423 / 1,268
第20話
(12)
しおりを挟む
「……俺はいままで、屑以下の最低な奴らと会ってきたが、お前はその誰とも違う。唾を吐きかけたくなるほど忌々しくて憎たらしい。ズルくてしたたかな嫌な人間だ」
「蛇蝎の片割れに、そこまで言葉を費やして貶されると、かえって嬉しいな」
皮肉半分、本音半分でそう洩らすと、和彦はミネラルウォーターのペットボトルに口をつける。このとき首筋を、髪先から落ちた水のしずくが伝い落ちる。シャワーを浴びたあと、よく髪を拭かなかったせいだ。
鷹津の奢りで食事をしたあと、〈美味い餌〉の前払いを改めて求められ、和彦は拒まなかった。鷹津には、働きに対する報酬だけでなく、里見の件に関して口止め料も払わざるをえなくなったのだ。鷹津をどこまで信用していいかはわからないが、和彦が自分の事情に巻き込めるのはこの男しかいない。
「今になって初めての男を調べさせるということは、会う気なのか?」
「里見さんを使って、佐伯家がぼくのことを調べようとしている。だったらぼくは、里見さんを使って佐伯家の動向を探るだけだ。ただそのためには、あの人がいまだに信頼に値する人間なのか、それが知りたい」
「妙に色気のある目をして、言うことはえげつない奴だ」
「あんたの品性に合わせているんだ」
もう一度鼻先で笑った鷹津が立ち上がる。
「人に頼み事をしておきながら、よくそんな口が聞けるな」
「――……あんたに餌は与えるんだ。口の聞き方ぐらい大目に見ろ」
鷹津にきつい眼差しを向けながらそう言い放った和彦は、ペットボトルの水を飲み干す。空になったペットボトルを鷹津が床に放り出し、そのまま和彦はベッドの上に押し倒された。
のしかかってきた鷹津にバスローブの紐を解かれ、前を開かれる。じっと見下ろしてくる鷹津の眼差しの強さに、堪らず和彦は顔を背けた。鷹津の舌にベロリと首筋を舐め上げられ、嫌悪感に鳥肌が立ちそうになるが、それも一瞬だ。腰からじわじわと疼きが這い上がってくる。
「うっ……」
胸元に手が這わされ、すでに硬く凝っている突起を指で転がすように刺激されたかと思うと、いきなり鷹津の熱い口腔に含まれた。まるで和彦に聞かせるように濡れた音をさせながら、激しく吸われる。半ば反射的に和彦は鷹津の頭を押し退けようとしたが、それが気に食わなかったのか、突起に歯を立てられた。
和彦は痛みに身をすくめ、息を詰める。その間に鷹津に強引に両足を開かされ、タオルを落とした腰が割り込まされてきた。押し当てられてきた鷹津のものは、すでに熱く高ぶっている。和彦は片手を取られると、その欲望を握らされた。
「おい、俺を見ろ」
傲慢に命令され、ずっと顔を背けたままだった和彦は、仕方なく鷹津を見上げる。すかさず唇を塞がれ、噛み付くような口づけを与えられた。和彦の中で、嫌悪感が完全に肉の疼きへと変わった瞬間だった。
口腔に捻じ込まれた舌に粘膜を舐め回され、たっぷりの唾液を流し込まれる。鷹津らしい粗野で下品な口づけに、和彦は舌を絡めることで応え、微かに喉を鳴らして唾液を飲む。鷹津は恐ろしいほど興奮していた。覆い被さってくる体は熱くなり、筋肉が張り詰めている。力ずくで和彦を犯したいところを、ギリギリで抑えている感じだ。
鷹津の欲望は、和彦の手の中で力強さを増している。〈これ〉を愛しいとは欠片ほども思わないが――欲しいとは思った。
このとき自分がどんな表情をしたのか、和彦に自覚はない。ただ、唇を離した鷹津が、瞬きもせず凝視してきた。
「……初めての男相手にも、そんな顔をしたのか?」
「何、言って――」
「物欲しそうな、いやらしいオンナの顔だ。早く突っ込んでくれと言ってる」
「勝手なことを言うなっ」
和彦が睨みつけても、鷹津は薄ら笑いを浮かべて気にする様子はない。それどころか、いきなり和彦の片足を抱え上げ、高ぶった欲望を内奥の入り口に押し当ててきた。動揺した和彦は慌てて身じろごうとしたが、かまわず鷹津は挿入を開始しようとする。
「やめろっ。いきなりは、つらいんだっ……」
「いきなりじゃねーだろ。バスルームで、たっぷり指で弄ってやっただろ」
明け透けな鷹津の物言いに和彦は、いまさらながら自分がどんな男を相手にしているのか痛感する。この男の行動は欲望に基づき、少なくとも今、和彦相手に遠慮する必要はないのだ。なんといっても、鷹津に餌を与えると言ったのは、和彦自身だ。
バスルームで、ソープの滑りを借りて指で解された内奥が、今度は鷹津の逞しいものでこじ開けられる。感じやすい襞と粘膜を強く擦り上げられ、痺れるような痛みと肉の疼きが交互に押し寄せては、和彦を呻かせる。
「うっ……、うっ、うあっ、あっ――」
「蛇蝎の片割れに、そこまで言葉を費やして貶されると、かえって嬉しいな」
皮肉半分、本音半分でそう洩らすと、和彦はミネラルウォーターのペットボトルに口をつける。このとき首筋を、髪先から落ちた水のしずくが伝い落ちる。シャワーを浴びたあと、よく髪を拭かなかったせいだ。
鷹津の奢りで食事をしたあと、〈美味い餌〉の前払いを改めて求められ、和彦は拒まなかった。鷹津には、働きに対する報酬だけでなく、里見の件に関して口止め料も払わざるをえなくなったのだ。鷹津をどこまで信用していいかはわからないが、和彦が自分の事情に巻き込めるのはこの男しかいない。
「今になって初めての男を調べさせるということは、会う気なのか?」
