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第40話
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その瞬間がやってくるのだと、和彦はわずかに肩を震わせる。すると賢吾は、その肩先に軽く唇を押し当ててから体を離し、ベッドを下り部屋を出て行く気配がした。何をしているのかと、振り返って確認する勇気はなかった。
「後ろ姿を見るだけで、緊張しているとわかる」
すぐに戻ってきた賢吾に、そう声をかけられる。少しだけ言い返したくなり、苦労して寝返りを打った和彦だったが、後悔するとともに、目のやり場に困ることになる。賢吾が悠々と見せつけてくる裸体は、圧倒されるような力強さをまだ漲らせていたからだ。
賢吾が浴室から持ってきたバスタオルを、腰の下に敷かれる。どういうことかと視線で問いかけると、ニヤリと笑い返された。
「多分、漏らすぞ」
数瞬の間を置いてから和彦は、賢吾の言葉を理解した。
腰を引きずるようにしてベッドから下りようとして賢吾に易々と押さえつけられ、力の入らない両足を大きく広げられる。
綿棒を個包装したビニールを歯で破る賢吾を、半ば畏怖しながら和彦は見上げる。よほど強張った顔をしていたらしく、賢吾が苦笑いを浮かべた。
「そう、悲壮な顔をするな。何も、取って食おうというわけじゃねーんだから」
「……似たような、ものだ」
「そうか?」
とぼけた調子で応じた賢吾がいきなり両足の間に顔を埋める。
「あっ、またっ……」
燃えそうに熱い口腔に欲望を含まれ、きつく吸引される。執拗に嬲られ、内奥を擦られて勃ち上がることを強要され続けた和彦のものは、まさに賢吾の言葉通り、『精液が一滴も出ない』という状態だった。
愛撫による快感はすでに苦痛に近く、唇で欲望を扱かれながら和彦は、呻き声を洩らして身をくねらせる。
先端を硬くした舌先で弄られ、ピクンと腰を跳ねさせる。顔を上げた賢吾が、じっとこちらを見つめてくる。寸前までの軽口は、おそらく和彦を怯えさせないためのささやかな気遣いだったのだろうが、今はもう、射竦めてくるような眼差しを隠そうともしない。
さきほどの言葉とは裏腹に、まさに今から、和彦のすべてを食らおうとしているようだ。
「――逃げたいなら、逃げてもいいぞ」
くたりと力を失ったままの欲望を握り、そんなことを賢吾が言う。一瞬本気で殴ってやろうかと思った和彦だが、手を伸ばしはしたものの、賢吾の乱れた前髪を掻き上げることしかできなかった。
明らかに和彦に見せつけるため、賢吾が綿棒を舐めて滴るほどの唾液を施す。その綿棒で、欲望の先端をくすぐられた。
覚悟は決めたつもりだったが、呆気なく気力は萎える。和彦は思わず声を上げた。
「やっぱり、無理だっ……。そんな、太いもの……」
綿棒が動くたびに、ビクビクと腰を震わせる。一方の賢吾は、低く笑い声を洩らした。
「いかにも、〈初めて〉を奪われる状況らしい台詞だな。聞かされるほうは、興奮して仕方ないが」
和彦は、賢吾の髪を乱暴に鷲掴みにする。すると、怒るでもなく柔らかな口調で窘められた。
「おとなしくしてろよ。怪我をしたくなかったら。――入れるぞ」
普段であれば行為の最中、男たちの愛撫によって悦びの証を溢れさせ、ときには強い刺激によって、それ以外のものもこぼす小さな口に、綿棒の先が押し当てられ、こじ開けられる。
鋭い痛みと、いままで味わったことのない独特の異物感が、下肢に生まれる。初めての衝撃に和彦の意識は揺らぎ、気がついたときには悲鳴を上げていた。
さきほどは咄嗟に『太い』と言ったものの、実際は細い綿棒なのだが、それでも体中の神経を逆撫でられるようだ。
「ううっ、あっ……、ああっ」
和彦がどれだけ悲痛な声を上げようが、賢吾は手を止めない。体全体で下肢を押さえつけるようにして、片手で掴んだ欲望の先端に、無慈悲なほど冷静な手つきで細い異物を挿入してくる。
賢吾に下肢を好き勝手に弄られながら、暴れることもできない和彦は何度も声を上げ、上体を捩り、押し寄せてくる異様な感覚に耐える。耐えることしかできないのだ。
何度目かの悲鳴を上げたところで、一旦綿棒が抜かれる。その感覚もまた、おぞましい。和彦は今度は歯を食い縛り、ベッドに突っ張らせた爪先をブルブルと震わせる。
「もう少し力を抜け……と言っても、無理か」
柔らかな苦笑交じりの声で呟いた賢吾が、先端にちろちろと舌を這わせてから、ゆっくりと口腔に欲望を含む。じわりと痛みが遠のきかけるが、愛撫は長くは続かない。先端をたっぷりの唾液で濡らされてから、また綿棒を押し当てられた。
今度は、さらに侵入が深くなっていく。
