血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
615 / 1,268
第27話

(12)

しおりを挟む
 口腔からゆっくりと指を出し入れしながら、鷹津は和彦の欲望を同じリズムで扱く。
「興奮してるのか? もう、こんなに涎を垂らし始めたぞ。……胸糞が悪くなるほど、性質の悪いオンナだ。気を抜くと、骨までしゃぶり尽くしたくなる」
 ふいに口腔から指が引き抜かれる。その指をどうするか、目で追うまでもなかった。
 やや性急に内奥の入り口をまさぐられて、和彦は小さく呻き声を洩らす。つい非難がましく鷹津を見上げると、薄い笑みで返された。
「いきなり突っ込まれるほうがよかったか?」
「下品な、男だ……」
「お上品なお前にそう言われると、ゾクゾクする」
 和彦の唾液で濡れた指が内奥に侵入し、妖しく蠢く。異物感と鈍い痛みに最初は息を詰めていたが、鷹津の熱い体に押さえつけられながら、唇を吸われているうちに、被虐的な悦びが生まれてくる。
「――それでお前は、自分の実家に対してどうしたいんだ?」
 内奥への愛撫の合間に鷹津に問われる。和彦は正直に答えた。
「わからない。それでなくても考えたいことがあるのに、そこに実家のことまで……。先送りできることならそうしたいし、関わりたくもない。だけどそれだと、里見さんが困る」
「あちこちの男にいい顔をしていると、身動きが取れなくなるぞ。いや……、もうすでに、そうなってるか」
 内奥から指が引き抜かれ、片足をしっかりと抱え上げられる。わずかに綻んだ内奥の入り口に、再び鷹津の欲望が押し当てられた。
 きつい収縮を味わうようにゆっくりと、内奥をこじ開けられる。和彦は反射的に鷹津の腕に手をかけていた。
「うっ、あっ、あぁっ」
「どいつもこいつも、お前に甘い顔しか見せないから忘れてるかもしれないが、お前を囲い込んでいるのは、所詮ヤクザだ。いざとなると、お前が警戒している通り、お前を佐伯家に売りつけるかもしれないぞ」
 和彦は下肢に押し寄せてくる強烈な感覚と、不安を刺激する鷹津の言葉によって、少しの間言葉が出なかった。そんな和彦を攻め立てるように鷹津が軽く腰を揺らした。
「……事態がそこまでに至ったら、諦めがつく」
「諦め?」
「ぼくは結局、佐伯家が求めるように生きていくしかない」
 胸糞が悪い、と毒づいた鷹津が、顔を近づけてくる。間近で互いの目を見つめ合いながら唇を重ね、舌を絡め合う。和彦は鷹津の腰に両腕を回し、勢いを得たように鷹津が律動を刻み始める。
 乱暴に腰を揺すられているうちに、和彦の内奥は鷹津の欲望に馴染み、受け入れ、甘やかす。襞と粘膜を擦り上げられるたびに痛みが溶け、代わって、痺れるような愉悦が広がっていくのだ。熱い吐息をこぼすと、内奥深くで鷹津の欲望が一際大きくなり、力強く脈打つ。
「お前とこうして楽しめるなら、佐伯家に戻ろうがどうだろうが、俺はどうでもいいがな」
 そう言って鷹津が、反り返って震える和彦の欲望を握り締めてくる。指の腹で先端を強く擦られ、大きく息を吸い込んで喉を反らす。露わにした喉元に、鷹津はもう片方の手をかけてきた。
「だがまあ、今はお前の事情を優先してやる。忌々しいが、ヤクザに囲まれているお前のオンナっぷりを、俺は気に入っているからな」
「――……悪徳刑事らしい、台詞だな」
「せいぜい大事にしろよ。俺はお前にとって、数少ない手駒だろ」
 喉元にかかった手が退けられ、鷹津の熱い舌にベロリと舐め上げられる。不快さに眉をひそめた和彦だが、覆い被さってきた鷹津の体を受け止め、耳元に荒い息遣いを注ぎ込まれながら、内奥に逞しい欲望を打ち込まれているうちに、甘い陶酔感に襲われていた。
「はっ……、あっ、んうっ、うっ、くうぅっ――」
 鷹津の欲望がますます膨らみ、内から和彦の官能を刺激してくる。
「奥、ひくつきまくってるぞ。……いいか?」
 露骨な台詞を囁かれ、瞬間的に感じた羞恥から顔を背けるが、追いかけてきた鷹津の舌が口腔に差し込まれる。所有の証のように唾液を流し込まれ、和彦は喉を鳴らして受け入れながら、自分でもわかるほど内奥を淫らに蠕動させる。体と心の区別を必要としないほど、鷹津を求めていた。
 和彦の激しい反応に気づいたのか、体を起こした鷹津に両足を抱え上げられる。打ち付けるように力強く内奥を突き上げられ、その勢いで和彦の頭が肘掛にぶつかる。すかさず鷹津に体を引き戻されたが、すぐにまた突き上げられた。
 和彦は鷹津の肩にすがりつきながら、片手で頭を庇ってもらう。
「……手っ……、抜糸したばかりで……」
「うるせえっ。〈こっち〉に集中しろ」
 獣が唸るように声を上げた鷹津に驚き、和彦は目を丸くする。舌打ちした鷹津が、和彦に何も言わせまいとするかのように、唇を塞いできた。
 濃厚な口づけを交わしながら、内奥と欲望を擦り合う行為に耽る。鷹津の望み通りに。
 和彦が放った精で二人の下腹部が濡れるが、気にかける様子もなく――むしろさらに高ぶった様子で、鷹津の動きが激しくなる。察するものがあり、和彦は鷹津の肩を押し上げようとする。
「中は、嫌だ。ここでは――……」
「ダメだ。お前のために働く俺が、お前の中にたっぷり出したいんだ。嫌という権利は、お前にはないぞ」
 和彦は必死に、鷹津を睨みつける。そんな和彦の眼差しにすら快感を得たかのように、鷹津の欲望がさらに膨らむ。些細な変化にすら気づいてしまう自分の浅ましさに、いまさらながら羞恥を刺激され、和彦は顔を背けようとしたが、その前に何度目かの口づけを鷹津に与えられた。
 舌で口腔を犯され、唾液を注ぎ込まれながら、内奥は逞しい欲望で犯される。
「出して、いいな?」
 口づけの合間に囁かれ、あえなく和彦は陥落する。小さく頷くと、それでは不満らしく、鷹津に内奥を乱暴に突き上げられた。
「あうっ、うっ」
「口に出して言え。お前の中は、これだけ感じて、興奮しまくってるんだ。――欲しいんだろ?」
「……欲し、い……、中に」
 鷹津の律動が激しさを増し、和彦は簡単に翻弄される。だがそれも、長い時間ではない。
 熱い精をたっぷりと注ぎ込まれ、歓喜するように内奥が鷹津の欲望を締め付ける。震える鷹津の欲望は、まだ硬かった。
 喘ぐ和彦の顔を覗き込み、鷹津が緩く腰を揺らす。
「いやらしい口だ。俺のものを咥え込んだまま、まだ締まりまくっている」
「うるさ、い……」
 鷹津はニヤリと笑い、和彦の唇を啄ばんでくる。
「こっちの口もいやらしい。憎まれ口を叩くがな」
 和彦は鷹津の唇に噛みついたが、すぐに激しく吸い返され、そのまま舌を絡め合っていた。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...