐しさは少し腹立たしい。平気だと答えようとして、体の向きを変えかけたところで、鷹津と目が合った。つい笑ってしまったのは、鷹津の両目に宿る強い欲望を見たからだ。
「――……暑いんだ。すごく」
 すぐに笑みを消して和彦が答えると、鷹津は忌々しげに舌打ちした。
「お前は本当に性質が悪い。……俺の煽り方をよく知ってる」
 仰向けとなり、覆い被さってきた鷹津としっかりと抱き合う。汗で濡れた熱い肌をてのひらでまさぐりながら、貪るような口づけを交わし、眩暈がするほど間近にある目を覗き込む。
 濡れて蕩けている内奥に鷹津の欲望が捩じ込まれて、和彦は唸り声を洩らす。ただそれは、鷹津の唇にすべて吸い取られた。
 鷹津の背に爪を立てると、痛みに奮い立ったように猛る欲望が内奥で震える。
「はあっ、あっ、い、い……。気持ちいぃ――、秀」
 和彦が呼びかけるたびに、鷹津が腰を打ち付けてくる。その腰に両足を絡めながら、和彦は自らのものを握ると、律動のたびに擦り上げる。そうすると、より内奥の締まりがよくなると知っている。
 和彦の媚態に、鷹津は口元に笑みを浮かべる。
「それでこそ、お前だな。見た目からは想像もできないほど快感に貪欲で、何人も男を咥え込む」
 責められるのかと和彦は身構えかけたが、湿った髪を鷹津に手荒く掻き上げられ、こめかみや額に唇が押し当てられる。愛しげに。
「そんなお前が、ここでは俺だけのものだ。これでも、はしゃいでいるんだぜ。四十を過ぎた男が、浮かれたガキみたいに」
 和彦は鷹津の髭面に頬ずりして、囁きかける。
「だったらあんたも、ここではぼくだけのものだな」
 舌打ちをした鷹津が首筋に顔を埋め、唇を這わせてくる。緩やかな律動に身を任せながら和彦は、全身で鷹津の重みと体温を受け止め、恍惚としながらゆっくりと目を閉じた。


 ようやく触れ合えるようになったという現実を確認するように、二人の交歓は長く続いた。ベッドで身を寄せ、肌を擦りつけ合い、欲情が高まれば繋がる。精が尽きてしまえば、相手の体を愛撫しながら、精神的な高揚感に酔う。そんなことを繰り返していた。
 ときおり鷹津はベッドを抜け出し、薪ストーブの様子を見たり、飲み物を取ってきてくれたが、和彦はひたすらベッドの中にいた。
 時間の感覚が怪しくなっていたが、何げなく窓のほうを見て、息を洩らす。断熱シートが貼られた窓は、外の景色がぼんやりとしか見えないのだが、それでも日が暮れて暗くなっていく様子ぐらいはわかる。
 何時間、鷹津とベッドで過ごしていたのだろうかと、少しだけ自分に呆れた。
 寝室に戻ってきた鷹津が、ベッドの端に腰掛けて問うてくる。
「なあ、腹減らないか?」
「……減った。シチューの残り、全部食べたんだよなー」
「献立を考えるのも、今から下準備するのも面倒だから、今晩はパスタでいいな。パウチのソースがあるし――」
 和彦は、鷹津の声を聞きながら目を閉じかけていたが、肩を揺すられてハッとする。
「今のうちにシャワーを浴びてこい。夜になって、湯を使いたくても出なくなるかもしれないぞ」
 鷹津の言うことはもっともで、仕方なく起き上がる。着替えを抱えた和彦が寝室を出ようとするときには、鷹津はすでにシーツを換え始めていた。汚れたシーツは自分が持って行くとはなんとなく言い出せず、素知らぬ顔でシャワーを浴び向かう。
 いつもと違ってシャワー室の寒さが気にならないのは、体に留まっている熱のせいだ。和彦の自身のものと、鷹津が体内に残したもの――。
 ゾクゾクして身を震わせ、慌てて全身を洗ってシャワー室を出る。すでに洗濯機は回っており、何を洗っているかは容易に想像がついた。
 入れ違いに鷹津がシャワーを浴びに行っている間に、和彦が大きめの鍋で湯を沸かしてパスタを茹で、別の鍋ではソースのパウチを温める。これぐらいなら、さすがの和彦でも失敗しようがない。
 体力を消耗し尽くしたため空腹が限界で、二人それぞれの皿には大盛りのパスタを盛り付ける。野菜が足りないのが気になったので、瓶詰のピクルスを小皿に取り分けておく。ついでにカップスープに湯を注いでおいた。
 シャワーを浴びてきた鷹津が席につくのを待ってから、夕食となる。
しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...