「里見さんを使って、佐伯家がぼくのことを調べようとしている。だったらぼくは、里見さんを使って佐伯家の動向を探るだけだ。ただそのためには、あの人がいまだに信頼に値する人間なのか、それが知りたい」
「妙に色気のある目をして、言うことはえげつない奴だ」
「あんたの品性に合わせているんだ」
もう一度鼻先で笑った鷹津が立ち上がる。
「人に頼み事をしておきながら、よくそんな口が聞けるな」
「――……あんたに餌は与えるんだ。口の聞き方ぐらい大目に見ろ」
鷹津にきつい眼差しを向けながらそう言い放った和彦は、ペットボトルの水を飲み干す。空になったペットボトルを鷹津が床に放り出し、そのまま和彦はベッドの上に押し倒された。
のしかかってきた鷹津にバスローブの紐を解かれ、前を開かれる。じっと見下ろしてくる鷹津の眼差しの強さに、堪らず和彦は顔を背けた。鷹津の舌にベロリと首筋を舐め上げられ、嫌悪感に鳥肌が立ちそうになるが、それも一瞬だ。腰からじわじわと疼きが這い上がってくる。
「うっ……」
胸元に手が這わされ、すでに硬く凝っている突起を指で転がすように刺激されたかと思うと、いきなり鷹津の熱い口腔に含まれた。まるで和彦に聞かせるように濡れた音をさせながら、激しく吸われる。半ば反射的に和彦は鷹津の頭を押し退けようとしたが、それが気に食わなかったのか、突起に歯を立てられた。
和彦は痛みに身をすくめ、息を詰める。その間に鷹津に強引に両足を開かされ、タオルを落とした腰が割り込まされてきた。押し当てられてきた鷹津のものは、すでに熱く高ぶっている。和彦は片手を取られると、その欲望を握らされた。
「おい、俺を見ろ」
傲慢に命令され、ずっと顔を背けたままだった和彦は、仕方なく鷹津を見上げる。すかさず唇を塞がれ、噛み付くような口づけを与えられた。和彦の中で、嫌悪感が完全に肉の疼きへと変わった瞬間だった。
口腔に捻じ込まれた舌に粘膜を舐め回され、たっぷりの唾液を流し込まれる。鷹津らしい粗野で下品な口づけに、和彦は舌を絡めることで応え、微かに喉を鳴らして唾液を飲む。鷹津は恐ろしいほど興奮していた。覆い被さってくる体は熱くなり、筋肉が張り詰めている。力ずくで和彦を犯したいところを、ギリギリで抑えている感じだ。
鷹津の欲望は、和彦の手の中で力強さを増している。〈これ〉を愛しいとは欠片ほども思わないが――欲しいとは思った。
このとき自分がどんな表情をしたのか、和彦に自覚はない。ただ、唇を離した鷹津が、瞬きもせず凝視してきた。
「……初めての男相手にも、そんな顔をしたのか?」
「何、言って――」
「物欲しそうな、いやらしいオンナの顔だ。早く突っ込んでくれと言ってる」
「勝手なことを言うなっ」
和彦が睨みつけても、鷹津は薄ら笑いを浮かべて気にする様子はない。それどころか、いきなり和彦の片足を抱え上げ、高ぶった欲望を内奥の入り口に押し当ててきた。動揺した和彦は慌てて身じろごうとしたが、かまわず鷹津は挿入を開始しようとする。
「やめろっ。いきなりは、つらいんだっ……」
「いきなりじゃねーだろ。バスルームで、たっぷり指で弄ってやっただろ」
明け透けな鷹津の物言いに和彦は、いまさらながら自分がどんな男を相手にしているのか痛感する。この男の行動は欲望に基づき、少なくとも今、和彦相手に遠慮する必要はないのだ。なんといっても、鷹津に餌を与えると言ったのは、和彦自身だ。
バスルームで、ソープの滑りを借りて指で解された内奥が、今度は鷹津の逞しいものでこじ開けられる。感じやすい襞と粘膜を強く擦り上げられ、痺れるような痛みと肉の疼きが交互に押し寄せては、和彦を呻かせる。
「うっ……、うっ、うあっ、あっ――」
37
お気に入りに追加
1,391
あなたにおすすめの小説
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。


朝起きたら幼なじみと番になってた。
オクラ粥
BL
寝ぼけてるのかと思った。目が覚めて起き上がると全身が痛い。
隣には昨晩一緒に飲みにいった幼なじみがすやすや寝ていた
思いつきの書き殴り
オメガバースの設定をお借りしてます
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

男子高校に入学したらハーレムでした!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
ゆっくり書いていきます。
毎日19時更新です。
よろしくお願い致します。
2022.04.28
お気に入り、栞ありがとうございます。
とても励みになります。
引き続き宜しくお願いします。
2022.05.01
近々番外編SSをあげます。
よければ覗いてみてください。
2022.05.10
お気に入りしてくれてる方、閲覧くださってる方、ありがとうございます。
精一杯書いていきます。
2022.05.15
閲覧、お気に入り、ありがとうございます。
読んでいただけてとても嬉しいです。
近々番外編をあげます。
良ければ覗いてみてください。
2022.05.28
今日で完結です。閲覧、お気に入り本当にありがとうございました。
次作も頑張って書きます。
よろしくおねがいします。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる