血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
1,021 / 1,268
第40話

(33)

しおりを挟む
 身近にいすぎて見過ごしてしまうが、千尋は外見も中身もまだ成長過程にある。犬っころのような青年が、背に彫った恐ろしくも献身的な獣を身の内に宿す日は、近いかもしれない。それとも、すでに棲みついて、息を潜めているのか。
 それはとても怖いことだが、一方で、抗い難い魅力も感じてしまうのだ。
 ふいに千尋の片手が伸びてきて、髪を掻き上げられる。
「何か、考え事してる?」
 少し怒ったような声で問われ、和彦はふっと我に返る。
「お前も成長してるなと思って。体、鍛えてるだろ?」
「最近、人に勧められてさ、ジムに通い出したんだ。スーツ着る機会も増えたし、ちょっとでも映える体つきになりたくて。何より、体力つけないと。この世界、化け物みたいな体力持ったオッサンたちが多すぎるんだよ」
「……ほどほどでいいからな」
 和彦の言葉に、千尋が意味ありげな笑みを浮かべる。
「なんの心配してるの? いやらしいなー、和彦は」
 ここでムキになっては相手の思うツボだと、和彦は自分を戒める。反論は、言葉ではなく行動で示した。
 興奮して身を起こした千尋の欲望を優しく片手で握り込むと、ビクリと腰を震わせた千尋が短く声を洩らす。
「お前もいやらしい。――もう、こんなにして」
 握り込んだものを緩く上下に扱いてやると、素直に悦びを表し、硬さも重量も増していく。甘ったれの本領発揮とばかりに、掠れた声で千尋に求められ、ゾクゾクするような興奮を覚えて和彦は応じる。
 頭の位置を下ろし、千尋の反応をうかがいながら、欲望の根元から丹念に舐め上げてやる。ときおり唇を這わせ、優しく吸いついてやると、それだけで千尋は切羽詰まった声を上げ、体を波打たせる。
 先端から滲み出た透明なしずくを舐め取り、まず括れまでを口腔に含むと、指の輪で欲望を扱きつつ、唇で締め付ける。
 たっぷりの唾液を絡ませた舌で、口腔に含んだ先端を舐める。千尋がうわ言のように『先生』と呼びながら、和彦の後頭部に手をかけてきた。望み通り、口腔深くまで欲望を呑み込み、熱く濡れた粘膜をまとわりつかせ、吸引する。
 瞬く間に逞しく成長した熱い塊が、和彦の喉を圧迫する。苦しさを上回って、これ以上ない歓喜を示す存在が愛しくて、このまま最後の瞬間を受け止めるつもりだったが、途中、慌てたように千尋に顔を上げさせられた。このとき、自分がどんな顔をしていたのか和彦にはわからなかったが、千尋が惚けたように見つめてくる。
 何も言わないまま体を引っ張り上げられ、今度は和彦がベッドに横たえられ、千尋が覆い被さってきた。
 すっかり汗ばんだしなやかで熱い体の感触に、眩暈にも似た恍惚感を覚える。自分が熱くした体だという、独占欲にも似た感情が芽生えていた。
 千尋は、餓えた獣そのものだった。和彦の肌に貪りつき、舐めて吸いつくだけではなく、ときには噛みついてもくる。
「あっ、千尋っ……」
 腕を持ち上げられ、腋にすら舌を這わされてさすがに羞恥するが、身を捩る和彦にますます千尋は煽られたようだった。やや強引に両足の間に手が差し込んできたかと思うと、いきなり柔らかな膨らみをまさぐり始める。
「ううっ」
 手荒く揉みしだかれて、和彦は呻き声を洩らして腰を跳ねさせる。千尋の手を押し退けようとしたが、掠れた声で窘められた。
「ダメだよ。俺の好きなようにさせて。気持ちよくしてあげるから」
 弱みを指で刺激され、思わず甲高い声を洩らす。執拗に柔らかな膨らみを苛められ、次第に両足から力が抜けていく。千尋の片手が膝にかかり、促されるまま和彦は自ら足を開いていた。
 強い視線に晒されながら、身を起こしかけた欲望の形を、思わせぶりに指先でなぞられる。このときの千尋の表情は、まさに舌舐めずりする獣のそれだ。身震いしたくなるような興奮が和彦の中を駆け抜け、吐息を洩らしていた。
 眠れなくてホットミルクを作っていたはずが、ここに至るまでの展開が早すぎる。おかげで、胸の中に巣食っていた憂鬱を、一時とはいえ紛らわせることができる。それほど、千尋の存在は強烈で、魅力的だ。
 誘われるように千尋が、開いた両足の間に顔を埋めてくる。柔らかな声音で和彦は制止していたが、それは千尋を煽るとわかったうえでのことだ。
 当然千尋は、やめるどころか、勢いを得たように欲望にしゃぶりついてきた。
「あうぅっ、うっ、うっ……ん」
 技巧など知らないとばかりに激しく吸い立てられ、舌が絡みついてくる。和彦は荒い呼吸を繰り返しながら、性急な愛撫を受け入れようとしていたが、ふいに上擦った声を上げて腰を震わせる。和彦のその反応に、千尋も気づいたようだった。
 上目遣いに見上げてきながら、欲望の先端に唇を這わせ、慎重に和彦の反応を観察してくる。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...