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第16話
(17)
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和彦は、もう片方の手で千尋の頬を撫でてやる。すぐに調子に乗る犬っころのような青年は、嬉々とした様子で顔を寄せ、額と額を合わせてくる。
「今、すっげー、先生にキスしたくてたまんない」
最初から和彦の返事を聞く気はないらしく、千尋は性急に唇を塞いできた。寒いからこそ、千尋の唇と舌の熱さがじんわりと染み込んでくるようで、心地いい。
しなやかで力強い両腕にしっかりと抱き締められながら、和彦は甘く熱い口づけを堪能する。
「先生、このまま、雪の上に押し倒していい?」
口づけの合間に、冗談とも本気ともつかないことを千尋が囁いてくる。千尋なら本当にやりかねないと思った和彦は、即答した。
「嫌だ。お前と違って、ぼくは雪で興奮したりしない」
「何それ。どういう意味?」
和彦はニヤリと笑うと、千尋の腕の中から抜け出す。
「――犬は喜び庭駆け回る……って、歌があるだろ」
数秒の間を置いて、千尋は犬の鳴き声をマネしたかと思うと、和彦にまとわりついてくる。和彦は声を上げて逃げ回りながら、雪を軽く丸めて千尋に投げつける。すかさず千尋も投げ返してきて、そのまま子供のように雪合戦になだれ込んだが、血気盛んな千尋はすぐに物足りなくなったようだ。
飛びかかられ、和彦は千尋と一緒に雪の上に倒れ込む。
「加減しろっ、バカ千尋っ」
そう抗議をした和彦だが、顔を覗き込んでくる千尋があまりに嬉しそうな顔をしているため、怒る気も失せる。髪をぐしゃぐしゃに掻き乱すだけで、勘弁してやった。
そして、雪の上を転がりながら、思う様きつく抱き合った。
和彦は深い吐息を洩らすと、石造りの立派な浴槽の縁に腕をかける。元は団体客も受け入れていたペンションだけあって、ちょっとした旅館並みに風呂場は広く、浴槽も大きい。おかげで、ゆっくりと湯に浸かることができる。
たとえ、和彦以外にもう一人、湯に浸かっていたとしても。
和彦の背後から抱きついてきた千尋が、濡れた肩に唇を押し当ててくる。さらに、片手が胸元をまさぐってきた。もう片方の手は――。
「んっ……」
内奥に挿入された指が出し入れされるたびに、温めの湯が感じやすい襞と粘膜を撫でていく。さすがにゆっくりと寛ぐ余裕もなくなり、和彦が腰を揺らしたとき、なんの前触れもなく風呂場の戸が開いた。
湯気の向こうに姿を現したのは、禍々しくも艶かしい、大蛇の刺青を背負った男だ。
「な、んで――」
思わず和彦が声を洩らすと、賢吾はニヤリと笑った。
「仕事が終わって、寛ぐために一風呂浴びに来たんだ」
和彦は慌てて湯から上がろうとしたが、千尋にしっかりと抱きつかれ、肩まで湯に浸かってしまう。湯の中でもがいている間にも、賢吾は桶で汲み上げた湯を、悠々と体にかけている。
「二人揃って、たっぷり雪遊びをしてきたようだな。雪だるまみたいになって戻ってきたと聞いたぞ」
「……人を、子供みたいな言い方しないでくれ」
「でも、先生があんなに声を上げて笑ってるところ、俺、初めて見たよ」
余計なことを言うなと、思わず千尋を睨みつけた和彦だが、すぐに淡く微笑む。
「けっこう、楽しかったな。この歳で雪合戦をしていることも、その相手が、ヤクザの組長の息子というのも。ぼくが、そいつのオンナだというのも。全部含めて」
千尋の濡れた髪を掻き上げてやると、何かが刺激されたのか、したたかな獣のような目をして顔を寄せてくる。和彦は後ずさろうとしたが、浴槽に入ってきた賢吾にあっさり捕まり、湯の中できつく抱き締められた。
「――先生」
賢吾に低い声で呼ばれ、有無を言わせず唇を塞がれる。口腔に差し込まれた熱い舌に粘膜を舐め回され、唾液を流し込まれる。一方で、両足の間には千尋の片手が入り込み、柔らかな膨らみをきつく揉みしだかれていた。
「んっ、ふっ……、んんっ」
鼻にかかった甘い呻き声を洩らした和彦は、賢吾の腕の中で身悶え、強い刺激から逃れようとしたが、残酷で淫らな気質を持った父子を煽っただけのようだ。
唇が離されてすぐに、賢吾に背後から両足を抱え上げられ、左右に大きく開かれた。そこに、千尋が腰を割り込ませてくる。
「あっ……」
湯の中で露になっている内奥の入り口を、千尋の欲望の先端がまさぐってくる。身じろぎ、腰を揺らしたときには、千尋が侵入を開始していた。
「うっ、あっ、こんな、ところでっ――」
