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第43話
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胸元に息遣いを感じ、ザワッと肌が粟立つ。濡れた感触が執拗に胸の突起をまさぐり、転がすように刺激してくる。次の瞬間には硬いものが触れた。見えなくても、歯を立てられたのだとわかった。和彦が息を詰めると、反応をおもしろがるように、舌先でくすぐられ、きつく吸われる。そしてまた、歯を立てられる。
和彦が短くくぐもった声を上げると、思い出したように内奥を突かれ、熱い塊がぐうっと押し入ってきた。狭い場所を容赦なく押し広げられ、本来であれば激痛に悲鳴を上げても不思議ではないが、体は意外な順応性を見せる。守光との行為のあとだからだろうかと、ふと頭の片隅で考えた和彦だが、すぐにゾッとする感覚を味わう。
今晩、和彦の体を最初に開いたのは、わざわざ守光がこしらえ直させたという、特別な〈おもちゃ〉だ。その形に、和彦の体は慣らされている。
知らないはずなのに、知っている形。受け入れつつある男の欲望を、そう表現せざるを得なかった。
「うあっ」
和彦の反応が鈍くなったと感じたのか、腰を揺すられ攻められる。すぐに嗚咽をこぼして、相手の肩を押し退けようとしていた。だが、忌々しいほど大きく頑丈な体は、びくともしない。
「嫌、だ……。もう、やめ――……」
咄嗟に洩れた哀願が、相手を刺激したようだった。下肢に手が這わされ、力をなくしている欲望を掴まれる。大きくて硬い手の感触に、和彦は心の底から震え上がる。このまま握り潰されそうな無慈悲さを感じたからだ。見えないからこそ、恐怖は倍増する。
息を詰まらせて体を捩ろうとするが、すでに体の中には太い肉の杭を打ち込まれている。傍らには守光がいる。和彦に逃げ場などないのだが、それでもじっとはしていられない。
「――なかなか往生際が悪い」
わずかな苦さを含んだ声で言ったのは守光だった。この瞬間、和彦の中で首をもたげたのは、猛烈な怒りだった。それが伝わったのか、欲望を掴む指にわずかに力が込められる。爪の先で先端を弄られて、弱々しい声が洩れていた。
「あんたは受け入れるしかない。この男――南郷を」
はっきりと名を出されても、当然驚きはなかった。ただ、今自分にのしかかっている重みが一気に現実味を帯び、瞼の裏で、南郷という男の姿が浮かび上がる。
その南郷の脇腹を這う、おぞましい生き物の刺青も。
身じろぐ和彦を追い詰めるように、〈南郷〉は腰を突き上げてくる。動きに合わせて、掴まれた欲望も扱かれていた。和彦は間欠的に声を上げ、下肢から押し寄せてくる重苦しい感覚を耐える。
「これは、わしのオンナである、あんたが背負った責務だ。あんたには、総和会の中での長嶺の血を守ってもらわねばならん。そのために、この状況がある」
意味がわからないと、和彦は弱々しく首を横に振る。ふふっ、と守光は短く笑った。
「今はただ、南郷の肉を味わうといい。これは儀式だ。南郷が、あんたの特別な男の一人になるための」
内奥深くを抉るように突かれ、全身を戦慄かせる。鈍痛も確かにあったが、それだけではない感覚が和彦の中を駆け抜けていた。欲望を扱く南郷の手の動きが速くなり、無反応ではいられなかった。和彦は懸命に手を押し退けようとして、反対に手首を掴まれる。
引き寄せられた手が触れたのは、鎧のように硬い腹筋だった。てのひら全体で触れるように手を押し付けられ、わずかに右へとずらされる。南郷の行動の意味を、即座に和彦は理解した。
「うっ、あぁ……」
南郷の〈そこ〉にあるものが、暗闇の中でおぞましく這い回っているようだった。それほど鮮明に、和彦の記憶に刻み付けられている。艶々とした黒い体と、毒々しい赤色の頭と無数の足を持つ巨大な百足の姿は、どう追い払おうとしても消えてはくれなかったのだ。
和彦は嫌がるが、撫でることを強要される。
刺青を撫でる行為は、和彦にとっては特別なものだ。惜しみない情を注いでくれる男たちに対して、自らの狂おしい情を知らしめる行為で、それは求め合ったうえで行われる。だが今は――。
和彦の気持ちを踏みにじるように、内奥を深々と貫いている欲望が力強く脈打ち始める。間違いなく、南郷は猛っていた。
「……俺はもう知ってる。あんたは、刺青に触れることで高ぶる性質だってな。見なくとも、そこにあると思っただけで、興奮する」
ようやく発せられた声が南郷のものだと認識できるまで、和彦には数秒の間が必要だった。いつになく南郷の声は掠れていた。
「違っ……」
「違わない。現に、もう感じ始めてるだろ。――先生」
思わせぶりな手つきで、掴まれた欲望の先端を撫でられる。内奥で南郷のものが動かされ、ぐちゅりと卑猥な音を立てた。
「もう、やめて、くださいっ」
和彦が短くくぐもった声を上げると、思い出したように内奥を突かれ、熱い塊がぐうっと押し入ってきた。狭い場所を容赦なく押し広げられ、本来であれば激痛に悲鳴を上げても不思議ではないが、体は意外な順応性を見せる。守光との行為のあとだからだろうかと、ふと頭の片隅で考えた和彦だが、すぐにゾッとする感覚を味わう。
今晩、和彦の体を最初に開いたのは、わざわざ守光がこしらえ直させたという、特別な〈おもちゃ〉だ。その形に、和彦の体は慣らされている。
知らないはずなのに、知っている形。受け入れつつある男の欲望を、そう表現せざるを得なかった。
「うあっ」
和彦の反応が鈍くなったと感じたのか、腰を揺すられ攻められる。すぐに嗚咽をこぼして、相手の肩を押し退けようとしていた。だが、忌々しいほど大きく頑丈な体は、びくともしない。
「嫌、だ……。もう、やめ――……」
咄嗟に洩れた哀願が、相手を刺激したようだった。下肢に手が這わされ、力をなくしている欲望を掴まれる。大きくて硬い手の感触に、和彦は心の底から震え上がる。このまま握り潰されそうな無慈悲さを感じたからだ。見えないからこそ、恐怖は倍増する。
息を詰まらせて体を捩ろうとするが、すでに体の中には太い肉の杭を打ち込まれている。傍らには守光がいる。和彦に逃げ場などないのだが、それでもじっとはしていられない。
「――なかなか往生際が悪い」
わずかな苦さを含んだ声で言ったのは守光だった。この瞬間、和彦の中で首をもたげたのは、猛烈な怒りだった。それが伝わったのか、欲望を掴む指にわずかに力が込められる。爪の先で先端を弄られて、弱々しい声が洩れていた。
「あんたは受け入れるしかない。この男――南郷を」
はっきりと名を出されても、当然驚きはなかった。ただ、今自分にのしかかっている重みが一気に現実味を帯び、瞼の裏で、南郷という男の姿が浮かび上がる。
その南郷の脇腹を這う、おぞましい生き物の刺青も。
身じろぐ和彦を追い詰めるように、〈南郷〉は腰を突き上げてくる。動きに合わせて、掴まれた欲望も扱かれていた。和彦は間欠的に声を上げ、下肢から押し寄せてくる重苦しい感覚を耐える。
「これは、わしのオンナである、あんたが背負った責務だ。あんたには、総和会の中での長嶺の血を守ってもらわねばならん。そのために、この状況がある」
意味がわからないと、和彦は弱々しく首を横に振る。ふふっ、と守光は短く笑った。
「今はただ、南郷の肉を味わうといい。これは儀式だ。南郷が、あんたの特別な男の一人になるための」
内奥深くを抉るように突かれ、全身を戦慄かせる。鈍痛も確かにあったが、それだけではない感覚が和彦の中を駆け抜けていた。欲望を扱く南郷の手の動きが速くなり、無反応ではいられなかった。和彦は懸命に手を押し退けようとして、反対に手首を掴まれる。
引き寄せられた手が触れたのは、鎧のように硬い腹筋だった。てのひら全体で触れるように手を押し付けられ、わずかに右へとずらされる。南郷の行動の意味を、即座に和彦は理解した。
「うっ、あぁ……」
南郷の〈そこ〉にあるものが、暗闇の中でおぞましく這い回っているようだった。それほど鮮明に、和彦の記憶に刻み付けられている。艶々とした黒い体と、毒々しい赤色の頭と無数の足を持つ巨大な百足の姿は、どう追い払おうとしても消えてはくれなかったのだ。
和彦は嫌がるが、撫でることを強要される。
刺青を撫でる行為は、和彦にとっては特別なものだ。惜しみない情を注いでくれる男たちに対して、自らの狂おしい情を知らしめる行為で、それは求め合ったうえで行われる。だが今は――。
和彦の気持ちを踏みにじるように、内奥を深々と貫いている欲望が力強く脈打ち始める。間違いなく、南郷は猛っていた。
「……俺はもう知ってる。あんたは、刺青に触れることで高ぶる性質だってな。見なくとも、そこにあると思っただけで、興奮する」
ようやく発せられた声が南郷のものだと認識できるまで、和彦には数秒の間が必要だった。いつになく南郷の声は掠れていた。
「違っ……」
「違わない。現に、もう感じ始めてるだろ。――先生」
思わせぶりな手つきで、掴まれた欲望の先端を撫でられる。内奥で南郷のものが動かされ、ぐちゅりと卑猥な音を立てた。
「もう、やめて、くださいっ」
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