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第39話
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半ば条件反射のように、三田村の背にてのひらを這わせようとしたが、柔らかな仕種で止められた。
「シャワーを浴びよう、先生」
「一緒に?」
「……俺はそのつもりだが、嫌なら――」
返事の代わりに和彦は、三田村が着ているトレーナーを一気に脱がせ、同じ行為を自らにも求める。裸になると、もつれるようにしてバスルームに向かった。
三田村が勢いよくシャワーの湯を出し、バスルーム内にはあっという間に熱気が立ち込める。時間が惜しいとばかりに三田村がボディソープをてのひらに取ると、和彦の体を洗い始めた。じっと突っ立っているのも間が持たず、和彦もボディソープを軽く泡立ててから、三田村の背に両てのひらを這わせた。
引き締まった筋肉の感触を確かめるように手を動かしながら、広い背に棲んでいる虎を撫でる。ほとんどしがみつくような体勢になってしまうと、口元を緩めた三田村に言われた。
「先生、そんなにしがみつかれると、体を洗ってやれない」
「言っただろ。あんたにベタベタに甘えたいって。今、その最中なんだ」
「だったら俺も、甘やかしていいか?」
耳元で囁かれ、危うく足元から崩れ込みそうになった。ますます強くしがみつくと、シャワーヘッドを取り上げた三田村が、和彦の肩から背にかけて湯を当て始める。さらに髪を優しく指で梳かれると、心地よさに目を細める。
結局、三田村に負けたことになるのかもしれない。和彦は体を離し、おとなしくされるがままとなる。
丁寧に手の指の一本一本まで洗ってくれる三田村を、照れと喜びの入り混じった気持ちで見つめていた和彦だが、ふと、思い出したことがあり、つい声を洩らしていた。その声は水音に掻き消されて、三田村の耳には届かなかったようだ。
三田村は知っているのだろうかと思った。中嶋と加藤が体を重ねているということを。また、その理由を。
何か察しているのかもしれないが、どちらにしても、三田村が目的を持って加藤に目をかけているのだから、和彦の口から伝える必要はないだろう。
三田村の頬を撫で、あごにうっすらと残る細い傷痕を指先でなぞる。湯を止めた三田村が、ふっとこちらに向けた眼差しは、心を射抜かれそうなほど鋭かった。三田村の剥き出しの欲情をぶつけられたようで、いまさらながら和彦は羞恥する。その羞恥は、官能を高めるための媚薬だ。
有無を言わせず、洗われたばかりの体をきつく抱き締められる。その拍子に、自分だけではなく、三田村の欲望も高ぶっていることを知る。
ようやくじっくりと唇を重ねることができ、和彦は喉の奥から声を洩らす。余裕なく互いの唇と舌を吸い合い、口腔に熱い舌を招き入れる。和彦を味わうように、三田村は丹念に口腔に舌を這わせてきたが、和彦のほうが我慢できなくなり、三田村の舌に吸いつく。濃厚に舌を絡ませながら、唾液を交わすようになるのは、あっという間だった。
下肢を密着させ、互いの高ぶりをもどかしく擦りつけ合う。体の奥からドロドロとした欲情が湧き起こり、和彦を内から溶かそうとしている。
三田村が欲しくて溜まらなかった。快感を与えられたいのと同じぐらい、快感を与えたい。
和彦は狂おしい衝動のままに、三田村の肩をぐっと掴む。絡めていた舌を解いた三田村が、じっと和彦の顔を見つめてきた。
「……今みたいな先生の顔を見ていると、俺は自惚れそうになる」
「ぼくは、どんな顔をしている……?」
「言わない。俺だけのものだ」
三田村が持つ独占欲の片鱗がちらりと覗き、和彦は静かに歓喜する。だから、三田村の要求に従順に従う。
バスルームの壁にすがりつきながら、足を開いて腰を突き出した姿勢を取り、三田村の愛撫を誘う。濡れた背をスウッと指先でなぞられただけで、和彦は切ない声を上げて腰を揺らしていた。その指が秘裂に入り込み、触れられる前からひくついている内奥の入り口をまさぐられた。
ほんの三日前に南郷に、さらにその前には賢吾にさんざん嬲られた部分だ。淫らに刺激を欲しており、軽く擦られただけで身を捩りたくなるような疼きを発した。
「んっ、ん……」
一本の指を挿入され、たったそれだけのことで鳥肌が立つほど感じてしまう。三田村は慎重に指を出し入れしたあと、内奥が物欲しげに蠢いているのを確認してから、すぐに指の数を増やしてきた。
発情しきった襞と粘膜を丹念に擦られ、ときおり円を描くように大胆に指を動かされてから、内奥を広げられる。無意識に揺れる腰をてのひらで撫で上げられて、和彦は鼻にかかった声を洩らす。
