280 / 1,268
第14話
(21)
しおりを挟む
「――リボンを解いて、俺にほったらかしにされるほうがいいか、このまま、先生の好きなものを咥えさせてもらうほうがいいか。どっちだ?」
「誰の、好きなものだ。自惚れるな……」
「どっちだ、先生?」
聞かれるまでもなく、答えは決まっていた。和彦がシーツを握り締めると、賢吾はゆっくりと腰を進め、内奥を肉の凶器で押し開いてくる。狂おしいほどの愉悦が生まれ、和彦は堪えきれない声を上げる。
「ああっ……、あっ、あっ、あんっ――」
「尻だけでイきそうな感じ方だな、先生。俺のものが食い千切られそうなほど、締まってるぞ。そんなにいいか?」
和彦は押し寄せてくる快感に抗うように、必死に深呼吸を繰り返す。このままでは、快感の奔流に呑み込まれそうだった。
それぐらい、賢吾との交わりに感じている。
逞しいものをしっかりと根元まで埋め込んできた賢吾が、緩慢に腰を動かす。動きは緩やかだが、感じやすい襞と粘膜は簡単に蹂躙され、熱い蜜のような快感を滴らせる。
「ひっ……ぁ、はあっ、あっ、んくうぅっ」
ふいに、内奥深くを重々しく突き上げられ、和彦はビクビクと体を震わせる。全身に快美さが響き渡り、普段であれば、精を迸らせているところだ。だが、しっかりと根元を縛められているため、それができない。
悶える和彦にさらに責め苦を与えるように、賢吾が震える和彦のものを根元から擦り上げてくる。愛撫のようだが、実はリボンの縛めがしっかり食い込んでいるのか、確かめたのだ。
「はあっ、あっ、い、や……、賢吾さんっ」
内奥を擦り上げられるたびに和彦は悦びの声を上げ、絞り上げるように賢吾のものをきつく締め付ける。
感嘆したように声を洩らした賢吾が腰を使う。和彦は夢中で両腕を伸ばし、覆い被さってきた賢吾の背にしがみつく。汗で濡れた大蛇が、内奥深くで蠢く欲望のように、熱かった。
大蛇に激しく求められ、愛されているのだと実感できる瞬間だった。
「リボンを解いてやろうか?」
律動の合間に囁かれ、賢吾の引き締まった下腹部で、反り返ったものをわざと刺激される。呻き声を洩らした和彦は、小さく首を横に振った。
「こ、のまま……。これ、いい――」
「このほうが、俺が悦ぶからか?」
「……あんたの性癖は、問題があるからな」
顔を綻ばせた賢吾に唇を塞がれ、舌を絡め合う。その間も、賢吾は内奥を丹念に擦り上げ、掻き回してくれる。
快感の波が次第に大きくなってくるようで、厚みのある体の下でのたうちながら和彦は、切羽詰った声を上げる。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾は満足そうだった。
「いやらしいオンナだ。こんなに愛してやってるのに、まだ俺が欲しいか? さすがの俺も、そのうち力加減を忘れて、抱き殺しちまいそうだな。俺の、大事で可愛いオンナを」
物騒な言葉を囁かれた瞬間、和彦の体を、いままでにない強烈な感覚が駆け抜けた。それが、深い快感のせいだとわかったときには、意識が飛んでいた。
レアのステーキを淡々と口に運ぶ賢吾を見ているだけで、和彦は胸焼けを起こしそうだった。
今日はやけに重く感じるフォークで、ミディアムに焼いてもらったステーキを突く。手どころか、口を動かすことすら億劫で、フォークを置こうとしたが、目敏く気づいた賢吾にすかさず言われた。
「しっかり食えよ、先生。塞ぎ込んでいる間に落とした体重を、きちんと元に戻せ」
「……だからといって、何も今晩、ステーキを食べなくていいだろ」
「今日はもう、〈肉〉は腹いっぱいか?」
長嶺組組長という凄みのある肩書きを持っている男が、そう言ってニヤニヤと笑う。芝居がかった品のない笑い方に、和彦は顔を熱くする。賢吾が暗に言おうとしていることを、すぐに理解してしまったのだ。
