血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
1,022 / 1,268
第40話

(34)

しおりを挟む
「千尋、もういいから……」
 なんとか千尋の頭を上げさせようと、茶色の髪を梳いてやる。しかし千尋は確信を得たように、硬くした舌先で先端をくすぐってくる。ときおり歯が掠め、そのたびにヒヤリとする恐怖に襲われるが、同時に、先日の賢吾との淫靡な行為が蘇る。
「あっ、それ、嫌だ、千尋。怖い……」
「ウソ。いっぱい、濡れてきた」
 わざと和彦に聞かせるように、千尋がピチャピチャと濡れた音を立てて、欲望の先端を舐めてくる。さらには爪の先でも弄られて、和彦は鼻にかかった甘い呻き声を洩らしていた。
 まさか賢吾は千尋に話したのだろうかと、つい脳裏を過りはするものの、本人に確かめるわけにもいかない。
「ああっ――」
 先端から尽きることなく滲み出る透明なしずくを吸われ、さらに出せといわんばかりに舌先でくすぐられる。和彦は甲高い声を上げ、身悶えていた。
 汗と、それ以外のものによって湿りを帯びた内奥の入り口を、千尋の指先が掠める。押さえつけるようにして刺激され、ときおり舐められて濡らされながら、ゆっくりと指を挿入されていた。和彦は小さく喘ぎながら、内奥を妖しくひくつかせる。
 全身から熱気のようなものを立ち昇らせ、顔を上げた千尋が荒い息を吐く。内奥から指を出し入れしながら、思い出したように呟いた。
「……行かせたくないなー。すごく心配だよ。誰かに連れ去られて、戻って来ないんじゃないかって考えると、気が狂いそうになる」
 すぐには思考が追い付かなかった。肉を開かれ、擦られる感触に意識を集中していた和彦は、ぼんやりと千尋を見上げる。千尋は愉悦を覚えたように目を細め、もう片方の手を和彦の胸元に這わせてきた。触れられないまま硬く凝った突起を、てのひらで捏ねるように刺激され、意識しないまま内奥をきつく収縮させる。
「こんないやらしい和彦を、一人で送り出すなんて、嫌だよ。……どんな男が食いつくか、わかったものじゃない」
「人を、魚の餌みたいに言うな……。それに、実の父親と会うだけなんだから、余計な心配だ」
「本当にそうなると思う? 状況なんて、いつだって変わるよ。じいちゃんにどんな約束をしたのか知らないけど、和彦の父親が、よし連れて帰ろう、ってなるかもしれない」
「それを言い出したら、キリがない。もう決まったんだから、そんなこと言うな」
 唇を尖らせた千尋が、捨てられた子犬のような眼差しを向けてくる。
「……変な話だよね。見知らぬ他人じゃなくて家族に会うのに、毎回、俺――だけじゃなくて、オヤジも心配してる気がする」
 和彦は片手を伸ばすと、千尋の頬を手荒く撫でてやる。首を竦める千尋の仕種が可愛くて、ちらりと笑みをこぼしていた。
「お前たち父子に心配をかけて悪いとは思うけど、心のどこかでほっともしているんだ。ぼくは必要とされているんだと実感できて……」
「前々から思ってたけど、和彦って自己評価低いよね。見た目は文句なしのイイ男で、医者なんかやってるぐらい頭がよくて、まじめで働き者で、優しくて、俺のこと甘やかすのが上手くて……」
 三本に増やされた指が内奥で好き勝手に動き、襞と粘膜を擦り立てられる。愛撫に悦んだ体が勝手に動き、シーツの上に爪先を突っ張らせ、浅ましく腰を揺らす。和彦の示した媚態に喉を鳴らした千尋が、内奥から指を引き抜き、囁きかけてきた。
「――どこにも、行かないよね?」
「どこかに行けと言われても、行く場所がない。ぼくの人生を奪った分、お前たち父子にはしっかり背負ってもらうつもりだからな」
 こう答えた次の瞬間、しなやかで熱い体を持つ獣がのしかかってくる。和彦はさっそく背に両腕を回し、そこに息づく生き物をてのひらで撫で回す。千尋はもどかしげに下肢を密着させてくると、高ぶった欲望をさっそく内奥に挿入してこようとする。和彦は慌てて肩を押し上げた。
「今夜はもう寝るつもりだったし、明日は仕事があるから、ゴムをつけろっ」
「中に出さないから」
「……信用できない」
「あっ、ひどい……」
 ショックを受けた、という顔をしながらも、めげることなく千尋は実力行使に出る。
 片膝を掴み上げられ、内奥の入り口に欲望の先端を擦りつけられたところで、和彦は上体を捩ろうとしたが、そのときには潤んだ肉をこじ開けるようにして、千尋に犯されていた。
「ああっ」
 和彦は腰を震わせ、抵抗をやめる。本気で嫌がっているわけではないと、千尋はわかっているのだ。
 両足を折り曲げるようにして抱えられて、じっくりと観察されながら、欲望が根元まで内奥に埋め込まれていた。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...