血と束縛と

北川とも

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第33話

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 淫らな蠕動を始めた内奥の感触を堪能するように、少しの間動きを止めていた千尋だが、ゆっくりと律動を再開する。背に重なる千尋の胸元から、激しい鼓動が伝わってくるようだった。もしかすると、内奥で動き回る欲望の脈動かもしれないが、和彦にはもう区別がつかない。自身の鼓動が、狂ったように鳴っているせいだ。
 神聖な儀式に立ち合っているかのように、和彦と千尋が繋がってから、他の長嶺の男たちは口を開かなかった。いや、これは立派な儀式なのだ。和彦に、長嶺の男たち共有のオンナとしての、見えない刻印をつけるための。
 自分はとっくに長嶺の男たちに所有されていると思っていたが、男たちにとって、和彦のその認識はまだ生ぬるかったようだ。
「ううっ、あっ、はあっ、はあっ――……」
 千尋の熱い欲望が、爆ぜる。もう何度も、千尋の精を内奥で受け止めてきたというのに、それでもやはり、この行為は特別な気がする。千尋の欲望を締め付けたまま、和彦は再び軽い絶頂状態に陥っていた。
 余韻なく千尋が体を離したが、そのことを寂しいと感じる間もなく、喘ぐ内奥の入り口に逞しい感触が擦りつけられ、挿入される。衝撃に、声も出せなかった。
 乱暴に背後から突き上げられ、逞しい欲望を根元まで捩じ込まれるが、たっぷり潤っている和彦の内奥は貪欲に呑み込み、淫らな襞と粘膜で包み、締め付ける。
「――あれだけ美味そうに千尋のものを味わっていたのに、俺のことも欲しがってくれるのか、和彦」
 笑いを含んだバリトンで意地悪な言葉を紡ぐのは、賢吾だった。しっかりと腰を掴まれたかと思うと、次の瞬間には、上体が浮き上がる。一体何が起こったのか、すぐには理解できなかった和彦だが、視線を上げると、正面に千尋がいた。傍らには守光が。
「あっ」
 繋がったまま賢吾の腰の上に座らされているのだと気づき、和彦は激しくうろたえる。腰を浮かせようとしたが、内奥深くまで賢吾の欲望に刺し貫かれていることを強く意識させられただけだった。
「これ、嫌だ……」
 和彦は弱々しく訴えたが、返事のつもりなのか賢吾が腰を揺すり、内奥を掻き回される。うなじに軽く噛みつかれて、全身が震えるほど感じてしまう。
「いつでも、どこでも、俺をよく欲しがってくれる。本当に可愛いオンナだ」
 もう一度名を呼ばれて、和彦は愉悦の表情を浮かべる。賢吾に促されるままに両足を大きく左右に開き、組み紐が巻きついたまま揺れる欲望を片手で扱かれる。
「はっ……、ああっ、あっ、んんっ……」
「動けるか? お前のいいところに、自分で擦りつけてみろ」
 賢吾の囁きに逆らえず、和彦はぎこちなく腰を前後に動かす。これで賢吾に快感を与えられているとは思えないが、内奥で息づく欲望は力強く脈打ちながら、大きくなっている。
「――和彦」
 賢吾に呼ばれて振り返ると、待ちかねていたように唇を吸われる。夢中で口づけに応えていると、欲望を扱いていた賢吾の片手が奥へと伸び、繋がっている部分へと触れてくる。和彦は短く声を洩らし、背を反らして感じていた。
「どこもかしこも、よく感じる。本当に、俺たちを悦ばせるためにあるような体だ。中身は、それ以上だが」
 背後から賢吾にきつく抱き締められながら、大きく緩慢に腰を動かされる。嵐に放り込まれたような千尋の激しさとはまったく違うのに、それでも理性を容赦なく削ぎ落としていくような賢吾の攻めに、和彦は甘い呻き声を洩らす。
 潤滑剤と、千尋の精によって潤んだ襞と粘膜は、隙間なく賢吾の欲望にまとわりつき、吸い付いている。その状態で腰をわずかに持ち上げられ、乱暴に下から突き上げられると、得られる快感は凄まじい。腰から頭の先まで、痺れるような法悦が這い上がっていた。
 前のめりに崩れ込みそうになったが、賢吾に抱き寄せられる。愛しげに首筋や肩に唇が押し当てられてから、再び欲望を握られて扱かれる。
「うっ、くうっ……」
 和彦がブルッと身を震わせると、耳に賢吾の唇が押し当てられた。
「今ので、尻で何回イッたことになるんだ?」
 答えたくないと、和彦は首を横に振る。賢吾は耳元で低く笑い声を洩らした。それが癪に障ったというわけではないが、思わず掴んだ賢吾の腕に強く爪を立ててしまう。その行為は、怖い男の興奮を煽ったらしい。
 腰を抱きかかえられ、乱暴に揺さぶられる。押し寄せてくる衝撃に和彦は声も出せなくなっていたが、賢吾は手加減などしなかった。自分本位に動き続け、千尋同様、内奥深くに精を注ぎ込んでくる。

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