血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
572 / 1,268
第25話

(28)

しおりを挟む
 立ち尽くす和彦に、鷹津がペットボトルを差し出してくる。ぎこちなく歩み寄り、受け取った。
「……着替え、持っていっただろ」
 ペットボトルに残っていた水を飲み干して和彦が問いかけると、鷹津はニヤリと笑う。
「俺のを、お前が勝手に引っ張り出して、持っていったんだろ」
「だったら、パジャマ代わりになるものを貸してくれ。ぼくは寝るんだ」
「あれだけ興奮したあとで――寝られるか?」
 そう言って鷹津の片腕に腰を抱き寄せられる。腰に巻いたバスタオルを落とされ、持っていた空のペットボトルを取り上げられる。胸元を伝い落ちる水滴を舐め取られて、和彦はなんの抵抗もなく鷹津の頭を抱き締めていた。
 鷹津は何度も胸元や腹部に唇を押し当てながら、和彦の尻の肉を鷲掴み、荒々しく揉みしだいてくる。
「手の傷が痛んできた……」
 ふいに鷹津がぼそりと洩らす。
「痛み止めが切れ始めたんだ。あまり痛むようなら、テーブルの上に痛み止めが――」
「手っ取り早く、痛みを忘れられる方法があるだろ。俺を興奮させて、感じさせてくれればいい」
 顔を上げた鷹津が下卑た笑みを浮かべる。嫌な男だ、と心の中で呟いた和彦だが、同時に胸の奥が疼いてもいた。さきほど、鷹津と手を握り合って交わった高揚感と一体感は、容易なことでは消えない。それどころか、些細な刺激で再燃する。
 和彦の返事など必要としていないといった様子で、鷹津はベッドにもたれかかるようにして床の上に座り込み、こちらを見上げてきた。
「面倒を見てくれるだろ、――先生?」
「……こんなことなら、ぼくが怪我したほうがよかった」
「冗談でも、そんなことを言うなよ。お前が本当に怪我をしていたら、あの場にいた奴らはみんな、長嶺から何かしらの罰を受けていた。組長の〈オンナ〉を守るってのは、それだけ重いんだ」
 鷹津に強い力で手首を掴まれる。和彦は再び腰に跨ることになったが、今度は鷹津は上体を起こしており、嫌でも間近で顔を合わせることになる。
 息もかかる距離で鷹津に見つめられ、つい視線を逸らす。かまわず鷹津が顔を近づけてきて、半ば強引に唇を塞がれた。
 執拗に唇を吸われているうちに、鷹津と舌先を触れ合わせ、すぐに大胆に絡め合う。一方で、下肢が密着し、互いの欲望が擦れ合う。さんざん欲望を散らし合ったはずなのに、すでにもう二人は熱くなっていた。
「うっ……」
 尻の合間に鷹津の指が這わされ、蕩けるほど柔らかくなっている内奥の入り口をこじ開けられる。和彦は腰を揺らし、引き締まった鷹津の下腹部に、意図しないまま欲望を強く押し当てていた。
「もう少し我慢しろよ。すぐに、突っ込んでやる」
 荒い息遣いとともにそう言って、鷹津が胸元に顔を埋めてくる。硬く凝った胸の突起にいきなり歯が立てられたが、和彦が感じたのは痛みではなく、鳥肌が立つような心地よさだった。
「あっ、あっ」
 背をしならせ、内奥に挿入された指をきつく締め付ける。和彦のその反応に勢いを得たのか、鷹津は激しく濡れた音を立てて突起を吸う。
 言葉はなくとも、互いに求めている次の行為はわかっていた。
 和彦が腰を浮かせると、鷹津が熱くなった欲望を握る。手探りで位置を合わせ、あとはゆっくりと腰を下ろすだけだった。
「うっ、ああっ――……」
 内奥を押し広げる逞しい感触に、全身に快美さが響き渡る。和彦は鷹津の肩に掴まりながら、大きく背をしならせていた。
 貪るように鷹津のものを奥深くまで呑み込み、締め上げる。眉をひそめて呻き声を洩らした鷹津に背を引き寄せられ、たまらず和彦は両腕でしっかりとしがみつく。
 内奥深くで鷹津の力強い脈動を感じ、合わせた胸を通して、心臓の鼓動を感じる。耳元には、大きくゆっくりとした息遣いがかかる。燃えそうに熱いてのひらで背を撫でられながら、和彦は全身で鷹津という男を堪能していた。
 あとは――。鷹津の顔を覗き込み、自ら唇を重ねると、口腔に舌を差し込む。
「……サービスが、いいな」
 口づけの合間に掠れた声で鷹津が話しかけてくる。和彦は息を喘がせながら睨みつけた。
「今日だけ、だからな」
「ああ……。わかってる。お前は、俺の〈オンナ〉じゃないからな――」
 毒と皮肉と自嘲がこもった鷹津の呟きに、どういう意味かと問いかけようとした和彦だが、緩く腰を突き上げられて、唇をついて出たのは甲高い嬌声だった。誘われたように今度は鷹津に唇を塞がれる。
 あっという間に言葉を交わす余裕すらなくし、二人は互いを貪り合う行為に夢中になっていた。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...