血と束縛と

北川とも

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第35話

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 手の中でますます硬さと大きさを増す欲望の変化に、静かな喜びを覚えていた。鷹津は、自分を求めて興奮し、こんなささやかな愛撫でも感じてくれているのだ。
 和彦が身を任せきったタイミングで、鷹津が低い声で言った。
「――舐めてくれ、和彦」
 和彦が伏せていた視線を上げると、目元に唇が押し当てられる。もう一度唇を吸い合ってから、鷹津が壁にもたれかかり、和彦はタイルに膝をついた。
 鷹津の欲望を掴んで顔を寄せる。先端に軽い口づけを繰り返しただけで、鷹津の引き締まった下腹部が強張った。括れまでをゆっくりと口腔に含み、舌先でくすぐりながら優しく吸引すると、欲望がドクンと脈打って震える。先端を優しく吸い上げてやると、濡れた髪に鷹津が指を絡めてきた。
 促されるように和彦は、舌を添えて欲望を口腔深くまで呑み込んでいく。すぐには動かない。ただじっとして、鷹津の欲望が充溢した大きさとなり、歓喜に震えている様子を直に感じる。
 浴室に立ち込める熱気によってのぼせそうだった。一度口腔から欲望を出した和彦は大きく息を吸い込むと、再び欲望を含み、唇で締め付けるようにして口腔から出し入れする。逞しい根元を指で擦りながら、ときおり先端に吸いついて、滲み始めた透明なしずくを舐め取ってから、硬くした舌先で弄る。
「腰が溶けそうだ……」
 苦笑交じりの声でそう言った鷹津に頭を押さえつけられ、和彦はやや強引に口腔深くまで欲望で犯される。大きな異物を押し込まれたせいで、息苦しさに息が詰まる。それが、鷹津にとっての快感となる。
「……いい、締まりだ。ねっとりと吸い付いて、いやらしく蠢いて……。お前も、感じるか?」
 鷹津の爪先が両足の間に入り込み、中心をまさぐられる。鷹津の欲望に口腔で奉仕しながら、和彦の欲望もまた、疼いていた。
 口淫を堪能した鷹津だが、和彦の口腔で達しようとはしなかった。濡れた体のまま和彦は浴室から連れ出され、ベッドに押し倒される。体の上に乗りかかってきた鷹津は目を細めて、まるで眼差しで愛撫するかのように、じっくりと見下ろしてくる。
「――……なんだ」
 寸前まで口淫に及んでいながら、いまさらながら羞恥に襲われた和彦は、睨みつけるようにして鷹津を見つめ返す。鷹津は口元に淡い笑みを浮かべた。
「お前が、俺に抱かれたがっていると思ってな」
「だっ……、誰がっ――」
「俺は、抱きたくて堪らない。俺の可愛いオンナを」
 和彦の濡れた肌にてのひらを這わせたあと、鷹津が胸元に顔を伏せる。肌に残る水滴を丹念に何度も舐め取られ、最初は体を硬くしていた和彦だが、すぐに愛撫の心地よさに酔う。浴室での行為もあり、情欲の高まりは驚くほど早かった。
「あっ、あぁ……」
 愛撫を期待してすでに硬く凝っている突起を口腔に含まれ、きつく吸われる。小さな快感が胸元に生まれて息を弾ませると、もう片方の突起は荒々しくてのひらで転がされていた。
 露骨に濡れた音を立てて肌を吸い上げながら、鷹津は鮮やかな愛撫の痕跡を残していく。今の状況で、それを咎めることはできなかった。
 両足の中心に手が這わされ、鷹津に欲望を掴まれる。和彦の欲望も、すでに熱くなって形を変えていた。大きく動いた鷹津が、和彦の両足を左右に開いて顔を埋める。ただし、触れてきたのは内腿だった。
「んっ」
 いまだ水滴を残している内腿をベロリと舐め上げたあと、鷹津が強く肌に吸い付く。和彦は無意識のうちに腰を揺らし、鷹津の頭をさらに奥へと迎え入れようとしたが、焦らしているつもりなのか、愛撫は内腿から膝へと移動する。
「秀っ……」
 もどかしさから名を呼ぶと、鷹津がニヤリと笑う。
「舐めてほしいか?」
「――……舐めてくれ」
「だったら、俺の言うとおりにしろ」
 こう言われた時点で嫌な予感はしたし、実際、鷹津が求めてきたのはとんでもない要求だったが、和彦は拒めなかった。
 ベッドに仰向けになった鷹津の上に乗り上がり、互いの頭の向きを違える。掴み寄せられた腰を鷹津の眼前に突き出す屈辱と羞恥に満ちた姿勢を取らされて、和彦は体を震わせていた。
「さて、どこを舐めてほしい? この位置なら、お前のいいところを全部舐めてやれる」
 意識しないまま腰が逃げそうになるが、鷹津に尻の肉を掴まれて阻まれる。和彦は、秘部のすべてに強い視線を感じ、全身を熱くする。
 この状況でも萎えるどころか、硬さを増して震える欲望を無遠慮に片手で掴まれる。
「んっ……」
 先端に濡れた感触が触れ、ゾクゾクするような感覚が腰から背筋へと這い上がっていた。欲望がゆっくりと熱い感触に包み込まれていく。鷹津の口腔に呑み込まれたのだとわかったとき、和彦は尾を引く甘い呻き声を洩らしていた。

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