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第35話
(27)
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ベッドの上で体を引きずられた和彦は、仰向けで横たわった状態となる。すかさず千尋が覆い被さってきて、抱きついてきた。和彦は声を上げ、なんとか抜け出そうともがき、両手足をばたつかせるが、千尋はがっちりと押さえ込んでくる。
あっという間に和彦の息は上がり、悠然と見下ろしてくる千尋を睨めつける。
「……ぼくと、プロレスごっこでもしたいのか?」
「じゃれてるだけ。好きだよね、先生。俺をでっかい犬っころ扱いして甘やかすの。……今は、男を甘やかすより、犬っころを甘やかすほうが気が楽だと思ってさ」
千尋が胸にしがみついてきたので、反射的にしなやかな体に両腕を回す。鼻を鳴らした千尋が、ペロリと首筋を舐めてきた。さらにもう一度舐められて、和彦は小さく笑みをこぼす。
「くすぐったい」
「じゃあ、もっと舐めてあげる」
千尋の舌先が肌を滑り、さりげなくパジャマの上着を脱がされていく。それに気づいた和彦が声を上げようとしたとき、剥き出しになった肩先に軽く噛みつかれた。
「――……本当に犬だ」
千尋の髪を掻き乱しながら、ベッドの上で抱き合い転がる。ときおり思い出したように千尋が顔を上げ、戯れのような口づけを交わす。すぐに夢中になった千尋が、和彦をベッドに押さえつけてこようとするが、柔らかな口調で窘める。
「じゃれてるだけ、だろ?」
「そうだけど……、少しぐらい過剰なスキンシップになっても……」
「なんなら、空いている部屋で寝るか? マットぐらいは敷いてやるから」
千尋が大仰に首を横に振り、和彦の肩に額を押し当てる。
「……我慢します」
和彦は微苦笑を洩らすと、反対に千尋をベッドに押さえつけて、その上に乗り上がる。驚いたように千尋が目を丸くした。
「先生……?」
「お前が言ったんだろ。ぼくが、甘やかすのが好きだって」
短パンの上から、千尋の両足の中心をまさぐる。さきほどから気づいていたが、欲望が硬くなっていた。
直に触れると、千尋が息を詰める。和彦はTシャツをたくし上げ、千尋の胸元に指先を這わせながら、外に引き出した欲望をそっと握り締める。緩く扱いただけで、千尋は小さく声を洩らした。
素直な反応に、意識しないまま和彦は表情を和らげる。それを見た千尋が、拗ねたように呟いた。
「先生、笑ってる」
「お前が可愛いからな。素直で、健やかだ」
欲望を握った手を動かしながら、引き締まった腹部に唇を押し当てると、ビクビクと千尋の腰が震える。かまわず和彦は、腹部から胸にかけて舌先を這わせ、ときには強く肌を吸い上げる。手の中で、千尋の欲望が熱く大きくなり、力強く脈打ち始めた。
括れを優しく擦り、先端はさらに繊細に撫でてやる。千尋は、和彦に身を任せる気になったのか、両手をベッドに投げ出し、大きく深い呼吸を繰り返す。
和彦は、自分がされたように、千尋の胸の突起に丹念な愛撫を施す。強く吸ってから甘噛みしたときには、切なげな声を上げ、同時に欲望が一層大きくなる。
逞しくなった欲望の根元を指の輪で締め付け、すぐに緩め、また締め付ける。先端からトロリと透明なしずくが垂れ落ちたので、和彦は指先で掬い取り、先端に塗り込める。
「せん、せ……、すげー、いい。気持ち、いい――」
喘ぐ千尋の唇を、そっと啄ばむ。上唇と下唇に交互に触れ、舌先でなぞってやると、千尋のほうから和彦の唇に吸い付いてきたが、頭を引いて焦らす。千尋が泣き出しそうな顔で見上げてきた。和彦は欲望を扱く手の動きを速める。
「先生、もう出る、から……。先生の中に、入れたい」
「今夜はダメだ」
「――……鷹津とのセックスの記憶が薄れるから?」
和彦は答えなかった。自覚はなかったが、指摘されて初めて、そうなのだろうかと思ったからだ。
千尋がしがみついてきて、低い呻き声を洩らしながら和彦の手で果てた。
クリニックからの帰りの車中、組員からこれから本宅に向かうと告げられたとき、和彦は心の中で嘆息した。
総和会や長嶺組が、自分を放置しておく状況がいつまでも続くはずがないとわかっていただけに、いよいよか、というのが、正直な感想だ。明後日から九月の連休に入るため、何かあるかもしれないと予感めいたものもあったのだ。
本宅に着くと、すぐに賢吾の部屋へと案内された。
座椅子に座っている賢吾に薄い笑みを向けられ、気圧されて足が竦む。
「どうした、座らないのか?」
賢吾に声をかけられて、ぎこちなく返事をした和彦は向かいの座椅子についたが、無遠慮な視線に晒されて居心地が悪い。
「――千尋や、先生の世話をしている組の者から聞いてはいたが、落ち着いてはいるようだな。少なくとも、メシはきちんと食って、睡眠もとっているようだし」
あっという間に和彦の息は上がり、悠然と見下ろしてくる千尋を睨めつける。
「……ぼくと、プロレスごっこでもしたいのか?」
「じゃれてるだけ。好きだよね、先生。俺をでっかい犬っころ扱いして甘やかすの。……今は、男を甘やかすより、犬っころを甘やかすほうが気が楽だと思ってさ」
千尋が胸にしがみついてきたので、反射的にしなやかな体に両腕を回す。鼻を鳴らした千尋が、ペロリと首筋を舐めてきた。さらにもう一度舐められて、和彦は小さく笑みをこぼす。
「くすぐったい」
「じゃあ、もっと舐めてあげる」
千尋の舌先が肌を滑り、さりげなくパジャマの上着を脱がされていく。それに気づいた和彦が声を上げようとしたとき、剥き出しになった肩先に軽く噛みつかれた。
「――……本当に犬だ」
千尋の髪を掻き乱しながら、ベッドの上で抱き合い転がる。ときおり思い出したように千尋が顔を上げ、戯れのような口づけを交わす。すぐに夢中になった千尋が、和彦をベッドに押さえつけてこようとするが、柔らかな口調で窘める。
「じゃれてるだけ、だろ?」
「そうだけど……、少しぐらい過剰なスキンシップになっても……」
「なんなら、空いている部屋で寝るか? マットぐらいは敷いてやるから」
千尋が大仰に首を横に振り、和彦の肩に額を押し当てる。
「……我慢します」
和彦は微苦笑を洩らすと、反対に千尋をベッドに押さえつけて、その上に乗り上がる。驚いたように千尋が目を丸くした。
「先生……?」
「お前が言ったんだろ。ぼくが、甘やかすのが好きだって」
短パンの上から、千尋の両足の中心をまさぐる。さきほどから気づいていたが、欲望が硬くなっていた。
直に触れると、千尋が息を詰める。和彦はTシャツをたくし上げ、千尋の胸元に指先を這わせながら、外に引き出した欲望をそっと握り締める。緩く扱いただけで、千尋は小さく声を洩らした。
素直な反応に、意識しないまま和彦は表情を和らげる。それを見た千尋が、拗ねたように呟いた。
「先生、笑ってる」
「お前が可愛いからな。素直で、健やかだ」
欲望を握った手を動かしながら、引き締まった腹部に唇を押し当てると、ビクビクと千尋の腰が震える。かまわず和彦は、腹部から胸にかけて舌先を這わせ、ときには強く肌を吸い上げる。手の中で、千尋の欲望が熱く大きくなり、力強く脈打ち始めた。
括れを優しく擦り、先端はさらに繊細に撫でてやる。千尋は、和彦に身を任せる気になったのか、両手をベッドに投げ出し、大きく深い呼吸を繰り返す。
和彦は、自分がされたように、千尋の胸の突起に丹念な愛撫を施す。強く吸ってから甘噛みしたときには、切なげな声を上げ、同時に欲望が一層大きくなる。
逞しくなった欲望の根元を指の輪で締め付け、すぐに緩め、また締め付ける。先端からトロリと透明なしずくが垂れ落ちたので、和彦は指先で掬い取り、先端に塗り込める。
「せん、せ……、すげー、いい。気持ち、いい――」
喘ぐ千尋の唇を、そっと啄ばむ。上唇と下唇に交互に触れ、舌先でなぞってやると、千尋のほうから和彦の唇に吸い付いてきたが、頭を引いて焦らす。千尋が泣き出しそうな顔で見上げてきた。和彦は欲望を扱く手の動きを速める。
「先生、もう出る、から……。先生の中に、入れたい」
「今夜はダメだ」
「――……鷹津とのセックスの記憶が薄れるから?」
和彦は答えなかった。自覚はなかったが、指摘されて初めて、そうなのだろうかと思ったからだ。
千尋がしがみついてきて、低い呻き声を洩らしながら和彦の手で果てた。
クリニックからの帰りの車中、組員からこれから本宅に向かうと告げられたとき、和彦は心の中で嘆息した。
総和会や長嶺組が、自分を放置しておく状況がいつまでも続くはずがないとわかっていただけに、いよいよか、というのが、正直な感想だ。明後日から九月の連休に入るため、何かあるかもしれないと予感めいたものもあったのだ。
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「どうした、座らないのか?」
賢吾に声をかけられて、ぎこちなく返事をした和彦は向かいの座椅子についたが、無遠慮な視線に晒されて居心地が悪い。
「――千尋や、先生の世話をしている組の者から聞いてはいたが、落ち着いてはいるようだな。少なくとも、メシはきちんと食って、睡眠もとっているようだし」
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