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第26話
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「……この家の主が仕事をしているのに、その主の部屋でダラダラしているのは、気が引けるんだ」
「仕事といっても、電話で片付くような用だ。だから、そう待たせなかっただろ」
「気にせず、じっくりと話してくれてもよかったのに……」
「俺が気にする」
和彦のすぐ背後に立った賢吾の手が、肩にかかる。浴衣の布越しに体温が伝わってきて、それだけで和彦は冷静ではいられなくなっていた。
慌てて正面を向くと、両肩をしっかりと掴まれ、力を込められた。
「あっ」
絶妙な力加減で肩を揉まれて、思わず和彦は声を上げる。背後から笑いを含んだ声で言われた。
「凝ってるな、先生。気疲れすることが多すぎるせいか?」
「……あんたは、原因の一つだからな」
「遠慮なく、俺が原因の大部分だと言っていいんだぞ」
返事の代わりに、和彦は笑い声を洩らす。
長嶺組組長に肩を揉んでもらうという贅沢を堪能できたのは、わずかな間だった。肩を揉んでいた賢吾の片手が前へと移動し、浴衣の合わせから入り込んできた。
大胆に蠢く手に胸元をまさぐられ、あっという間に凝った胸の突起を、捏ねるようにてのひらで転がされる。指先で捉えられて爪の先で弄られる頃には、和彦の呼吸は弾んでいた。
「――鷹津にも、ここをたっぷり弄ってもらったか?」
突然、冷めた声で問われる。背後に立っているのは賢吾だと知っていながら、和彦は一瞬、別の男に入れ替わったのかと混乱した。それぐらい、賢吾の声音が一変したのだ。
本能的な怯えから、和彦は愛撫の手から離れようとしたが、賢吾は焦った素振りすら見せなかった。
立ち上がろうとしたが、いきなり座椅子を引かれてバランスを崩す。すかさず賢吾の腕に捕らえられて、畳の上に放り出された。
悠然とのしかかってきた賢吾を、顔を強張らせて見上げる。手荒な行動とは裏腹に、賢吾は薄い笑みを浮かべていた。
「鷹津とのセックスはよかったようだな、先生。……鷹津のことを話すときの顔を見ていたら、いままでにない表情を浮かべていた。戸惑っているような、恥らっているような、気分が高揚しているような――。たっぷり愛されて満足している、〈オンナ〉の顔だ」
話しながら賢吾の手に帯を解かれる。浴衣の前を開かれ、さらに下着を引き下ろされ、脱がされていた。賢吾が真上から、体を見下ろしてくる。肌に残っていた鷹津の愛撫の跡はすでに消えかかってはいるが、目を凝らせば見つけ出すことは可能だ。
検分するような手つきで賢吾の指先が肌を辿り、丹念に鷹津の痕跡を探り当てていく。その上から唇が押し当てられ、痛いほどきつく肌を吸われる。鮮やかな鬱血の跡を散らされていた。
最初は身を硬くして、賢吾の行為を受け入れていた和彦だが、次第に、肌を吸われるたびに血が沸騰するような狂おしい感覚に襲われるようになる。
「あっ、そこはっ――」
両足を抱え上げられ、左右に大きく開かされる。内腿の感じやすい部分をベロリと舐められて、和彦は声を上げる。そこは、鷹津の唇は触れていないと言いたかった。
しかし訴えるまでもなく、体を見れば賢吾には一目瞭然のはずだ。それでも賢吾は、和彦の下肢にも愛撫を加え始める。折り曲げた両足を一層強く胸に押しつけられ、腰の位置を上げられる。鷹津の欲望を受け入れたことなど忘れたように、頑なな窄まりとなっている内奥の入り口を、賢吾に晒す格好を取らされていた。
さすがに羞恥に身じろぐと、賢吾が短く声を洩らして笑った。
「見られただけで、〈ここ〉が色づいてきたぞ、先生。そのうち、いやらしい蜜も、前だけじゃなく、後ろからも垂らすようになるかもな。それまでは、この尻が恋しくてたまらない男が、濡らしてやらねーと」
熱く濡れた感触が、内奥の入り口をくすぐるように触れる。それがなんの感触であるか、和彦はすぐにわかった。
「んうっ……」
巧みに蠢く賢吾の舌先に、内奥の入り口を少しずつ解されていく。たっぷりの唾液を施され、慎みを失った頃に指を挿入され、食らいつかんばかりに締め付ける。するとあっさりと指は引き抜かれて、舌が侵入してくる。
「……大蛇の舌なら、もっと奥まで舐めてやれるのにな」
再び指を挿入して、独り言のように賢吾が洩らす。和彦はその言葉に、小さく身を震わせていた。肉の疼きを感じたせいかもしれないし、大蛇に身を貪られる自分の姿を想像して、寒気がしたせいかもしれない。とにかく和彦は、賢吾の言葉一つ一つに反応していた。
