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第18話
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「秘密を抱えた先生の表情だ。俺にバレるのが怖くて、必死にそれを押し殺している。そのくせ、どんな〈いいこと〉をしてもらったのか知らねーが、目のやり場に困るような色気を振り撒いてやがる」
和彦は瞬きも忘れて、賢吾を見上げる。次の瞬間には握り潰されるのではないかと、切迫した危機感に息が止まりそうになるが、賢吾はくすぐるように優しく欲望を擦り上げてくる。和彦は顔を背けて唇を噛んだ。
「たっぷり搾ってもらったようだな。俺が触ってやるとすぐに反応するのに、今朝は反応が鈍い」
あからさまな賢吾の物言いに、体が熱くなる。
「性質の悪い男を片っ端から血迷わせて、まったく性質の悪いオンナだ……。そのくせ、こんなものをつけている、見た目だけは優しげな色男だからな」
和彦のものを緩く扱いてから、賢吾の指が秘裂をまさぐってくる。まだ熱をもって疼いている内奥の入り口を軽く擦られて、無意識に腰が揺れる。賢吾は唾液で指を濡らすと、躊躇なく内奥に挿入してきた。
「ううっ」
丹念な愛撫を与えられた直後のように従順に、和彦の内奥は二本の指を受け入れ、ひくつく。すぐに指が蠢き、内奥の襞と粘膜を擦り始めた。
和彦は、疼痛と苦しさに小さく呻き声を洩らす。内奥をまさぐられることで、何が起こったかを言葉で説明する必要はない。賢吾の指の動きは、必要な事実を簡単に探り当ててしまう。
「……熱くなって、蕩けそうに柔らかくなっている。奥は……滑っているな。じっくり愛されて、満足したのか? いつもの先生なら、物欲しそうに必死で締め付けてくるのに、今は、いやらしい襞が絡み付いてくるだけだ」
ここで賢吾が、やっと核心を突く質問をしてきた。
「誰に、愛してもらった?」
誤魔化すことは許さないと、冷ややかな眼差しが言っていた。大蛇の化身のような男は、和彦を試しているのだ。何もかもわかっていながら。いや、何もかもわかっているからこそ――。
内奥からゆっくりと指を出し入れされ、鈍くなっていた感覚がゆっくりと研ぎ澄まされていく。和彦は、体の内どころか、心の内すら賢吾に暴かれていく錯覚を覚えながら、深く息を吐き出した。
「……あんたが生まれたときに買ったという掛け軸が、ぼくが泊まった部屋に掛けてあった」
突然、和彦が語り始めた内容に、さすがの賢吾も面食らったような表情となる。それでも、続きを促された。
「それで?」
「本当は、端午の節句に飾りたかったらしい。鎧をつけて馬に乗った若武者の画だけど、とにかくきれいな顔立ちをしていた。色気がありすぎるんだそうだ。見ていると、胸がざわつくと……。ぼくも、同じことを思った」
「ああ、思い出したぞ。オヤジが本宅で暮らしている頃、ときどき出しては、掛けていた。本宅のどこにも見かけないと思っていたが、そうか、オヤジはしっかり持ち出していたのか」
そう言って賢吾が、和彦の顔をじっと見下ろしてくる。眼差しだけで屈服させられそうで、つい視線を逸らしながら話を続ける。
「――……言われたんだ。その掛け軸を掛けてある客間で寝たら、若武者が添い寝してくれる夢を見るかもしれないと。冗談だと思ったんだ……」
「それで、夢を見たんだな。きれいな顔した若武者が、添い寝どころか、先生に悪さをしたか?」
皮肉とも、おもしろがっているとも取れる口調で賢吾が言い、顔を寄せてくる。このとき内奥で指が曲げられ、強く中から刺激された。震える吐息をこぼすと、賢吾に柔らかく唇を吸われ、衝動のまま和彦も吸い返す。この口づけをきっかけに、ようやく勇気を振り絞り、告白することができた。
「顔にかけられた布を、取れなかった。相手が誰なのか見ないことで、ぼくは、この世界で生きていける。物騒な男たちに流されて、大事にされることが、ぼくの存在価値だ。……今いる世界の男たちは、少なくとも、ぼくを手荒には扱わない。ぼくは、痛めつけられるのは嫌なんだ」
和彦は、あえて傲岸な表情で賢吾を見据える。大蛇が鎌首をもたげ、獲物に這い寄ろうとする光景が脳裏をちらつき、本当にこのまま締め上げられることすら覚悟していた。体の内を愛撫されながら縊り殺されるという想像は、どこか甘美ですらある。
賢吾は和彦を試しているが、同時に和彦も、賢吾を試していた。この男は、どこまで自分を大事にしてくれているのだろうか、と。
「――本当に、性質が悪いオンナだ」
笑いを含んだ声で賢吾が洩らし、内奥から指を引き抜いた。そして、両足を抱え上げられる。突然の行動に焦った和彦は、咄嗟に賢吾の肩に手をかける。熱く逞しい男の体をはっきりとてのひらに感じ、胸の奥が疼いた。
和彦は瞬きも忘れて、賢吾を見上げる。次の瞬間には握り潰されるのではないかと、切迫した危機感に息が止まりそうになるが、賢吾はくすぐるように優しく欲望を擦り上げてくる。和彦は顔を背けて唇を噛んだ。
「たっぷり搾ってもらったようだな。俺が触ってやるとすぐに反応するのに、今朝は反応が鈍い」
あからさまな賢吾の物言いに、体が熱くなる。
「性質の悪い男を片っ端から血迷わせて、まったく性質の悪いオンナだ……。そのくせ、こんなものをつけている、見た目だけは優しげな色男だからな」
和彦のものを緩く扱いてから、賢吾の指が秘裂をまさぐってくる。まだ熱をもって疼いている内奥の入り口を軽く擦られて、無意識に腰が揺れる。賢吾は唾液で指を濡らすと、躊躇なく内奥に挿入してきた。
「ううっ」
丹念な愛撫を与えられた直後のように従順に、和彦の内奥は二本の指を受け入れ、ひくつく。すぐに指が蠢き、内奥の襞と粘膜を擦り始めた。
和彦は、疼痛と苦しさに小さく呻き声を洩らす。内奥をまさぐられることで、何が起こったかを言葉で説明する必要はない。賢吾の指の動きは、必要な事実を簡単に探り当ててしまう。
「……熱くなって、蕩けそうに柔らかくなっている。奥は……滑っているな。じっくり愛されて、満足したのか? いつもの先生なら、物欲しそうに必死で締め付けてくるのに、今は、いやらしい襞が絡み付いてくるだけだ」
ここで賢吾が、やっと核心を突く質問をしてきた。
「誰に、愛してもらった?」
誤魔化すことは許さないと、冷ややかな眼差しが言っていた。大蛇の化身のような男は、和彦を試しているのだ。何もかもわかっていながら。いや、何もかもわかっているからこそ――。
内奥からゆっくりと指を出し入れされ、鈍くなっていた感覚がゆっくりと研ぎ澄まされていく。和彦は、体の内どころか、心の内すら賢吾に暴かれていく錯覚を覚えながら、深く息を吐き出した。
「……あんたが生まれたときに買ったという掛け軸が、ぼくが泊まった部屋に掛けてあった」
突然、和彦が語り始めた内容に、さすがの賢吾も面食らったような表情となる。それでも、続きを促された。
「それで?」
「本当は、端午の節句に飾りたかったらしい。鎧をつけて馬に乗った若武者の画だけど、とにかくきれいな顔立ちをしていた。色気がありすぎるんだそうだ。見ていると、胸がざわつくと……。ぼくも、同じことを思った」
「ああ、思い出したぞ。オヤジが本宅で暮らしている頃、ときどき出しては、掛けていた。本宅のどこにも見かけないと思っていたが、そうか、オヤジはしっかり持ち出していたのか」
そう言って賢吾が、和彦の顔をじっと見下ろしてくる。眼差しだけで屈服させられそうで、つい視線を逸らしながら話を続ける。
「――……言われたんだ。その掛け軸を掛けてある客間で寝たら、若武者が添い寝してくれる夢を見るかもしれないと。冗談だと思ったんだ……」
「それで、夢を見たんだな。きれいな顔した若武者が、添い寝どころか、先生に悪さをしたか?」
皮肉とも、おもしろがっているとも取れる口調で賢吾が言い、顔を寄せてくる。このとき内奥で指が曲げられ、強く中から刺激された。震える吐息をこぼすと、賢吾に柔らかく唇を吸われ、衝動のまま和彦も吸い返す。この口づけをきっかけに、ようやく勇気を振り絞り、告白することができた。
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