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第18話
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「先生と二人きりだから、ついうっかりしてました」
「それをつけたのは――」
「秦さんです」
和彦は大きく息を吐き出すと、中嶋の隣に再び腰掛ける。
「……上手くいっているみたいだな」
「慣らされている最中です。今のところ秦さんは、紳士ですよ」
臆面もなく言い切られ、和彦は返事に詰まる。中嶋は、酔いのせいだけとも思えない、妖しい流し目を寄越してきた。
「先日は、いいものを見せてもらいました。長嶺組長と先生の絡み合う姿に、すごく興奮したんです。……俺は、あんなふうに秦さんに抱かれたい。でも同じぐらい、先生をあんなふうに抱いてみたいとも思いました。もちろん、先生に抱かれることにも興味がある」
話しながら、中嶋がペットボトルを差し出してくる。受け取った和彦も水を飲み、喉を通る冷たい感触を堪能する。あまり意識していなかったが、アルコールのせいか、暑いぐらいの暖房のせいか、顔が火照っていた。
ペットボトルをテーブルに置いて、頬に手の甲を押し当てていると、ふいに中嶋が身を乗り出してくる。あくまで自然に、唇を塞がれた。
軽く目を見開いた和彦だが、瞬間的に胸の奥で湧き起こった衝動のまま、中嶋との口づけを受け入れ、応える。最初はぎこちなく互いの唇を吸い合っていたが、欲望の急速な高まりに背を押されるように、積極的になる。
舌先を触れ合わせたかと思うと、すぐに余裕なく絡ませ、唾液を交わす。舌を吸い合いながら、中嶋の手が和彦が着ているセーターを捲り上げてきたので、和彦も中嶋のワイシャツを引き出してボタンを外していた。
引っ張られるままソファに倒れ込み、和彦は中嶋を真上から見下ろす格好となる。
「――……長嶺組長が、先生と仲良くしてやってくれと言ったのは、こういう意味も含めてですよね?」
そんなことを言いながら、中嶋のてのひらが脇腹から背へと這わされる。くすぐったいような、焦れったいような刺激に、和彦は軽く体を震わせていた。
「さあ……」
「俺は、そういう意図だと理解して、楽しみにしているんですよ。秦さんだけじゃなく、先生からもいろいろ教われると思って」
「教わるも何も、ずいぶん手馴れているじゃないか」
「そうですか?」
とぼける中嶋を見下ろして、和彦は苦笑を洩らす。秦のことで思い詰めるあまり、長嶺組長の〈オンナ〉に食ってかかってきたことなど、すっかり忘れたようだ。
和彦と額と額を合わせて、中嶋が囁く。
「先生の体に触れるの好きなんです。楽しいし、興奮もする」
自分と中嶋は、似たような感覚を共有しているのだと和彦は思った。中嶋と触れ合うのは、他の男たちと情とともに交わす行為とはまったく異質で、だが、確かな快感を生み出してくれる。
こうしている瞬間は、男でも雄でもない生き物同士だからだろうかと、賢吾に言われた言葉を胸の奥で転がしながら、つい和彦は分析してしまう。
「先生」
ふいに中嶋に呼ばれ、頭を引き寄せられる。いきなり深い口づけを交わしながら、中嶋にさらにセーターを捲られ、胸元にてのひらが這わされる。和彦も、中嶋のワイシャツを半ば脱がすようにして、引き締まった筋肉を覆う滑らかな肌に触れる。
「あっ……」
指先でまさぐり、胸の突起を軽く擦り上げた途端、中嶋が短く声を洩らす。その反応に誘われるように和彦は、中嶋の胸元にゆっくりと舌を這わせ、柔らかく突起を吸い上げる。
中嶋は微かに体を震わせたあと、吐息を洩らしたが、和彦にされるがままになるつもりはないようだった。上半身を慰撫するように両てのひらを這わされ、そのまま二人はソファの上で抱き合い、肌を擦りつけ合う。
転げ落ちないよう気をつけながら体の位置を変え、今度は和彦が下となる。肌に触れる中嶋の唇と舌の感触が心地よくて、小さく喉を鳴らして目を細める。そんな和彦の顔を中嶋が覗き込んできた。
数回唇を触れ合わせたところで、今度は中嶋が胸元に顔を伏せ、和彦の突起を舌先で転がし始める。
「くぅっ」
和彦は声を洩らすと、ソファの背もたれに片手をかける。その反応が中嶋の何かを刺激したのか、いきなりきつく突起を吸われ、軽く歯を立てられた。胸元に何度も唇が押し当てられ、首筋にも愛撫が施される。危うく心地よさに酔いそうになったが、寸前のところで和彦は我に返り、中嶋の喉元をじっくりと舐め上げてから、濃厚な口づけを互いに堪能する。
限度はわかっていた。ゾクゾクするような高揚感を楽しめるだけの理性があるうちは、こうして口づけを交わし、肌を擦りつけ合う快感にも安心して身を委ねられるが、その理性が揺れ始めると、衝動に歯止めがかからなくなる。
