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第34話
(26)
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もう一度たっぷりの潤滑剤を内奥に施されてから、浴衣の前をわずかに寛げた守光が腰を密着させてくる。落ち着いた佇まいからは想像できないほど高ぶった欲望が、すっかり慎みを失って色づいた内奥の入り口に押し当てられたかと思うと、身構える間もなく押し入ってきた。
「ううっ――」
感じやすくなっている内奥の襞と粘膜が、強く擦り上げられて歓喜する。和彦は喉元を反らし上げて目を閉じていた。瞼の裏で鮮やかな閃光が飛び交い、もしかすると放埓に声を上げていたのかもしれないが、この瞬間和彦は、快感の嵐に翻弄され、何もわからなくなっていた。内奥の刺激だけで絶頂に達していたのだ。
ようやく自分を取り戻したとき、激しい呼吸を繰り返しながら、すがるように守光を見上げていた。
「あんたを血肉にするどころか、わしのほうがあんたに食われそうだ。――わしの肉でも、欲しがってくれるかね?」
うっすらと笑みを浮かべた守光が軽く腰を揺すり、繋がっている部分が淫靡な音を立てる。和彦は顔を背けて唇を噛んだが、守光はさらにもう一度腰を揺すってから、和彦のあごに手をかけてきた。
唇が重なってきて、口腔に舌が侵入してくる。一方で内奥では、奥深くまで欲望が押し入り、丹念に和彦の弱い部分を突いてくる。
甘い毒のような快感で酔わされ、自分の体だけではなく、心まで支配されていくのを感じた。和彦はもう抵抗する気力どころか、意味すら失い、あとはもう守光を受け入れていくだけだった。
おずおずと両腕を動かし、浴衣越しに守光の背にしがみつく。いまだ一度しか目にしたことのない九本の尾を持つ狐の姿を脳裏に描きながら。
和彦のこの行為が意味を持つことを、守光は知っていた。
「――淫奔だが、慎み深くもあるオンナが、ようやくわしを受け入れてくれた」
笑いを含んだ声でそう呟いた守光が、内奥深くを抉るように一度だけ突き上げてくる。和彦はビクビクと体を震わせて、尾を引く嬌声を上げる。
精を放つこともできず、快感を味わいながらも苦しんでいる和彦の欲望を片手で握り締め、守光が胸元に唇を這わせ始める。所有の証を刻み付けるように、容赦なく鮮やかな鬱血の跡を散らし、そのたびに和彦は喘ぎ声をこぼす。興奮で凝ったままの胸の突起を舌先で舐られたあと、きつく吸われて、歯を立てられる。一瞬の痛みのあと、じわりと快感が胸元に広がる。
顔を上げた守光が、ふうっと息を吐き出した。
「あんたの中がよく反応している。愛しげに締め付けてきて、まとわりついて、まるで、わしだけが欲しいと訴えているようだ。あんたにこんなふうに甘えられたら、賢吾も千尋もたまらんだろう。……他の男たちも」
和彦は顔を強張らせたが、守光は楽しげに口元を綻ばせると、優しい手つきで頬を撫でてきた。
「わしが怖いか?」
「……はい、とても」
この状態でウソはつけなかった。守光は気を悪くした様子もなく、軽く頷いたあと、和彦の首筋に唇を這わせながらこう言った。
「何も怖がらなくていい。あんたはただ、強い力に身を委ねているだけでいいんだ。――今、あんたの周囲で一番強い力を持っているのは、わしかな……」
言外に、逆らうなと仄めかされた。快感で頭の芯が蕩けかかっていても、それぐらいはわかる。
和彦は、守光に対する恐怖を抑えつけ、ますます強く背にしがみついた。〈オンナ〉の媚びを、守光は好ましいものと受け止めたらしく、その褒美として、内奥深くに精を注ぎ込まれた。
「うっ、あっ……」
短く声を洩らした和彦は、浅ましく腰を揺らして守光の欲望を締め付ける。無意識のうちに両手をさまよわせ、浴衣の上から守光の刺青をまさぐっていた。もう何度も守光と体を重ねているが、両腕で感じる硬い体の感触は新鮮――というより、得体が知れなかった。
自分を支配している男の感触だと思うと、抑えつけた恐怖が蘇りそうになり、必死で快楽に逃げ込む。
守光が、組み紐で誡められたままの和彦の欲望を、てのひらで弄び始める。感覚が鈍くなりかけているとはいえ、強く扱かれると、やはり震えがくるような快感が生まれる。
「んんっ、はっ……、あっ、ああっ」
柔らかな膨らみを手荒く揉みしだかれ、全身を戦慄かせる。宥めるように守光に唇を吸われて、必死に吸い返していた。
