血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
432 / 1,268
第20話

(21)

しおりを挟む
 相手の手に、発情して熱くなった体をまさぐられていた。それどころか、繋がってひくつく部分を指先でなぞられる。おそらく、しっかり見つめられてもいるだろう。和彦が相手の姿を見られないというのに、相手は和彦の痴態のすべてを目に焼き付けているのだ。
「あっ、あっ、んあっ――」
 頭の芯が溶けていくような肉の愉悦に、声が抑えられない。和彦の恥知らずな声に刺激を受けたように、緩やかに内奥を突き上げられる。それだけで深い感覚が波のように広がっていた。
 背後から貫かれ、しっかりと繋がった姿勢のまま、一度律動は止まる。和彦は大きく荒い呼吸を繰り返しながら、体の中心からじわじわと広がる肉の快感を、より明確なものとして実感していた。
 内奥深くに埋め込まれた熱い欲望を、きつく締め付ける。あさましいとわかってはいるが、どうしようもできない。物欲しげな襞と粘膜が勝手に蠢き、欲望に奉仕する。その奉仕に対する褒美のように、さらに愛撫が与えられた。
「はっ、あぁっ……」
 腰から背にかけて撫で回され、胸元にも触れられる。敏感に凝った胸の突起を摘み上げられると、意識しないまま和彦は腰を揺らす。すかさず、内奥深くで息を潜めていた欲望が動き、強い疼きが背筋を這い上がっていた。
「はあっ――、あっ、うくっ……ん」
 内奥に受け入れたものと、一つに溶け合ったような感覚を覚えていた。ただ、違和感はあった。
 他の男たちと体を重ねながら感じる、荒い息遣いも、貪るような口づけも、濃厚な汗の匂いもない。体を繋いではいるが、体を重ねているわけではないのだ。これは、対等なセックスではない。
 相手の存在を体に刻みつけられ、相手好みの快感で調教されているようだ。
 胸元を撫でていた手が、みぞおちから腹部を撫でて、両足の間に差し込まれる。和彦は喉を鳴らすと、枕の端を両手で掴んだ。再び反り返り、熱くなって震えるものを優しい手つきで扱かれ、身悶えるほどの快感が腰に広がる。
 ここでふいに、繋がりを解かれた。肩を掴まれた和彦は促されるまま、素直に仰向けとなり、両足を抱え上げられる。淫らに喘ぐ内奥を、すぐにまたこじ開けられ、欲望を呑み込まされた。
「あぁっ――」
 下腹部に、生温かな液体が散るのを感じる。そして、強烈な絶頂感も。相手が見ている前で、二度目の精を放ったのだ。
 羞恥と恍惚、消えることのない肉の悦びへの飢えに、和彦は息を喘がせながら身を震わせる。もう許してほしいと、哀願もしたかもしれない。意識が惑乱して、どうすればいいのかわからなくなっていた。
 唯一はっきりしているのは、蠢き続ける内奥に、熱く逞しい欲望はまだしっかりと埋め込まれているということだ。
 ゆっくりと小刻みに内奥を擦り上げられたかと思うと、不意打ちのように欲望が引き抜かれる。激しくひくつく内奥の入り口に指先が這わされ、そんなささやかな刺激にすら、和彦は啜り泣きのような声を洩らして反応してしまう。
 相手は、和彦の好む愛撫だけでなく、あらゆる反応を知りたがっているようだった。羞恥に身を強張らせる様も、淫らに煩悶し、奔放に乱れる様どころか、己のあさましさに打ちのめされる姿すらも――。
「うっ、くうっ……ん」
 一息に、内奥深くまで欲望が押し入り、抉るように突き上げられる。頭の先から爪先まで、肉の愉悦が満ちていた。
「あっ、あぁっ――」
 喉を反らして悦びの声を上げた和彦は、理屈ではなく、本能でこう認めていた。
 自分は、今受け入れている相手の〈オンナ〉なのだと。
 まるで魔が差すように、目隠しを取りたくなった。枕を握り締めていた手を離しかけたが、しっかりと埋め込まれた欲望が蠢き、目も眩むような快感に和彦は悦びの声を溢れさせた。
 熱い精を内奥深くに注ぎ込まれる瞬間まで。


 和彦はベッドにしどけなく横たわっていた。目隠しをしたままのため、いまだ何も見ることはできず、ただ、耳を澄ませる。
 室内を人が歩く気配がしていたが、今はベッドの傍らで何かしている物音がする。おそらく、衣類を身につけているのだ。
 気にはなるが、相手が部屋を出ていくまで、行儀よく待っているしかない――。
 そう思っていた和彦だが、ふいにベッドが揺れて驚く。何事かと体を硬くしていると、汗で湿った髪を指で梳かれた。
 そこに誰がいるのかわかっているが、それでも目隠しを取って顔を見たかった。掛け軸に画かれた若武者の姿は、情欲が鎮まると同時に瞼の裏から消えている。今は、ある人物の顔がはっきりと頭に描かれていた。
 和彦はのろのろと目隠しに手をかける。あと一押しあれば目隠しをずらせたが、その前に手を掴まれ、あっさりとベッドに押さえつけられた。

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...