血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
976 / 1,258
第39話

(27)

しおりを挟む
 粗野な動作で足を広げさせられ、南郷が腰を割り込ませてきながら、ベルトを緩めている気配を感じる。動揺した和彦が足掻くようにベッドを蹴りつけたが、抵抗にすらならず、南郷はスラックスの前を寛げて悠々と腰を密着させてきた。
 燃えそうに熱くなった欲望を、怯える和彦の欲望にゆっくりと擦りつけながら、南郷は激しく濡れた音を立てて唇を吸い上げてくる。荒々しく胸元をまさぐられ、てのひらで転がすようにして刺激された突起がおずおずと凝り始めると、抓るように指で挟まれた。
 知らず知らずのうちに和彦は呻き声を洩らしていた。南郷という嵐に呑み込まれながら、どうしようもなかった。
 唇を離した南郷が上体を起こし、すでに力が抜けてしまった和彦を見下ろしてくる。
「あんたの体を見ると、長嶺組長にどう愛されたのか、よくわかる」
 南郷の指先が這わされたのは、内腿や足の付け根の際どい部分だった。二日前、賢吾に念入りに愛撫されたばかりで、そのときの狂おしい情欲のうねりを和彦はまだはっきりと覚えている。
「あっ、嫌っ……だ」
 図々しくも冷静な南郷の指は、和彦の秘められた場所すら容赦なく暴いていく。まだ怯えたままの欲望の形をなぞり、片足を抱え上げられてから秘裂をまさぐられる。
「ひっ……」
 探り当てられた内奥の入り口を指の腹で擦られて、和彦は声を詰まらせる。南郷は舌舐めずりせんばかりの喜悦の表情を浮かべた。
「ああ、あんたの感触だな。一見貞淑そうだが、中はとんでもない淫乱ぶりで、どんな男でも喜々として咥え込む」
「痛っ」
 濡らすことなく内奥に指が挿入され、引き攣れるような痛みが下肢に走る。和彦は苦痛に顔を歪めるが、かえって南郷の興奮を煽っただけらしく、一本とはいえ太い指を容赦なく蠢かし、付け根まで収めてしまう。そこでまた唇を塞がれて、口腔を舌で犯されながら、内奥も指で犯される。
 繊細な襞と粘膜を擦られ、ときおり弱い部分を強く押し上げられて、腰が痺れる。南郷もまた、自分の体の扱いを心得ている一人なのだと、和彦は思い知らされていた。
 内奥を掻き回すように巧みな愛撫を与えられているうちに、淫らな肉が否応なく解れていき、見境なく南郷の指を締め付け始める。貪られていた唇が離れると同時に、切ない声が洩れていた。
「――わかるか、先生? あんたのいやらしい尻が、美味そうに俺の指をしゃぶり始めた。やっぱり、一本じゃ足りないよな」
 内奥から一度指が引き抜かれたが、南郷の言葉通りにすぐに、今度は二本の指を揃えて挿入された。異物感も苦しさもあったが、悔しいことに痛みはほとんど感じなかった。
「ううっ、うっ、うっ……」
 内奥で大胆に指を動かされながら、胸元に南郷の愛撫を受ける。じっくりと胸の中央を舐め上げられてから、いつの間にか敏感に熟した二つの突起の一方を口腔に含まれていた。きつく吸われて、尖った先を舌でヌルヌルとくすぐられると、上擦った声を洩らした和彦は背を反らす。もう片方の突起を歯列で擦られてから甘噛みされたときは、抱えられた片足を揺らしていた。
「んあ、ぁ……、い、や――。もう、やめ……」
 内奥から出し入れされていた指が、思わず出た和彦の言葉を受けたように、ふいに抜き取られる。南郷は、愛撫に蕩けかけた和彦の体を眺め、機嫌よさそうに喉を鳴らして笑った。
「俺が嫌いなくせに、よく感じる。前々から思っていたが、あんたはマゾヒストの資質があるな。痛めつけられるのを極端に嫌うのは、もしかして反対に、痛めつけてほしい願望があるんじゃないかと勘繰りたくなる」
 和彦の脳裏にふっと浮かんだのは、賢吾と千尋を同時に受け入れた行為だった。愛着とも呼べる感情を抱ける痛みがあるのだと二人は教えてくれたが、それ以前に、守光にはこう言われていた。本当に痛みに弱いんだろうか、と。
 痛みは苦手だ。痛みを与えようとする素振りを見せられただけで、心が折れそうになる。和彦は無意識のうちに、すがるように南郷を見上げていた。その南郷が真剣な顔となり、いきなり和彦の欲望を握り締めてきた。少し前まで怯えていたものは、内奥への執拗な愛撫によって熱くなり、緩く身を起こしていた。
「ふっ……、んんっ」
 括れを強く擦り上げられて、鼻にかかった声を洩らす。濡れた先端を爪の先で弄られると、浅ましく腰が揺れていた。
 再び南郷が腰を密着させ、ますます嵩を増した欲望の存在を誇示する。和彦は片手を取られ、その欲望を握らされた。南郷の求めはわかった。顔を背け、息を喘がせながら、握らされたものをぎこちなく扱く。南郷もまた、和彦のものを手荒く扱き始める。
 しばらく言葉はなく、二人の荒い息遣いと、外から聞こえる雨音がすべての音となる。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

僕が玩具になった理由

Me-ya
BL
🈲R指定🈯 「俺のペットにしてやるよ」 眞司は僕を見下ろしながらそう言った。 🈲R指定🔞 ※この作品はフィクションです。 実在の人物、団体等とは一切関係ありません。 ※この小説は他の場所で書いていましたが、携帯が壊れてスマホに替えた時、小説を書いていた場所が分からなくなってしまいました😨 ので、ここで新しく書き直します…。 (他の場所でも、1カ所書いていますが…)

首輪 〜性奴隷 律の調教〜

M
BL
※エロ、グロ、スカトロ、ショタ、モロ語、暴力的なセックス、たまに嘔吐など、かなりフェティッシュな内容です。 R18です。 ほとんどの話に男性同士の過激な性表現・暴力表現が含まれますのでご注意下さい。 孤児だった律は飯塚という資産家に拾われた。 幼い子供にしか興味を示さない飯塚は、律が美しい青年に成長するにつれて愛情を失い、性奴隷として調教し客に奉仕させて金儲けの道具として使い続ける。 それでも飯塚への一途な想いを捨てられずにいた律だったが、とうとう新しい飼い主に売り渡す日を告げられてしまう。 新しい飼い主として律の前に現れたのは、桐山という男だった。

堕ちた父は最愛の息子を欲に任せ犯し抜く

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

ずっと女の子になりたかった 男の娘の私

ムーワ
BL
幼少期からどことなく男の服装をして学校に通っているのに違和感を感じていた主人公のヒデキ。 ヒデキは同級生の女の子が履いているスカートが自分でも履きたくて仕方がなかったが、母親はいつもズボンばかりでスカートは買ってくれなかった。 そんなヒデキの幼少期から大人になるまでの成長を描いたLGBT(ジェンダーレス作品)です。

強制結婚させられた相手がすきすぎる

よる
BL
※妊娠表現、性行為の描写を含みます。

3人の弟に逆らえない

ポメ
BL
優秀な3つ子に調教される兄の話です。 主人公:高校2年生の瑠璃 長男の嵐は活発な性格で運動神経抜群のワイルド男子。 次男の健二は大人しい性格で勉学が得意の清楚系王子。 三男の翔斗は無口だが機械に強く、研究オタクっぽい。黒髪で少し地味だがメガネを取ると意外とかっこいい? 3人とも高身長でルックスが良いと学校ではモテまくっている。 しかし、同時に超がつくブラコンとも言われているとか? そんな3つ子に溺愛される瑠璃の話。 調教・お仕置き・近親相姦が苦手な方はご注意くださいm(_ _)m

目が覚めたら囲まれてました

るんぱっぱ
BL
燈和(トウワ)は、いつも独りぼっちだった。 燈和の母は愛人で、すでに亡くなっている。愛人の子として虐げられてきた燈和は、ある日家から飛び出し街へ。でも、そこで不良とぶつかりボコボコにされてしまう。 そして、目が覚めると、3人の男が燈和を囲んでいて…話を聞くと、チカという男が燈和を拾ってくれたらしい。 チカに気に入られた燈和は3人と共に行動するようになる。 不思議な3人は、闇医者、若頭、ハッカー、と異色な人達で! 独りぼっちだった燈和が非日常な幸せを勝ち取る話。

無自覚な

ネオン
BL
小さい頃に母が再婚した相手には連れ子がいた。 1つ上の義兄と1つ下の義弟、どちらも幼いながらに イケメンで運動もでき勉強もできる完璧な義兄弟だった。 それに比べて僕は周りの同級生や1つ下の義弟よりも小さくて いじめられやすく、母に教えられた料理や裁縫以外 何をやっても平凡だった。 そんな僕も花の高校2年生、1年生の頃と変わらず平和に過ごしてる それに比べて義兄弟達は学校で知らない人はいない そんな存在にまで上り積めていた。 こんな僕でも優しくしてくれる義兄と 僕のことを嫌ってる義弟。 でも最近みんなの様子が変で困ってます 無自覚美少年主人公が義兄弟や周りに愛される話です。

処理中です...