血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
607 / 1,268
第27話

(4)

しおりを挟む
 背後から抱き締められ、うなじに唇を押し当てられる。すでに体が熱くなっていた和彦は、たったそれだけの刺激でも、吐息を洩らしてしまう。
「千尋、そろそろベッドに――」
「まだダメ」
「ダメって、お前……」
 千尋の腕が移動し、今度は腰を抱かれる。尻に押し付けられたのは、生々しい欲望だった。無駄だと思いつつ身を捩った和彦だが、やや強引に腰を掴まれて、尻を突き出したような姿勢を取らされると、もう抵抗はできない。
「……俺やっぱり、性癖に問題あるかなー。いかにも上品な先生に、こういう格好させると、それだけで感じる」
 そんなことを言いながら、千尋が内奥の入り口に熱の塊を押し当ててくる。指でわずかに解されただけの内奥が、凶暴な欲望でこじ開けられるのだ。背後から押し寄せてくる苦しさに和彦は呻き声を洩らし、必死にガラスに両手を突く。
 腰を掴む千尋の手の力に容赦はないが、腰の動きそのものは慎重だ。和彦は、こういう形での交わりに少しばかり腹立たしさを感じはするものの、千尋の気遣いがわかるだけに、怒鳴ることもできない。大きな犬っころにじゃれつかれ、のしかかられているようにも感じられ、苦しさに喘ぎながらも、つい唇に笑みを刻む。
「バカ千尋……」
 小さな声で呟くと、和彦の腰を抱え込むようにして、千尋が繋がりを深くする。肩の辺りに、熱く荒い息遣いを感じた。
「何か言った、先生?」
 地獄耳、と今度は心の中で呟いてから、和彦は首を横に振る。すると、千尋の片手が両足の間に入り込み、欲望を掴まれた。
「もう少し我慢してね。気持ちよくしてあげるから」
 千尋に緩く腰を突き上げられるたびに、欲望を扱かれる。最初はただ、内奥を犯される苦しさに声を上げていた和彦だが、次第にそれ以外の感覚が湧き起こり、上げる声が艶を帯び始める。
「うっ、あぁっ、はっ……」
 頬を押し当てたガラスが、喘ぐたびに白く曇る。和彦の変化にとっくに気づいていたのだろう。千尋が大きく腰を動かし、内奥深くに欲望を突き込まれる。その瞬間、和彦の全身を強烈な疼きが駆け抜けた。
 息を弾ませて千尋が言う。
「……今、先生、感じただろ? 中が、ビクビクって震えたんだ。それに、背中が赤く染まってきてる。こうして明るい中で見ると、鮮やかだよね。すげー、きれい」
 快感を貪り始めた和彦を一層煽るように、千尋が力強い律動を繰り返す。背後から何度も突き上げられ、そのたびに腰を揺らしながら和彦は、懸命にガラスにすがりつき、体を支える。すでに両足は震えて力が入らなくなっているが、和彦を離すまいとするかのように腰に絡みついた千尋の片腕は力強い。
「あっ、あっ、千、尋っ……。もう少し、ゆっくり――」
「それだと、今みたいに気持ちよくなれないよ、先生」
 囁く千尋の声は、甘い毒を含んでいる。口調はまったく違うというのに、この状況でこんなことを言えるあたりが、父親にそっくりだった。
「んうっ」
 抉るように内奥深くを突かれ、はしたないと思いながらも和彦は自分の意思で腰を揺らし、逞しい感触をしっかりと淫らな襞と粘膜で堪能する。感嘆したように千尋が声を洩らした。
「はあ、最高だよ、先生……」
 興奮を物語るように熱い千尋のてのひらに、腿から尻、腰から背にかけてじっくりと撫でられる。それから、硬く凝ったままの胸の突起を、捏ねるように刺激された。その最中に、力強く内奥を突き上げられ、呆気なく和彦は陥落した。
 絶頂を迎え、精を放った和彦の下肢から完全に力が抜けるが、崩れ込む寸前のところで千尋の両腕にしっかりと抱き締められ、一層激しく攻め立てられる。
「うあっ、あっ、もっ……、千尋っ……」
 ガラスと千尋に挟まれて、めちゃくちゃになりそうだと思ったとき、和彦は自分の中で生じた爆発に陶然とする。
 甘い呻き声を洩らし、小刻みに体を震わせながら、注ぎ込まれる千尋の熱い精をすべて受け止めていた。
 内奥深くまで埋め込まれた千尋の欲望が、歓喜に震えるように、ビクッ、ビクッと脈打っている。しなやかな獣のような青年を満足させてやれたのだと、和彦は快感とは別に、安堵感にも酔い痴れる。
 千尋は荒い呼吸を繰り返しながら、和彦の肩に何度も強く唇を押し当ててくる。唇の熱さから、千尋の体の内でまだ欲望が暴れているのだと、感じ取ることができた。
「千尋――」
「まだ……、まだ、先生の中にいたい」
 切実な口調で囁かれ、和彦は吐息をこぼして応じた。
「甘ったれ」

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...