血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
454 / 1,268
第21話

(16)

しおりを挟む
 狭い内奥の入り口を硬く逞しいもので押し広げながら、和彦は鼻にかかった声を洩らす。湯に浸かっているため、体の重さをさほど気にしなくていいが、だからといって苦痛が和らぐわけではない。例え慣れ親しんだものとはいえ、異物だ。
 息を吐き出すたびに腰を下ろし、少しずつ賢吾のものを内奥に呑み込んでいく。ある程度まで侵入が深くなると、賢吾に背を抱き寄せられて腰を揺らされた。
「あっ、あっ――」
 賢吾に腰を掴まれて緩く揺さぶられ、和彦自身、その動きに合わせてさらに腰を落とす。
「相変わらず、いい締まりだ、先生」
 和彦の耳に唇を押し当て、賢吾が囁いてくる。小さく喘いだ和彦は、賢吾の肩に唇を押し当て、舌を這わせる。正確には、大蛇の鱗を舌先でなぞる。その一方で淫らに腰を蠢かし、とうとう賢吾のものをすべて内奥に受け入れた。
 繋がった部分を確かめるように、賢吾が指先を這わせてくる。そのささやかな刺激に反応して、和彦は息を詰めて背をしならせる。すると賢吾が、両腕でしっかりと抱き締めてくれた。
 湯の温かさに包まれながらの穏やかな交歓は、新鮮に感じた。風呂に入りながら賢吾に求められたことは何度もあるが、常に性急で激しい。だが今は、こうして繋がり、抱き合っている感触をゆっくりと堪能している。
「――たまには、こういうのもいいだろ」
 和彦の心の中を読んだように、賢吾が話しかけてくる。和彦はあえてとぼけて見せた。
「こういうのって?」
「カマトトぶるのは、性質の悪いオンナの証だぞ」
 眉をひそめた和彦は、賢吾の顔に軽く湯を引っ掛けてやる。ささやかな悪戯に対する報復は、実に賢吾らしいものだった。
「あうっ」
 内奥深くを抉るように突き上げられ、湯が大きく波立つ。
 和彦は、賢吾の腕の中でビクビクと体を震わせていた。体の奥から肉の愉悦が溢れ出し、全身に行き渡っていくようだ。
「俺のものを咥え込んでいる部分は、最高のオンナだな。グイグイ締めてくるくせに、中の襞は、甘やかすように絡み付いてくる」
 賢吾にそう指摘されて、和彦は内奥でふてぶてしく息づく欲望を意識して締め付ける。内から圧倒してくる逞しいものを、自分が甘やかしているという認識はないが、感じさせたいとは思う。求められると、和彦は弱い。
 ゆっくりと腰を前後に揺らしながら、賢吾の耳元であることを囁く。バスタブに深くもたれかかっていた賢吾はわずかに身を起こし、和彦はすぐに両腕を広い背に回した。向き合った姿勢では確認することはできないが、おそらく湯の中で揺らめいているであろう大蛇の刺青を、両てのひらで撫でる。
 気のせいかもしれないが、内奥に収まっている賢吾のものがドクンと脈打ったように感じ、和彦は吐息を洩らす。
 大蛇の刺青に触れることで、和彦の中の淫らな衝動が加速する。円を描くように腰を動かし、襞と粘膜を強く擦り上げられる感触を味わいたくて、内奥からゆっくりと賢吾のものを引き抜き、すぐにまた腰を下ろす。
「あっ、うぅっ――……」
 背筋を駆け上がる快感に、和彦は身を震わせて酔う。そんな和彦を、賢吾は目を細めて見つめていた。まるで、快感を求める奔放さを愛でるように。
 さきほどから触れられないまま硬く凝っていた胸の突起を、やっと賢吾が口腔に含んでくれる。痛いほど吸い上げられ、歯を立てられて、和彦はビクビクと体を震わせる。思わず背に爪を立てると、顔を上げた賢吾が、ニヤリと笑いかけてきた。
「気持ちいいか?」
「……知っていて聞くのは、意地が悪い」
「少しぐらい意地悪な男のほうが、先生は好きだろ」
「勝手なことを言うな」
「勝手か?」
 賢吾の手が双丘を鷲掴み、内奥を力強く突き上げてくる。
「あうっ、うっ、うくっ……ん」
 律動の激しさに翻弄されていた和彦だが、そのうち自ら腰を大きく動かし始める。両手では、賢吾の背の刺青をまさぐりながら。そんな和彦の背を抱き寄せて、賢吾が物騒なことを囁いてきた。
「先生、小さなものでいいから、刺青を入れてみないか?」
「嫌、だ……。刺青は、嫌だ」
 拒絶の言葉を洩らした和彦の唇を、賢吾が優しく吸ってくる。内奥を愛されながらの口づけに、危うく和彦は酔ってしまいそうになるが、思わせぶりに背を撫でられて我に返る。間近で見る賢吾の目には、情欲の火だけではなく、身をしならせる大蛇の姿も潜んでいる。冗談めかしているようで、本気で言っているのかもしれない。
 感じた怯えを胸の奥に隠して、和彦は淫らに腰を使い、賢吾の猛る欲望に奉仕する。
「――千尋がタトゥーを消したら、うちの組の人間が世話になっている彫り師のところに行かせる。とにかく腕がいい。俺の大蛇は、その彫り師のオヤジに彫ってもらったんだ。腕は、オヤジ譲りだ」

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!

はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。 ゆっくり書いていきます。 毎日19時更新です。 よろしくお願い致します。 2022.04.28 お気に入り、栞ありがとうございます。 とても励みになります。 引き続き宜しくお願いします。 2022.05.01 近々番外編SSをあげます。 よければ覗いてみてください。 2022.05.10 お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。 精一杯書いていきます。 2022.05.15 閲覧、お気に入り、ありがとうございます。 読んでいただけてとても嬉しいです。 近々番外編をあげます。 良ければ覗いてみてください。 2022.05.28 今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。 次作も頑張って書きます。 よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

処理中です...