血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
986 / 1,268
第39話

(37)

しおりを挟む
 半ば条件反射のように、三田村の背にてのひらを這わせようとしたが、柔らかな仕種で止められた。
「シャワーを浴びよう、先生」
「一緒に?」
「……俺はそのつもりだが、嫌なら――」
 返事の代わりに和彦は、三田村が着ているトレーナーを一気に脱がせ、同じ行為を自らにも求める。裸になると、もつれるようにしてバスルームに向かった。
 三田村が勢いよくシャワーの湯を出し、バスルーム内にはあっという間に熱気が立ち込める。時間が惜しいとばかりに三田村がボディソープをてのひらに取ると、和彦の体を洗い始めた。じっと突っ立っているのも間が持たず、和彦もボディソープを軽く泡立ててから、三田村の背に両てのひらを這わせた。
 引き締まった筋肉の感触を確かめるように手を動かしながら、広い背に棲んでいる虎を撫でる。ほとんどしがみつくような体勢になってしまうと、口元を緩めた三田村に言われた。
「先生、そんなにしがみつかれると、体を洗ってやれない」
「言っただろ。あんたにベタベタに甘えたいって。今、その最中なんだ」
「だったら俺も、甘やかしていいか?」
 耳元で囁かれ、危うく足元から崩れ込みそうになった。ますます強くしがみつくと、シャワーヘッドを取り上げた三田村が、和彦の肩から背にかけて湯を当て始める。さらに髪を優しく指で梳かれると、心地よさに目を細める。
 結局、三田村に負けたことになるのかもしれない。和彦は体を離し、おとなしくされるがままとなる。
 丁寧に手の指の一本一本まで洗ってくれる三田村を、照れと喜びの入り混じった気持ちで見つめていた和彦だが、ふと、思い出したことがあり、つい声を洩らしていた。その声は水音に掻き消されて、三田村の耳には届かなかったようだ。
 三田村は知っているのだろうかと思った。中嶋と加藤が体を重ねているということを。また、その理由を。
 何か察しているのかもしれないが、どちらにしても、三田村が目的を持って加藤に目をかけているのだから、和彦の口から伝える必要はないだろう。
 三田村の頬を撫で、あごにうっすらと残る細い傷痕を指先でなぞる。湯を止めた三田村が、ふっとこちらに向けた眼差しは、心を射抜かれそうなほど鋭かった。三田村の剥き出しの欲情をぶつけられたようで、いまさらながら和彦は羞恥する。その羞恥は、官能を高めるための媚薬だ。
 有無を言わせず、洗われたばかりの体をきつく抱き締められる。その拍子に、自分だけではなく、三田村の欲望も高ぶっていることを知る。
 ようやくじっくりと唇を重ねることができ、和彦は喉の奥から声を洩らす。余裕なく互いの唇と舌を吸い合い、口腔に熱い舌を招き入れる。和彦を味わうように、三田村は丹念に口腔に舌を這わせてきたが、和彦のほうが我慢できなくなり、三田村の舌に吸いつく。濃厚に舌を絡ませながら、唾液を交わすようになるのは、あっという間だった。
 下肢を密着させ、互いの高ぶりをもどかしく擦りつけ合う。体の奥からドロドロとした欲情が湧き起こり、和彦を内から溶かそうとしている。
 三田村が欲しくて溜まらなかった。快感を与えられたいのと同じぐらい、快感を与えたい。
 和彦は狂おしい衝動のままに、三田村の肩をぐっと掴む。絡めていた舌を解いた三田村が、じっと和彦の顔を見つめてきた。
「……今みたいな先生の顔を見ていると、俺は自惚れそうになる」
「ぼくは、どんな顔をしている……?」
「言わない。俺だけのものだ」
 三田村が持つ独占欲の片鱗がちらりと覗き、和彦は静かに歓喜する。だから、三田村の要求に従順に従う。
 バスルームの壁にすがりつきながら、足を開いて腰を突き出した姿勢を取り、三田村の愛撫を誘う。濡れた背をスウッと指先でなぞられただけで、和彦は切ない声を上げて腰を揺らしていた。その指が秘裂に入り込み、触れられる前からひくついている内奥の入り口をまさぐられた。
 ほんの三日前に南郷に、さらにその前には賢吾にさんざん嬲られた部分だ。淫らに刺激を欲しており、軽く擦られただけで身を捩りたくなるような疼きを発した。
「んっ、ん……」
 一本の指を挿入され、たったそれだけのことで鳥肌が立つほど感じてしまう。三田村は慎重に指を出し入れしたあと、内奥が物欲しげに蠢いているのを確認してから、すぐに指の数を増やしてきた。
 発情しきった襞と粘膜を丹念に擦られ、ときおり円を描くように大胆に指を動かされてから、内奥を広げられる。無意識に揺れる腰をてのひらで撫で上げられて、和彦は鼻にかかった声を洩らす。
 開いた足の間に入り込んだてのひらに、勃ち上がった欲望を包み込まれると、内奥に呑み込んだ三田村の指をきつく締め付けていた。
「はあっ、あっ、あっ、ああっ――」

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...