「湯に浸かっているほうが、体の負担も軽いだろ。それに、たまらねーだろ? 先生の感じやすい場所に、湯が入り込んでくる感触は」
「今、すっげー、先生にキスしたくてたまんない」
最初から和彦の返事を聞く気はないらしく、千尋は性急に唇を塞いできた。寒いからこそ、千尋の唇と舌の熱さがじんわりと染み込んでくるようで、心地いい。
しなやかで力強い両腕にしっかりと抱き締められながら、和彦は甘く熱い口づけを堪能する。
「先生、このまま、雪の上に押し倒していい?」
口づけの合間に、冗談とも本気ともつかないことを千尋が囁いてくる。千尋なら本当にやりかねないと思った和彦は、即答した。
「嫌だ。お前と違って、ぼくは雪で興奮したりしない」
「何それ。どういう意味?」
和彦はニヤリと笑うと、千尋の腕の中から抜け出す。
「――犬は喜び庭駆け回る……って、歌があるだろ」
数秒の間を置いて、千尋は犬の鳴き声をマネしたかと思うと、和彦にまとわりついてくる。和彦は声を上げて逃げ回りながら、雪を軽く丸めて千尋に投げつける。すかさず千尋も投げ返してきて、そのまま子供のように雪合戦になだれ込んだが、血気盛んな千尋はすぐに物足りなくなったようだ。
飛びかかられ、和彦は千尋と一緒に雪の上に倒れ込む。
「加減しろっ、バカ千尋っ」
そう抗議をした和彦だが、顔を覗き込んでくる千尋があまりに嬉しそうな顔をしているため、怒る気も失せる。髪をぐしゃぐしゃに掻き乱すだけで、勘弁してやった。
そして、雪の上を転がりながら、思う様きつく抱き合った。
和彦は深い吐息を洩らすと、石造りの立派な浴槽の縁に腕をかける。元は団体客も受け入れていたペンションだけあって、ちょっとした旅館並みに風呂場は広く、浴槽も大きい。おかげで、ゆっくりと湯に浸かることができる。
たとえ、和彦以外にもう一人、湯に浸かっていたとしても。
和彦の背後から抱きついてきた千尋が、濡れた肩に唇を押し当ててくる。さらに、片手が胸元をまさぐってきた。もう片方の手は――。
「んっ……」
内奥に挿入された指が出し入れされるたびに、温めの湯が感じやすい襞と粘膜を撫でていく。さすがにゆっくりと寛ぐ余裕もなくなり、和彦が腰を揺らしたとき、なんの前触れもなく風呂場の戸が開いた。
湯気の向こうに姿を現したのは、禍々しくも艶かしい、大蛇の刺青を背負った男だ。
「な、んで――」
思わず和彦が声を洩らすと、賢吾はニヤリと笑った。
「仕事が終わって、寛ぐために一風呂浴びに来たんだ」
和彦は慌てて湯から上がろうとしたが、千尋にしっかりと抱きつかれ、肩まで湯に浸かってしまう。湯の中でもがいている間にも、賢吾は桶で汲み上げた湯を、悠々と体にかけている。
「二人揃って、たっぷり雪遊びをしてきたようだな。雪だるまみたいになって戻ってきたと聞いたぞ」
「……人を、子供みたいな言い方しないでくれ」
「でも、先生があんなに声を上げて笑ってるところ、俺、初めて見たよ」
余計なことを言うなと、思わず千尋を睨みつけた和彦だが、すぐに淡く微笑む。
「けっこう、楽しかったな。この歳で雪合戦をしていることも、その相手が、ヤクザの組長の息子というのも。ぼくが、そいつのオンナだというのも。全部含めて」
千尋の濡れた髪を掻き上げてやると、何かが刺激されたのか、したたかな獣のような目をして顔を寄せてくる。和彦は後ずさろうとしたが、浴槽に入ってきた賢吾にあっさり捕まり、湯の中できつく抱き締められた。
「――先生」
賢吾に低い声で呼ばれ、有無を言わせず唇を塞がれる。口腔に差し込まれた熱い舌に粘膜を舐め回され、唾液を流し込まれる。一方で、両足の間には千尋の片手が入り込み、柔らかな膨らみをきつく揉みしだかれていた。
「んっ、ふっ……、んんっ」
鼻にかかった甘い呻き声を洩らした和彦は、賢吾の腕の中で身悶え、強い刺激から逃れようとしたが、残酷で淫らな気質を持った父子を煽っただけのようだ。
唇が離されてすぐに、賢吾に背後から両足を抱え上げられ、左右に大きく開かれた。そこに、千尋が腰を割り込ませてくる。
「あっ……」
湯の中で露になっている内奥の入り口を、千尋の欲望の先端がまさぐってくる。身じろぎ、腰を揺らしたときには、千尋が侵入を開始していた。
「うっ、あっ、こんな、ところでっ――」
「湯に浸かっているほうが、体の負担も軽いだろ。それに、たまらねーだろ? 先生の感じやすい場所に、湯が入り込んでくる感触は」
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