全身から汗が噴き出してきた。和彦は息を喘がせながら、両足を大きく左右に開いた格好のまま、賢吾に〈初めて〉を奪われる。
「ひあっ……、んっ、んっ……」
「後ろ姿を見るだけで、緊張しているとわかる」
すぐに戻ってきた賢吾に、そう声をかけられる。少しだけ言い返したくなり、苦労して寝返りを打った和彦だったが、後悔するとともに、目のやり場に困ることになる。賢吾が悠々と見せつけてくる裸体は、圧倒されるような力強さをまだ漲らせていたからだ。
賢吾が浴室から持ってきたバスタオルを、腰の下に敷かれる。どういうことかと視線で問いかけると、ニヤリと笑い返された。
「多分、漏らすぞ」
数瞬の間を置いてから和彦は、賢吾の言葉を理解した。
腰を引きずるようにしてベッドから下りようとして賢吾に易々と押さえつけられ、力の入らない両足を大きく広げられる。
綿棒を個包装したビニールを歯で破る賢吾を、半ば畏怖しながら和彦は見上げる。よほど強張った顔をしていたらしく、賢吾が苦笑いを浮かべた。
「そう、悲壮な顔をするな。何も、取って食おうというわけじゃねーんだから」
「……似たような、ものだ」
「そうか?」
とぼけた調子で応じた賢吾がいきなり両足の間に顔を埋める。
「あっ、またっ……」
燃えそうに熱い口腔に欲望を含まれ、きつく吸引される。執拗に嬲られ、内奥を擦られて勃ち上がることを強要され続けた和彦のものは、まさに賢吾の言葉通り、『精液が一滴も出ない』という状態だった。
愛撫による快感はすでに苦痛に近く、唇で欲望を扱かれながら和彦は、呻き声を洩らして身をくねらせる。
先端を硬くした舌先で弄られ、ピクンと腰を跳ねさせる。顔を上げた賢吾が、じっとこちらを見つめてくる。寸前までの軽口は、おそらく和彦を怯えさせないためのささやかな気遣いだったのだろうが、今はもう、射竦めてくるような眼差しを隠そうともしない。
さきほどの言葉とは裏腹に、まさに今から、和彦のすべてを食らおうとしているようだ。
「――逃げたいなら、逃げてもいいぞ」
くたりと力を失ったままの欲望を握り、そんなことを賢吾が言う。一瞬本気で殴ってやろうかと思った和彦だが、手を伸ばしはしたものの、賢吾の乱れた前髪を掻き上げることしかできなかった。
明らかに和彦に見せつけるため、賢吾が綿棒を舐めて滴るほどの唾液を施す。その綿棒で、欲望の先端をくすぐられた。
覚悟は決めたつもりだったが、呆気なく気力は萎える。和彦は思わず声を上げた。
「やっぱり、無理だっ……。そんな、太いもの……」
綿棒が動くたびに、ビクビクと腰を震わせる。一方の賢吾は、低く笑い声を洩らした。
「いかにも、〈初めて〉を奪われる状況らしい台詞だな。聞かされるほうは、興奮して仕方ないが」
和彦は、賢吾の髪を乱暴に鷲掴みにする。すると、怒るでもなく柔らかな口調で窘められた。
「おとなしくしてろよ。怪我をしたくなかったら。――入れるぞ」
普段であれば行為の最中、男たちの愛撫によって悦びの証を溢れさせ、ときには強い刺激によって、それ以外のものもこぼす小さな口に、綿棒の先が押し当てられ、こじ開けられる。
鋭い痛みと、いままで味わったことのない独特の異物感が、下肢に生まれる。初めての衝撃に和彦の意識は揺らぎ、気がついたときには悲鳴を上げていた。
さきほどは咄嗟に『太い』と言ったものの、実際は細い綿棒なのだが、それでも体中の神経を逆撫でられるようだ。
「ううっ、あっ……、ああっ」
和彦がどれだけ悲痛な声を上げようが、賢吾は手を止めない。体全体で下肢を押さえつけるようにして、片手で掴んだ欲望の先端に、無慈悲なほど冷静な手つきで細い異物を挿入してくる。
賢吾に下肢を好き勝手に弄られながら、暴れることもできない和彦は何度も声を上げ、上体を捩り、押し寄せてくる異様な感覚に耐える。耐えることしかできないのだ。
何度目かの悲鳴を上げたところで、一旦綿棒が抜かれる。その感覚もまた、おぞましい。和彦は今度は歯を食い縛り、ベッドに突っ張らせた爪先をブルブルと震わせる。
「もう少し力を抜け……と言っても、無理か」
柔らかな苦笑交じりの声で呟いた賢吾が、先端にちろちろと舌を這わせてから、ゆっくりと口腔に欲望を含む。じわりと痛みが遠のきかけるが、愛撫は長くは続かない。先端をたっぷりの唾液で濡らされてから、また綿棒を押し当てられた。
今度は、さらに侵入が深くなっていく。
全身から汗が噴き出してきた。和彦は息を喘がせながら、両足を大きく左右に開いた格好のまま、賢吾に〈初めて〉を奪われる。
「ひあっ……、んっ、んっ……」
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