405 / 1,268
第19話
(18)
しおりを挟む
耳に唇を押し当てたまま中嶋が言い、和彦はゾクリと身を震わせる。甘い毒を注ぎ込まれたように、体に力が入らない。いや、そもそも強く抵抗していたわけではないのだ。
マットの端を握る手に、中嶋の手が重なる。そこで、年明けに中嶋から言われた言葉を思い出した。
「……手を握って付き添ってほしいとは言われたが、これだと、ぼくが手を握られていて、立場が逆だ」
「つまり先生は、今この場で、俺と秦さんでセックスしろと言いたいんですね。そして自分は、付き添いをやってもいいと」
あからさまな表現に、一人和彦はうろたえる。そんな和彦の顔を秦が覗き込み、当然のように唇を重ねてきた。
行為そのものより、中嶋の反応が気になった和彦は小さく身じろぐ。すると背後から、中嶋に耳を舐められた。
「うっ……」
たまらず和彦は声を洩らす。ふっと背が軽くなり、中嶋が退いた気配がしたが、すぐに体を仰向けにされる。両手首をしっかりとベッドに押さえつけたのは秦で、和彦の腿の上に馬乗りとなった中嶋は、さっそくベルトを外し始めた。
「やめろっ。君らのことに、ぼくは関係ないだろっ。楽しむなら、二人でやってくれ」
和彦は声を上げながら身を捩ろうとするが、スラックスのファスナーを下ろされたことに気を取られた隙に、再び秦に唇を塞がれた。
しなやかに動く舌が口腔深くまで侵入し、粘膜を舐め回してくる。その一方で中嶋には、スラックスと下着を引き下ろされていた。これが、顔見知り程度の相手なら、和彦はもちろん死ぬ気で抵抗する。ただ、秦と中嶋はそうではない。特殊な情事の相手だ。
「んんっ」
中嶋が胸元に舌を這わせ始め、肌をまさぐる濡れた感触に和彦は呻き声を洩らす。すると、和彦が苦しがっていると思ったのか、秦が唇を離す。咄嗟に大きく息を吸い込んだところで、次に中嶋が唇を重ねてきた。
ふいに、手首を押さえていた秦の手が退く。視界の隅で行動を追うと、今度は中嶋の背後に回り込んだ。何をしているのかと思ったが、中嶋がピクリと体を震わせ、唇を離す。いつの間にか、秦の手が中嶋のスラックスの前を寛げていた。
寸前まで、和彦を組み敷いて楽しんでいる様子だった中嶋だが、すでにもうその余裕はないようだ。到底ヤクザには見えないハンサムな青年の顔に浮かんでいるのは、羞恥の表情だ。それを目にした和彦の中で、少しだけ加虐的な衝動が芽生える。
両手を伸ばし、自分がされたように中嶋のワイシャツのボタンを外してやる。中嶋はちらりと苦笑した。
「……急に先生が、強気になったように思えるんですが……」
「イジメられた分、イジメ返さないとな」
怖いな、と洩らした中嶋のあごを掴み、秦が唇を塞ぐ。熱っぽく唇を吸い、舌を絡め始めた二人を見つめながら和彦は、中嶋の露になった胸元を撫でてから、両足の間をまさぐる。中嶋の欲望を外に引き出したのは秦で、促されるままに和彦は指の輪を作って緩く扱いてやる。
「あっ、あっ」
上擦った声を上げた中嶋が腰を引きそうになるが、秦が耳元で何事か囁くと、目元が妖しい色を帯びる。
次に上擦った声を上げたのは、和彦だった。中嶋が、和彦の欲望を掴んできたからだ。
和彦の愛撫に応じるように、同じ愛撫が施される。秦はそんな二人の痴態を、艶やかな笑みを浮かべて眺めている。
秦の思惑のままに操られていることが悔しいのだが、反面、自分一人ではないという状況は、官能を高めてくれる。とてつもなく淫らなことをしているという背徳感は、とにかく甘いのだ。
再び秦が、中嶋の耳元に何事か囁き、唆す。中嶋も和彦と同じ甘さを味わっているのか、興奮したように舌なめずりをしたあと、和彦に濃厚な口づけを与えてきた。
舌を絡め合いながら、互いの欲望を擦りつけ合う。
「――わたしにも、お裾分けしてもらえますか」
そんなことを言って秦が、まず中嶋と、次に和彦と口づけを交わす。だが、秦が求めてきたのは、それだけではなかった。
和彦と中嶋は同時に声を洩らし、体を震わせる。互いに愛撫し合い、すっかり熱くなって反り返った二人の欲望を、秦が左右それぞれの手で掴んだのだ。そして、濡れた先端を指の腹で擦る。
「あうっ……」
和彦の胸に両手を突き、中嶋が必死に体を支えている。秦の手に触れられると、弱いらしい。和彦は、中嶋よりも柔軟に秦の愛撫に身を委ねながら、両手を伸ばす。しなやかな筋肉に覆われた中嶋の体にてのひらを這わせ、撫でていた。
「贅沢だな、中嶋。わたしだけじゃなく、先生にまで可愛がってもらって」
中嶋は返事の代わりに、唇だけの笑みを見せた。
マットの端を握る手に、中嶋の手が重なる。そこで、年明けに中嶋から言われた言葉を思い出した。
「……手を握って付き添ってほしいとは言われたが、これだと、ぼくが手を握られていて、立場が逆だ」
「つまり先生は、今この場で、俺と秦さんでセックスしろと言いたいんですね。そして自分は、付き添いをやってもいいと」
あからさまな表現に、一人和彦はうろたえる。そんな和彦の顔を秦が覗き込み、当然のように唇を重ねてきた。
行為そのものより、中嶋の反応が気になった和彦は小さく身じろぐ。すると背後から、中嶋に耳を舐められた。
「うっ……」
たまらず和彦は声を洩らす。ふっと背が軽くなり、中嶋が退いた気配がしたが、すぐに体を仰向けにされる。両手首をしっかりとベッドに押さえつけたのは秦で、和彦の腿の上に馬乗りとなった中嶋は、さっそくベルトを外し始めた。
「やめろっ。君らのことに、ぼくは関係ないだろっ。楽しむなら、二人でやってくれ」
和彦は声を上げながら身を捩ろうとするが、スラックスのファスナーを下ろされたことに気を取られた隙に、再び秦に唇を塞がれた。
しなやかに動く舌が口腔深くまで侵入し、粘膜を舐め回してくる。その一方で中嶋には、スラックスと下着を引き下ろされていた。これが、顔見知り程度の相手なら、和彦はもちろん死ぬ気で抵抗する。ただ、秦と中嶋はそうではない。特殊な情事の相手だ。
「んんっ」
中嶋が胸元に舌を這わせ始め、肌をまさぐる濡れた感触に和彦は呻き声を洩らす。すると、和彦が苦しがっていると思ったのか、秦が唇を離す。咄嗟に大きく息を吸い込んだところで、次に中嶋が唇を重ねてきた。
ふいに、手首を押さえていた秦の手が退く。視界の隅で行動を追うと、今度は中嶋の背後に回り込んだ。何をしているのかと思ったが、中嶋がピクリと体を震わせ、唇を離す。いつの間にか、秦の手が中嶋のスラックスの前を寛げていた。
寸前まで、和彦を組み敷いて楽しんでいる様子だった中嶋だが、すでにもうその余裕はないようだ。到底ヤクザには見えないハンサムな青年の顔に浮かんでいるのは、羞恥の表情だ。それを目にした和彦の中で、少しだけ加虐的な衝動が芽生える。
両手を伸ばし、自分がされたように中嶋のワイシャツのボタンを外してやる。中嶋はちらりと苦笑した。
「……急に先生が、強気になったように思えるんですが……」
「イジメられた分、イジメ返さないとな」
怖いな、と洩らした中嶋のあごを掴み、秦が唇を塞ぐ。熱っぽく唇を吸い、舌を絡め始めた二人を見つめながら和彦は、中嶋の露になった胸元を撫でてから、両足の間をまさぐる。中嶋の欲望を外に引き出したのは秦で、促されるままに和彦は指の輪を作って緩く扱いてやる。
「あっ、あっ」
上擦った声を上げた中嶋が腰を引きそうになるが、秦が耳元で何事か囁くと、目元が妖しい色を帯びる。
次に上擦った声を上げたのは、和彦だった。中嶋が、和彦の欲望を掴んできたからだ。
和彦の愛撫に応じるように、同じ愛撫が施される。秦はそんな二人の痴態を、艶やかな笑みを浮かべて眺めている。
秦の思惑のままに操られていることが悔しいのだが、反面、自分一人ではないという状況は、官能を高めてくれる。とてつもなく淫らなことをしているという背徳感は、とにかく甘いのだ。
再び秦が、中嶋の耳元に何事か囁き、唆す。中嶋も和彦と同じ甘さを味わっているのか、興奮したように舌なめずりをしたあと、和彦に濃厚な口づけを与えてきた。
舌を絡め合いながら、互いの欲望を擦りつけ合う。
「――わたしにも、お裾分けしてもらえますか」
そんなことを言って秦が、まず中嶋と、次に和彦と口づけを交わす。だが、秦が求めてきたのは、それだけではなかった。
和彦と中嶋は同時に声を洩らし、体を震わせる。互いに愛撫し合い、すっかり熱くなって反り返った二人の欲望を、秦が左右それぞれの手で掴んだのだ。そして、濡れた先端を指の腹で擦る。
「あうっ……」
和彦の胸に両手を突き、中嶋が必死に体を支えている。秦の手に触れられると、弱いらしい。和彦は、中嶋よりも柔軟に秦の愛撫に身を委ねながら、両手を伸ばす。しなやかな筋肉に覆われた中嶋の体にてのひらを這わせ、撫でていた。
「贅沢だな、中嶋。わたしだけじゃなく、先生にまで可愛がってもらって」
中嶋は返事の代わりに、唇だけの笑みを見せた。
43
お気に入りに追加
1,391
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…



塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる