940 / 1,268
第38話
(21)
しおりを挟む
情欲が冷めることを許さないとばかりに、道具で内奥を嬲られる。否応なく肉の愉悦を引きずり出され、円を描くように道具を動かされると、尾を引く甘い呻き声を上げてしまう。奥深くまで捩じ込まれて苦しいはずなのに、和彦の欲望は再び身を起こしていた。
両足を大きく開いた格好を取らされ、その中心に守光が顔を埋めてくる。
「あっ、ふあっ……」
欲望を守光の口腔に含まれていた。先端を舌先でくすぐられたあと、きつく吸引される。同時に、内奥で道具を動かされ、和彦は腰を揺らす。
軽い絶頂を迎えたような気もするが、まるで波のように絶え間なく快感を送り込まれ、和彦は惑乱していた。口淫の合間に守光に囁かれるままに、卑猥な言葉を口走り、獣のような姿勢も取る。
守光によって限界まで精を搾り取られ、ようやく内奥から道具を引き抜かれたとき、和彦は息も絶え絶えになっていた。一方的に快感を与えられる代わりに、思考力を奪われたようで、まるで自分が肉でできた人形になったような感覚に陥る。
そんな和彦を満足げに見下ろしてから、守光に唇を塞がれた。行為の仕上げとばかりに、触れ合わせた舌先を伝って口腔に流し込まれたのは、和彦自身が放った精だった。
「んっ、ん」
わずかに抵抗の意思を示したが、吐き出すことは叶わず、唾液とともに自分の精を嚥下していた。
濡れた唇を守光に拭われて、和彦はぼんやりとする。全身が汗と精と潤滑剤で汚れてしまい、一刻も早く体を洗ってしまいたいと思いながらも、腕を持ち上げる気力も湧かない。
体を起こした守光が傍らに座り、和彦の髪に指を絡めてきた。
「あんたは従順だが、わしに対して常に、心を硬い殻で覆っている……、いや、守っている気がする。わしに心を探られるのが怖いかね?」
和彦はふうっと息を吐き出すと、何も考えられないまま、だからこそ正直に答えた。
「はい……」
頭の片隅で、守光と俊哉の関係について聞かなければと思うが、どう切り出せばいいのか、会話の糸口を見つけられない。
「だが今は、そうでもないだろう。あんたの体と心を、快感でドロドロに溶かしたつもりだ。こうでもしないと、あんたは素の反応を見せてくれないと思ったんだ」
和彦はゆっくりと瞬きを繰り返しながら、ひたすら守光の顔を見上げる。
穏やかな表情のまま、守光が静かな口調で切り出した。
「――明後日、あんたの父親である佐伯俊哉と会ってほしい」
即座には、守光の言葉を理解できなかった。
「えっ……」
「やむをえない理由で、あんたの父親と連絡を取ることになり、そのとき言われたんだ。息子が安全な生活を送れているのか確認したい。二人きりで会わせてくれと」
「……嫌、です。まだ、父には――」
頭で考えるより先に、答えを口にしていた。そしてそれが、自分の偽らざる本心なのだと実感していた。
和彦はもう一度、嫌です、と言って首を横に振る。一気に押し寄せてきた切迫した危機感に、呼吸すら危うくなっていた。しかし守光は――俊哉もだが、容赦なかった。
「残念だが、あんたに拒否権はない。佐伯俊哉に言われたよ。息子に会わせないなら、警察に相談すると。そうなると、誰が困ると思う? 優しいあんたなら、わかるだろう」
俊哉は鷹津と繋がっている。その鷹津を通じて、和彦がこちらでどんな生活を送っているかを把握している。それなのに、守光に本当にこんなことを言ったのだとしたら、目的はどこにあるのか。
考えたいのに思考力は鈍いままだ。このとき、電話越しに俊哉に言われた言葉を思い出した。
『わたしと話したことは、絶対に誰にも悟られるな』
ああ、と和彦は吐息を洩らす。自分の身柄を巡って、守光と俊哉の交渉が始まるのだと、ようやく悟った。
俊哉に居場所を知られた時点で、こんな瞬間は遅かれ早かれ訪れるとわかっていた。だが、和彦はなんの行動も起こさなかった。その理由は簡単で、あまりに子供じみていた。
ただ、今の生活を失いたくなかったのだ。
「当然、佐伯俊哉は、あんたを返せと言うだろう。しかしわしは、手放したくない。わしだけでなく、賢吾も千尋も、それ以外の男たちも。長嶺組にとっても総和会にとっても、あんたはもう欠かせない存在だ。さあ、どうするか――。それを考えるためにも、あんたは父親に会う必要がある」
守光が耳元に顔を寄せ、賢吾によく似た太く艶のある声で囁いた。
「わしらが、あんたを大事に扱っていると証明するために」
両足を大きく開いた格好を取らされ、その中心に守光が顔を埋めてくる。
「あっ、ふあっ……」
欲望を守光の口腔に含まれていた。先端を舌先でくすぐられたあと、きつく吸引される。同時に、内奥で道具を動かされ、和彦は腰を揺らす。
軽い絶頂を迎えたような気もするが、まるで波のように絶え間なく快感を送り込まれ、和彦は惑乱していた。口淫の合間に守光に囁かれるままに、卑猥な言葉を口走り、獣のような姿勢も取る。
守光によって限界まで精を搾り取られ、ようやく内奥から道具を引き抜かれたとき、和彦は息も絶え絶えになっていた。一方的に快感を与えられる代わりに、思考力を奪われたようで、まるで自分が肉でできた人形になったような感覚に陥る。
そんな和彦を満足げに見下ろしてから、守光に唇を塞がれた。行為の仕上げとばかりに、触れ合わせた舌先を伝って口腔に流し込まれたのは、和彦自身が放った精だった。
「んっ、ん」
わずかに抵抗の意思を示したが、吐き出すことは叶わず、唾液とともに自分の精を嚥下していた。
濡れた唇を守光に拭われて、和彦はぼんやりとする。全身が汗と精と潤滑剤で汚れてしまい、一刻も早く体を洗ってしまいたいと思いながらも、腕を持ち上げる気力も湧かない。
体を起こした守光が傍らに座り、和彦の髪に指を絡めてきた。
「あんたは従順だが、わしに対して常に、心を硬い殻で覆っている……、いや、守っている気がする。わしに心を探られるのが怖いかね?」
和彦はふうっと息を吐き出すと、何も考えられないまま、だからこそ正直に答えた。
「はい……」
頭の片隅で、守光と俊哉の関係について聞かなければと思うが、どう切り出せばいいのか、会話の糸口を見つけられない。
「だが今は、そうでもないだろう。あんたの体と心を、快感でドロドロに溶かしたつもりだ。こうでもしないと、あんたは素の反応を見せてくれないと思ったんだ」
和彦はゆっくりと瞬きを繰り返しながら、ひたすら守光の顔を見上げる。
穏やかな表情のまま、守光が静かな口調で切り出した。
「――明後日、あんたの父親である佐伯俊哉と会ってほしい」
即座には、守光の言葉を理解できなかった。
「えっ……」
「やむをえない理由で、あんたの父親と連絡を取ることになり、そのとき言われたんだ。息子が安全な生活を送れているのか確認したい。二人きりで会わせてくれと」
「……嫌、です。まだ、父には――」
頭で考えるより先に、答えを口にしていた。そしてそれが、自分の偽らざる本心なのだと実感していた。
和彦はもう一度、嫌です、と言って首を横に振る。一気に押し寄せてきた切迫した危機感に、呼吸すら危うくなっていた。しかし守光は――俊哉もだが、容赦なかった。
「残念だが、あんたに拒否権はない。佐伯俊哉に言われたよ。息子に会わせないなら、警察に相談すると。そうなると、誰が困ると思う? 優しいあんたなら、わかるだろう」
俊哉は鷹津と繋がっている。その鷹津を通じて、和彦がこちらでどんな生活を送っているかを把握している。それなのに、守光に本当にこんなことを言ったのだとしたら、目的はどこにあるのか。
考えたいのに思考力は鈍いままだ。このとき、電話越しに俊哉に言われた言葉を思い出した。
『わたしと話したことは、絶対に誰にも悟られるな』
ああ、と和彦は吐息を洩らす。自分の身柄を巡って、守光と俊哉の交渉が始まるのだと、ようやく悟った。
俊哉に居場所を知られた時点で、こんな瞬間は遅かれ早かれ訪れるとわかっていた。だが、和彦はなんの行動も起こさなかった。その理由は簡単で、あまりに子供じみていた。
ただ、今の生活を失いたくなかったのだ。
「当然、佐伯俊哉は、あんたを返せと言うだろう。しかしわしは、手放したくない。わしだけでなく、賢吾も千尋も、それ以外の男たちも。長嶺組にとっても総和会にとっても、あんたはもう欠かせない存在だ。さあ、どうするか――。それを考えるためにも、あんたは父親に会う必要がある」
守光が耳元に顔を寄せ、賢吾によく似た太く艶のある声で囁いた。
「わしらが、あんたを大事に扱っていると証明するために」
25
お気に入りに追加
1,391
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる