血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
1,057 / 1,268
第41話

(31)

しおりを挟む
 欲望をすっぽりと口腔に呑み込まれると、湿った粘膜に包まれる。和彦は細い声を上げながら腰をくねらせ、賢吾の髪に指を差し込む。意外に手触りのいい髪を掻き乱すと、微かに賢吾の喉が震える。すっかり熟した欲望にそっと歯が当てられて、ゾクリとするような恐怖と快美さに襲われる。
 賢吾の愛撫はいつものように柔らかな膨らみにも及び、腰が砕けるほど執拗に揉みしだかれ、弱みも弄られたあと、口腔でさんざん嬲られた。
「――興奮しきってるな」
 唾液と汗で潤んだ内奥の入り口を指先でくすぐられ、和彦は甘ったるい声を洩らしてひくつかせる。
 昨夜、南郷にも触れられた部分だ。賢吾の目に晒すべきではないと頭ではわかっているのに、腰が痺れて動けない。それどころか、もっと刺激が欲しいとすら思ってしまう。
「賢、吾っ……」
「ああ、わかっている」
 やや強引に内奥に指が挿入されてくるが、痛みはなかった。賢吾は怜悧な表情を浮かべながら内奥で指を蠢かし、襞と粘膜を擦り上げてくる。
 愛撫というより、何かの痕跡を探っているようだと感じたとき、和彦は低く声を洩らし、反り返った欲望の先端から精を滴らせていた。わずかにこぼれた精から、ある程度察することはできたのだろう。賢吾は唇を歪めるようにして笑った。
「……南郷にたっぷり搾り取ってもらったようだな。尻は緩んでないようだが――、あいつの趣味か? お前をさんざんイかせておいて、この具合のいい場所に突っ込みもしないってのは」
 芝居がかった下卑た言葉を聞き、体の熱がわずかに下がった和彦だが、内奥で大胆に指が動かされ、再び熱が上がる。
「今までもそうだが、お前が犯されなかったことに、ほっとする以上に、心底胸糞が悪くなるんだ。妙な謎解きを仕掛けられてるようでな。単なる挑発なら、何様だとどやしつけて、詫びを入れさせりゃ済むことだ。だが南郷は、そんなわかりやすい反応を俺に求めてはいないだろう」
 賢吾の口調が熱を帯び、大蛇の潜む目が炎を孕む。話しながら欲情が高ぶったのか、指が引き抜かれて喘ぐ場所に押し当てられたものは、まさに熱の塊だった。
「ああ――……」
 内奥の入り口をこじ開けられて、和彦は喉を鳴らす。
「いい眺めだ。健気に尻をひくつかせて、イッたばかりだっていうのに、また涎を垂らして……。わかってるか? 俺は怒ってるんだからな」
 口ではそう言いながら、賢吾が慎重に腰を進めてくる。逞しく張り出した部分まで含まされ、異物感に苦しみながら、激しく内奥を収縮させる。
 上擦った声を洩らすと、緩やかな律動が始まり、和彦は上体をくねらせる。媚態を示したような格好となり、賢吾の怒りを煽ったのではないかとちらりと考えたが、与えられる感覚にすでに理性は溶けかけていた。
「あっ、あっ、違っ……。怒ら、ないで、くれ――」
「もう意識が飛んでるのか。俺のを咥え込んでこんなに悦んでるオンナに、怒れるわけがねーだろ。俺は、お前には甘いんだ。底なしにな」
 二度、三度と強く内奥を突き上げられて、賢吾と深く繋がった。
 不思議なもので、身の内に凶暴な熱を受け入れると、賢吾の怒りを恐れながらも、その怒りに振り回され、ズタズタに切り裂かれてもいいという気持ちが湧き起こるのだ。
 その瞬間を想像して、身震いしたくなるような情欲の高まりを覚える。繋がっている賢吾にもそれが伝わったらしく、両目に冷たい光が一閃した。
「今、何を考えた? どの男のことを考えた?」
 ぐうっと内奥深くを抉られ、腰が揺れる。
「あんたの、ことを……」
「本当か?」
「それと――大蛇のことも」
「……お前は、俺よりも、俺の背中にいる奴のほうが、本当は好きなんじゃないか?」
 初心な年頃でもないのに、『好き』という単語に和彦はうろたえ、思いがけず賢吾を喜ばせてしまう。
 浴衣を脱ぎ捨ててのしかかってきた賢吾に唇を貪られ、果敢に内奥を攻め立てられる。堪らず和彦は呻き声を洩らしながら、逞しい腰に両足をしっかりと絡め、広い背にすがりつく。
 ようやく大蛇に触れることを許されたのだ。
「ああっ、賢吾っ、賢吾っ……」
 大蛇の刺青を撫で回しながら、快感の波に意識がさらわれそうになるたびに、きつく爪を立てる。そのたびに賢吾が荒い息を吐き出し、内奥で欲望が力強く脈打つ。
 襞と粘膜を激しく擦り上げられる淫靡な湿った音と、律動のたびに尻と下腹がぶつかる乾いた音が室内に大きく響く。
 余裕のない交わりだった。夢中で互いを貪り合っている、獣じみた行為の最中なのだと強く意識した途端、和彦は絶頂を迎える。
 熱い体の下でのたうっていると、賢吾が容赦なく律動を繰り返し、そして、精を注ぎ込んできた。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...