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第29話
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同じ行為を繰り返され、腰から下に力が入らなくなっていた。南郷は悠々と和彦の両足を抱え、左右に大きく開くが、逆らえなかった。南郷はベッドの上で、完全に和彦の体を支配してしまったのだ。
いつの間にか反り返って熱くなって震える欲望を、握り締められる。
「愛想のいい体だ。誰にでも、簡単に懐いて、甘える」
まるで犬猫でも可愛がるような口ぶりに、ほとんど意地だけで南郷を睨みつけた和彦だが、次の瞬間、大きくうろたえていた。南郷が、スラックスの前を寛げ、欲望を外に引き出していたからだ。薄暗い中にあっても、南郷の欲望が高ぶった形をしていることは見て取れた。
逃げるべきなのだろうが、動けなかった。牙を剥き出しにした凶暴な肉食獣を目の前にして、下手に動けば食われると、悟った感覚に近いかもしれない。
和彦が怯えて動けないのをいいことに、南郷は傲慢に振る舞った。和彦の手を取り、前回のときのように、己の欲望を握らせ、扱かせ始めたのだ。そんな和彦に覆い被さり、南郷は顔を覗き込んでくる。
最初は頑なに視線を逸らせていた和彦だが、南郷の眼差しは凶器だ。目が合わなくても、痛いほどの視線を感じ、無視することができない。あごを掴まれたわけでもないのに、見えない力に従わされるように、和彦は南郷を見上げる。
その頃には、南郷の欲望はふてぶてしく脈打ち、燃えそうに熱くなっていた。
「あんたと同じだ」
そう言って南郷が、和彦の両足の間に深く腰を密着させてくる。高ぶった二人の欲望が擦れ合い、もどかしい刺激に和彦は小さく声を洩らす。南郷に乱暴に腰を引き寄せられ、指で蕩けさせられた内奥の入り口に、欲望の先端を押し当てられる。
和彦は顔を強張らせ、無意識のうちに南郷の腕に手をかけていた。
「――あんたのここに、入れていいか?」
低い声で南郷に問われ、和彦は答えられなかった。どう答えても、行為に及ばれそうだと思ったからだ。本気か戯れかは関係ない。そうしたいと思えば、南郷は和彦を犯し始めるはずだ。この男に怖いものはないのだ。守光以外に。
「入れてーな。あんたの尻は、おそろしく具合がよさそうだ。何人もの怖い男たちを咥え込んで、骨抜きにしている場所だ。いまさら、俺一人増えたところで、かまわねーだろ」
話しながら南郷が、内奥の入り口を欲望の先端で押し広げようとする。和彦は悲鳴に近い声を上げていた。
「やめろっ」
このとき、南郷の目つきが変わった。鋭く、殺気を帯び、射竦めるように和彦を凝視してくる。南郷のこの変化は一体なんなのかと思ったが、それが狂おしい欲情だと理解した瞬間、和彦は上体を捩って逃げ出そうとしたが、南郷に体をうつ伏せにされて押さえつけられ、腰を抱え上げられる。
「うああっ――……」
内奥をこじ開けられる。挿入されたのは、三本の指だった。
「今の俺に許されているのは、ここまでだ。――我慢してくれ、先生。腰が抜けるほど、感じさせてやるから」
淫靡な湿った音を立てながら、南郷の指が内奥から出し入れされる。襞と粘膜を強く擦り上げられ、否応なく肉欲を引きずり出されてしまうと、和彦は脆かった。シーツを握り締め、腰を揺らして感じてしまう。
「あっ、あっ、んんっ……、んっ、くうっ」
南郷に腰を抱き寄せられ、指で内奥を犯されながら、反り返ったままの欲望を手荒く扱かれる。すでに先端から透明なしずくを滴らせていたため、たったそれだけの愛撫でも愉悦で喉を鳴らす。すると、南郷が笑い声を洩らした。
「いいみたいだな、先生。尻が締まったまま、痙攣してる。ビクビクッ、ビクビクッてな。……だったら、ここを弄ってやると、もっといいんじゃないか?」
柔らかな膨らみを揉みしだかれ、和彦は声も出せずに絶頂に達する。シーツに向けて、精を迸らせていた。
南郷に乱暴に体を仰向けにされ、緩みきっただらしない顔を覗き込まれる。和彦は南郷の顔を押し退けようとしたが、簡単にいなされた挙げ句、ガウンの太い紐を使って、頭上で両手首を縛られた。そのうえで、南郷から濃厚な口づけを与えられる。縛められた両手を南郷の頭に振り下ろすことは可能だが、快感に浸った体に力が入らない。それはつまり、南郷に屈服したということかもしれない。
「……いい顔になってきたな、先生」
南郷に囁かれ、再び内奥に指が挿入される。
「んうっ……ん」
鼻にかかった甘い声が洩れ、誘われたように南郷に軽く唇を吸われる。付け根までしっかりと指が埋め込まれ、ゆっくりと大胆に内奥を掻き回されると、和彦の意思に関係なく腰が妖しく蠢く。
「あっ、いや……、まだ――」
「イッたばかりで、まだ中がひくついているか? いいじゃねーか。もっとイかせてやる。あんたの普段の澄まし顔を知っていると、快感でドロドロに溶かしたくなるんだ」
南郷は本気で言っていると感じ取り、ゾクリとする。だがそれは、恐怖のためというより、肉の悦びを期待してのものだ。
「あんたは今日、いろいろあって気疲れしているだろ。何も考えられないようにして、ゆっくり眠らせてやる」