開いた足の間に入り込んだてのひらに、勃ち上がった欲望を包み込まれると、内奥に呑み込んだ三田村の指をきつく締め付けていた。
「はあっ、あっ、あっ、ああっ――」
「シャワーを浴びよう、先生」
「一緒に?」
「……俺はそのつもりだが、嫌なら――」
返事の代わりに和彦は、三田村が着ているトレーナーを一気に脱がせ、同じ行為を自らにも求める。裸になると、もつれるようにしてバスルームに向かった。
三田村が勢いよくシャワーの湯を出し、バスルーム内にはあっという間に熱気が立ち込める。時間が惜しいとばかりに三田村がボディソープをてのひらに取ると、和彦の体を洗い始めた。じっと突っ立っているのも間が持たず、和彦もボディソープを軽く泡立ててから、三田村の背に両てのひらを這わせた。
引き締まった筋肉の感触を確かめるように手を動かしながら、広い背に棲んでいる虎を撫でる。ほとんどしがみつくような体勢になってしまうと、口元を緩めた三田村に言われた。
「先生、そんなにしがみつかれると、体を洗ってやれない」
「言っただろ。あんたにベタベタに甘えたいって。今、その最中なんだ」
「だったら俺も、甘やかしていいか?」
耳元で囁かれ、危うく足元から崩れ込みそうになった。ますます強くしがみつくと、シャワーヘッドを取り上げた三田村が、和彦の肩から背にかけて湯を当て始める。さらに髪を優しく指で梳かれると、心地よさに目を細める。
結局、三田村に負けたことになるのかもしれない。和彦は体を離し、おとなしくされるがままとなる。
丁寧に手の指の一本一本まで洗ってくれる三田村を、照れと喜びの入り混じった気持ちで見つめていた和彦だが、ふと、思い出したことがあり、つい声を洩らしていた。その声は水音に掻き消されて、三田村の耳には届かなかったようだ。
三田村は知っているのだろうかと思った。中嶋と加藤が体を重ねているということを。また、その理由を。
何か察しているのかもしれないが、どちらにしても、三田村が目的を持って加藤に目をかけているのだから、和彦の口から伝える必要はないだろう。
三田村の頬を撫で、あごにうっすらと残る細い傷痕を指先でなぞる。湯を止めた三田村が、ふっとこちらに向けた眼差しは、心を射抜かれそうなほど鋭かった。三田村の剥き出しの欲情をぶつけられたようで、いまさらながら和彦は羞恥する。その羞恥は、官能を高めるための媚薬だ。
有無を言わせず、洗われたばかりの体をきつく抱き締められる。その拍子に、自分だけではなく、三田村の欲望も高ぶっていることを知る。
ようやくじっくりと唇を重ねることができ、和彦は喉の奥から声を洩らす。余裕なく互いの唇と舌を吸い合い、口腔に熱い舌を招き入れる。和彦を味わうように、三田村は丹念に口腔に舌を這わせてきたが、和彦のほうが我慢できなくなり、三田村の舌に吸いつく。濃厚に舌を絡ませながら、唾液を交わすようになるのは、あっという間だった。
下肢を密着させ、互いの高ぶりをもどかしく擦りつけ合う。体の奥からドロドロとした欲情が湧き起こり、和彦を内から溶かそうとしている。
三田村が欲しくて溜まらなかった。快感を与えられたいのと同じぐらい、快感を与えたい。
和彦は狂おしい衝動のままに、三田村の肩をぐっと掴む。絡めていた舌を解いた三田村が、じっと和彦の顔を見つめてきた。
「……今みたいな先生の顔を見ていると、俺は自惚れそうになる」
「ぼくは、どんな顔をしている……?」
「言わない。俺だけのものだ」
三田村が持つ独占欲の片鱗がちらりと覗き、和彦は静かに歓喜する。だから、三田村の要求に従順に従う。
バスルームの壁にすがりつきながら、足を開いて腰を突き出した姿勢を取り、三田村の愛撫を誘う。濡れた背をスウッと指先でなぞられただけで、和彦は切ない声を上げて腰を揺らしていた。その指が秘裂に入り込み、触れられる前からひくついている内奥の入り口をまさぐられた。
ほんの三日前に南郷に、さらにその前には賢吾にさんざん嬲られた部分だ。淫らに刺激を欲しており、軽く擦られただけで身を捩りたくなるような疼きを発した。
「んっ、ん……」
一本の指を挿入され、たったそれだけのことで鳥肌が立つほど感じてしまう。三田村は慎重に指を出し入れしたあと、内奥が物欲しげに蠢いているのを確認してから、すぐに指の数を増やしてきた。
発情しきった襞と粘膜を丹念に擦られ、ときおり円を描くように大胆に指を動かされてから、内奥を広げられる。無意識に揺れる腰をてのひらで撫で上げられて、和彦は鼻にかかった声を洩らす。
開いた足の間に入り込んだてのひらに、勃ち上がった欲望を包み込まれると、内奥に呑み込んだ三田村の指をきつく締め付けていた。
「はあっ、あっ、あっ、ああっ――」
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