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第31話
(11)
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喉元にかかった南郷の手が動き、浴衣の合わせから入り込む。胸元を手荒な手つきで撫で回されているうちに、和彦の意思とは関係ない反応として、胸の突起が凝っていく。それを待っていたように南郷の指に摘み上げられた。痛みを感じるほど強く抓られ、喉の奥から声を洩らす。
「……優しくしてほしいか、先生?」
揶揄するような口調で南郷に問われ、和彦は顔を背ける。かまわず南郷が続けた。
「優しくしてほしいなら、俺にも優しくすることだな」
再びあごを持ち上げられ、唇を塞がれる。同時に指の腹で胸の突起をくすぐられ、和彦はビクリと背を反らした。南郷に唇を吸われ、おずおずと吸い返す。すぐに南郷の口づけは熱を帯び、その熱に和彦は感化される。
帯を解かれ、浴衣を肩から落とされながら、南郷と唇を吸い合ってから、舌を絡める。胸の突起を指で挟まれ、くんっと引っ張られる。小さな疼きが胸に生まれ、和彦の呼吸が弾んだ。
南郷に抱き寄せられたまま、布団の上にゆっくりと押し倒され、のしかかられる。急に怖くなって南郷の下から抜け出そうとしたが、本気ではない和彦の抵抗を封じるなど、造作もないことだろう。南郷は喉を震わせるように笑い声を洩らし、露わになった胸元をベロリと舐め上げてきた。不快さに、一瞬息が詰まる。
「――先生、聞きたいことがある」
顔を強張らせる和彦にかまわず、浴衣を脱がせながら南郷が話しかけてくる。
「今日、クリニックからの帰りの車の中で、あんたが電話で話していた相手は、あんたの兄貴、でいいんだな?」
「……そんなことまで、報告を受けているんですか」
「あんたは、総和会にとって大事な会長の、オンナだ。そのうち、ビジネスパートナーにもなるようだが。とにかく、あんたも大事な存在だ。守るうえで、あれこれと知っておかないとな」
南郷の手が下着にかかり、さすがに制止しようとしたが、ささやかな抵抗など嘲笑うように一気に引き下ろされ、脱がされていた。南郷の前に裸体を晒し、たまらず和彦は顔を背けたが、視線の先には、掛け軸の中の金魚がいた。
「電話の相手は……兄です」
「揉めていたようだな。そもそもあんたが隠れ家に来ることになった原因も、その兄貴だったはずだ。なのに、連絡を取り合っているのか」
「取り合ってはいません。多分、今日で最後です。……あっ」
硬く凝った胸の突起を、いきなり情熱的に吸われ、舌先で弄られる。さらに、南郷の片手が両足の間に差し込まれ、欲望を握り締められた。
和彦は間欠的に声を上げ、与えられる愛撫に反応する。布団の上に爪先を滑らせ、大きく背を反らし上げると、頭上に伸ばした手で畳を掻く。素直に認めたくはないが、体が――肌が、南郷の唇や舌、手の感触に馴染みつつあった。南郷も同じことを感じたのか、こんなことを呟いた。
「今夜のあんたは、実にいい。……そそられる。もともと愛想のいい体だったが、俺に撫で回されて、もう悦んでいるだろ」
羞恥よりも、屈辱感に襲われ、南郷にきつい視線を向けると、ニヤリと笑って返される。
「自分の兄貴と、険悪な雰囲気だったそうだな。あんたが佐伯の姓を捨てるとか、どうとか」
「……南郷さんには、関係ないでしょう」
「さっき言っただろ。あんたは、オヤジさんの大事なオンナ。俺にとって関係は大ありだ」
南郷の大きな手に包み込まれた欲望を扱かれ、次第に和彦の下肢から力が抜けていく。知らず知らずのうちに足を開き、それに気づいて慌てて閉じようとしたが、南郷に膝を掴まれた。
「いいじゃねーか、先生。いまさら俺の前で、恥ずかしがらなくても」
両足が閉じられないよう、ぐいっと腰を割り込ませてきた南郷が、これみよがしにチノパンの前を寛げる。引き出された南郷のものはすでに高ぶっており、その反応を目の当たりにした和彦は腰を引きずるようにして体を起こす。座ったまま後退ろうとしたが、のっそりと這い寄ってきた南郷に容易く捕まった。
引き寄せられて、背後からしっかりと両腕で抱き締められ、うなじに唇が押し当てられる。腰には、南郷の凶暴な欲望が当たっていた。
「――あんたの実家には何かあると、俺は踏んでいる。多分、オヤジさんも」
耳の後ろから囁かれ、和彦は肩を震わせる。
「名家から弾かれた放蕩息子という感じじゃないからな、あんたは。好き者ではあるが、長嶺組の跡目に目をつけられる以前は、色恋沙汰で揉めたこともないし、金銭絡みもきれいなもんだ。次男坊としては、出来過ぎているぐらいだ。だが、あんたは佐伯家と疎遠でいようとした。そして佐伯家も、それで好しとしていながら、妙な執着の仕方をしている」
