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第40話
(34)
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「千尋、もういいから……」
なんとか千尋の頭を上げさせようと、茶色の髪を梳いてやる。しかし千尋は確信を得たように、硬くした舌先で先端をくすぐってくる。ときおり歯が掠め、そのたびにヒヤリとする恐怖に襲われるが、同時に、先日の賢吾との淫靡な行為が蘇る。
「あっ、それ、嫌だ、千尋。怖い……」
「ウソ。いっぱい、濡れてきた」
わざと和彦に聞かせるように、千尋がピチャピチャと濡れた音を立てて、欲望の先端を舐めてくる。さらには爪の先でも弄られて、和彦は鼻にかかった甘い呻き声を洩らしていた。
まさか賢吾は千尋に話したのだろうかと、つい脳裏を過りはするものの、本人に確かめるわけにもいかない。
「ああっ――」
先端から尽きることなく滲み出る透明なしずくを吸われ、さらに出せといわんばかりに舌先でくすぐられる。和彦は甲高い声を上げ、身悶えていた。
汗と、それ以外のものによって湿りを帯びた内奥の入り口を、千尋の指先が掠める。押さえつけるようにして刺激され、ときおり舐められて濡らされながら、ゆっくりと指を挿入されていた。和彦は小さく喘ぎながら、内奥を妖しくひくつかせる。
全身から熱気のようなものを立ち昇らせ、顔を上げた千尋が荒い息を吐く。内奥から指を出し入れしながら、思い出したように呟いた。
「……行かせたくないなー。すごく心配だよ。誰かに連れ去られて、戻って来ないんじゃないかって考えると、気が狂いそうになる」
すぐには思考が追い付かなかった。肉を開かれ、擦られる感触に意識を集中していた和彦は、ぼんやりと千尋を見上げる。千尋は愉悦を覚えたように目を細め、もう片方の手を和彦の胸元に這わせてきた。触れられないまま硬く凝った突起を、てのひらで捏ねるように刺激され、意識しないまま内奥をきつく収縮させる。
「こんないやらしい和彦を、一人で送り出すなんて、嫌だよ。……どんな男が食いつくか、わかったものじゃない」
「人を、魚の餌みたいに言うな……。それに、実の父親と会うだけなんだから、余計な心配だ」
「本当にそうなると思う? 状況なんて、いつだって変わるよ。じいちゃんにどんな約束をしたのか知らないけど、和彦の父親が、よし連れて帰ろう、ってなるかもしれない」
「それを言い出したら、キリがない。もう決まったんだから、そんなこと言うな」
唇を尖らせた千尋が、捨てられた子犬のような眼差しを向けてくる。
「……変な話だよね。見知らぬ他人じゃなくて家族に会うのに、毎回、俺――だけじゃなくて、オヤジも心配してる気がする」
和彦は片手を伸ばすと、千尋の頬を手荒く撫でてやる。首を竦める千尋の仕種が可愛くて、ちらりと笑みをこぼしていた。
「お前たち父子に心配をかけて悪いとは思うけど、心のどこかでほっともしているんだ。ぼくは必要とされているんだと実感できて……」
「前々から思ってたけど、和彦って自己評価低いよね。見た目は文句なしのイイ男で、医者なんかやってるぐらい頭がよくて、まじめで働き者で、優しくて、俺のこと甘やかすのが上手くて……」
三本に増やされた指が内奥で好き勝手に動き、襞と粘膜を擦り立てられる。愛撫に悦んだ体が勝手に動き、シーツの上に爪先を突っ張らせ、浅ましく腰を揺らす。和彦の示した媚態に喉を鳴らした千尋が、内奥から指を引き抜き、囁きかけてきた。
「――どこにも、行かないよね?」
「どこかに行けと言われても、行く場所がない。ぼくの人生を奪った分、お前たち父子にはしっかり背負ってもらうつもりだからな」
こう答えた次の瞬間、しなやかで熱い体を持つ獣がのしかかってくる。和彦はさっそく背に両腕を回し、そこに息づく生き物をてのひらで撫で回す。千尋はもどかしげに下肢を密着させてくると、高ぶった欲望をさっそく内奥に挿入してこようとする。和彦は慌てて肩を押し上げた。
「今夜はもう寝るつもりだったし、明日は仕事があるから、ゴムをつけろっ」
「中に出さないから」
「……信用できない」
「あっ、ひどい……」
ショックを受けた、という顔をしながらも、めげることなく千尋は実力行使に出る。
片膝を掴み上げられ、内奥の入り口に欲望の先端を擦りつけられたところで、和彦は上体を捩ろうとしたが、そのときには潤んだ肉をこじ開けるようにして、千尋に犯されていた。
「ああっ」
和彦は腰を震わせ、抵抗をやめる。本気で嫌がっているわけではないと、千尋はわかっているのだ。