「こんな場所で、下品なことを言うなっ」
声を潜めて窘めてはみたのだが、ますます賢吾をおもしろがらせただけらしい。今度は澄ました顔で言い返された。
「なんのことだ? 俺は、ステーキの話をしているんだが――」
「……あんまりぼくをからかうと、あんたが何者か、この場で叫ぶぞ」
「それは怖いな」
大げさに肩をすくめた賢吾が、美味そうにステーキを一切れ食べる。自分が子供扱いされていることを嫌というほど実感し、無駄な抗議を早々に諦めた和彦は、仕方なく自分のステーキを切り分ける。
一切れの肉を苦労して口に押し込む間に、賢吾はグラスの生ビールをあっという間に飲み干して、お代わりを頼んでいる。
和彦はふうっと息を吐き出すと、カウンター席に目を向ける。こちらに背を向けてはいるが、二人が座っているテーブル席の一番近くに陣取っているのが、賢吾の護衛の組員たちだ。
「誰の、好きなものだ。自惚れるな……」
「どっちだ、先生?」
聞かれるまでもなく、答えは決まっていた。和彦がシーツを握り締めると、賢吾はゆっくりと腰を進め、内奥を肉の凶器で押し開いてくる。狂おしいほどの愉悦が生まれ、和彦は堪えきれない声を上げる。
「ああっ……、あっ、あっ、あんっ――」
「尻だけでイきそうな感じ方だな、先生。俺のものが食い千切られそうなほど、締まってるぞ。そんなにいいか?」
和彦は押し寄せてくる快感に抗うように、必死に深呼吸を繰り返す。このままでは、快感の奔流に呑み込まれそうだった。
それぐらい、賢吾との交わりに感じている。
逞しいものをしっかりと根元まで埋め込んできた賢吾が、緩慢に腰を動かす。動きは緩やかだが、感じやすい襞と粘膜は簡単に蹂躙され、熱い蜜のような快感を滴らせる。
「ひっ……ぁ、はあっ、あっ、んくうぅっ」
ふいに、内奥深くを重々しく突き上げられ、和彦はビクビクと体を震わせる。全身に快美さが響き渡り、普段であれば、精を迸らせているところだ。だが、しっかりと根元を縛められているため、それができない。
悶える和彦にさらに責め苦を与えるように、賢吾が震える和彦のものを根元から擦り上げてくる。愛撫のようだが、実はリボンの縛めがしっかり食い込んでいるのか、確かめたのだ。
「はあっ、あっ、い、や……、賢吾さんっ」
内奥を擦り上げられるたびに和彦は悦びの声を上げ、絞り上げるように賢吾のものをきつく締め付ける。
感嘆したように声を洩らした賢吾が腰を使う。和彦は夢中で両腕を伸ばし、覆い被さってきた賢吾の背にしがみつく。汗で濡れた大蛇が、内奥深くで蠢く欲望のように、熱かった。
大蛇に激しく求められ、愛されているのだと実感できる瞬間だった。
「リボンを解いてやろうか?」
律動の合間に囁かれ、賢吾の引き締まった下腹部で、反り返ったものをわざと刺激される。呻き声を洩らした和彦は、小さく首を横に振った。
「こ、のまま……。これ、いい――」
「このほうが、俺が悦ぶからか?」
「……あんたの性癖は、問題があるからな」
顔を綻ばせた賢吾に唇を塞がれ、舌を絡め合う。その間も、賢吾は内奥を丹念に擦り上げ、掻き回してくれる。
快感の波が次第に大きくなってくるようで、厚みのある体の下でのたうちながら和彦は、切羽詰った声を上げる。そんな和彦を見下ろしながら、賢吾は満足そうだった。
「いやらしいオンナだ。こんなに愛してやってるのに、まだ俺が欲しいか? さすがの俺も、そのうち力加減を忘れて、抱き殺しちまいそうだな。俺の、大事で可愛いオンナを」
物騒な言葉を囁かれた瞬間、和彦の体を、いままでにない強烈な感覚が駆け抜けた。それが、深い快感のせいだとわかったときには、意識が飛んでいた。
レアのステーキを淡々と口に運ぶ賢吾を見ているだけで、和彦は胸焼けを起こしそうだった。
