血と束縛と

北川とも

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第37話

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 千尋に尻の肉を鷲掴まれ、和彦は声を上げる。
「おいっ……」
「じっとしてて。すぐに気持ちよくしてあげるから」
 思いきり双丘を割り開かれ、何をされるか察して身を捩ろうとしたが、次の瞬間、ぴしゃりと尻を叩かれた。このとき和彦の全身を貫いたのは痛みではなく、強烈な疼きだった。
 熱い吐息が尻に触れ、鳥肌が立ちそうになる。
「千、尋っ……」
 柔らかく湿った感触が、いきなり内奥の入り口で蠢き始める。和彦は激しく羞恥を刺激され、千尋にこんなことをさせているという罪悪感にも似た感情に襲われるが、同時に、抗いがたい愉悦も生み出していた。
「はっ、あっ、あぁっ」
 執拗に内奥の入り口を舌先を舐められ、くすぐられ、少しずつ下肢から力が抜けていく。堪らず和彦が腰を揺らすと、もう一度千尋に尻を叩かれて、笑いを含んだ声で言われた。
「恥ずかしがるけど、すごく好きだよね、舐められるの。先生のここ、もう真っ赤になって、ヒクヒクしてる。快感に弱い、先生そのものだ。だから可愛いし、大好き」
 舌先がわずかに内奥に押し込まれてきて、浅ましくひくつかせてしまう。そこに、一本の指がやや強引に挿入された。
「んんっ」
 和彦は鼻にかかった甘い呻き声を洩らす。すぐに指が引き抜かれ、代わって舌が入り込む。油断ならない千尋の手が前に這わされ、柔らかな膨らみを優しい手つきで揉まれる。父親譲りの器用な指にあっという間に弱みを探り当てられた瞬間、和彦はビクリと背をしならせていた。
 指先で弄ばれ、刺激を与えられる。さんざん弱みを嬲られたあと、今度はやや乱暴な手つきで柔らかな膨らみを揉みしだかれて、和彦は立て続けに甲高い声を上げていた。
 腰が溶けてしまうと思ったところに、再び内奥に指を挿入される。今度は二本の指を出し入れされながら、発情し始めたばかりの襞と粘膜を擦り上げられる。ぐるりと内奥を撫で回されたかと思うと、浅い部分をまさぐられ、指の腹で強く押し上げられたときには、痺れるような法悦に軽い眩暈に襲われる。
「――先生、入れるね」
 和彦が全身を戦慄かせる頃になって、千尋がひそっと囁きかけてくる。振り返ってだらしない顔を晒せるはずもなく、和彦は布団に顔をうずめたまま頷く。すっかり汗ばんだ背を、燃えそうに熱くなっているてのひらでさらりと撫でられた。
「あっ……ん」
 念入りな愛撫で緩んだ内奥の入り口に欲望の先端が擦りつけられる。硬い感触がヌルリと挿入されてくる感触に、和彦の内奥は歓喜し、激しく収縮していた。
「すごい、悦んでる?」
 弾んだ息遣いで千尋に問われたが、答えられるはずもない。和彦は必死に声を堪えようとしたが、容赦なく背後から突き上げられて、唇を引き結ぶ間もなかった。
「うあっ、あっ、はっ……、ああっ」
 腰を掴まれ、内奥深くまで欲望を捻じ込まれる。下腹部に広がる重苦しさは、甘さと切なさを伴った感覚へとじわじわと変化していく。自分でもわかるほど、愛しげに千尋の欲望を締め付けていた。
 大きく息を吐き出した千尋が一度動きを止め、両手で和彦の体をまさぐってくる。開いた両足の間に片手が差し込まれ、反り返って震える欲望を扱かれると、ビクビクと腰が震える。透明なしずくを滴らせる先端を爪の先で弄られて、甲高い声で鳴いてしまう。
「……先生、気持ちいいんでしょ。中、締まりまくってる」
 内奥の収縮を確かめるように、千尋が緩く律動する。しかし、不意打ちで奥深くを抉るように突かれて、全身に快美さが駆け抜ける。絶頂を迎え、精を迸らせていた。
「ひっ、あぁっ――」
 次の瞬間、ズルリと内奥から千尋の欲望が引き抜かれ、それでなくても脆くなっている襞と粘膜を強く擦り上げられる。充血してひくつく淫らな肉の洞を、千尋が食い入るように見つめていると、振り返らずともわかった。その証拠に、感嘆したように千尋が言葉を洩らす。
「俺の形に広がって、いやらしい。でも、可愛い。ヒクヒクと震えながら、ゆっくりと閉じようとしてる。どうせすぐに、俺がまた広げちゃうのに」
 こうやって、と千尋の欲望が再び内奥に挿入されてくる。一息に深くしっかりと繋がると、絶頂の余韻から覚めていない和彦を背後から揺さぶってくる。そのたびに内奥深くを力強く突かれ、間断なく快感の波に襲われる。
「千尋っ……、少し、待ってくれ……」
「ダメだよ。先生、こんなに気持ちよさそうなのに、止まったらもったいないよ。俺も、気持ちいいし」
 暴走しているようで、千尋は快感をコントロールしていた。自分が達しそうになると律動を緩め、代わって和彦の体をまさぐって愛撫してくる。和彦にだけ、絶えず快感を送り込んでくるのだ。

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