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第42話
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「お前を狙ってる奴が、俺からお前を引き離そうとして、あれこれ画策してるんじゃないかって、つい心配しちまう。なんたって俺は、嫉妬深くて慎重な男だからな。もっともお前が、愛情深くて淫奔すぎるからというのもあるが」
「人のせいにっ――」
「違うか?」
覇気に満ちた鋭い笑みを向けられ、言いかけた言葉は口中で消える。和彦は間近から、男らしく端整な顔を見つめていたが、ようやくあることを察した。ぎこちなく賢吾の頬にてのひらを押し当てる。
「……怒って、くれてるんだな」
「ああ。かなり、機嫌が悪いぞ」
それは本当だろう。臆した和彦はまた顔を背けようとしたが、途端に命令された。
「こっちを見ろ。和彦」
言う通りにすると、賢吾の顔が近づいてくる。ゆっくりと唇が重ねられ、最初は緊張から身を固くしていたが、柔らかく何度も唇を啄まれているうちに力が抜けていく。それを待っていたように、ちろりとした先で唇を舐められた。
求められるままに唇を開くと、傲慢に舌が入り込んでくる。口腔の粘膜を舐め回されてから、戸惑う和彦の舌はあっさりと搦め捕られる。淫らに絡め合っているうちに引き出され、甘やかすように吸われたあと、甘噛みされる。この時点ですでにもう、腰が砕けそうになっていた。
和彦は震える手で、賢吾の浴衣の胸元を掴む。一方の賢吾は余裕たっぷりで、和彦の舌と唾液を味わいながら、肩にかけた羽織を滑り落してしまう。浴衣の合わせを大きく広げられ、露わになった胸元に大きなてのひらが這わされる。ふいに唇が離れたかと思うと、賢吾に上半身を検分された。
「首以外は、赤くなってないようだな」
「だから言っただろう。大したことないって……」
「大したことになってたら、タダじゃ済ませなかった。お前の兄貴でもな」
このとき見せた賢吾の氷のように冷たい表情に、本気で和彦は震え上がる。そんな和彦の機嫌を取るように唇を吸いながら、賢吾が片腕できつく抱き締めてくる。和彦もおずおずと広い背に両腕を回した。浴衣を通しても体の熱さが伝わってきて、じわりと和彦の体温が上がる。
再び見つめ合うと、今度は和彦から求めて、賢吾と唇を重ね、濃厚な口づけを交わした。賢吾の匂いと体温に包まれながら、すっかり覚えてしまった唾液の味を感じていると、怖いはずの男の側が一番安心できるのだ。
もちろん、得るのは安堵感だけではなく――。
賢吾の手に、当然の成り行きのように浴衣の裾を割り開かれ、両足の間深くに差し込まれる。下着の上から、興奮の兆しを見せているものを軽く撫でられた。和彦はうろたえ、賢吾の手を柔らかく押し戻そうとしたが、芝居がかった口調で恫喝される。
「勝手な行動を取って、俺をヒヤヒヤさせたことに対する仕置きが必要だろ」
次の瞬間、突き飛ばされて畳の上に倒れ込むと、獣のように賢吾がのしかかってきた。
強引に下着を引き下ろされ、下肢を剥き出しにした状態で両足を大きく広げられる。この時点で和彦は、大きな肉食獣に押さえつけられた獲物のように、弱々しく抵抗することもできなかった。
「うっ……」
燃えそうに熱くなった手に欲望を掴まれ、容赦なく擦り上げられる。突然始まった荒々しい愛撫に、反射的に畳に両足を突っ張らせ、腰を浮かせる。さらに敏感な先端を爪の先で弄られ、堪らず上擦った声を上げていた。
それでも、賢吾から与えられる刺激を無条件で受け入れてしまう体は、瞬く間に反応してしまう。先端からじわりと透明なしずくが滲み出てくると、賢吾が両足の間に顔を埋め、間近から欲望を見つめてくる。熱っぽい眼差しを受けて、ふるっと和彦の欲望が揺れた。
「興奮してるのか、和彦」
「仕方、ないだろっ……」
「そのほうがお前らしい。嫌なことは、とっとと忘れちまえ」
半ば身を起こした欲望を舐め上げられて、腰が震える。我ながら度し難いが、賢吾の口腔に含まれたとき、和彦は上体をのたうたせて吐息をこぼしていた。欲望の根本を強く擦られながら、唇で括れを締め付けられ、先端に丹念に舌を這わされる。ときおり賢吾が軽く歯を当ててくるが、それがゾクゾクするような被虐的な悦びを生むのだ。
「あっ、はあっ、はあっ、もう、やめて、くれ――」
「言っただろう。仕置きだって。いつもに比べたら、優しいほうだ。こうやって、甘やかして、感じさせているんだからな」
いやらしく蠢く賢吾の舌が、柔らかな膨らみに這わされる。汗ばんだ内奥の入り口を指の腹で擦られて、和彦は媚びを含んだ声を洩らす。
「ひっ、うぅっ」
