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第24話
(26)
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背を撫でられ、和彦は身を強張らせる。和彦の怯えが伝わったのか、賢吾は低く笑い声を洩らした。
「冗談だ。――今は、これで満足だ」
和彦は、羽毛でくすぐられたような感触を背に感じる。何事かと思っていると、目の前にひらひらと桜の花びらが降ってきた。
「どこもかしこも、桜の花びらだらけだな、先生」
「……誰の、せいだ」
「桜の花はあっという間に散っちまうが、記憶にはずっと残るだろ。こうして、俺と〈遊んだ〉ことも」
賢吾はこんなことを、どんな顔をして言っているのか。和彦は首を巡らせ確認しようとしたが、その瞬間、内奥で蠢く感触を強く意識していた。
興奮しきった賢吾の欲望を強く締め付ける。和彦の官能が高まっていることを知ったのか、賢吾は律動を再開した。
「あっ、あっ、い、いぃ。賢吾、さんっ……」
激しく腰を打ち付けられながら、体を前後に揺さぶられる。和彦は声を抑えられず、放埓に嬌声を上げていた。
汗に濡れた肌に桜の花びらを貼り付かせ、浅ましく腰を振って肉を求める〈オンナ〉の姿に、賢吾は満足しているようだった。その証拠に、和彦の耳に低い唸り声が届く。
内奥深くに二度目の精を注ぎ込まれ、和彦は何度も深い吐息を洩らしながら、すべてを受け止めていた。全身に快美さが行き渡り、これが賢吾に執着されているということなのだと、肉に刻み込まれる。
体に力が入らず、与えられた快感の余韻に浸っていた和彦だが、賢吾はさらに〈遊び〉を楽しむつもりのようだ。呼吸を落ち着けると、こんなことを言い出した。
「遊んだあとは、しっかり後片付けをしないとな」
次の瞬間、和彦は目を開く。内奥から賢吾のものが引き抜かれたからだ。
「待っ――」
蕩けて喘ぐ内奥から、注がれた精がドロリと溢れ出す。しかし、それだけではない。和彦はようやく、賢吾の行為の目的がわかった気がした。
「せっかくきれいだったのに、桜の花びらがひどいことになってるな」
言葉とは裏腹に、楽しげな声で言いながら賢吾が内奥に指を挿入し、出し入れを繰り返す。精と、無残なことになっているであろう花びらを掻き出されていた。
和彦は羞恥と屈辱を味わう一方で、どうしようもなく感じていた。潤んだ襞と粘膜を賢吾の指にまとわりつかせ、内奥全体で締め付ける。
「覚えておけよ、先生。俺の証が、ここにもあるってことを。刺青は入れないが、俺は、俺の〈オンナ〉にしっかりと証は入れる。どれだけの男を咥え込もうが、桜が咲く季節のたびに思い出すだろ。俺とこうしたことを」
物騒なのかロマンチストなのか、それとも両方なのか――。賢吾の言葉に、和彦は力なく笑ってしまう。
「……こんなことをするのは、あんたぐらいだ……。嫌でも、忘れられない」
「おう、忘れるなよ」
賢吾の唇が腰に押し当てられたのを感じ、和彦は小さく身震いをする。あれだけ求め合い、快感を貪り合ったというのに、まだ賢吾の執着を感じたいと願う自分自身がいる。それがひどく怖い反面、いままで知らなかった情愛に新鮮さを覚えていた。
和彦の背に張り付いた桜の花びらに、戯れるように賢吾が口づけを落とす。再び体を仰向けにされると、覆い被さってきた賢吾と熱っぽく唇を吸い合いながら、和彦は片手を伸ばして桜の花びらを掴み、賢吾の背に振り撒いてやる。
「大蛇に、桜の花は似合わねーだろ」
そう言って賢吾が低く笑う。どうだろう、と和彦は口中で洩らす。艶かしくうねる蛇の体に、可憐な桜の花びらは似合うというより、いかがわしく見えるかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えていると、賢吾も桜の花びらを手に取り、ふっと息を吹きかけた。和彦の顔や胸元にひらひらと舞い落ち、賢吾の唇が追いかけてくる。
