血と束縛と

北川とも

文字の大きさ
上 下
336 / 1,268
第17話

(2)

しおりを挟む
 意地悪をするどころか、されているのかもしれない。三田村の口元がわずかに緩んだのを見て、和彦はあっさりと降参した。
「三田村、頼みがある」
「なんでも言ってくれ」
「――あんたの虎を撫でたい。……クリスマスのとき以来、触れてないんだ」
 一瞬のうちに三田村の顔つきが変わり、手荒く腕を掴まれて引き寄せられる。和彦を抱き締めてくる腕の力は、骨が軋みそうなほど強く、言葉よりも雄弁に三田村の気持ちを物語っていた。


 内奥に三田村の指が挿入され、和彦は甘い呻き声を洩らして腰を揺らす。何かを探るように指を蠢かされると、必死に締め付けずにはいられない。和彦の内奥は、強い刺激を欲していた。
 指を出し入れしながら三田村は、和彦の胸元や腹部に何度となく唇を押し当ててくる。このとき上目遣いに強い眼差しを向けられて、和彦は、三田村が何を言おうとしているのか察した。
「……もう、わかってるだろ。中嶋くんとは――寝てない。このベッドの上に転がって、じゃれ合っていただけだ」
 三田村の指が内奥に付け根まで収まり、丹念に襞と粘膜を擦り始める。中嶋に触れられはしたものの、決定的な刺激を与えられなかったため、和彦の内奥ははしたないほど発情している。今頃、和彦から同じような愛撫を施された中嶋も、どこかで煩悶しているかもしれない。
 淫らな衝動と肉欲のまま、ベッドの上で一つになろうとしたのだが、寸前のところで和彦は中嶋の肩を押し上げ、一方の中嶋も、我に返ったように動きを止めた。互いに顔を見合わせ、苦笑を交わしつつ体を離したあと、中嶋はスーツを着込んで帰った。
 多分、行為を止めたのは間違いではなかったと思う。少なくとも和彦は後悔していなかった。だからこうして、三田村の愛撫に身を委ねられる。
「どうしてだ、先生?」
 三田村から返ってきたのは、率直な問いかけの言葉だった。和彦は震えを帯びた吐息を洩らしてから、片手を伸ばして三田村の頬に触れる。
「秦の目論見どおりに、中嶋くんの〈教育係〉になるのが気に食わなかった」
「本当に、そう思ったのか?」
 ハスキーな声は、うっとりするほど優しい。そんな声を聞かされて、和彦は本音を隠せなかった。
「――……領分、というやつだな。ホスト時代から積み重ねてきたものがある二人に、知り合って間もないぼくが立ち入れる領分は限られている。今日、ぼくが中嶋くんと寝るのは多分、それを侵すことになると思ったんだ。……柄にもなく、甘いことを考えた。せっかく、総和会の中で利用できる手駒を手に入れられたのに」
 あえて悪ぶって言ってみたが、本物のヤクザを楽しませただけらしい。三田村は低く声を洩らして笑った。
「先生の甘さは、性質が悪い。男を蕩けさせて、骨抜きにする」
「一応、相手は選んでいるつもりだ」
 顔を伏せて、三田村が逞しい肩を微かに震わせる。笑われたことへのささやかな仕返しとして、和彦は三田村の髪を荒っぽく撫でてやったが、どうやら三田村は、それを愛撫の催促として受け取ったらしい。
「あっ……」
 両足を左右に大きく開かれ、三田村が中心に顔を埋める。熱くなって反り返ったものを舐められて、身震いしたくなるような心地よさが腰を這い上がってきた。
 まるで獣のような舌使いで、和彦のものはしゃぶられる。先端から透明なしずくが滴り落ちそうになると、ねっとりと這わされる舌に舐め取られ、そのまま口腔深くに呑み込まれて吸引される。
「あっ、あっ、いっ……、気持ち、いぃ――」
 三田村の激しく濃厚な愛撫に、あっという間に和彦は奔放に乱れてしまう。
 寝室に響く淫靡な濡れた音すら、盗聴器に拾われているのかと思うと、興奮を促す小道具になっていた。
 柔らかな膨らみをきつく揉みしだかれ、仰け反りながら和彦は呻き声を洩らす。
「……ふっ……、うっ、うっ、うっ……ん」
 三田村の舌がさらに追い討ちをかけてきて、和彦の下肢は完全に蕩けてしまう。
 内奥の入り口を唾液で濡らし、喘ぐようにひくつかせる頃、ようやく三田村は逞しい欲望を与えてくれた。
 和彦は、声も出せずに快美さに体を震わせる。三田村に熱っぽく見つめられながら、反り返ったものの先端から、透明な歓喜のしずくを滴らせていた。
「悦んでくれているんだな、先生。こんなに泣いて……」
 三田村の掠れた声には、隠し切れない喜びが滲み出ていた。和彦は羞恥と快感に体を紅潮させながら、内奥を丹念に突かれるたびに身悶える。
「んっ……くぅ、あっ、あっ――……、んううっ」

しおりを挟む
感想 80

あなたにおすすめの小説

騙されて快楽地獄

てけてとん
BL
友人におすすめされたマッサージ店で快楽地獄に落とされる話です。長すぎたので2話に分けています。

壁乳

リリーブルー
BL
俺は後輩に「壁乳」に行こうと誘われた。 (作者の挿絵付きです。)

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?

すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。 「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」 家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。 「私は母親じゃない・・・!」 そう言って家を飛び出した。 夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。 「何があった?送ってく。」 それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。 「俺と・・・結婚してほしい。」 「!?」 突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。 かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。 そんな彼に、私は想いを返したい。 「俺に・・・全てを見せて。」 苦手意識の強かった『営み』。 彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。 「いあぁぁぁっ・・!!」 「感じやすいんだな・・・。」 ※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。 ※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。 ※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。 ※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。 それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

BL団地妻-恥じらい新妻、絶頂淫具の罠-

おととななな
BL
タイトル通りです。 楽しんでいただけたら幸いです。

魔王に飼われる勇者

たみしげ
BL
BLすけべ小説です。 敵の屋敷に攻め込んだ勇者が逆に捕まって淫紋を刻まれて飼われる話です。

塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)

ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。 そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。

処理中です...