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第20話
(12)
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「……俺はいままで、屑以下の最低な奴らと会ってきたが、お前はその誰とも違う。唾を吐きかけたくなるほど忌々しくて憎たらしい。ズルくてしたたかな嫌な人間だ」
「蛇蝎の片割れに、そこまで言葉を費やして貶されると、かえって嬉しいな」
皮肉半分、本音半分でそう洩らすと、和彦はミネラルウォーターのペットボトルに口をつける。このとき首筋を、髪先から落ちた水のしずくが伝い落ちる。シャワーを浴びたあと、よく髪を拭かなかったせいだ。
鷹津の奢りで食事をしたあと、〈美味い餌〉の前払いを改めて求められ、和彦は拒まなかった。鷹津には、働きに対する報酬だけでなく、里見の件に関して口止め料も払わざるをえなくなったのだ。鷹津をどこまで信用していいかはわからないが、和彦が自分の事情に巻き込めるのはこの男しかいない。
「今になって初めての男を調べさせるということは、会う気なのか?」
「里見さんを使って、佐伯家がぼくのことを調べようとしている。だったらぼくは、里見さんを使って佐伯家の動向を探るだけだ。ただそのためには、あの人がいまだに信頼に値する人間なのか、それが知りたい」
「妙に色気のある目をして、言うことはえげつない奴だ」
「あんたの品性に合わせているんだ」
もう一度鼻先で笑った鷹津が立ち上がる。
「人に頼み事をしておきながら、よくそんな口が聞けるな」
「――……あんたに餌は与えるんだ。口の聞き方ぐらい大目に見ろ」
鷹津にきつい眼差しを向けながらそう言い放った和彦は、ペットボトルの水を飲み干す。空になったペットボトルを鷹津が床に放り出し、そのまま和彦はベッドの上に押し倒された。
のしかかってきた鷹津にバスローブの紐を解かれ、前を開かれる。じっと見下ろしてくる鷹津の眼差しの強さに、堪らず和彦は顔を背けた。鷹津の舌にベロリと首筋を舐め上げられ、嫌悪感に鳥肌が立ちそうになるが、それも一瞬だ。腰からじわじわと疼きが這い上がってくる。
「うっ……」
胸元に手が這わされ、すでに硬く凝っている突起を指で転がすように刺激されたかと思うと、いきなり鷹津の熱い口腔に含まれた。まるで和彦に聞かせるように濡れた音をさせながら、激しく吸われる。半ば反射的に和彦は鷹津の頭を押し退けようとしたが、それが気に食わなかったのか、突起に歯を立てられた。
和彦は痛みに身をすくめ、息を詰める。その間に鷹津に強引に両足を開かされ、タオルを落とした腰が割り込まされてきた。押し当てられてきた鷹津のものは、すでに熱く高ぶっている。和彦は片手を取られると、その欲望を握らされた。
「おい、俺を見ろ」
傲慢に命令され、ずっと顔を背けたままだった和彦は、仕方なく鷹津を見上げる。すかさず唇を塞がれ、噛み付くような口づけを与えられた。和彦の中で、嫌悪感が完全に肉の疼きへと変わった瞬間だった。
口腔に捻じ込まれた舌に粘膜を舐め回され、たっぷりの唾液を流し込まれる。鷹津らしい粗野で下品な口づけに、和彦は舌を絡めることで応え、微かに喉を鳴らして唾液を飲む。鷹津は恐ろしいほど興奮していた。覆い被さってくる体は熱くなり、筋肉が張り詰めている。力ずくで和彦を犯したいところを、ギリギリで抑えている感じだ。
鷹津の欲望は、和彦の手の中で力強さを増している。〈これ〉を愛しいとは欠片ほども思わないが――欲しいとは思った。
このとき自分がどんな表情をしたのか、和彦に自覚はない。ただ、唇を離した鷹津が、瞬きもせず凝視してきた。
「……初めての男相手にも、そんな顔をしたのか?」
「何、言って――」
「物欲しそうな、いやらしいオンナの顔だ。早く突っ込んでくれと言ってる」
「勝手なことを言うなっ」
和彦が睨みつけても、鷹津は薄ら笑いを浮かべて気にする様子はない。それどころか、いきなり和彦の片足を抱え上げ、高ぶった欲望を内奥の入り口に押し当ててきた。動揺した和彦は慌てて身じろごうとしたが、かまわず鷹津は挿入を開始しようとする。
「やめろっ。いきなりは、つらいんだっ……」
「いきなりじゃねーだろ。バスルームで、たっぷり指で弄ってやっただろ」
明け透けな鷹津の物言いに和彦は、いまさらながら自分がどんな男を相手にしているのか痛感する。この男の行動は欲望に基づき、少なくとも今、和彦相手に遠慮する必要はないのだ。なんといっても、鷹津に餌を与えると言ったのは、和彦自身だ。
