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第37話
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胸元を撫でられ、触れられないまま硬く凝った突起を探り当てられる。指の腹で軽く擦られただけで、うつ伏せの体を波打たせるほど感じてしまう。千尋が嬉しそうに言った。
「あとでいっぱい舐めて、吸って、噛んであげる。今はこれで我慢してね、先生」
胸の突起を指で挟まれ、抓るように刺激される。痛みはあるが、手荒い愛撫の心地よさが勝っていた。和彦が喉を鳴らして反応すると、もう片方の突起も同じ愛撫を施される。
内奥で千尋の欲望が蠢く。いや、蠢いているのは和彦の内奥のほうだ。さきほどから淫らな蠕動を繰り返し、若い欲望を貪り続けている。
そんな和彦を攻め立てながら、思い出したように千尋が切り出した。
「――先生、俺のために刺青入れてよ」
和彦は、突然耳に飛び込んできた情熱的な――ある意味物騒とも言える言葉に、完全に虚をつかれた。
「えっ……」
「小さくていいし、ずっと先でもいいから。俺だけは特別って意味で、何か肌に彫ってほしい」
「……刺青は、絶対入れない」
「俺の頼みでも?」
背骨のラインに沿って指先が這わされ、ゾクリと体が疼く。千尋の口調は、甘ったれの青年のものではなく、己が持つ力を自覚した筋者のそれだった。
「だったら、ぼくの頼みは無視するつもりか? 賢吾――お前の父親にも同じことを言われたけど、ぼくは承諾しなかった。……ここでお前の頼みに頷いたら、あとできっと同じことを、嫌でもお前の父親に約束させられる」
「それは困る、かも……」
千尋にしっかりと腰を抱き寄せられて、内奥深くを強く突かれる。間欠的に声を上げながら和彦は、腰に回された千尋の腕に爪を立てた。内奥で、千尋の欲望はこれ以上なく大きく膨らんでいた。
「はあっ……、このまま、先生のこと抱き殺しちゃいそう。好きすぎて、堪らないっ。独占できないのが、ムカつくのに、すげー興奮するんだ」
苛立ちともどかしさをぶつけるように千尋が激しい律動を始め、和彦は体を前後に揺さぶられる。嵐に巻き込まれたと感じたのは、わずかな間だった。
「あっ、あぁっ――」
熱い奔流が和彦の中で生まれる。千尋が注ぎ込んでくるたっぷりの精を受け止めながら、和彦は愉悦に喉を鳴らす。体だけではなく心も、千尋からぶつけられる狂おしいほどの想いに反応し、歓喜していた。
事後のけだるさに身を委ねながら和彦は、汗で湿った千尋の髪を飽きることなく撫でてやる。千尋は心地よさそうに目を細め、非常に満足げだ。
情熱と情欲が暴発したかのように、千尋は際限なく和彦を求めてきた。こうなると止める術はなく、好き勝手に貪られることとなったのだが、呆れはしても、嫌ではなかった。全身で愛情を表現してくる千尋に、ときおり怖さは覚えはするものの、それ以上に愛しさを抱いている。
人懐こい犬っころのふりをしながら、本質はしたたかでしなやかな獣だとわかっていながら――。
和彦は、千尋の頭を抱き寄せると、片手を背へと這わせる。ブルッと千尋が身を震わせた。
「――いままでと、変わった気がする」
ぼそりと千尋が洩らし、和彦は顔を覗き込む。すかさず唇を吸われた。
「何がだ?」
「先生が、俺を撫でる手つき。きちんと、一人前の男として認識してもらえてるっていうか……」
「刺青入れたぐらいで、一人前扱いなんてできるか。甘ったれの犬っころが」
「でも、もうガキだとは思ってないだろ。俺のこと」
挑発的な上目遣いで見つめられ、和彦は返事に詰まる。そんなことはない、とは言えなかったのだ。
「……気に病まなくていいよ、刺青のことは。俺が必要だと思ったから入れた。先生のために、なんて恩着せがましい気持ちはないんだ。長嶺の男の一人として、オヤジやじいちゃんと張り合うのに必要だから、そうした。決意を背負ったんだから、気合いが入るよ」
「すっかり、極道の男の口ぶりだ」
「まあ当分は、先生に甘やかされる犬っころではいるけどね。これは、俺だけの役得」
刺青を背負って言うようなことかと思いながら、和彦は口元を緩める。
少しの間、ベッドの上でしどけなく絡み合い、気だるく淫らな雰囲気を堪能していたが、先に体力が回復した千尋が再び挑んでこようとしたので、和彦は半ば本気で拒絶する。本当に抱き殺されかねないと危惧したのだ。
唇を尖らせた子供のように拗ねた素振りを見せて、千尋がもそりと起き上がる。
「仕方ないなー。先生がそこまで言うなら、我慢する」
「こっちが悪いような言い方をするな。……明日、仕事に行けなくなったら困る。泊まってもいいから、もうおとなしくしていろ」
渋々頷いた千尋が、気を取り直したように提案してきた。
「先生、風呂入ろう」
「あとでいっぱい舐めて、吸って、噛んであげる。今はこれで我慢してね、先生」
胸の突起を指で挟まれ、抓るように刺激される。痛みはあるが、手荒い愛撫の心地よさが勝っていた。和彦が喉を鳴らして反応すると、もう片方の突起も同じ愛撫を施される。
内奥で千尋の欲望が蠢く。いや、蠢いているのは和彦の内奥のほうだ。さきほどから淫らな蠕動を繰り返し、若い欲望を貪り続けている。
そんな和彦を攻め立てながら、思い出したように千尋が切り出した。
「――先生、俺のために刺青入れてよ」
和彦は、突然耳に飛び込んできた情熱的な――ある意味物騒とも言える言葉に、完全に虚をつかれた。
「えっ……」
「小さくていいし、ずっと先でもいいから。俺だけは特別って意味で、何か肌に彫ってほしい」
「……刺青は、絶対入れない」
「俺の頼みでも?」
背骨のラインに沿って指先が這わされ、ゾクリと体が疼く。千尋の口調は、甘ったれの青年のものではなく、己が持つ力を自覚した筋者のそれだった。
「だったら、ぼくの頼みは無視するつもりか? 賢吾――お前の父親にも同じことを言われたけど、ぼくは承諾しなかった。……ここでお前の頼みに頷いたら、あとできっと同じことを、嫌でもお前の父親に約束させられる」
「それは困る、かも……」
千尋にしっかりと腰を抱き寄せられて、内奥深くを強く突かれる。間欠的に声を上げながら和彦は、腰に回された千尋の腕に爪を立てた。内奥で、千尋の欲望はこれ以上なく大きく膨らんでいた。
「はあっ……、このまま、先生のこと抱き殺しちゃいそう。好きすぎて、堪らないっ。独占できないのが、ムカつくのに、すげー興奮するんだ」
苛立ちともどかしさをぶつけるように千尋が激しい律動を始め、和彦は体を前後に揺さぶられる。嵐に巻き込まれたと感じたのは、わずかな間だった。
「あっ、あぁっ――」
熱い奔流が和彦の中で生まれる。千尋が注ぎ込んでくるたっぷりの精を受け止めながら、和彦は愉悦に喉を鳴らす。体だけではなく心も、千尋からぶつけられる狂おしいほどの想いに反応し、歓喜していた。
事後のけだるさに身を委ねながら和彦は、汗で湿った千尋の髪を飽きることなく撫でてやる。千尋は心地よさそうに目を細め、非常に満足げだ。
情熱と情欲が暴発したかのように、千尋は際限なく和彦を求めてきた。こうなると止める術はなく、好き勝手に貪られることとなったのだが、呆れはしても、嫌ではなかった。全身で愛情を表現してくる千尋に、ときおり怖さは覚えはするものの、それ以上に愛しさを抱いている。
人懐こい犬っころのふりをしながら、本質はしたたかでしなやかな獣だとわかっていながら――。
和彦は、千尋の頭を抱き寄せると、片手を背へと這わせる。ブルッと千尋が身を震わせた。
「――いままでと、変わった気がする」
ぼそりと千尋が洩らし、和彦は顔を覗き込む。すかさず唇を吸われた。
「何がだ?」
「先生が、俺を撫でる手つき。きちんと、一人前の男として認識してもらえてるっていうか……」
「刺青入れたぐらいで、一人前扱いなんてできるか。甘ったれの犬っころが」
「でも、もうガキだとは思ってないだろ。俺のこと」
挑発的な上目遣いで見つめられ、和彦は返事に詰まる。そんなことはない、とは言えなかったのだ。
「……気に病まなくていいよ、刺青のことは。俺が必要だと思ったから入れた。先生のために、なんて恩着せがましい気持ちはないんだ。長嶺の男の一人として、オヤジやじいちゃんと張り合うのに必要だから、そうした。決意を背負ったんだから、気合いが入るよ」
「すっかり、極道の男の口ぶりだ」
「まあ当分は、先生に甘やかされる犬っころではいるけどね。これは、俺だけの役得」
刺青を背負って言うようなことかと思いながら、和彦は口元を緩める。
少しの間、ベッドの上でしどけなく絡み合い、気だるく淫らな雰囲気を堪能していたが、先に体力が回復した千尋が再び挑んでこようとしたので、和彦は半ば本気で拒絶する。本当に抱き殺されかねないと危惧したのだ。
唇を尖らせた子供のように拗ねた素振りを見せて、千尋がもそりと起き上がる。
「仕方ないなー。先生がそこまで言うなら、我慢する」
「こっちが悪いような言い方をするな。……明日、仕事に行けなくなったら困る。泊まってもいいから、もうおとなしくしていろ」
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「先生、風呂入ろう」
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