口づけの合間に、ゾクリとするようなことを守光が囁きかけてくる。
「あんたのために作らせた新しい〈おもちゃ〉を試してみたいんだが、かまわんかな?」
きっと気に入る、とさらに続けられ、和彦は吐息を洩らして頷く。
「ううっ――」
感じやすくなっている内奥の襞と粘膜が、強く擦り上げられて歓喜する。和彦は喉元を反らし上げて目を閉じていた。瞼の裏で鮮やかな閃光が飛び交い、もしかすると放埓に声を上げていたのかもしれないが、この瞬間和彦は、快感の嵐に翻弄され、何もわからなくなっていた。内奥の刺激だけで絶頂に達していたのだ。
ようやく自分を取り戻したとき、激しい呼吸を繰り返しながら、すがるように守光を見上げていた。
「あんたを血肉にするどころか、わしのほうがあんたに食われそうだ。――わしの肉でも、欲しがってくれるかね?」
うっすらと笑みを浮かべた守光が軽く腰を揺すり、繋がっている部分が淫靡な音を立てる。和彦は顔を背けて唇を噛んだが、守光はさらにもう一度腰を揺すってから、和彦のあごに手をかけてきた。
唇が重なってきて、口腔に舌が侵入してくる。一方で内奥では、奥深くまで欲望が押し入り、丹念に和彦の弱い部分を突いてくる。
甘い毒のような快感で酔わされ、自分の体だけではなく、心まで支配されていくのを感じた。和彦はもう抵抗する気力どころか、意味すら失い、あとはもう守光を受け入れていくだけだった。
おずおずと両腕を動かし、浴衣越しに守光の背にしがみつく。いまだ一度しか目にしたことのない九本の尾を持つ狐の姿を脳裏に描きながら。
和彦のこの行為が意味を持つことを、守光は知っていた。
「――淫奔だが、慎み深くもあるオンナが、ようやくわしを受け入れてくれた」
笑いを含んだ声でそう呟いた守光が、内奥深くを抉るように一度だけ突き上げてくる。和彦はビクビクと体を震わせて、尾を引く嬌声を上げる。
精を放つこともできず、快感を味わいながらも苦しんでいる和彦の欲望を片手で握り締め、守光が胸元に唇を這わせ始める。所有の証を刻み付けるように、容赦なく鮮やかな鬱血の跡を散らし、そのたびに和彦は喘ぎ声をこぼす。興奮で凝ったままの胸の突起を舌先で舐られたあと、きつく吸われて、歯を立てられる。一瞬の痛みのあと、じわりと快感が胸元に広がる。
顔を上げた守光が、ふうっと息を吐き出した。
「あんたの中がよく反応している。愛しげに締め付けてきて、まとわりついて、まるで、わしだけが欲しいと訴えているようだ。あんたにこんなふうに甘えられたら、賢吾も千尋もたまらんだろう。……他の男たちも」
和彦は顔を強張らせたが、守光は楽しげに口元を綻ばせると、優しい手つきで頬を撫でてきた。
「わしが怖いか?」
「……はい、とても」
この状態でウソはつけなかった。守光は気を悪くした様子もなく、軽く頷いたあと、和彦の首筋に唇を這わせながらこう言った。
「何も怖がらなくていい。あんたはただ、強い力に身を委ねているだけでいいんだ。――今、あんたの周囲で一番強い力を持っているのは、わしかな……」
言外に、逆らうなと仄めかされた。快感で頭の芯が蕩けかかっていても、それぐらいはわかる。
和彦は、守光に対する恐怖を抑えつけ、ますます強く背にしがみついた。〈オンナ〉の媚びを、守光は好ましいものと受け止めたらしく、その褒美として、内奥深くに精を注ぎ込まれた。
「うっ、あっ……」
短く声を洩らした和彦は、浅ましく腰を揺らして守光の欲望を締め付ける。無意識のうちに両手をさまよわせ、浴衣の上から守光の刺青をまさぐっていた。もう何度も守光と体を重ねているが、両腕で感じる硬い体の感触は新鮮――というより、得体が知れなかった。
自分を支配している男の感触だと思うと、抑えつけた恐怖が蘇りそうになり、必死で快楽に逃げ込む。
守光が、組み紐で誡められたままの和彦の欲望を、てのひらで弄び始める。感覚が鈍くなりかけているとはいえ、強く扱かれると、やはり震えがくるような快感が生まれる。
「んんっ、はっ……、あっ、ああっ」
柔らかな膨らみを手荒く揉みしだかれ、全身を戦慄かせる。宥めるように守光に唇を吸われて、必死に吸い返していた。
口づけの合間に、ゾクリとするようなことを守光が囁きかけてくる。
「あんたのために作らせた新しい〈おもちゃ〉を試してみたいんだが、かまわんかな?」
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