今日はやけに重く感じるフォークで、ミディアムに焼いてもらったステーキを突く。手どころか、口を動かすことすら億劫で、フォークを置こうとしたが、目敏く気づいた賢吾にすかさず言われた。
「しっかり食えよ、先生。塞ぎ込んでいる間に落とした体重を、きちんと元に戻せ」
「……だからといって、何も今晩、ステーキを食べなくていいだろ」
「今日はもう、〈肉〉は腹いっぱいか?」
長嶺組組長という凄みのある肩書きを持っている男が、そう言ってニヤニヤと笑う。芝居がかった品のない笑い方に、和彦は顔を熱くする。賢吾が暗に言おうとしていることを、すぐに理解してしまったのだ。
「こんな場所で、下品なことを言うなっ」
声を潜めて窘めてはみたのだが、ますます賢吾をおもしろがらせただけらしい。今度は澄ました顔で言い返された。
「なんのことだ? 俺は、ステーキの話をしているんだが――」
「……あんまりぼくをからかうと、あんたが何者か、この場で叫ぶぞ」
「それは怖いな」
大げさに肩をすくめた賢吾が、美味そうにステーキを一切れ食べる。自分が子供扱いされていることを嫌というほど実感し、無駄な抗議を早々に諦めた和彦は、仕方なく自分のステーキを切り分ける。
一切れの肉を苦労して口に押し込む間に、賢吾はグラスの生ビールをあっという間に飲み干して、お代わりを頼んでいる。
和彦はふうっと息を吐き出すと、カウンター席に目を向ける。こちらに背を向けてはいるが、二人が座っているテーブル席の一番近くに陣取っているのが、賢吾の護衛の組員たちだ。
46
お気に入りに追加
1,391
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
イケメン社長と私が結婚!?初めての『気持ちイイ』を体に教え込まれる!?
すずなり。
恋愛
ある日、彼氏が自分の住んでるアパートを引き払い、勝手に『同棲』を求めてきた。
「お前が働いてるんだから俺は家にいる。」
家事をするわけでもなく、食費をくれるわけでもなく・・・デートもしない。
「私は母親じゃない・・・!」
そう言って家を飛び出した。
夜遅く、何も持たず、靴も履かず・・・一人で泣きながら歩いてるとこを保護してくれた一人の人。
「何があった?送ってく。」
それはいつも仕事場のカフェに来てくれる常連さんだった。
「俺と・・・結婚してほしい。」
「!?」
突然の結婚の申し込み。彼のことは何も知らなかったけど・・・惹かれるのに時間はかからない。
かっこよくて・・優しくて・・・紳士な彼は私を心から愛してくれる。
そんな彼に、私は想いを返したい。
「俺に・・・全てを見せて。」
苦手意識の強かった『営み』。
彼の手によって私の感じ方が変わっていく・・・。
「いあぁぁぁっ・・!!」
「感じやすいんだな・・・。」
※お話は全て想像の世界のものです。現実世界とはなんら関係ありません。
※お話の中に出てくる病気、治療法などは想像のものとしてご覧ください。
※誤字脱字、表現不足は重々承知しております。日々精進してまいりますので温かく見ていただけると嬉しいです。
※コメントや感想は受け付けることができません。メンタルが薄氷なもので・・すみません。
それではお楽しみください。すずなり。

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…



塾の先生を舐めてはいけません(性的な意味で)
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
個別指導塾で講師のアルバイトを始めたが、妙にスキンシップ多めで懐いてくる生徒がいた。
そしてやがてその生徒の行為はエスカレートし、ついに一線を超えてくる――。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる