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第23話
(27)
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守光の発した穏やかな声に我に返り、和彦は慌てて手を動かす。何度となく賢吾や三田村の刺青を撫でているというのに、浴衣を通してとはいえ守光の刺青に触れるのは、ひどく抵抗がある。恐れ多い、という感覚があるのだ。
その気持ちを抑えつけ、守光の腰や背だけではなく、肩も揉んでいく。意外な力仕事に、風呂上がりということもあって和彦の肌は汗ばみ、息が弾む。
「なかなか、体力がいるだろう。やり方を覚えて、賢吾にもしてやるといい。きっと喜ぶ」
「そうですね――」
前触れもなく守光が身じろぎ、体を起こす。何事かと思ったとき、和彦は腕を掴まれて引っ張られ、咄嗟に守光の肩に手を置いた。この瞬間、自分の本来の役目を果たすときがきたのだと悟った。
長嶺守光の〈オンナ〉としての役目を。
室内をぼんやりと照らす明かりは、守光の端整な顔に、昼間とはまったく違う表情を造り出す。静かだが、凄みを帯びた眼差しに見つめられ、漠然と和彦は感じた。世代は違えど、抱えた欲望の激しさは、賢吾とまったく同じだと。
総和会会長という肩書きを持っていながら、守光にはまだ欲しいものがあるのだろうか。そんなことを考えているうちに、和彦は唇を塞がれる。
味わうように何度も唇を吸われながら、まだ湿っている後ろ髪を梳かれ、うなじを撫でられる。口腔に守光の舌が入り込み、まさぐられる頃、和彦はぎこちなく体から力を抜いていた。目隠しをしていない状態で初めて守光に求められて、緊張している。和彦のその緊張を愛でるように、浴衣の上から守光が肩や背を撫でてきた。
緩やかに舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を、露骨に濡れた音を立てながら吸われ、軽く歯を立てられると、たまらず和彦は鼻にかかった声を洩らす。守光の息遣いが笑った。
抱き寄せられ、自然な流れで布団に押し倒される。伏せていた視線を上げると、驚くほど間近に守光の鋭い目があった。怖い、と思った瞬間に、無視できない肉欲の疼きが和彦の胸の奥で生まれる。
もう一度、深い口づけを交わしながら、浴衣の胸元を広げられていた。さらに守光の手は下がり、下着を脱がされる。
「うっ……」
両足の間に差し込まれた手に、いきなり敏感なものを掴まれて声が洩れていた。和彦が無防備な姿にされていくのとは対照的に、守光は浴衣の前を寛げることすらしない。やはり体を見せる気はないのだ。
体をまさぐられながら守光の顔を見上げ続けるのは、なんだか不思議だった。他の男たちに求められるとき、狂おしい欲情に身を任せてしまえば、あとはもう何も考えなくて済むのだが、守光が相手だと、一欠片でも理性を保ち続けなくてはならない。そうでなければ、刺青に触れてしまう。
浴衣を脱がされると、時間をかけて唇と舌が肌に這わされる。緊張と興奮で凝った胸の突起を舌先で転がされてから口腔に含まれると、和彦は大きく息を吸い込む。肌がざわつく感覚は、快感の前触れだ。ささやかな刺激で、一気に爆発してしまうのだ。
じっくりと突起を舐められ、吸われていくうちに、感度が研ぎ澄まされていく。和彦の息遣いが乱れ始めた頃を見計らって、守光の歯が突起に立てられる。
「んうっ」
意識しないまま和彦が声を洩らすと、凝った突起を歯で扱くように引っ張られた。痛い、と思ったのは一瞬で、すぐに胸に疼きが広がる。次の瞬間には、甘やかすようにたっぷりと舐められていた。
感じやすい内腿にてのひらが這わされ、つい腰が揺れる。促されるままに足を立てて左右に開くと、身を起こしかけた和彦のものは、再び守光の手に包み込まれる。ゆっくりと上下に扱かれているうちに、胸を反らし上げた和彦は深い吐息をこぼし、愛撫に蕩け始めていた。
ここで守光が、思いがけない行動を取る。和彦の両膝に手をかけ、さらに大胆に足を開かせたのだ。驚いて目を見開く和彦に、口元に薄い笑みを湛えた守光がこう囁きかけてきた。
「――あんたの垂らす蜜を舐めたら、長生きできるだろうか」
「えっ……」
「賢吾も千尋も味わっている蜜だ。わしも、味を知りたくなった」
開いた両足の間に守光が顔を埋める。和彦は目を逸らすこともできず、愛撫によって身をしならせる自分の欲望が、守光の舌に舐め上げられる様を見ていた。
まっさきに感じたのは、全身を貫く快美さだった。目の前の光景が信じられないくせに、体はしっかりと現実を認識し、浅ましく反応しているのだ。
