血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
459 / 1,268
第21話

(21)

しおりを挟む
 そう中嶋から言葉をかけられると同時に、秦にベッドに引き上げられる。
 二人がかりでワイシャツを脱がされ、スラックスと下着を引き下ろされる頃には、和彦は形だけの抵抗の空しさを味わっていた。本当に嫌なら逃げ出せばいいのだ。二人は決して、和彦に無理強いはしない。
 和彦に覆い被さってきた中嶋が唇を重ね、剥き出しになっている欲望同士を擦りつけてくる。そんな二人を眺めながら、秦は悠然とシャツを脱いでいた。
 広いベッドの上で、何も身につけていない体をしっかりと重ねているうちに、羞恥心が少しずつ剥ぎ取られていくようだった。まるで獣同士が無邪気にじゃれ合っているようで、なんだか楽しくさえなってくるが、次第に中嶋の体が熱くなってくるのを感じて、これは儀式のようなものだと悟る。
「……緊張していたのか?」
 思わず和彦が尋ねると、〈女〉の顔をした中嶋は頷いた。
「先生がいてくれてよかった。そうじゃないと俺は多分、ベッドに転がったまま、初心な乙女みたいに体を震わせていましたよ」
「経験豊富な元ホストが、何言ってるんだ」
「経験じゃ、先生と秦さんには負けます――」
 ここで中嶋がビクリと体を震わせ、唇を引き結ぶ。楽しげに和彦と中嶋の会話を聞いていた秦が、ようやく動いたのだ。
 和彦に覆い被さっている中嶋の両足の間で、差し込まれた秦の手が妖しく動いていた。小さく声を洩らした中嶋の髪を掻き上げてから、和彦は唇を啄んでやる。すぐに互いの唇を吸い合い、舌を絡め合っていたが、ふっと和彦の上から中嶋の重みがなくなる。ベッドの上に座った秦の両腕の中に、中嶋はいた。
 今度は秦と中嶋が、濃厚な口づけを交わし始める。胸元をまさぐられた中嶋が大きく息を吸い込むのを見て、和彦は体を起こす。すかさず秦が目配せしてきて、中嶋の足を左右に開かせた。一瞬、逡巡はしたものの、好奇心と欲情が入り混じった衝動に和彦は勝つことができなかった。
 和彦は、中嶋の欲望に手を伸ばすと、てのひらに包み込む。緩やかに上下に扱いてやると、切なげな声を上げた中嶋が腰を震わせる。
 快感に身を震わせる〈女〉の姿に、和彦はゾクゾクするような興奮を覚えた。自分に快感を与えてくれる男たちは、いつもこんな興奮を味わっているのだろうかと思ったら、さらに中嶋を感じさせたくなる。
「――楽しそうですね、先生」
 手の中で中嶋のものが熱くなり始めた頃、秦が話しかけてくる。和彦は意識しないまま笑んでいた。
「楽しいんだ。自分がいつもされていることを、中嶋くんにしていると思ったら。なんだか妙な気分でもあるし。でも、楽しいことに間違いはない」
「楽しそうな先生を見ていると、こちらも妙な気分になってきますよ」
「秦さんだけじゃないですよ。俺も、妙な気分だ。……先生を抱きたくてたまらない」
 そんなことを言った中嶋の手に頭を引き寄せられ、唇を重ねる。すぐに舌を絡め始めると、和彦の両足の間をまさぐる手があった。中嶋の手かと思ったが、すぐにそれが秦の手だとわかる。そして和彦は、今度は秦との口づけを堪能する。差し出した舌を絡め合い、唾液を交わしていると、和彦の欲望に触れている手が入れ替わる。今度こそ、中嶋の手だ。
 口づけの相手が替わると、愛撫を加えてくる手も入れ替わり、それが倒錯した感覚と高揚感を生み出していく。例えようもなく淫らな行為に耽っているという自覚は、官能を高める媚薬でしかない。
 中嶋の胸の突起を秦の指が弄り、もう片方の突起を和彦が舌先でくすぐる。和彦の胸の突起を指先で摘まみ上げてくるのは、中嶋だ。
「あうっ」
 和彦の指が、中嶋のものの先端を擦り上げた途端、声が上がる。中嶋の先端は、すでに濡れていた。それを秦に知らせると、最初から手加減するつもりはないらしい。秦はどこか嬉々とした様子で中嶋をベッドに仰向けにして、両足の間に顔を埋めた。
「うああっ……」
 再び中嶋は声を上げ、上体を仰け反らせる。和彦は、中嶋の顔を真上から覗き込む。野心たっぷりだと自負するヤクザは、すがるような目で和彦を見上げてきた。向けられる眼差しに誘われるように顔を寄せ、唇を吸ってやる。
「……先生が触れてやると、中嶋はよく反応する。今だって、涎の量が一気に増えましたよ」
 上目遣いとなって秦は笑った。それでなくても艶やかな存在感を放つ美貌の男は、中嶋の精気を少しずつ吸い取って、妖しいほどだ。
 まるで中嶋と和彦に見せつけるように、秦は大胆に舌を動かして、反り返った欲望を舐め上げる。そのたびに中嶋は声を洩らし、身を震わせる。
 このまま二人の行為に任せて自分は控えておこうかと思った和彦だが、頭を上げた秦に手招きされ、耳元にあることを囁かれる。無理だと言おうとしたが、秦に抱き寄せられた。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...