腰が甘く痺れてくる。意識しないまま賢吾の頭に手をかけ、濡れた髪を掻き乱す。責め苦のような快感から逃れたいのに、一瞬でも愛撫が止まると、苛立ちの声を上げたくなるのだ。
「人のせいにっ――」
「違うか?」
覇気に満ちた鋭い笑みを向けられ、言いかけた言葉は口中で消える。和彦は間近から、男らしく端整な顔を見つめていたが、ようやくあることを察した。ぎこちなく賢吾の頬にてのひらを押し当てる。
「……怒って、くれてるんだな」
「ああ。かなり、機嫌が悪いぞ」
それは本当だろう。臆した和彦はまた顔を背けようとしたが、途端に命令された。
「こっちを見ろ。和彦」
言う通りにすると、賢吾の顔が近づいてくる。ゆっくりと唇が重ねられ、最初は緊張から身を固くしていたが、柔らかく何度も唇を啄まれているうちに力が抜けていく。それを待っていたように、ちろりとした先で唇を舐められた。
求められるままに唇を開くと、傲慢に舌が入り込んでくる。口腔の粘膜を舐め回されてから、戸惑う和彦の舌はあっさりと搦め捕られる。淫らに絡め合っているうちに引き出され、甘やかすように吸われたあと、甘噛みされる。この時点ですでにもう、腰が砕けそうになっていた。
和彦は震える手で、賢吾の浴衣の胸元を掴む。一方の賢吾は余裕たっぷりで、和彦の舌と唾液を味わいながら、肩にかけた羽織を滑り落してしまう。浴衣の合わせを大きく広げられ、露わになった胸元に大きなてのひらが這わされる。ふいに唇が離れたかと思うと、賢吾に上半身を検分された。
「首以外は、赤くなってないようだな」
「だから言っただろう。大したことないって……」
「大したことになってたら、タダじゃ済ませなかった。お前の兄貴でもな」
このとき見せた賢吾の氷のように冷たい表情に、本気で和彦は震え上がる。そんな和彦の機嫌を取るように唇を吸いながら、賢吾が片腕できつく抱き締めてくる。和彦もおずおずと広い背に両腕を回した。浴衣を通しても体の熱さが伝わってきて、じわりと和彦の体温が上がる。
再び見つめ合うと、今度は和彦から求めて、賢吾と唇を重ね、濃厚な口づけを交わした。賢吾の匂いと体温に包まれながら、すっかり覚えてしまった唾液の味を感じていると、怖いはずの男の側が一番安心できるのだ。
もちろん、得るのは安堵感だけではなく――。
賢吾の手に、当然の成り行きのように浴衣の裾を割り開かれ、両足の間深くに差し込まれる。下着の上から、興奮の兆しを見せているものを軽く撫でられた。和彦はうろたえ、賢吾の手を柔らかく押し戻そうとしたが、芝居がかった口調で恫喝される。
「勝手な行動を取って、俺をヒヤヒヤさせたことに対する仕置きが必要だろ」
次の瞬間、突き飛ばされて畳の上に倒れ込むと、獣のように賢吾がのしかかってきた。
強引に下着を引き下ろされ、下肢を剥き出しにした状態で両足を大きく広げられる。この時点で和彦は、大きな肉食獣に押さえつけられた獲物のように、弱々しく抵抗することもできなかった。
「うっ……」
燃えそうに熱くなった手に欲望を掴まれ、容赦なく擦り上げられる。突然始まった荒々しい愛撫に、反射的に畳に両足を突っ張らせ、腰を浮かせる。さらに敏感な先端を爪の先で弄られ、堪らず上擦った声を上げていた。
それでも、賢吾から与えられる刺激を無条件で受け入れてしまう体は、瞬く間に反応してしまう。先端からじわりと透明なしずくが滲み出てくると、賢吾が両足の間に顔を埋め、間近から欲望を見つめてくる。熱っぽい眼差しを受けて、ふるっと和彦の欲望が揺れた。
「興奮してるのか、和彦」
「仕方、ないだろっ……」
「そのほうがお前らしい。嫌なことは、とっとと忘れちまえ」
半ば身を起こした欲望を舐め上げられて、腰が震える。我ながら度し難いが、賢吾の口腔に含まれたとき、和彦は上体をのたうたせて吐息をこぼしていた。欲望の根本を強く擦られながら、唇で括れを締め付けられ、先端に丹念に舌を這わされる。ときおり賢吾が軽く歯を当ててくるが、それがゾクゾクするような被虐的な悦びを生むのだ。
「あっ、はあっ、はあっ、もう、やめて、くれ――」
「言っただろう。仕置きだって。いつもに比べたら、優しいほうだ。こうやって、甘やかして、感じさせているんだからな」
いやらしく蠢く賢吾の舌が、柔らかな膨らみに這わされる。汗ばんだ内奥の入り口を指の腹で擦られて、和彦は媚びを含んだ声を洩らす。
「ひっ、うぅっ」
腰が甘く痺れてくる。意識しないまま賢吾の頭に手をかけ、濡れた髪を掻き乱す。責め苦のような快感から逃れたいのに、一瞬でも愛撫が止まると、苛立ちの声を上げたくなるのだ。
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