「うっ、あぁっ――」
上擦った声を上げた和彦は、愛撫から逃れようと上体を捩ったが、それ以上の抵抗はできない。熱い口腔に欲望を呑み込まれたからだ。
その気持ちを抑えつけ、守光の腰や背だけではなく、肩も揉んでいく。意外な力仕事に、風呂上がりということもあって和彦の肌は汗ばみ、息が弾む。
「なかなか、体力がいるだろう。やり方を覚えて、賢吾にもしてやるといい。きっと喜ぶ」
「そうですね――」
前触れもなく守光が身じろぎ、体を起こす。何事かと思ったとき、和彦は腕を掴まれて引っ張られ、咄嗟に守光の肩に手を置いた。この瞬間、自分の本来の役目を果たすときがきたのだと悟った。
長嶺守光の〈オンナ〉としての役目を。
室内をぼんやりと照らす明かりは、守光の端整な顔に、昼間とはまったく違う表情を造り出す。静かだが、凄みを帯びた眼差しに見つめられ、漠然と和彦は感じた。世代は違えど、抱えた欲望の激しさは、賢吾とまったく同じだと。
総和会会長という肩書きを持っていながら、守光にはまだ欲しいものがあるのだろうか。そんなことを考えているうちに、和彦は唇を塞がれる。
味わうように何度も唇を吸われながら、まだ湿っている後ろ髪を梳かれ、うなじを撫でられる。口腔に守光の舌が入り込み、まさぐられる頃、和彦はぎこちなく体から力を抜いていた。目隠しをしていない状態で初めて守光に求められて、緊張している。和彦のその緊張を愛でるように、浴衣の上から守光が肩や背を撫でてきた。
緩やかに舌を絡め合い、唾液を交わす。引き出された舌を、露骨に濡れた音を立てながら吸われ、軽く歯を立てられると、たまらず和彦は鼻にかかった声を洩らす。守光の息遣いが笑った。
抱き寄せられ、自然な流れで布団に押し倒される。伏せていた視線を上げると、驚くほど間近に守光の鋭い目があった。怖い、と思った瞬間に、無視できない肉欲の疼きが和彦の胸の奥で生まれる。
もう一度、深い口づけを交わしながら、浴衣の胸元を広げられていた。さらに守光の手は下がり、下着を脱がされる。
「うっ……」
両足の間に差し込まれた手に、いきなり敏感なものを掴まれて声が洩れていた。和彦が無防備な姿にされていくのとは対照的に、守光は浴衣の前を寛げることすらしない。やはり体を見せる気はないのだ。
体をまさぐられながら守光の顔を見上げ続けるのは、なんだか不思議だった。他の男たちに求められるとき、狂おしい欲情に身を任せてしまえば、あとはもう何も考えなくて済むのだが、守光が相手だと、一欠片でも理性を保ち続けなくてはならない。そうでなければ、刺青に触れてしまう。
浴衣を脱がされると、時間をかけて唇と舌が肌に這わされる。緊張と興奮で凝った胸の突起を舌先で転がされてから口腔に含まれると、和彦は大きく息を吸い込む。肌がざわつく感覚は、快感の前触れだ。ささやかな刺激で、一気に爆発してしまうのだ。
じっくりと突起を舐められ、吸われていくうちに、感度が研ぎ澄まされていく。和彦の息遣いが乱れ始めた頃を見計らって、守光の歯が突起に立てられる。
「んうっ」
意識しないまま和彦が声を洩らすと、凝った突起を歯で扱くように引っ張られた。痛い、と思ったのは一瞬で、すぐに胸に疼きが広がる。次の瞬間には、甘やかすようにたっぷりと舐められていた。
感じやすい内腿にてのひらが這わされ、つい腰が揺れる。促されるままに足を立てて左右に開くと、身を起こしかけた和彦のものは、再び守光の手に包み込まれる。ゆっくりと上下に扱かれているうちに、胸を反らし上げた和彦は深い吐息をこぼし、愛撫に蕩け始めていた。
ここで守光が、思いがけない行動を取る。和彦の両膝に手をかけ、さらに大胆に足を開かせたのだ。驚いて目を見開く和彦に、口元に薄い笑みを湛えた守光がこう囁きかけてきた。
「――あんたの垂らす蜜を舐めたら、長生きできるだろうか」
「えっ……」
「賢吾も千尋も味わっている蜜だ。わしも、味を知りたくなった」
開いた両足の間に守光が顔を埋める。和彦は目を逸らすこともできず、愛撫によって身をしならせる自分の欲望が、守光の舌に舐め上げられる様を見ていた。
まっさきに感じたのは、全身を貫く快美さだった。目の前の光景が信じられないくせに、体はしっかりと現実を認識し、浅ましく反応しているのだ。
「うっ、あぁっ――」
上擦った声を上げた和彦は、愛撫から逃れようと上体を捩ったが、それ以上の抵抗はできない。熱い口腔に欲望を呑み込まれたからだ。
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