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第38話
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欲望を口腔に含まれて、声を上げる。しかし、その声が和彦自身の耳に届くことはなく、ただ空気を震わせただけのような気がする。
自分は夢を見ているのだと漠然と理解はできたが、恍惚としてしまうほど、与えられる愛撫が心地いい。和彦に対する深い愛情が伝わってくるような愛撫は、三田村を思い起こさせる。いや、三田村そのものだ。
いつの間にかうつ伏せになり、高々と腰を上げた姿勢を取らされて、内奥を舌と指を使って解される。そのまま背後から貫かれて、和彦は喉を震わせて歓喜に鳴く。何度も力強く突き上げられて、腰から背筋にかけてじわじわと快感が這い上がってくると、大きな手に欲望を包み込まれて手荒く扱かれる。その手つきは賢吾のものだ。
ここでふいに繋がりが解かれて再び仰向けにされると、きつく抱き締められる。和彦がおずおずと両腕を相手の背に回すと、しなやかな筋肉の感触を感じる。
まだ若い体は熱く、余裕なく和彦を求めてくる。内奥に欲望が挿入され、ただひたすらに奥深くを突いてきながら、耳元で荒い息遣いを繰り返す。これは千尋だと思い、背を撫で回す。まだ刺青を入れる前の滑らかな肌の感触が懐かしく、いとおしい。
次の瞬間、強い力で上体を抱き起こされ、繋がったまま相手の腰の上に座らされる。胸の突起を吸われながら、尻の肉を強く掴まれて揺さぶられる。内奥で逞しい欲望が蠢き、襞と粘膜を小刻みに擦られるたびに、和彦は声を上げて背をしならせる。思わず和彦は、こう呼びかけていた。秀、と。
何人もの男たちが次々と入れ替わり、和彦の肌を吸い舐め、体位を変えながら内奥を犯してくる。恥知らずに足を大きく開き、和彦は男たちを求めていた。男の手を取り、柔らかな膨らみを手荒く揉みしだいてもらい、弱みを指先で苛められながら、放埓に悦びの声を上げ、絶頂に達する。
夢の中だからこそ際限なく享楽に耽ることができるが、次第に気づくことになる。いかに快感を与えられようが、自分がまったく満たされないことに。
和彦は、自分がどれだけ男たちに頼りきり、支えられて生活してきたのか、よく自覚している。だからこそ、今の生活を失いたくなかった。打算のみで繋がることになっても、男たちが温もりを与え続けてくれる限り。
元の生活に戻ったときのことを想像して、人恋しさに気が狂いそうだった。でも、近いうちにそのときが訪れるかもしれない。
嫌だ、と強く思った瞬間、左頬に衝撃が走った。心地よい夢の中から意識を引き剥がされそうになり、無意識に和彦は抗うが、今度は肩に重みが加わり、揺さぶられた。
目を開けるより先に、口を開いて大きく息を吸い込む。もう夢の中ではなく、現実の世界だと理解した和彦は、失意に打ちひしがれながら、ゆっくりと目を開けた。
なぜか目の前に、賢吾の顔があった。目が覚めたつもりで、自分はまだ夢の中にいるのだろうかと一瞬混乱したが、頬を撫でてくるてのひらの感触は温かく、優しい。もっとも、顔を覗き込んでくる賢吾の眼差しは険しかった。
大蛇の潜む目だと、和彦はぼんやりと賢吾を見上げる。知らず知らずのうちに、両目から涙が溢れ出していた。賢吾はそっと眉をひそめ、痛ましげな表情を浮かべながら指先で涙を拭ってくれる。
「……ど、して……」
「携帯は電源が入ってないし、部屋の電話を鳴らしても出ねーから、何かあったんじゃないかと思ってな」
「ぼくがここに戻ったって、総和会から……?」
強い眠気に、涙を流しながら目を閉じそうになるが、賢吾に強く頬を擦られて、なんとか意識を保つ。
「あそこの連中は、隠し事ばかりだ。そうやって、お前を俺から取り上げようとする。だから安心できない。――盗聴器を仕掛けたままにしておいて、間違いなかったな」
そういうことかと、返事の代わりに和彦は吐息を洩らす。玄関に仕掛けられた盗聴器はしっかりとドアの開閉する音を拾い、和彦の帰宅を長嶺組に知らせたのだ。
賢吾の抜け目のなさに口元を緩めた和彦だが、その拍子に嗚咽が洩れる。賢吾はとっくに、和彦の様子が尋常ではないことに気づいていた。
「お前の眠りが深すぎるから、仕舞ってある安定剤の残りを確認した。……いつもより多く飲んだな」
この男に隠し事はできないと、和彦は観念した。その途端に、また涙が溢れ出てくる。
賢吾の唇がこめかみに触れ、涙を吸い取りながら囁かれた。
「――これから本宅に連れて行く。いいな?」
和彦は声を上げて泣き出しそうになりながら、小さく頷いた。
自分は夢を見ているのだと漠然と理解はできたが、恍惚としてしまうほど、与えられる愛撫が心地いい。和彦に対する深い愛情が伝わってくるような愛撫は、三田村を思い起こさせる。いや、三田村そのものだ。
いつの間にかうつ伏せになり、高々と腰を上げた姿勢を取らされて、内奥を舌と指を使って解される。そのまま背後から貫かれて、和彦は喉を震わせて歓喜に鳴く。何度も力強く突き上げられて、腰から背筋にかけてじわじわと快感が這い上がってくると、大きな手に欲望を包み込まれて手荒く扱かれる。その手つきは賢吾のものだ。
ここでふいに繋がりが解かれて再び仰向けにされると、きつく抱き締められる。和彦がおずおずと両腕を相手の背に回すと、しなやかな筋肉の感触を感じる。
まだ若い体は熱く、余裕なく和彦を求めてくる。内奥に欲望が挿入され、ただひたすらに奥深くを突いてきながら、耳元で荒い息遣いを繰り返す。これは千尋だと思い、背を撫で回す。まだ刺青を入れる前の滑らかな肌の感触が懐かしく、いとおしい。
次の瞬間、強い力で上体を抱き起こされ、繋がったまま相手の腰の上に座らされる。胸の突起を吸われながら、尻の肉を強く掴まれて揺さぶられる。内奥で逞しい欲望が蠢き、襞と粘膜を小刻みに擦られるたびに、和彦は声を上げて背をしならせる。思わず和彦は、こう呼びかけていた。秀、と。
何人もの男たちが次々と入れ替わり、和彦の肌を吸い舐め、体位を変えながら内奥を犯してくる。恥知らずに足を大きく開き、和彦は男たちを求めていた。男の手を取り、柔らかな膨らみを手荒く揉みしだいてもらい、弱みを指先で苛められながら、放埓に悦びの声を上げ、絶頂に達する。
夢の中だからこそ際限なく享楽に耽ることができるが、次第に気づくことになる。いかに快感を与えられようが、自分がまったく満たされないことに。
和彦は、自分がどれだけ男たちに頼りきり、支えられて生活してきたのか、よく自覚している。だからこそ、今の生活を失いたくなかった。打算のみで繋がることになっても、男たちが温もりを与え続けてくれる限り。
元の生活に戻ったときのことを想像して、人恋しさに気が狂いそうだった。でも、近いうちにそのときが訪れるかもしれない。
嫌だ、と強く思った瞬間、左頬に衝撃が走った。心地よい夢の中から意識を引き剥がされそうになり、無意識に和彦は抗うが、今度は肩に重みが加わり、揺さぶられた。
目を開けるより先に、口を開いて大きく息を吸い込む。もう夢の中ではなく、現実の世界だと理解した和彦は、失意に打ちひしがれながら、ゆっくりと目を開けた。
なぜか目の前に、賢吾の顔があった。目が覚めたつもりで、自分はまだ夢の中にいるのだろうかと一瞬混乱したが、頬を撫でてくるてのひらの感触は温かく、優しい。もっとも、顔を覗き込んでくる賢吾の眼差しは険しかった。
大蛇の潜む目だと、和彦はぼんやりと賢吾を見上げる。知らず知らずのうちに、両目から涙が溢れ出していた。賢吾はそっと眉をひそめ、痛ましげな表情を浮かべながら指先で涙を拭ってくれる。
「……ど、して……」
「携帯は電源が入ってないし、部屋の電話を鳴らしても出ねーから、何かあったんじゃないかと思ってな」
「ぼくがここに戻ったって、総和会から……?」
強い眠気に、涙を流しながら目を閉じそうになるが、賢吾に強く頬を擦られて、なんとか意識を保つ。
「あそこの連中は、隠し事ばかりだ。そうやって、お前を俺から取り上げようとする。だから安心できない。――盗聴器を仕掛けたままにしておいて、間違いなかったな」
そういうことかと、返事の代わりに和彦は吐息を洩らす。玄関に仕掛けられた盗聴器はしっかりとドアの開閉する音を拾い、和彦の帰宅を長嶺組に知らせたのだ。
賢吾の抜け目のなさに口元を緩めた和彦だが、その拍子に嗚咽が洩れる。賢吾はとっくに、和彦の様子が尋常ではないことに気づいていた。
「お前の眠りが深すぎるから、仕舞ってある安定剤の残りを確認した。……いつもより多く飲んだな」
この男に隠し事はできないと、和彦は観念した。その途端に、また涙が溢れ出てくる。
賢吾の唇がこめかみに触れ、涙を吸い取りながら囁かれた。
「――これから本宅に連れて行く。いいな?」
和彦は声を上げて泣き出しそうになりながら、小さく頷いた。
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