中嶋とはまだ、〈オンナ〉同士でささやかに悦びを共有し合う関係でいたかった。
「それをつけたのは――」
「秦さんです」
和彦は大きく息を吐き出すと、中嶋の隣に再び腰掛ける。
「……上手くいっているみたいだな」
「慣らされている最中です。今のところ秦さんは、紳士ですよ」
臆面もなく言い切られ、和彦は返事に詰まる。中嶋は、酔いのせいだけとも思えない、妖しい流し目を寄越してきた。
「先日は、いいものを見せてもらいました。長嶺組長と先生の絡み合う姿に、すごく興奮したんです。……俺は、あんなふうに秦さんに抱かれたい。でも同じぐらい、先生をあんなふうに抱いてみたいとも思いました。もちろん、先生に抱かれることにも興味がある」
話しながら、中嶋がペットボトルを差し出してくる。受け取った和彦も水を飲み、喉を通る冷たい感触を堪能する。あまり意識していなかったが、アルコールのせいか、暑いぐらいの暖房のせいか、顔が火照っていた。
ペットボトルをテーブルに置いて、頬に手の甲を押し当てていると、ふいに中嶋が身を乗り出してくる。あくまで自然に、唇を塞がれた。
軽く目を見開いた和彦だが、瞬間的に胸の奥で湧き起こった衝動のまま、中嶋との口づけを受け入れ、応える。最初はぎこちなく互いの唇を吸い合っていたが、欲望の急速な高まりに背を押されるように、積極的になる。
舌先を触れ合わせたかと思うと、すぐに余裕なく絡ませ、唾液を交わす。舌を吸い合いながら、中嶋の手が和彦が着ているセーターを捲り上げてきたので、和彦も中嶋のワイシャツを引き出してボタンを外していた。
引っ張られるままソファに倒れ込み、和彦は中嶋を真上から見下ろす格好となる。
「――……長嶺組長が、先生と仲良くしてやってくれと言ったのは、こういう意味も含めてですよね?」
そんなことを言いながら、中嶋のてのひらが脇腹から背へと這わされる。くすぐったいような、焦れったいような刺激に、和彦は軽く体を震わせていた。
「さあ……」
「俺は、そういう意図だと理解して、楽しみにしているんですよ。秦さんだけじゃなく、先生からもいろいろ教われると思って」
「教わるも何も、ずいぶん手馴れているじゃないか」
「そうですか?」
とぼける中嶋を見下ろして、和彦は苦笑を洩らす。秦のことで思い詰めるあまり、長嶺組長の〈オンナ〉に食ってかかってきたことなど、すっかり忘れたようだ。
和彦と額と額を合わせて、中嶋が囁く。
「先生の体に触れるの好きなんです。楽しいし、興奮もする」
自分と中嶋は、似たような感覚を共有しているのだと和彦は思った。中嶋と触れ合うのは、他の男たちと情とともに交わす行為とはまったく異質で、だが、確かな快感を生み出してくれる。
こうしている瞬間は、男でも雄でもない生き物同士だからだろうかと、賢吾に言われた言葉を胸の奥で転がしながら、つい和彦は分析してしまう。
「先生」
ふいに中嶋に呼ばれ、頭を引き寄せられる。いきなり深い口づけを交わしながら、中嶋にさらにセーターを捲られ、胸元にてのひらが這わされる。和彦も、中嶋のワイシャツを半ば脱がすようにして、引き締まった筋肉を覆う滑らかな肌に触れる。
「あっ……」
指先でまさぐり、胸の突起を軽く擦り上げた途端、中嶋が短く声を洩らす。その反応に誘われるように和彦は、中嶋の胸元にゆっくりと舌を這わせ、柔らかく突起を吸い上げる。
中嶋は微かに体を震わせたあと、吐息を洩らしたが、和彦にされるがままになるつもりはないようだった。上半身を慰撫するように両てのひらを這わされ、そのまま二人はソファの上で抱き合い、肌を擦りつけ合う。
転げ落ちないよう気をつけながら体の位置を変え、今度は和彦が下となる。肌に触れる中嶋の唇と舌の感触が心地よくて、小さく喉を鳴らして目を細める。そんな和彦の顔を中嶋が覗き込んできた。
数回唇を触れ合わせたところで、今度は中嶋が胸元に顔を伏せ、和彦の突起を舌先で転がし始める。
「くぅっ」
和彦は声を洩らすと、ソファの背もたれに片手をかける。その反応が中嶋の何かを刺激したのか、いきなりきつく突起を吸われ、軽く歯を立てられた。胸元に何度も唇が押し当てられ、首筋にも愛撫が施される。危うく心地よさに酔いそうになったが、寸前のところで和彦は我に返り、中嶋の喉元をじっくりと舐め上げてから、濃厚な口づけを互いに堪能する。
限度はわかっていた。ゾクゾクするような高揚感を楽しめるだけの理性があるうちは、こうして口づけを交わし、肌を擦りつけ合う快感にも安心して身を委ねられるが、その理性が揺れ始めると、衝動に歯止めがかからなくなる。
中嶋とはまだ、〈オンナ〉同士でささやかに悦びを共有し合う関係でいたかった。
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