空々しいことを言って南郷が、獣の唸り声のような笑い声を発する。そこに、外から聞こえる激しい雨音が重なり、和彦にはひどく不気味に聞こえた。
いつの間にか反り返って熱くなって震える欲望を、握り締められる。
「愛想のいい体だ。誰にでも、簡単に懐いて、甘える」
まるで犬猫でも可愛がるような口ぶりに、ほとんど意地だけで南郷を睨みつけた和彦だが、次の瞬間、大きくうろたえていた。南郷が、スラックスの前を寛げ、欲望を外に引き出していたからだ。薄暗い中にあっても、南郷の欲望が高ぶった形をしていることは見て取れた。
逃げるべきなのだろうが、動けなかった。牙を剥き出しにした凶暴な肉食獣を目の前にして、下手に動けば食われると、悟った感覚に近いかもしれない。
和彦が怯えて動けないのをいいことに、南郷は傲慢に振る舞った。和彦の手を取り、前回のときのように、己の欲望を握らせ、扱かせ始めたのだ。そんな和彦に覆い被さり、南郷は顔を覗き込んでくる。
最初は頑なに視線を逸らせていた和彦だが、南郷の眼差しは凶器だ。目が合わなくても、痛いほどの視線を感じ、無視することができない。あごを掴まれたわけでもないのに、見えない力に従わされるように、和彦は南郷を見上げる。
その頃には、南郷の欲望はふてぶてしく脈打ち、燃えそうに熱くなっていた。
「あんたと同じだ」
そう言って南郷が、和彦の両足の間に深く腰を密着させてくる。高ぶった二人の欲望が擦れ合い、もどかしい刺激に和彦は小さく声を洩らす。南郷に乱暴に腰を引き寄せられ、指で蕩けさせられた内奥の入り口に、欲望の先端を押し当てられる。
和彦は顔を強張らせ、無意識のうちに南郷の腕に手をかけていた。
「――あんたのここに、入れていいか?」
低い声で南郷に問われ、和彦は答えられなかった。どう答えても、行為に及ばれそうだと思ったからだ。本気か戯れかは関係ない。そうしたいと思えば、南郷は和彦を犯し始めるはずだ。この男に怖いものはないのだ。守光以外に。
「入れてーな。あんたの尻は、おそろしく具合がよさそうだ。何人もの怖い男たちを咥え込んで、骨抜きにしている場所だ。いまさら、俺一人増えたところで、かまわねーだろ」
話しながら南郷が、内奥の入り口を欲望の先端で押し広げようとする。和彦は悲鳴に近い声を上げていた。
「やめろっ」
このとき、南郷の目つきが変わった。鋭く、殺気を帯び、射竦めるように和彦を凝視してくる。南郷のこの変化は一体なんなのかと思ったが、それが狂おしい欲情だと理解した瞬間、和彦は上体を捩って逃げ出そうとしたが、南郷に体をうつ伏せにされて押さえつけられ、腰を抱え上げられる。
「うああっ――……」
内奥をこじ開けられる。挿入されたのは、三本の指だった。
「今の俺に許されているのは、ここまでだ。――我慢してくれ、先生。腰が抜けるほど、感じさせてやるから」
淫靡な湿った音を立てながら、南郷の指が内奥から出し入れされる。襞と粘膜を強く擦り上げられ、否応なく肉欲を引きずり出されてしまうと、和彦は脆かった。シーツを握り締め、腰を揺らして感じてしまう。
「あっ、あっ、んんっ……、んっ、くうっ」
南郷に腰を抱き寄せられ、指で内奥を犯されながら、反り返ったままの欲望を手荒く扱かれる。すでに先端から透明なしずくを滴らせていたため、たったそれだけの愛撫でも愉悦で喉を鳴らす。すると、南郷が笑い声を洩らした。
「いいみたいだな、先生。尻が締まったまま、痙攣してる。ビクビクッ、ビクビクッてな。……だったら、ここを弄ってやると、もっといいんじゃないか?」
柔らかな膨らみを揉みしだかれ、和彦は声も出せずに絶頂に達する。シーツに向けて、精を迸らせていた。
南郷に乱暴に体を仰向けにされ、緩みきっただらしない顔を覗き込まれる。和彦は南郷の顔を押し退けようとしたが、簡単にいなされた挙げ句、ガウンの太い紐を使って、頭上で両手首を縛られた。そのうえで、南郷から濃厚な口づけを与えられる。縛められた両手を南郷の頭に振り下ろすことは可能だが、快感に浸った体に力が入らない。それはつまり、南郷に屈服したということかもしれない。
「……いい顔になってきたな、先生」
南郷に囁かれ、再び内奥に指が挿入される。
「んうっ……ん」
鼻にかかった甘い声が洩れ、誘われたように南郷に軽く唇を吸われる。付け根までしっかりと指が埋め込まれ、ゆっくりと大胆に内奥を掻き回されると、和彦の意思に関係なく腰が妖しく蠢く。
「あっ、いや……、まだ――」
「イッたばかりで、まだ中がひくついているか? いいじゃねーか。もっとイかせてやる。あんたの普段の澄まし顔を知っていると、快感でドロドロに溶かしたくなるんだ」
南郷は本気で言っていると感じ取り、ゾクリとする。だがそれは、恐怖のためというより、肉の悦びを期待してのものだ。
「あんたは今日、いろいろあって気疲れしているだろ。何も考えられないようにして、ゆっくり眠らせてやる」
空々しいことを言って南郷が、獣の唸り声のような笑い声を発する。そこに、外から聞こえる激しい雨音が重なり、和彦にはひどく不気味に聞こえた。
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