血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
822 / 1,268
第34話

(26)

しおりを挟む
 もう一度たっぷりの潤滑剤を内奥に施されてから、浴衣の前をわずかに寛げた守光が腰を密着させてくる。落ち着いた佇まいからは想像できないほど高ぶった欲望が、すっかり慎みを失って色づいた内奥の入り口に押し当てられたかと思うと、身構える間もなく押し入ってきた。
「ううっ――」
 感じやすくなっている内奥の襞と粘膜が、強く擦り上げられて歓喜する。和彦は喉元を反らし上げて目を閉じていた。瞼の裏で鮮やかな閃光が飛び交い、もしかすると放埓に声を上げていたのかもしれないが、この瞬間和彦は、快感の嵐に翻弄され、何もわからなくなっていた。内奥の刺激だけで絶頂に達していたのだ。
 ようやく自分を取り戻したとき、激しい呼吸を繰り返しながら、すがるように守光を見上げていた。
「あんたを血肉にするどころか、わしのほうがあんたに食われそうだ。――わしの肉でも、欲しがってくれるかね?」
 うっすらと笑みを浮かべた守光が軽く腰を揺すり、繋がっている部分が淫靡な音を立てる。和彦は顔を背けて唇を噛んだが、守光はさらにもう一度腰を揺すってから、和彦のあごに手をかけてきた。
 唇が重なってきて、口腔に舌が侵入してくる。一方で内奥では、奥深くまで欲望が押し入り、丹念に和彦の弱い部分を突いてくる。
 甘い毒のような快感で酔わされ、自分の体だけではなく、心まで支配されていくのを感じた。和彦はもう抵抗する気力どころか、意味すら失い、あとはもう守光を受け入れていくだけだった。
 おずおずと両腕を動かし、浴衣越しに守光の背にしがみつく。いまだ一度しか目にしたことのない九本の尾を持つ狐の姿を脳裏に描きながら。
 和彦のこの行為が意味を持つことを、守光は知っていた。
「――淫奔だが、慎み深くもあるオンナが、ようやくわしを受け入れてくれた」
 笑いを含んだ声でそう呟いた守光が、内奥深くを抉るように一度だけ突き上げてくる。和彦はビクビクと体を震わせて、尾を引く嬌声を上げる。
 精を放つこともできず、快感を味わいながらも苦しんでいる和彦の欲望を片手で握り締め、守光が胸元に唇を這わせ始める。所有の証を刻み付けるように、容赦なく鮮やかな鬱血の跡を散らし、そのたびに和彦は喘ぎ声をこぼす。興奮で凝ったままの胸の突起を舌先で舐られたあと、きつく吸われて、歯を立てられる。一瞬の痛みのあと、じわりと快感が胸元に広がる。
 顔を上げた守光が、ふうっと息を吐き出した。
「あんたの中がよく反応している。愛しげに締め付けてきて、まとわりついて、まるで、わしだけが欲しいと訴えているようだ。あんたにこんなふうに甘えられたら、賢吾も千尋もたまらんだろう。……他の男たちも」
 和彦は顔を強張らせたが、守光は楽しげに口元を綻ばせると、優しい手つきで頬を撫でてきた。
「わしが怖いか?」
「……はい、とても」
 この状態でウソはつけなかった。守光は気を悪くした様子もなく、軽く頷いたあと、和彦の首筋に唇を這わせながらこう言った。
「何も怖がらなくていい。あんたはただ、強い力に身を委ねているだけでいいんだ。――今、あんたの周囲で一番強い力を持っているのは、わしかな……」
 言外に、逆らうなと仄めかされた。快感で頭の芯が蕩けかかっていても、それぐらいはわかる。
 和彦は、守光に対する恐怖を抑えつけ、ますます強く背にしがみついた。〈オンナ〉の媚びを、守光は好ましいものと受け止めたらしく、その褒美として、内奥深くに精を注ぎ込まれた。
「うっ、あっ……」
 短く声を洩らした和彦は、浅ましく腰を揺らして守光の欲望を締め付ける。無意識のうちに両手をさまよわせ、浴衣の上から守光の刺青をまさぐっていた。もう何度も守光と体を重ねているが、両腕で感じる硬い体の感触は新鮮――というより、得体が知れなかった。
 自分を支配している男の感触だと思うと、抑えつけた恐怖が蘇りそうになり、必死で快楽に逃げ込む。
 守光が、組み紐で誡められたままの和彦の欲望を、てのひらで弄び始める。感覚が鈍くなりかけているとはいえ、強く扱かれると、やはり震えがくるような快感が生まれる。
「んんっ、はっ……、あっ、ああっ」
 柔らかな膨らみを手荒く揉みしだかれ、全身を戦慄かせる。宥めるように守光に唇を吸われて、必死に吸い返していた。
 口づけの合間に、ゾクリとするようなことを守光が囁きかけてくる。
「あんたのために作らせた新しい〈おもちゃ〉を試してみたいんだが、かまわんかな?」
 きっと気に入る、とさらに続けられ、和彦は吐息を洩らして頷く。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...