血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
789 / 1,268
第33話

(24)

しおりを挟む
 和彦は背を弓なりに反らして、意識が舞い上がるような感覚に襲われる。ほんのわずかな間だったのか、それとも何十秒も続いていたのか認識できなかったが、ふと息苦しさを感じて、大きく息を吸い込む。同時に、一気に体中の力が抜けた。
「大丈夫か?」
 そう問いかけてきた賢吾に、和彦は頷き返すこともできない。頭がふらつき、自分の体も支えられないのだ。見かねたように千尋が腕を伸ばしてきて、抱き寄せられる。賢吾との繋がりが解けた途端、内奥からドロリと二人分の精が溢れ出し、反射的に体を強張らせる。できることなら、こんな姿を見られたくないのに、長嶺の男たちは気にしないどころか、むしろ自分たちの成果として確認したがった。
「嫌、だ……」
 和彦は弱々しい声で訴えたが、当然のように聞き入れられない。今夜、できうる限りの淫らな行為に耽りたいという思いが、男たちにはあるようだ。
 布団に仰向けで横たえられ、力をなくした両足を容赦なく賢吾に掴み上げられる。二人の男の欲望にこじ開けられ、擦り上げられた内奥は閉じることもかなわず、浅ましくひくついている。白濁とした精を垂らす一方で、組み紐で縛められた欲望は反り返ったまま、先端を透明なしずくで濡らしていた。和彦の淫奔さを雄弁に物語っている部分を、まるで視線で愛撫をするかのように、三人の男たちに凝視される。
 快感で蕩けた頭でも、わずかながら羞恥を感じる思考力は残っていた。和彦はやめてくれるよう哀願していたが、当然のように無視された。
「うあっ、あっ――……」
 欲望に巻きつく組み紐をなぞるように、賢吾の舌先が卑猥に動く。欲望を舐めているようで、直に舌先が触れているわけではないもどかしい刺激に、和彦は腰を揺らす。呻き声を洩らすと、枕元に這い寄ってきた千尋が身を伏せ、和彦の唇をペロリと舐めてきた。
 父子の舌が、同時に和彦の欲望と口腔を嬲り始める。快感による地獄だと思った。これまでも、賢吾と千尋と同時に交わったことはあるが、ここまで切迫した感覚には襲われなかった。今の和彦は、とにかく与えられる快感が怖い。抜け出せなくなりそうで。
 和彦のすべてを貪り尽くす前に、ようやく賢吾と千尋が体を離す。このとき、欲望をずっと縛めていた組み紐が解かれていた。その意味は、すぐにわかった。
 浴衣の前をわずかに寛げて、守光が覆い被さってくる。片足を抱え上げられ、痺れたように疼痛を訴えている内奥に、欲望を挿入された。
 声も出せず身悶えながら和彦は、三人の男たちに見守られながら、欲望から精を噴き上げる。同時に、内奥深くを守光の欲望に突き上げられた。咄嗟に閉じた瞼の裏で鮮やかな光がちらつき、その光に酔い痴れそうになる。気がついたときには、恥知らずな悦びの声を溢れさせていた。
「――気持ちよさそうに、よく鳴く。あんたに痛い思いをさせるんじゃないかと心配していたが、大丈夫なようだな」
 欲望を慎重に動かしながら、守光が柔らかな笑いを含んだ声で言う。息を喘がせ、満足に返事もできない和彦の頬を撫で、汗で濡れた髪を掻き上げられた。
 守光のてのひらが、体中に這わされる。さすがに、自ら放った精で汚れた下腹部に触れられたときは身じろいでしまったが、和彦の感じる羞恥すら堪能しているように、守光はそっと目を細める。
「この体にたっぷり男の精を注ぎ込んでも、あんたの羞恥心を完全に溶かすことはできんらしい。恥じらいながらも、こうしてわしのものを締め付けるんだから、むしろ、なければ困るものか……」
 守光のてのひらに包み込まれた欲望を緩く扱かれ、和彦は短く声を上げる。精を放ったばかりだというのに、異常な状況のためか、それとも中から愛されているためか、すでにもう力を取り戻しつつあった。
 欲望への愛撫に合わせて、ゆっくりと内奥を突かれる。
「ふあっ……、あっ、あっ……ん、あぁっ――」
 千尋にも賢吾にもない落ち着いた攻めに、和彦は静かに狂わされていく。自覚もないまま両足を大きく左右に開き、背をしならせるようにして、内奥深くで刻まれる守光の律動をよりしっかりと感じていた。
「あんたはもう数えきれんほど、長嶺の男たちと交わり、精を受けてきた。こうして、じっくりと丹念に中にすり込まれていると、自分と長嶺の男たちと溶け合っているという感覚にならんかね」
 守光の言葉に唆されたように、内奥を行き来する熱い欲望をきつく締め付ける。守光が抉るように内奥深くを突き上げてきた。
「あんたのこの反応は、肯定と受け止めていいんだろう。――医者のあんたからすると、バカバカしいと嘲笑うかもしれんが、わしは、あんたが長嶺の血を受け入れてくれていると思っている。溢れるほどの精を受け入れ、情を受け入れ、子は成せんが、あんたは長嶺という家の繁栄のために欠かせない人間だ。宝だよ」
 意識は朦朧としていても、守光がとんでもないことを言っているということはわかる。言葉が発せない代わりに和彦は必死に首を横に振るが、守光は薄い笑みを浮かべ、覆い被さってくる。唇を塞がれ、深い口づけを与えられていた。
 内奥に深々と欲望を穿たれているうちに、肉の悦びの虜となる。浅ましく腰を揺らして、守光に応えていた。それを待っていたようにこう囁かれる。
「この先もずっと、長嶺の男たちの側にいてくれ。よく尽くし、よく支え、よく愛してほしい。その見返りとして、わしらも、あんたに尽くし、支え、愛す。今晩のこれは、その契約を交わすためだ。決して裏切ることのない、裏切ることを許さない、血の契約だ」
 守光の言葉は、恫喝だ。この状況で和彦が逆らえるはずもなく、否という返事を、長嶺の男たちは最初から聞き入れる気はない。
 恐怖に押し潰されても不思議ではないのに、和彦の体は歓喜していた。頭上に伸ばした両手を、それぞれ賢吾と千尋に握り締められ、反射的に握り返してしまう。
「ぼ、くは――、何も、できな……」
「あんたは、あんたでいればいい。普段は凛然と医者として立ち働き、それ以外では、男たちにとって大事で可愛いオンナでいてくれれば、十分だ」
 反り返った欲望の形を指でなぞられてから、濡れた先端をヌルヌルと撫でられる。小さく悦びの声を上げてから、和彦は陥落した。
 頷くと、守光の手によって二度目の絶頂に導かれていた。すると守光も、激しい収縮を繰り返す内奥の深い場所で精を放つ。
「うあっ、あっ――……」
 すぐに欲望が引き抜かれ、精が溢れ出してくる。守光は、下腹部に散った和彦の精を掬い取った指を、淫らな肉の洞となっている内奥に挿入してきた。
 この行為には、覚えがあった。和彦がゆっくりと目を見開くと、守光は厳かな口調で告げる。
「組の者とは、酒で満たした盃を交わすが、これがあんたと交わす盃だ。あんたの中で、わしら三人の精と、あんたの精が溶け合い、交じり合う。――末永く、わしらのオンナでいてくれ」
 興奮と絶頂の余韻に浸りきった内奥は、見境なく守光の指を締め付ける。
 言葉による返事は必要ない。これが、オンナとしての和彦の返事だった。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

処理中です...