血と束縛と

北川とも

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第23話

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 内奥深くまで欲望を埋め込んだ守光は、すぐに慎重さを取り戻し、嬲るように掻き回してくる。感じやすくなっている襞と粘膜は、媚びるように守光のものにまとわりつき、吸い付く。そして、内奥全体は淫らな蠕動を繰り返す。
「はっ……、あっ、あっ、はあっ……」
 一度声を上げてしまうと、もう抑えられなかった。守光にしても、あえて和彦に声を上げさせるように、弱い部分を攻めてくる。
「やっ、めて……くだ――、そこは、つらいんです」
 両足の間に片手が差し込まれ、柔らかな膨らみを揉みしだかれる。もう、下肢に力が入らなくなっていた。
「男を悦ばせる体だ。わしは、あんたに触れるのが、楽しくてたまらん」
 そんなことを囁いてすぐに守光は、襖の向こうにいる男には冷静な指示を与える。何か問題が起こったようだが、交わされる会話の内容を理解できるほどの思考力は、和彦には残されていない。
 不意打ちのように内奥を強く突き上げられ、布団の上に二度目の精を飛び散らせていた。
 呻き声を洩らした和彦はこのとき、鼻先を掠める優しい香りに気づいた。昼間嗅いだ、桜の花のものだ。
 この部屋に花など飾っていない。窓を閉め切っているため、外から香りが入り込んでくることもないはずだ。
 そうなるとこの香りは――。
 ここで和彦は、立て続けに嬌声を上げる。内奥深くに熱い精を注ぎ込まれ、桜の香りはあっという間に霧散していた。
「あんたも、悦んでいるな……」
 そう洩らした守光が、汗に濡れて熱くなった和彦の肌をてのひらで撫でる。
 いつの間にか、襖の向こうにいた男の気配はなくなっていた。どれだけ恥知らずな嬌声を聞かれただろうかと考えた途端、激しい羞恥に襲われ、突き出したままの腰をわずかに揺らす。それが合図のように守光が繋がりを解き、内奥からは、注がれたばかりの精がゆっくりと溢れ出してきた。
 いまさらかもしれないが、最低限の慎みから浴衣で下肢を隠そうと手を伸ばしかけたが、守光に止められる。それどころか、内奥に指を挿入された。
「うっ、うぅっ」
 驚くほど脆く、感じやすくなっている内奥の襞と粘膜が、守光の指に絡みつく。精を掻き出すように指が出し入れされ、湿った音が室内に響いた。
「まだ、物足りないようだ。賢吾も千尋も、あんたを丹念に可愛がっているんだろう。わしも、できることなら同じようにしてやりたいが――」
 ここでふいに指が引き抜かれ、守光が動いた気配がした。喘ぐ和彦の耳に、室内を歩く微かな足音が届く。守光が何をしているのか、頭を動かして確認するほどの気力は和彦にはなかった。守光に注ぎ込まれた快感という毒で、全身が甘く痺れている。
 すぐに戻ってきた守光に促され、仰向けとなる。まだ蕩けたままの和彦とは対照的に、浴衣の乱れを直した守光は、端然とした佇まいを取り戻していた。いや、そもそも守光は乱れていたのか――。
 そんなことを考えているうちに、力の入らない片足を抱え上げられる。濡れて綻んだ内奥の入口を、守光はじっと見つめていた。そんな守光を、和彦は見ていられなかった。こんな光景を目にするぐらいなら、まだ目隠しをされていたほうがよかったとすら思った。
 たまらず顔を背けると、落ち着いた声で守光が言った。
「あんたのために、〈オモチャ〉を作らせよう。太さ、長さ、形と、希望があれば全部言えばいい。細かいところまでな」
 何を言っているのかと問いかけようとしたとき、内奥の入口に滑らかな感触が押し当てられる。不思議な感触を持つそれは、まるで熱を持たない欲望のようでありながら、同じような強引さで内奥をこじ開けてきた。
「あっ……」
 ようやく和彦は、自分の中に押し入ってくるものがなんであるか理解した。男の欲望の形を模した、卑猥な道具だ。
 内奥深くまで収まったものが、円を描くように動かされる。自分ではどうしようもない反応だが、和彦は卑猥な道具を締め付けていた。内から焼かれそうな熱さも、官能を刺激される逞しい脈動もないが、それでも襞や粘膜を擦り上げられると、慎みを失っている内奥は悦び、感じてしまう。
「うっ、うぅっ」
 和彦の声が艶を帯びていることに気づいたらしく、守光は本格的に道具で内奥を嬲り始めた。
「この遊びは、賢吾と千尋には秘密だ。あの二人は、欲望に体力が伴っているが、わしは――。多少の見栄を張らせてもらいたいと思うのは、悪いことかね?」
 長嶺の男がこういう言い方をするときは、和彦から欲しい返事をもぎ取ろうとするときだ。一度内奥から引き抜かれた道具を奥深くまで突き込まれ、和彦は声も出せずに喉を反らす。
 爪先から頭の先まで、肉の悦びが行き渡っていくようだった。小刻みに震える和彦の体を、守光が片手で撫でる。
「――あんたは本当に、いいオンナだ。末永く大事にして、可愛がろう。あんたも、長嶺の男たちのために、尽くしてくれ。悪いようにはしない」
 囁かれると同時に、道具が内奥で蠢く。頭の中が真っ白に染まるのを感じながら、和彦は何も考えられないまま、何度も頷いていた。

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