両足を折り曲げるようにして抱えられて、じっくりと観察されながら、欲望が根元まで内奥に埋め込まれていた。
なんとか千尋の頭を上げさせようと、茶色の髪を梳いてやる。しかし千尋は確信を得たように、硬くした舌先で先端をくすぐってくる。ときおり歯が掠め、そのたびにヒヤリとする恐怖に襲われるが、同時に、先日の賢吾との淫靡な行為が蘇る。
「あっ、それ、嫌だ、千尋。怖い……」
「ウソ。いっぱい、濡れてきた」
わざと和彦に聞かせるように、千尋がピチャピチャと濡れた音を立てて、欲望の先端を舐めてくる。さらには爪の先でも弄られて、和彦は鼻にかかった甘い呻き声を洩らしていた。
まさか賢吾は千尋に話したのだろうかと、つい脳裏を過りはするものの、本人に確かめるわけにもいかない。
「ああっ――」
先端から尽きることなく滲み出る透明なしずくを吸われ、さらに出せといわんばかりに舌先でくすぐられる。和彦は甲高い声を上げ、身悶えていた。
汗と、それ以外のものによって湿りを帯びた内奥の入り口を、千尋の指先が掠める。押さえつけるようにして刺激され、ときおり舐められて濡らされながら、ゆっくりと指を挿入されていた。和彦は小さく喘ぎながら、内奥を妖しくひくつかせる。
全身から熱気のようなものを立ち昇らせ、顔を上げた千尋が荒い息を吐く。内奥から指を出し入れしながら、思い出したように呟いた。
「……行かせたくないなー。すごく心配だよ。誰かに連れ去られて、戻って来ないんじゃないかって考えると、気が狂いそうになる」
すぐには思考が追い付かなかった。肉を開かれ、擦られる感触に意識を集中していた和彦は、ぼんやりと千尋を見上げる。千尋は愉悦を覚えたように目を細め、もう片方の手を和彦の胸元に這わせてきた。触れられないまま硬く凝った突起を、てのひらで捏ねるように刺激され、意識しないまま内奥をきつく収縮させる。
「こんないやらしい和彦を、一人で送り出すなんて、嫌だよ。……どんな男が食いつくか、わかったものじゃない」
「人を、魚の餌みたいに言うな……。それに、実の父親と会うだけなんだから、余計な心配だ」
「本当にそうなると思う? 状況なんて、いつだって変わるよ。じいちゃんにどんな約束をしたのか知らないけど、和彦の父親が、よし連れて帰ろう、ってなるかもしれない」
「それを言い出したら、キリがない。もう決まったんだから、そんなこと言うな」
唇を尖らせた千尋が、捨てられた子犬のような眼差しを向けてくる。
「……変な話だよね。見知らぬ他人じゃなくて家族に会うのに、毎回、俺――だけじゃなくて、オヤジも心配してる気がする」
和彦は片手を伸ばすと、千尋の頬を手荒く撫でてやる。首を竦める千尋の仕種が可愛くて、ちらりと笑みをこぼしていた。
「お前たち父子に心配をかけて悪いとは思うけど、心のどこかでほっともしているんだ。ぼくは必要とされているんだと実感できて……」
「前々から思ってたけど、和彦って自己評価低いよね。見た目は文句なしのイイ男で、医者なんかやってるぐらい頭がよくて、まじめで働き者で、優しくて、俺のこと甘やかすのが上手くて……」
三本に増やされた指が内奥で好き勝手に動き、襞と粘膜を擦り立てられる。愛撫に悦んだ体が勝手に動き、シーツの上に爪先を突っ張らせ、浅ましく腰を揺らす。和彦の示した媚態に喉を鳴らした千尋が、内奥から指を引き抜き、囁きかけてきた。
「――どこにも、行かないよね?」
「どこかに行けと言われても、行く場所がない。ぼくの人生を奪った分、お前たち父子にはしっかり背負ってもらうつもりだからな」
こう答えた次の瞬間、しなやかで熱い体を持つ獣がのしかかってくる。和彦はさっそく背に両腕を回し、そこに息づく生き物をてのひらで撫で回す。千尋はもどかしげに下肢を密着させてくると、高ぶった欲望をさっそく内奥に挿入してこようとする。和彦は慌てて肩を押し上げた。
「今夜はもう寝るつもりだったし、明日は仕事があるから、ゴムをつけろっ」
「中に出さないから」
「……信用できない」
「あっ、ひどい……」
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片膝を掴み上げられ、内奥の入り口に欲望の先端を擦りつけられたところで、和彦は上体を捩ろうとしたが、そのときには潤んだ肉をこじ開けるようにして、千尋に犯されていた。
「ああっ」
和彦は腰を震わせ、抵抗をやめる。本気で嫌がっているわけではないと、千尋はわかっているのだ。
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