血と束縛と

北川とも

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第43話

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 賢吾によく似た太く艶のある声に囁かれ、和彦は返事ができなかった。それは、肯定したも同然だった。和彦自身に自覚はなかったが、そうなのかもしれないと、認めざるをえなかったのだ。
 守光が一度布団を離れる気配がする。すぐに戻ってきたのは何かを取ってきただけらしく、物音が続いたあと、再び和彦に触れてきた。
「あんたの〈ここ〉を苛めてみたくて、新しいおもちゃを前から準備しておいたんだ。なかなか使う機会がなかったが、ようやく――」
 そんな言葉のあと、掴まれた和彦の欲望にひんやりとした液体が垂らされる。滑る感触から潤滑剤だとわかった。
 先端をヌルヌルと撫でられ、異様な感覚にさすがに無反応ではいられない。和彦がわずかに腰を揺らしたとき、冷たい金属の感触が先端に触れた。
「ひっ」
 細く滑らかなものが、先端の小さな口を押し開くようにして、くっと押し込まれる。一気に腰が重くなったような感覚と鋭い痛みに襲われて、和彦は息を詰める。反射的に腰を動かしたくなったが、今の状況ではそれは危険だと理解できる程度には、まだ意識が保てていられた。
 一度は賢吾に開かれた場所だ。どういう痛みがあるかは知っている。それでも、やはりつらかった。
「うっ、うぅっ……」
 おそらく金属製の細長い棒なのだろう。それがゆっくりと慎重に、欲望の先端から押し込まれてくる。痛みに喉が引き攣り、体が小刻みに震えてくる。
「うあっ、あっ、い、や――」
 自分でも驚くほど弱々しい声が出ていた。それでも挿入は少しずつだが続き、両目を覆われて不安なせいもあって和彦は片手を下肢に向けて伸ばす。すかさず優しく握り締められた。そこでゾッとするようなことを言われた。
「思った通り、今のあんたの姿は大きな子供のようだ。とても嗜虐的なものを刺激される」
 挿入された金属の棒を蠢かされ、むず痒いような感覚が生まれる。それはすぐに痛みを上回り、仰け反った和彦は布団の端を掴んでいた。
 守光は時間をかけて、たった一度しか暴かれたことのない和彦の秘密の場所を犯していく。棒がどれほど深く挿入されたのか知る術はないが、強烈な感覚――快感にも似たものが腰から背筋へと何度も駆け抜け、和彦は箍が外れたように放埓に声を上げていた。
 鋭敏な神経を擦られ、捏ね回されているようだった。守光は、和彦がどこで感じているかわかっているらしく、執拗に残酷な刺激を与えてくる。気がつけば、棒の動きに合わせて、緩く腰を揺らしていた。
「呑み込みがいい……。この様子だと、すでにもう誰かに可愛がられた経験があるようだな」
 賢吾の名を出され、和彦は夢中で頷く。ふふっ、と守光が笑った。
「血の繋がりだな。あんたを相手に、考えることが父子で同じとは」
 ここでようやく棒がゆっくりと引き抜かれ、このとき生まれた痺れるような法悦に和彦は腰をもじつかせ、息を喘がせる。
 守光の手が柔らかな膨らみにかかり、いつになく手荒く揉みしだかれたが、痛みもおそれもなく、ただ狂おしい肉の愉悦に喉を鳴らす。
 指先で巧みに弱みを弄られ、完全に下肢から力が抜けたところで、潤滑剤が流れ込んで潤った内奥の入り口をまさぐられ、二本の指をいきなり挿入された。
「あっ、あぁっ――。ふっ……、んっ、んくうっ」
「ここが寂しいだろうが、もう少しわしにつき合ってくれ、先生」
 あっさりと内奥から指が引き抜かれる。再び欲望を掴まれて、ああ、と和彦は吐息を洩らした。
 守光は、容赦なかった。賢吾に犯されたときよりもさらに深い場所まで金属の棒が挿入され、和彦は鳴かされる。抜いてほしいと哀願するが、和彦のそんな姿すら、守光は愉しんでいるようだった。
 化け狐の本性か――。
 頭の芯がドロドロに溶けそうになりながら、ぼんやりと和彦は考える。
 ここで、金属の棒が円を描くような動きをする。初めて味わう痛みに近い疼きに、体が生理現象を催していた。自分の身に何が起きようとしているか察した和彦は、悲鳴に近い声を上げる。
「お願、い、ですっ……。もう、やめて、くださいっ」
 ヌルッと金属の棒が引き抜かれていく。願いは聞き入れられたのだが、そうではないと、和彦は懸命に首を横に振る。自分でも、どうすることが正しいのかわからなくなっていた。
 ただ守光は、和彦の状態を正確に見抜いていた。
「――かまわないから、漏らしなさい」
 それは許しというより、命令だった。しかも、逆らえない。
 強烈な快感と羞恥が和彦の身を貫き、快美と表現できる瞬間を迎える。
 瞬く間に下腹部から腰にかけて濡らしながら、和彦はビクビクと体を戦慄かせる。

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