「あっ」
南郷の手が胸元を這い回り、もう片方の手が再び両足の間に入り込む。ただし触れてきたのは――。
「……優しくしてほしいか、先生?」
揶揄するような口調で南郷に問われ、和彦は顔を背ける。かまわず南郷が続けた。
「優しくしてほしいなら、俺にも優しくすることだな」
再びあごを持ち上げられ、唇を塞がれる。同時に指の腹で胸の突起をくすぐられ、和彦はビクリと背を反らした。南郷に唇を吸われ、おずおずと吸い返す。すぐに南郷の口づけは熱を帯び、その熱に和彦は感化される。
帯を解かれ、浴衣を肩から落とされながら、南郷と唇を吸い合ってから、舌を絡める。胸の突起を指で挟まれ、くんっと引っ張られる。小さな疼きが胸に生まれ、和彦の呼吸が弾んだ。
南郷に抱き寄せられたまま、布団の上にゆっくりと押し倒され、のしかかられる。急に怖くなって南郷の下から抜け出そうとしたが、本気ではない和彦の抵抗を封じるなど、造作もないことだろう。南郷は喉を震わせるように笑い声を洩らし、露わになった胸元をベロリと舐め上げてきた。不快さに、一瞬息が詰まる。
「――先生、聞きたいことがある」
顔を強張らせる和彦にかまわず、浴衣を脱がせながら南郷が話しかけてくる。
「今日、クリニックからの帰りの車の中で、あんたが電話で話していた相手は、あんたの兄貴、でいいんだな?」
「……そんなことまで、報告を受けているんですか」
「あんたは、総和会にとって大事な会長の、オンナだ。そのうち、ビジネスパートナーにもなるようだが。とにかく、あんたも大事な存在だ。守るうえで、あれこれと知っておかないとな」
南郷の手が下着にかかり、さすがに制止しようとしたが、ささやかな抵抗など嘲笑うように一気に引き下ろされ、脱がされていた。南郷の前に裸体を晒し、たまらず和彦は顔を背けたが、視線の先には、掛け軸の中の金魚がいた。
「電話の相手は……兄です」
「揉めていたようだな。そもそもあんたが隠れ家に来ることになった原因も、その兄貴だったはずだ。なのに、連絡を取り合っているのか」
「取り合ってはいません。多分、今日で最後です。……あっ」
硬く凝った胸の突起を、いきなり情熱的に吸われ、舌先で弄られる。さらに、南郷の片手が両足の間に差し込まれ、欲望を握り締められた。
和彦は間欠的に声を上げ、与えられる愛撫に反応する。布団の上に爪先を滑らせ、大きく背を反らし上げると、頭上に伸ばした手で畳を掻く。素直に認めたくはないが、体が――肌が、南郷の唇や舌、手の感触に馴染みつつあった。南郷も同じことを感じたのか、こんなことを呟いた。
「今夜のあんたは、実にいい。……そそられる。もともと愛想のいい体だったが、俺に撫で回されて、もう悦んでいるだろ」
羞恥よりも、屈辱感に襲われ、南郷にきつい視線を向けると、ニヤリと笑って返される。
「自分の兄貴と、険悪な雰囲気だったそうだな。あんたが佐伯の姓を捨てるとか、どうとか」
「……南郷さんには、関係ないでしょう」
「さっき言っただろ。あんたは、オヤジさんの大事なオンナ。俺にとって関係は大ありだ」
南郷の大きな手に包み込まれた欲望を扱かれ、次第に和彦の下肢から力が抜けていく。知らず知らずのうちに足を開き、それに気づいて慌てて閉じようとしたが、南郷に膝を掴まれた。
「いいじゃねーか、先生。いまさら俺の前で、恥ずかしがらなくても」
両足が閉じられないよう、ぐいっと腰を割り込ませてきた南郷が、これみよがしにチノパンの前を寛げる。引き出された南郷のものはすでに高ぶっており、その反応を目の当たりにした和彦は腰を引きずるようにして体を起こす。座ったまま後退ろうとしたが、のっそりと這い寄ってきた南郷に容易く捕まった。
引き寄せられて、背後からしっかりと両腕で抱き締められ、うなじに唇が押し当てられる。腰には、南郷の凶暴な欲望が当たっていた。
「――あんたの実家には何かあると、俺は踏んでいる。多分、オヤジさんも」
耳の後ろから囁かれ、和彦は肩を震わせる。
「名家から弾かれた放蕩息子という感じじゃないからな、あんたは。好き者ではあるが、長嶺組の跡目に目をつけられる以前は、色恋沙汰で揉めたこともないし、金銭絡みもきれいなもんだ。次男坊としては、出来過ぎているぐらいだ。だが、あんたは佐伯家と疎遠でいようとした。そして佐伯家も、それで好しとしていながら、妙な執着の仕方をしている」
「あっ」
南郷の手が胸元を這い回り、もう片方の手が再び両足の間に入り込む。ただし触れてきたのは――。
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