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第17話
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意地悪をするどころか、されているのかもしれない。三田村の口元がわずかに緩んだのを見て、和彦はあっさりと降参した。
「三田村、頼みがある」
「なんでも言ってくれ」
「――あんたの虎を撫でたい。……クリスマスのとき以来、触れてないんだ」
一瞬のうちに三田村の顔つきが変わり、手荒く腕を掴まれて引き寄せられる。和彦を抱き締めてくる腕の力は、骨が軋みそうなほど強く、言葉よりも雄弁に三田村の気持ちを物語っていた。
内奥に三田村の指が挿入され、和彦は甘い呻き声を洩らして腰を揺らす。何かを探るように指を蠢かされると、必死に締め付けずにはいられない。和彦の内奥は、強い刺激を欲していた。
指を出し入れしながら三田村は、和彦の胸元や腹部に何度となく唇を押し当ててくる。このとき上目遣いに強い眼差しを向けられて、和彦は、三田村が何を言おうとしているのか察した。
「……もう、わかってるだろ。中嶋くんとは――寝てない。このベッドの上に転がって、じゃれ合っていただけだ」
三田村の指が内奥に付け根まで収まり、丹念に襞と粘膜を擦り始める。中嶋に触れられはしたものの、決定的な刺激を与えられなかったため、和彦の内奥ははしたないほど発情している。今頃、和彦から同じような愛撫を施された中嶋も、どこかで煩悶しているかもしれない。
淫らな衝動と肉欲のまま、ベッドの上で一つになろうとしたのだが、寸前のところで和彦は中嶋の肩を押し上げ、一方の中嶋も、我に返ったように動きを止めた。互いに顔を見合わせ、苦笑を交わしつつ体を離したあと、中嶋はスーツを着込んで帰った。
多分、行為を止めたのは間違いではなかったと思う。少なくとも和彦は後悔していなかった。だからこうして、三田村の愛撫に身を委ねられる。
「どうしてだ、先生?」
三田村から返ってきたのは、率直な問いかけの言葉だった。和彦は震えを帯びた吐息を洩らしてから、片手を伸ばして三田村の頬に触れる。
「秦の目論見どおりに、中嶋くんの〈教育係〉になるのが気に食わなかった」
「本当に、そう思ったのか?」
ハスキーな声は、うっとりするほど優しい。そんな声を聞かされて、和彦は本音を隠せなかった。
「――……領分、というやつだな。ホスト時代から積み重ねてきたものがある二人に、知り合って間もないぼくが立ち入れる領分は限られている。今日、ぼくが中嶋くんと寝るのは多分、それを侵すことになると思ったんだ。……柄にもなく、甘いことを考えた。せっかく、総和会の中で利用できる手駒を手に入れられたのに」
あえて悪ぶって言ってみたが、本物のヤクザを楽しませただけらしい。三田村は低く声を洩らして笑った。
「先生の甘さは、性質が悪い。男を蕩けさせて、骨抜きにする」
「一応、相手は選んでいるつもりだ」
顔を伏せて、三田村が逞しい肩を微かに震わせる。笑われたことへのささやかな仕返しとして、和彦は三田村の髪を荒っぽく撫でてやったが、どうやら三田村は、それを愛撫の催促として受け取ったらしい。
「あっ……」
両足を左右に大きく開かれ、三田村が中心に顔を埋める。熱くなって反り返ったものを舐められて、身震いしたくなるような心地よさが腰を這い上がってきた。
まるで獣のような舌使いで、和彦のものはしゃぶられる。先端から透明なしずくが滴り落ちそうになると、ねっとりと這わされる舌に舐め取られ、そのまま口腔深くに呑み込まれて吸引される。
「あっ、あっ、いっ……、気持ち、いぃ――」
三田村の激しく濃厚な愛撫に、あっという間に和彦は奔放に乱れてしまう。
寝室に響く淫靡な濡れた音すら、盗聴器に拾われているのかと思うと、興奮を促す小道具になっていた。
柔らかな膨らみをきつく揉みしだかれ、仰け反りながら和彦は呻き声を洩らす。
「……ふっ……、うっ、うっ、うっ……ん」
三田村の舌がさらに追い討ちをかけてきて、和彦の下肢は完全に蕩けてしまう。
内奥の入り口を唾液で濡らし、喘ぐようにひくつかせる頃、ようやく三田村は逞しい欲望を与えてくれた。
和彦は、声も出せずに快美さに体を震わせる。三田村に熱っぽく見つめられながら、反り返ったものの先端から、透明な歓喜のしずくを滴らせていた。
「悦んでくれているんだな、先生。こんなに泣いて……」
三田村の掠れた声には、隠し切れない喜びが滲み出ていた。和彦は羞恥と快感に体を紅潮させながら、内奥を丹念に突かれるたびに身悶える。
「んっ……くぅ、あっ、あっ――……、んううっ」
「三田村、頼みがある」
「なんでも言ってくれ」
「――あんたの虎を撫でたい。……クリスマスのとき以来、触れてないんだ」
一瞬のうちに三田村の顔つきが変わり、手荒く腕を掴まれて引き寄せられる。和彦を抱き締めてくる腕の力は、骨が軋みそうなほど強く、言葉よりも雄弁に三田村の気持ちを物語っていた。
内奥に三田村の指が挿入され、和彦は甘い呻き声を洩らして腰を揺らす。何かを探るように指を蠢かされると、必死に締め付けずにはいられない。和彦の内奥は、強い刺激を欲していた。
指を出し入れしながら三田村は、和彦の胸元や腹部に何度となく唇を押し当ててくる。このとき上目遣いに強い眼差しを向けられて、和彦は、三田村が何を言おうとしているのか察した。
「……もう、わかってるだろ。中嶋くんとは――寝てない。このベッドの上に転がって、じゃれ合っていただけだ」
三田村の指が内奥に付け根まで収まり、丹念に襞と粘膜を擦り始める。中嶋に触れられはしたものの、決定的な刺激を与えられなかったため、和彦の内奥ははしたないほど発情している。今頃、和彦から同じような愛撫を施された中嶋も、どこかで煩悶しているかもしれない。
淫らな衝動と肉欲のまま、ベッドの上で一つになろうとしたのだが、寸前のところで和彦は中嶋の肩を押し上げ、一方の中嶋も、我に返ったように動きを止めた。互いに顔を見合わせ、苦笑を交わしつつ体を離したあと、中嶋はスーツを着込んで帰った。
多分、行為を止めたのは間違いではなかったと思う。少なくとも和彦は後悔していなかった。だからこうして、三田村の愛撫に身を委ねられる。
「どうしてだ、先生?」
三田村から返ってきたのは、率直な問いかけの言葉だった。和彦は震えを帯びた吐息を洩らしてから、片手を伸ばして三田村の頬に触れる。
「秦の目論見どおりに、中嶋くんの〈教育係〉になるのが気に食わなかった」
「本当に、そう思ったのか?」
ハスキーな声は、うっとりするほど優しい。そんな声を聞かされて、和彦は本音を隠せなかった。
「――……領分、というやつだな。ホスト時代から積み重ねてきたものがある二人に、知り合って間もないぼくが立ち入れる領分は限られている。今日、ぼくが中嶋くんと寝るのは多分、それを侵すことになると思ったんだ。……柄にもなく、甘いことを考えた。せっかく、総和会の中で利用できる手駒を手に入れられたのに」
あえて悪ぶって言ってみたが、本物のヤクザを楽しませただけらしい。三田村は低く声を洩らして笑った。
「先生の甘さは、性質が悪い。男を蕩けさせて、骨抜きにする」
「一応、相手は選んでいるつもりだ」
顔を伏せて、三田村が逞しい肩を微かに震わせる。笑われたことへのささやかな仕返しとして、和彦は三田村の髪を荒っぽく撫でてやったが、どうやら三田村は、それを愛撫の催促として受け取ったらしい。
「あっ……」
両足を左右に大きく開かれ、三田村が中心に顔を埋める。熱くなって反り返ったものを舐められて、身震いしたくなるような心地よさが腰を這い上がってきた。
まるで獣のような舌使いで、和彦のものはしゃぶられる。先端から透明なしずくが滴り落ちそうになると、ねっとりと這わされる舌に舐め取られ、そのまま口腔深くに呑み込まれて吸引される。
「あっ、あっ、いっ……、気持ち、いぃ――」
三田村の激しく濃厚な愛撫に、あっという間に和彦は奔放に乱れてしまう。
寝室に響く淫靡な濡れた音すら、盗聴器に拾われているのかと思うと、興奮を促す小道具になっていた。
柔らかな膨らみをきつく揉みしだかれ、仰け反りながら和彦は呻き声を洩らす。
「……ふっ……、うっ、うっ、うっ……ん」
三田村の舌がさらに追い討ちをかけてきて、和彦の下肢は完全に蕩けてしまう。
内奥の入り口を唾液で濡らし、喘ぐようにひくつかせる頃、ようやく三田村は逞しい欲望を与えてくれた。
和彦は、声も出せずに快美さに体を震わせる。三田村に熱っぽく見つめられながら、反り返ったものの先端から、透明な歓喜のしずくを滴らせていた。
「悦んでくれているんだな、先生。こんなに泣いて……」
三田村の掠れた声には、隠し切れない喜びが滲み出ていた。和彦は羞恥と快感に体を紅潮させながら、内奥を丹念に突かれるたびに身悶える。
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