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第43話
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「しっかり撫でろ」
傲慢に命じた南郷に再び唇を塞がれる。嫌悪感から呻き声を洩らした和彦だが、それだけでは逃れることはできない。苦しさから息を喘がせたときには、口腔に南郷の舌が入り込んでいた。
感じやすい粘膜を舐め回されながら、唾液を流し込まれる。和彦が小さく喉を鳴らすと、柔らかな膨らみをまさぐる南郷の指の動きが変わった。脅すためではなく、和彦の官能を刺激するために、巧みに弱みを攻め始めたのだ。堪らず爪先を突っ張らせる。
「うっ、うっ……、そこ、やめ――……」
「なら、ここか、先生?」
次に南郷が興味を示したのは、昨夜守光に犯された欲望の先端だった。指の腹で強く擦られたあと、じわりと爪を立てられる。和彦は短く悲鳴を上げ、反射的に百足を引っ掻いていた。次の瞬間、南郷が激高するのではないかと、和彦は心底震え上がる。
相手は、自分に情を注いでくれる男たちとは違うのだ。
和彦の反応に、南郷は目を眇める。
「俺の言葉は信用できないか? 何度でも言うが、あんたに手を上げたり、声を荒らげることは絶対にしない。――約束する」
「だったら、やめてください。放して、ください……」
「それはできない。俺の誠意を受け取る代わりに、あんたにはオンナとしての役割を果たしてもらわないとな」
和彦は返事の代わりに、今度はしっかりと百足に爪を立てる。それこそ食い込むほど。痛痒も感じていない様子で南郷は続けた。
「俺の誠意なんていらない、というのはなしだ。あんたももう、この世界の男たちのやり口はわかってるだろ。俺たちは恩着せがましくて、悪辣だ。目的のためなら、善悪なんて糞くらえという人種なんだ。それでもあんた相手には、ずいぶん優しくしている」
この瞬間、南郷に対して抱いた強烈な畏怖や嫌悪感には、覚えがあった。かつて、和彦の堅気としての生活を奪った賢吾に対して、抱いたものと同じだ。横暴で傲慢で理不尽で、しかし和彦には抗う力もなく――。
かつての賢吾のやり方を踏襲しているようではないかと、和彦は瞬きも忘れて南郷の顔を凝視する。
唇を啄みながら南郷が言った。
「かまわないから、俺の百足にもっと爪を立ててくれ。あんたの爪は痛くない」
和彦はその言葉に促されるように、ギリギリと百足に爪を立てる。悠然としてふてぶてしい南郷の顔に、わずかでも苦痛の表情を浮かべさせたかった。
南郷の腹筋が硬く締まる。何も感じないはずがないのだ。しかし南郷は――笑っていた。
触れている百足がふいに蠢いた気がして、和彦は爪を立てるのをやめる。掴まれたままの手が導かれたのは、南郷の欲望だった。さきほど目にしたときよりさらに猛っており、興奮しているとわかる。
「――わかるか、先生?」
和彦は力を振り絞り、這ってでも湯から出ようとしたが、南郷にとっては緩慢な動作でしかなかったのだろう。やすやすと肩を掴まれた挙げ句に、強引に体の向きを変えられる。抗おうとして湯舟の縁に手をかけたが滑ってしまい、そのまま前のめりとなる。背後に南郷に回り込まれ、完全に抵抗を封じられていた。
腰を突き出した姿勢を取らされてから、硬いてのひらが背に這わされる。和彦は震えを帯びた息を吐き出したが、それだけだ。南郷の手は背から腰、そして尻へと移動していく。
「うっ……」
いきなり尻の肉を鷲掴まれて、ビクリと腰が揺れる。
「じっとしてろよ、先生」
背に重みがかかり、思いがけず間近から南郷が話しかけてくる。次に水音が。総毛立ったのは、南郷の唇に耳朶を啄まれているとわかったからだ。同時に、昨夜さんざん犯された内奥の入り口を、太い指にまさぐられる。
「まだ柔らかいな……。これなら――」
わずかな異物感を内奥に感じ、和彦は目を見開いた。南郷が無遠慮に指を挿入し、肉を捏ねるように蠢かす。まだ熱と疼痛を帯びているその場所は、驚くほどすんなりと南郷の指を呑み込み、緩く締め付ける。
「あっ、あっ……」
「熱いな。あんたの中。もうすっかり、その気になってるのか?」
執拗に内奥の浅い部分を、指の腹で擦られ、押し上げられる。和彦はビクビクと腰を震わせ、懸命に前に逃れようと手を伸ばすが、床の硬いタイルは滑り、爪を立てることもできない。
内奥から指が引き抜かれ、今度は、熱く重量のあるものが押し当てられる。
「うあっ」
衝撃が生まれ、和彦は大きな声を発する。昨夜味わったばかりの感覚だった。
圧倒的な存在が肉を押し広げながら、強引に挿入されてくる。重苦しい鈍痛が下肢に生まれ、じわじわと範囲を広げていく。南郷の欲望は容赦なく侵入を続け、和彦は何度も呻き声を洩らしていた。
傲慢に命じた南郷に再び唇を塞がれる。嫌悪感から呻き声を洩らした和彦だが、それだけでは逃れることはできない。苦しさから息を喘がせたときには、口腔に南郷の舌が入り込んでいた。
感じやすい粘膜を舐め回されながら、唾液を流し込まれる。和彦が小さく喉を鳴らすと、柔らかな膨らみをまさぐる南郷の指の動きが変わった。脅すためではなく、和彦の官能を刺激するために、巧みに弱みを攻め始めたのだ。堪らず爪先を突っ張らせる。
「うっ、うっ……、そこ、やめ――……」
「なら、ここか、先生?」
次に南郷が興味を示したのは、昨夜守光に犯された欲望の先端だった。指の腹で強く擦られたあと、じわりと爪を立てられる。和彦は短く悲鳴を上げ、反射的に百足を引っ掻いていた。次の瞬間、南郷が激高するのではないかと、和彦は心底震え上がる。
相手は、自分に情を注いでくれる男たちとは違うのだ。
和彦の反応に、南郷は目を眇める。
「俺の言葉は信用できないか? 何度でも言うが、あんたに手を上げたり、声を荒らげることは絶対にしない。――約束する」
「だったら、やめてください。放して、ください……」
「それはできない。俺の誠意を受け取る代わりに、あんたにはオンナとしての役割を果たしてもらわないとな」
和彦は返事の代わりに、今度はしっかりと百足に爪を立てる。それこそ食い込むほど。痛痒も感じていない様子で南郷は続けた。
「俺の誠意なんていらない、というのはなしだ。あんたももう、この世界の男たちのやり口はわかってるだろ。俺たちは恩着せがましくて、悪辣だ。目的のためなら、善悪なんて糞くらえという人種なんだ。それでもあんた相手には、ずいぶん優しくしている」
この瞬間、南郷に対して抱いた強烈な畏怖や嫌悪感には、覚えがあった。かつて、和彦の堅気としての生活を奪った賢吾に対して、抱いたものと同じだ。横暴で傲慢で理不尽で、しかし和彦には抗う力もなく――。
かつての賢吾のやり方を踏襲しているようではないかと、和彦は瞬きも忘れて南郷の顔を凝視する。
唇を啄みながら南郷が言った。
「かまわないから、俺の百足にもっと爪を立ててくれ。あんたの爪は痛くない」
和彦はその言葉に促されるように、ギリギリと百足に爪を立てる。悠然としてふてぶてしい南郷の顔に、わずかでも苦痛の表情を浮かべさせたかった。
南郷の腹筋が硬く締まる。何も感じないはずがないのだ。しかし南郷は――笑っていた。
触れている百足がふいに蠢いた気がして、和彦は爪を立てるのをやめる。掴まれたままの手が導かれたのは、南郷の欲望だった。さきほど目にしたときよりさらに猛っており、興奮しているとわかる。
「――わかるか、先生?」
和彦は力を振り絞り、這ってでも湯から出ようとしたが、南郷にとっては緩慢な動作でしかなかったのだろう。やすやすと肩を掴まれた挙げ句に、強引に体の向きを変えられる。抗おうとして湯舟の縁に手をかけたが滑ってしまい、そのまま前のめりとなる。背後に南郷に回り込まれ、完全に抵抗を封じられていた。
腰を突き出した姿勢を取らされてから、硬いてのひらが背に這わされる。和彦は震えを帯びた息を吐き出したが、それだけだ。南郷の手は背から腰、そして尻へと移動していく。
「うっ……」
いきなり尻の肉を鷲掴まれて、ビクリと腰が揺れる。
「じっとしてろよ、先生」
背に重みがかかり、思いがけず間近から南郷が話しかけてくる。次に水音が。総毛立ったのは、南郷の唇に耳朶を啄まれているとわかったからだ。同時に、昨夜さんざん犯された内奥の入り口を、太い指にまさぐられる。
「まだ柔らかいな……。これなら――」
わずかな異物感を内奥に感じ、和彦は目を見開いた。南郷が無遠慮に指を挿入し、肉を捏ねるように蠢かす。まだ熱と疼痛を帯びているその場所は、驚くほどすんなりと南郷の指を呑み込み、緩く締め付ける。
「あっ、あっ……」
「熱いな。あんたの中。もうすっかり、その気になってるのか?」
執拗に内奥の浅い部分を、指の腹で擦られ、押し上げられる。和彦はビクビクと腰を震わせ、懸命に前に逃れようと手を伸ばすが、床の硬いタイルは滑り、爪を立てることもできない。
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「うあっ」
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