血と束縛と

北川とも

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第20話

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 指では届かなかった部分すら、鷹津の欲望は容赦なく押し開いていく。和彦は上体を捩るようにして苦痛から逃れようとするが、一方で、鷹津に支配された腰は、突き上げられるたびに淫らに蠢く。その対比を鷹津は楽しんでいるようだった。
「……初めての男は、お前をどこまで開発してくれたんだろうな」
 そんなことを洩らしながら、いつの間にか身を起こした和彦のものを片手に握り、律動に合わせて上下に扱いてくる。
「いっ……、あっ、触る、な」
「こんなに嬉しそうに涎を垂らしておいて、何言ってやがる。――尻がいいのか? ビクビクと痙攣しまくってるぞ」
 両足を抱えられ、内奥深くを抉るように突き上げられる。これ以上なくしっかりと、鷹津と繋がったのだ。
 息を喘がせる和彦の顔を、鷹津が見下ろしてくる。嫌な笑いはその顔にはなく、欲望が滾る目だけが、率直な感情を表しているようだ。
 顔を近づけてきた鷹津に唇を吸われ、思わず吐息をこぼす。体全体で鷹津の重みを、体の内で鷹津の欲望の熱さを感じながら和彦は、差し出した舌を絡め合っていた。貪り合うような口づけを交わしながら、両腕を鷹津の背に回す。
「初めて男と寝たとき、こんなふうに甘えたのか?」
 口づけの合間に鷹津にまた問いかけられる。
「過去はともかく、少なくとも今は、あんたに甘えてなんて、いないだろ」
「そうか?」
 乱暴に腰を突き上げられ、悲鳴を上げた和彦は鷹津の背にしがみつく。
「うあっ、うっ、うっ、んううっ――」
 口ではどれだけ強がろうが、体は鷹津を受け入れ、媚びてさえいた。内奥を抉られ、掻き回されるたびに、逞しい欲望をきつく締め付けてしまう。
 鷹津に唆されて体を引き起こされると、互いに座った姿勢で向き合う。もちろん、繋がったままだ。
 内奥深くでふてぶてしい存在感を示す欲望が、和彦の官能を否応なく引きずり出す。ヒクリと背をしならせて反応すると、鷹津は露骨に腰を動かしてくる。鷹津の肩に掴まりながら和彦は、必死に自分を保とうとしたが、強引に唇を塞がれ、引き出された舌を吸われているうちに乱れていく。
 鷹津の腕の中で掠れた嬌声を上げ、腰を揺らす。和彦のそんな反応に駆り立てられるように、鷹津は内奥を強く突き上げてくる。気がついたときには、和彦のものは精を噴き上げ、鷹津の引き締まった腹部を濡らしていた。一方の鷹津も――。
「お前が尻の中に出されるのが好きなのは、初めての男に仕込まれたからか?」
 露骨すぎる質問に、和彦も同じ露骨さで答えた。鷹津相手に恥じらいはいらないのだ。
「……初めてのとき、こうされるのが好きだと思った」
「仕込まれるまでもない、ってことか。――淫乱」
 和彦は、鷹津の髪を思いきり掴んで引っ張る。唇の端に笑みを刻んだ鷹津は、当然のように報復してきた。
「ああっ」
 ベッドに押し倒され、のしかかってきた鷹津が乱暴に腰を打ち付けてくる。
 吐き出された熱い精に内奥を犯されていた。喉元を反らした和彦は、おぞましいとも、恍惚ともいえる独特の感覚を堪能しながら、ドクッ、ドクッと脈打つ欲望を締め付ける。鷹津は荒い呼吸をつきながら、何度も腰を突き上げてきた。
「――おい」
 鷹津に呼ばれて緩慢な仕草で顔を動かすと、当然のように唇を塞がれた。和彦は、差し込まれた鷹津の舌を吸いながら、背に両腕を回す。
 そうやって口づけを交わしているうちに、鷹津の欲望はいつものように力を取り戻し、再び内から和彦を貪り始めた。


 日付が変わる前にマンションに着いた和彦は、エントランスのロックを解除してから、背後を振り返る。アーチの陰に身を潜めるようにして鷹津が立ち、こちらを見ていた。夜遅くまで和彦を連れ出していた男としては、和彦がマンションに入る姿を見届けないと安心できないらしい。
 嫌な男ではあるが、妙なところで律儀というか、自分の役目をしっかり果たしている。その前提があるからこそ、一時でも和彦を自由に扱えるのだ。
 早く中に入れといわんばかりに鷹津があごをしゃくる。和彦は、表面上は素っ気なく鷹津に背に向けてエントランスに入る。
 鷹津の姿が見えなくなった途端、立ち止まった和彦は大きく息を吐き出す。平気なふりはしていたが、実は足元が少しおぼつかない。激しい行為の余韻を引きずる体はまだ熱く、脱力感がひどい。ホテルの部屋に泊まることも考えたが、誕生日に鷹津と一夜を共にするという事態は、意外なほど抵抗があった。
 誕生日を気にかけてくれた男たちに対する、ささやかな義理立てのつもりだろうかと、自分自身の気持ちを分析しながら、和彦は自嘲の笑みを浮かべる。
 たっぷり快感を貪った反動か、自分を貶めたい心境に駆られていた。

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