内奥を指で撫で回しながら、賢吾の唇と舌は次の獲物に狙いを定める。反り返り、先端を濡らした和彦の欲望だ。
「仕事といっても、電話で片付くような用だ。だから、そう待たせなかっただろ」
「気にせず、じっくりと話してくれてもよかったのに……」
「俺が気にする」
和彦のすぐ背後に立った賢吾の手が、肩にかかる。浴衣の布越しに体温が伝わってきて、それだけで和彦は冷静ではいられなくなっていた。
慌てて正面を向くと、両肩をしっかりと掴まれ、力を込められた。
「あっ」
絶妙な力加減で肩を揉まれて、思わず和彦は声を上げる。背後から笑いを含んだ声で言われた。
「凝ってるな、先生。気疲れすることが多すぎるせいか?」
「……あんたは、原因の一つだからな」
「遠慮なく、俺が原因の大部分だと言っていいんだぞ」
返事の代わりに、和彦は笑い声を洩らす。
長嶺組組長に肩を揉んでもらうという贅沢を堪能できたのは、わずかな間だった。肩を揉んでいた賢吾の片手が前へと移動し、浴衣の合わせから入り込んできた。
大胆に蠢く手に胸元をまさぐられ、あっという間に凝った胸の突起を、捏ねるようにてのひらで転がされる。指先で捉えられて爪の先で弄られる頃には、和彦の呼吸は弾んでいた。
「――鷹津にも、ここをたっぷり弄ってもらったか?」
突然、冷めた声で問われる。背後に立っているのは賢吾だと知っていながら、和彦は一瞬、別の男に入れ替わったのかと混乱した。それぐらい、賢吾の声音が一変したのだ。
本能的な怯えから、和彦は愛撫の手から離れようとしたが、賢吾は焦った素振りすら見せなかった。
立ち上がろうとしたが、いきなり座椅子を引かれてバランスを崩す。すかさず賢吾の腕に捕らえられて、畳の上に放り出された。
悠然とのしかかってきた賢吾を、顔を強張らせて見上げる。手荒な行動とは裏腹に、賢吾は薄い笑みを浮かべていた。
「鷹津とのセックスはよかったようだな、先生。……鷹津のことを話すときの顔を見ていたら、いままでにない表情を浮かべていた。戸惑っているような、恥らっているような、気分が高揚しているような――。たっぷり愛されて満足している、〈オンナ〉の顔だ」
話しながら賢吾の手に帯を解かれる。浴衣の前を開かれ、さらに下着を引き下ろされ、脱がされていた。賢吾が真上から、体を見下ろしてくる。肌に残っていた鷹津の愛撫の跡はすでに消えかかってはいるが、目を凝らせば見つけ出すことは可能だ。
検分するような手つきで賢吾の指先が肌を辿り、丹念に鷹津の痕跡を探り当てていく。その上から唇が押し当てられ、痛いほどきつく肌を吸われる。鮮やかな鬱血の跡を散らされていた。
最初は身を硬くして、賢吾の行為を受け入れていた和彦だが、次第に、肌を吸われるたびに血が沸騰するような狂おしい感覚に襲われるようになる。
「あっ、そこはっ――」
両足を抱え上げられ、左右に大きく開かされる。内腿の感じやすい部分をベロリと舐められて、和彦は声を上げる。そこは、鷹津の唇は触れていないと言いたかった。
しかし訴えるまでもなく、体を見れば賢吾には一目瞭然のはずだ。それでも賢吾は、和彦の下肢にも愛撫を加え始める。折り曲げた両足を一層強く胸に押しつけられ、腰の位置を上げられる。鷹津の欲望を受け入れたことなど忘れたように、頑なな窄まりとなっている内奥の入り口を、賢吾に晒す格好を取らされていた。
さすがに羞恥に身じろぐと、賢吾が短く声を洩らして笑った。
「見られただけで、〈ここ〉が色づいてきたぞ、先生。そのうち、いやらしい蜜も、前だけじゃなく、後ろからも垂らすようになるかもな。それまでは、この尻が恋しくてたまらない男が、濡らしてやらねーと」
熱く濡れた感触が、内奥の入り口をくすぐるように触れる。それがなんの感触であるか、和彦はすぐにわかった。
「んうっ……」
巧みに蠢く賢吾の舌先に、内奥の入り口を少しずつ解されていく。たっぷりの唾液を施され、慎みを失った頃に指を挿入され、食らいつかんばかりに締め付ける。するとあっさりと指は引き抜かれて、舌が侵入してくる。
「……大蛇の舌なら、もっと奥まで舐めてやれるのにな」
再び指を挿入して、独り言のように賢吾が洩らす。和彦はその言葉に、小さく身を震わせていた。肉の疼きを感じたせいかもしれないし、大蛇に身を貪られる自分の姿を想像して、寒気がしたせいかもしれない。とにかく和彦は、賢吾の言葉一つ一つに反応していた。
内奥を指で撫で回しながら、賢吾の唇と舌は次の獲物に狙いを定める。反り返り、先端を濡らした和彦の欲望だ。
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