血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
491 / 1,268
第23話

(2)

しおりを挟む
「俺としては、そんな先生が、じいちゃんにも気に入られて、認められたらいいなと思ってたんだ。オヤジがそうなったように、じいちゃんが先生に骨抜きになっても、俺は納得はできた。先生を、長嶺の男たちで大事にするんだ。」
「……だったらどうして、そんな複雑そうな顔をする」
 靴下を脱がせた和彦は、次にスラックスを引き下ろす。
「――……先生を取り上げられるかもしれないと思ったんだ。『総和会会長のオンナになった』と、じいちゃんから言われたとき」
「だったらお前は、長嶺守光のオンナになったと言われたら、あっさり頷けたのか」
「それもどうだろ。納得できるから、先生を独占したいって気持ちがなくなるかというと、それは絶対にないよ」
「長嶺の男の理屈は、難しい。……もともとぼくは、人間関係にそう執着するほうじゃなかったし、お前みたいに、肉親を強く信頼することもなかったしな。普通の人間より、気持ちの機微に鈍いだけなのかもしれないが」
 そもそも長嶺という存在は、極道の中では異質だ。力がものを言う世界で、何より血を重んじている。その異質さを極端に現しているのが、男である和彦を、〈オンナ〉として三世代で共有しつつある状況だ。
 これはもう、理屈を理解できるかという話ではなく、受け入れるか否かが重要なのだろう。
 和彦はそんなことを考えながら、今度はワイシャツを脱がせていく。千尋は、年相応の青年らしい顔に深刻な表情を浮かべながら、露骨な問いかけをしてきた。
「――先生、この先も、俺のオンナでいてくれる?」
「嫌だと言ったら、どうするんだ」
「誰にも先生を抱かせない。もちろん、オヤジやじいちゃんにも。先生に最初に目をつけたのは、俺だ。俺のオンナになってくれないなら、誰のオンナにもさせない」
 長嶺の男は確かに情が強い。千尋なら、子供のような傍若無人ぶりを発揮して、誰にも和彦に近寄らせないぐらいのことはしそうだ。そうする権利があると、千尋は本気で思っているのだ。
「つまり、お前を拒めば、ぼくは誰のオンナにもならずに済むということだな」
 あっ、と声を洩らした千尋が、情けない顔で見上げてくる。和彦はため息をつくと、脱がせたワイシャツをベッドの下に落とした。
「……お前、そんなことで、食えない連中ばかりのこの世界を生きていけるのか?」
「先生が絡むこと以外では、俺はしっかりしてるんだよ」
 ウソつけ、と口中で呟き、和彦はベッドから下りようとする。千尋に水を持ってこようとしたのだが、千尋はそうは取らなかったようだ。慌てた様子で和彦の腕を掴み、必死の顔で見つめてきた。和彦が逃げると思ったらしい。
「千尋……?」
 呼びかけると、千尋はうろたえた素振りを見せてから、次の瞬間には取り繕ったように傲慢な表情となる。
「俺のオンナなら――舐めろ」
 思いがけないことを言って、千尋は唯一身につけていた下着をわずかに下ろす。姿を見せた欲望は、和彦が戸惑っている間に、千尋の興奮を物語るように目に見える反応を示す。掠れた声で千尋はもう一度言った。
「今すぐ、これを舐めろ」
 和彦は逆らわなかった。下着を脱がせると、片手で千尋の欲望を握り締め、軽く上下に扱く。それから、両足の間に顔を伏せた。
「うっ、あっ……」
 千尋が望むように、〈オンナ〉として露骨なほどいやらしい愛撫を施す。たっぷりの唾液を擦りつけるように何度も舐め上げ、舌を絡ませると、若々しい欲望はあっという間に身を起こし、張り詰める。そんな千尋のものを、和彦はゆっくりと口腔に呑み込んでいき、熱く湿った粘膜で包み込む。
「せん、せ、すげっ――」
 呻き声を洩らした千尋の手が頭にかかり、髪を掻き乱される。素直な千尋の反応を、和彦はいとおしんでいた。
 頭を上下に動かしながら、唇で締め付けるようにして千尋の欲望を扱く。先端を舌先でくすぐると、引き締まった下腹部が小刻みに震える。同時に和彦の口腔で、すっかり逞しくなった欲望も震えた。
 興奮しきった千尋のものを口腔から出し、再び舐め上げてやる。先端から滲む透明なしずくを舌先で掬い取り、唇を押し当てて柔らかく吸う。このまま絶頂まで導いてやろうと思ったが、千尋がそれを拒んだ。
 突然和彦は腕を掴まれて、乱暴に体を引き上げられる。そのままベッドに押し倒されて、今度は千尋がのしかかってきた。
「先生の口、よすぎ。あっという間に精液吸い取られそうだった」
 千尋の言葉に、寸前までの自分の行為も忘れて和彦は羞恥する。
「バカ、何言ってっ……」
「でも先生、俺をもっと甘やかして、気持ちよくしてくれる場所が、あるよね?」

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

朝起きたら幼なじみと番になってた。

オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。 隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた 思いつきの書き殴り オメガバースの設定をお借りしてます

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...