バスルームで、ソープの滑りを借りて指で解された内奥が、今度は鷹津の逞しいものでこじ開けられる。感じやすい襞と粘膜を強く擦り上げられ、痺れるような痛みと肉の疼きが交互に押し寄せては、和彦を呻かせる。
「うっ……、うっ、うあっ、あっ――」
「蛇蝎の片割れに、そこまで言葉を費やして貶されると、かえって嬉しいな」
皮肉半分、本音半分でそう洩らすと、和彦はミネラルウォーターのペットボトルに口をつける。このとき首筋を、髪先から落ちた水のしずくが伝い落ちる。シャワーを浴びたあと、よく髪を拭かなかったせいだ。
鷹津の奢りで食事をしたあと、〈美味い餌〉の前払いを改めて求められ、和彦は拒まなかった。鷹津には、働きに対する報酬だけでなく、里見の件に関して口止め料も払わざるをえなくなったのだ。鷹津をどこまで信用していいかはわからないが、和彦が自分の事情に巻き込めるのはこの男しかいない。
「今になって初めての男を調べさせるということは、会う気なのか?」
「里見さんを使って、佐伯家がぼくのことを調べようとしている。だったらぼくは、里見さんを使って佐伯家の動向を探るだけだ。ただそのためには、あの人がいまだに信頼に値する人間なのか、それが知りたい」
「妙に色気のある目をして、言うことはえげつない奴だ」
「あんたの品性に合わせているんだ」
もう一度鼻先で笑った鷹津が立ち上がる。
「人に頼み事をしておきながら、よくそんな口が聞けるな」
「――……あんたに餌は与えるんだ。口の聞き方ぐらい大目に見ろ」
鷹津にきつい眼差しを向けながらそう言い放った和彦は、ペットボトルの水を飲み干す。空になったペットボトルを鷹津が床に放り出し、そのまま和彦はベッドの上に押し倒された。
のしかかってきた鷹津にバスローブの紐を解かれ、前を開かれる。じっと見下ろしてくる鷹津の眼差しの強さに、堪らず和彦は顔を背けた。鷹津の舌にベロリと首筋を舐め上げられ、嫌悪感に鳥肌が立ちそうになるが、それも一瞬だ。腰からじわじわと疼きが這い上がってくる。
「うっ……」
胸元に手が這わされ、すでに硬く凝っている突起を指で転がすように刺激されたかと思うと、いきなり鷹津の熱い口腔に含まれた。まるで和彦に聞かせるように濡れた音をさせながら、激しく吸われる。半ば反射的に和彦は鷹津の頭を押し退けようとしたが、それが気に食わなかったのか、突起に歯を立てられた。
和彦は痛みに身をすくめ、息を詰める。その間に鷹津に強引に両足を開かされ、タオルを落とした腰が割り込まされてきた。押し当てられてきた鷹津のものは、すでに熱く高ぶっている。和彦は片手を取られると、その欲望を握らされた。
「おい、俺を見ろ」
傲慢に命令され、ずっと顔を背けたままだった和彦は、仕方なく鷹津を見上げる。すかさず唇を塞がれ、噛み付くような口づけを与えられた。和彦の中で、嫌悪感が完全に肉の疼きへと変わった瞬間だった。
口腔に捻じ込まれた舌に粘膜を舐め回され、たっぷりの唾液を流し込まれる。鷹津らしい粗野で下品な口づけに、和彦は舌を絡めることで応え、微かに喉を鳴らして唾液を飲む。鷹津は恐ろしいほど興奮していた。覆い被さってくる体は熱くなり、筋肉が張り詰めている。力ずくで和彦を犯したいところを、ギリギリで抑えている感じだ。
鷹津の欲望は、和彦の手の中で力強さを増している。〈これ〉を愛しいとは欠片ほども思わないが――欲しいとは思った。
このとき自分がどんな表情をしたのか、和彦に自覚はない。ただ、唇を離した鷹津が、瞬きもせず凝視してきた。
「……初めての男相手にも、そんな顔をしたのか?」
「何、言って――」
「物欲しそうな、いやらしいオンナの顔だ。早く突っ込んでくれと言ってる」
「勝手なことを言うなっ」
和彦が睨みつけても、鷹津は薄ら笑いを浮かべて気にする様子はない。それどころか、いきなり和彦の片足を抱え上げ、高ぶった欲望を内奥の入り口に押し当ててきた。動揺した和彦は慌てて身じろごうとしたが、かまわず鷹津は挿入を開始しようとする。
「やめろっ。いきなりは、つらいんだっ……」
「いきなりじゃねーだろ。バスルームで、たっぷり指で弄ってやっただろ」
明け透けな鷹津の物言いに和彦は、いまさらながら自分がどんな男を相手にしているのか痛感する。この男の行動は欲望に基づき、少なくとも今、和彦相手に遠慮する必要はないのだ。なんといっても、鷹津に餌を与えると言ったのは、和彦自身だ。
バスルームで、ソープの滑りを借りて指で解された内奥が、今度は鷹津の逞しいものでこじ開けられる。感じやすい襞と粘膜を強く擦り上げられ、痺れるような痛みと肉の疼きが交互に押し寄せては、和彦を呻かせる。
「うっ……、うっ、うあっ、あっ――」
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