血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
682 / 1,268
第29話

(27)

しおりを挟む
 和彦は無意識のうちに強い刺激から逃れようとするが、賢吾の逞しい腕にしっかりと腰を抱え込まれ、もっと奔放に乱れてみせろと追い立てるように、荒々しい愛撫を与えられる。
「ひっ……、待、て……。賢吾さん、そこ、乱暴には……」
「違うだろ。そういう呼び方じゃなかったはずだ」
 賢吾の声が楽しげな響きを帯びる。弱みを指先で弄られて、和彦は半ば脅されるように声を上げていた。
「賢吾っ」
 この瞬間、気も遠くなるような法悦が和彦の中で生まれる。残酷なほど優しく丁寧な手つきで柔らかな膨らみを揉み込まれ、腰から下に力が入らなくなる。意識しないまま自ら足を大きく開き、賢吾の淫らな愛撫をねだっていた。
「あっ、あっ、んあっ、あっ――……」
「これ以上仕込んだら厄介だとわかっちゃいるんだが、気持ちよさそうに声を上げるお前の反応を見ると、可愛がってやらずには、いられねーんだ」
 痛みとは紙一重の、絶妙の力加減で柔らかな膨らみをまさぐられ、和彦は甲高い声を上げて身悶える。欲望の先端から透明なしずくが滴り落ち、和彦が味わっている愉悦を雄弁に賢吾に知らせる。
「ここ、いいか?」
 わずかに声を掠れさせて、賢吾が問いかけてくる。余裕たっぷりのバリトンとはまた違った色気に、和彦はヒクリと背をしならせる。声に、感じてしまったのだ。賢吾は当然、和彦の反応に気づいていた。
「……感じやすいオンナだ」
 さきほどの愛撫の礼だと言わんばかりに、今度は賢吾が、和彦の背に唇と舌を這わせてくる。尻の肉を鷲掴まれ、腰を突き出した姿勢を取らされていた。賢吾が何をしようとしているか、次の言葉で知ることになる。
「まだ触ってもないのに、もう赤く色づいて、ひくついてるな。南郷にたっぷり弄ってもらったんだろう。感じさせてくれるなら、誰でも甘やかすからな。お前のここは――」
 嫌でも意識させられた内奥の入り口に、柔らかく湿った感触がまとわりつく。それが賢吾の舌だとわかったとき、和彦は呻き声を洩らして、シーツに精を飛び散らしていた。しかし、賢吾は許してくれない。〈オンナ〉の不貞を、淫らな愛撫を与えることによって責め立ててくる。
「ひぃっ……ん、んっ、んんっ、くぅっ……」
 舌先で舐られ、和彦の内奥の入り口が簡単に綻ぶ。賢吾に手を取られ、自分の指先でその感触を確かめさせられたとき、さすがに和彦は激しい羞恥でうろたえるが、賢吾の指で内奥を犯されるようになると、その羞恥すら甘い媚薬となっていた。
「南郷の指を突っ込まれたときも、こうやって物欲しそうに締め付けたのか? 男の唾液で中を濡らして、いやらしい襞をざわつかせて、もっと擦ってくれと腰を振ってみせたか? 普段は取り澄ました顔をしているからこそ、お前の見せる媚態は強烈だ。俺ですら、頭がクラクラするぐらいだ」
 内奥を掻き回すように大胆に指が動かされる。肉を解され、襞と粘膜を擦り上げられると、異物感や鈍い痛みすら、強引に快感へと変えられてしまう。
 和彦は荒い呼吸を繰り返しながら、必死にシーツを握り締める。内奥から指が引き抜かれ、もう一度舌が這わされる。それから、熱く張り詰めた欲望を押し当てられた。
「うああっ――」
 内奥の入り口をこじ開けられ、太い部分を一息に呑み込まされる。繋がった部分を指先でなぞられると、それだけで上擦った声が出る。背後から緩く突き上げられて、腰から痺れが這い上がり、吐息を洩らす。さらにもう一度突き上げられて、悦びの声を上げていた。
 賢吾と深く繋がっていきながら、引き絞るように内奥を締める。欲しかった、と言葉ではなく、体で訴える。和彦の訴えを、賢吾は受け止めてくれた。
「……しっかりと、俺を欲しがっているな。本当に、可愛いオンナだ……」
 腰を掴まれて、ぐうっと奥深くまで欲望を捩じ込まれる。和彦は声も出せずに、ビクッ、ビクッと腰を震わせていた。賢吾が笑いを含んだ声で言った。
「尻で、イったな」
 巧みに官能を刺激されて、頭の芯まで快感に浸される。賢吾の欲望に内奥深くを突かれるたびに、堪えきれず嬌声を上げていたが、おそらくその声は、部屋の外にも響いているだろう。和彦の理性ではもう声を抑えることができず、賢吾にしても、あえて〈誰か〉に聞かせるように、和彦の快感を煽ってくる。
「あっ、い、ぃ――……。賢吾、奥、いい……」
「どこもかしこも、いいところだらけだな。――和彦」
 内奥深くを重々しく突き上げられ、一瞬息が詰まる。全身に快美さが響き渡り、小刻みに体が震える。賢吾は、和彦のそんな反応をいとおしむように、背後からきつく抱き締めてくれた。
「一度抜いていいか?」
 快感に恍惚としている和彦の耳に、賢吾の言葉が届く。和彦は子供のように必死に首を横に振っていた。
「嫌だっ。まだ……、このままがいい」
「俺もそうしたいが、それ以上に、お前のいい顔を見ながら、尻を可愛がってやりてーんだ」
 ズルリと内奥から熱い欲望が引き抜かれ、和彦は短い悲鳴を上げる。このとき、自分の体に何が起こったのかを、和彦の体を仰向けにした賢吾に指摘された。
「お前が、突っ込まれる瞬間に弱いのは知ってたが、抜かれる瞬間もよくなってきたか?」
 賢吾に、精を放ったばかりの欲望を掴まれ、緩く扱かれる。和彦は熱くなった体をさらに熱くして、顔を背けるが、意地の悪い男はそんなことを許してくれない。
「おい、しっかり俺を見ろ。お前をオンナにした、男の顔を」
 脅され、唆されて、和彦はおずおずと賢吾を見上げる。そして堪らず、逞しい体に両腕を回してしがみつく。片足を抱え上げられて、熱い欲望を再び内奥深くまで捩じ込まれていた。
「あっ、あぁっ――」
 賢吾の背の大蛇に爪を立て、和彦は、賢吾という男の〈肉〉を堪能する。力強く丹念に最奥を突かれ、そのたびに和彦は抑えきれない悦びの声を溢れさせる。
 深くしっかりと繋がったまま、荒い息遣いで互いの唇を求める。余裕なく吸い合い、差し出した舌を絡め合う。その合間に賢吾が、和彦のこめかみを伝い落ちる汗を舐め取り、和彦も、賢吾の首筋の汗を舐め上げる。そこに、二人の唾液が混じり合う。
 自分は、この男の唾液や汗だけではなく、精の味すら知っている――。そう思った途端、和彦は陶然とした感覚に陥っていた。心が満たされるだけではなく、妙な話だが、誰かに誇りたいような。
「――……ようやく、穏やかな顔になったな」
 ふいに賢吾に囁かれ、和彦は目を丸くする。すかさず目元に唇が押し当てられ、反射的に甘ったるい呻き声を洩らしてしまう。
「俺とのセックスだけに集中している、いい顔だ」
 ヌケヌケとよくこんなことが言えるなと思ったが、和彦は賢吾に微笑みかけると、熱い体にすがりつく。
 ようやく〈ここ〉に戻ってこられたのだと、強く実感しながら。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...