小さく笑みをこぼした和彦は、もうしばらく、大蛇と桜の花びらと戯れることにした。
「冗談だ。――今は、これで満足だ」
和彦は、羽毛でくすぐられたような感触を背に感じる。何事かと思っていると、目の前にひらひらと桜の花びらが降ってきた。
「どこもかしこも、桜の花びらだらけだな、先生」
「……誰の、せいだ」
「桜の花はあっという間に散っちまうが、記憶にはずっと残るだろ。こうして、俺と〈遊んだ〉ことも」
賢吾はこんなことを、どんな顔をして言っているのか。和彦は首を巡らせ確認しようとしたが、その瞬間、内奥で蠢く感触を強く意識していた。
興奮しきった賢吾の欲望を強く締め付ける。和彦の官能が高まっていることを知ったのか、賢吾は律動を再開した。
「あっ、あっ、い、いぃ。賢吾、さんっ……」
激しく腰を打ち付けられながら、体を前後に揺さぶられる。和彦は声を抑えられず、放埓に嬌声を上げていた。
汗に濡れた肌に桜の花びらを貼り付かせ、浅ましく腰を振って肉を求める〈オンナ〉の姿に、賢吾は満足しているようだった。その証拠に、和彦の耳に低い唸り声が届く。
内奥深くに二度目の精を注ぎ込まれ、和彦は何度も深い吐息を洩らしながら、すべてを受け止めていた。全身に快美さが行き渡り、これが賢吾に執着されているということなのだと、肉に刻み込まれる。
体に力が入らず、与えられた快感の余韻に浸っていた和彦だが、賢吾はさらに〈遊び〉を楽しむつもりのようだ。呼吸を落ち着けると、こんなことを言い出した。
「遊んだあとは、しっかり後片付けをしないとな」
次の瞬間、和彦は目を開く。内奥から賢吾のものが引き抜かれたからだ。
「待っ――」
蕩けて喘ぐ内奥から、注がれた精がドロリと溢れ出す。しかし、それだけではない。和彦はようやく、賢吾の行為の目的がわかった気がした。
「せっかくきれいだったのに、桜の花びらがひどいことになってるな」
言葉とは裏腹に、楽しげな声で言いながら賢吾が内奥に指を挿入し、出し入れを繰り返す。精と、無残なことになっているであろう花びらを掻き出されていた。
和彦は羞恥と屈辱を味わう一方で、どうしようもなく感じていた。潤んだ襞と粘膜を賢吾の指にまとわりつかせ、内奥全体で締め付ける。
「覚えておけよ、先生。俺の証が、ここにもあるってことを。刺青は入れないが、俺は、俺の〈オンナ〉にしっかりと証は入れる。どれだけの男を咥え込もうが、桜が咲く季節のたびに思い出すだろ。俺とこうしたことを」
物騒なのかロマンチストなのか、それとも両方なのか――。賢吾の言葉に、和彦は力なく笑ってしまう。
「……こんなことをするのは、あんたぐらいだ……。嫌でも、忘れられない」
「おう、忘れるなよ」
賢吾の唇が腰に押し当てられたのを感じ、和彦は小さく身震いをする。あれだけ求め合い、快感を貪り合ったというのに、まだ賢吾の執着を感じたいと願う自分自身がいる。それがひどく怖い反面、いままで知らなかった情愛に新鮮さを覚えていた。
和彦の背に張り付いた桜の花びらに、戯れるように賢吾が口づけを落とす。再び体を仰向けにされると、覆い被さってきた賢吾と熱っぽく唇を吸い合いながら、和彦は片手を伸ばして桜の花びらを掴み、賢吾の背に振り撒いてやる。
「大蛇に、桜の花は似合わねーだろ」
そう言って賢吾が低く笑う。どうだろう、と和彦は口中で洩らす。艶かしくうねる蛇の体に、可憐な桜の花びらは似合うというより、いかがわしく見えるかもしれない。
ぼんやりとそんなことを考えていると、賢吾も桜の花びらを手に取り、ふっと息を吹きかけた。和彦の顔や胸元にひらひらと舞い落ち、賢吾の唇が追いかけてくる。
小さく笑みをこぼした和彦は、もうしばらく、大蛇と桜の花びらと戯れることにした。
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