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第14話
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和彦は寝返りを打ち、体ごと三田村のほうを向く。その三田村は、テレビに視線を向けていた。和彦がなんのことを言っているのかわかったらしく、小さく声を洩らす。
「ああ、そうか……」
申し合わせたように二人は、同じ単語を口にした。
クリスマス、と。
物騒なヤクザが口にするには不似合いな言葉だなと思った途端、和彦はつい声を洩らして笑ってしまう。そんな和彦を、三田村は優しい眼差しで見つめてくる。
「クリスマスの日は、イブも含めて、先生は大忙しだろうな」
「どうかな。案外、みんな予定が入って、ぼくは一人で過ごすかもしれない」
「それはないだろう。……もし仮にそうなったら、俺が喜んで、先生の予定を押さえさせてもらう」
和彦は三田村の頬を撫でてから、囁く。
「ぼくより忙しい若頭補佐が、何言ってるんだ」
三田村は、淡く苦笑した。否定しなかったということは、実際、忙しいのだろう。こうして一晩過ごす時間も、スケジュール管理をある程度自由に行える和彦とは違い、組の都合が優先の三田村は、賢吾の命令とはいえ苦労して作っているはずだ。
「クリスマスまでの浮ついた空気は好きだけど、クリスマス自体はあまり興味はないんだ、ぼくは」
つい先日、澤村と会ったときにクリスマスの話題が出たというのも、すっかり忘れていたぐらいだ。普通の暮らしをしていれば、他愛ない世間話として耳に入ることもあるだろうが、今の和彦の生活は、そういうものとは無縁だ。
「……そんな先生と、クリスマスを過ごしたいと願う人間はいる。案外、ロマンチストな男は多い」
「あんたも含めて?」
三田村からの答えはなく、代わりに、頭を引き寄せられて唇を塞がれる。熱っぽく唇を吸い合い、焦らすように舌先を触れ合わせ、擦りつける。和彦は、穏やかなキスを堪能する。
「大きなクリスマスツリーを見るのも好きなんだ。きれいに飾りつけられて、キラキラ光って……。そのクリスマスツリーを見上げる人たちが、みんな楽しそうな顔をしてる。そういう風景を含めて、見ていると楽しくなってくる」
キスの合間に話しながら、和彦はベッドに押さえつけられ、十分に高まった三田村の熱い体にのしかかられる。和彦は甘えるように、三田村の背に両腕を回してすがりつく。
「クリスマスツリーなら、もう今から飾っているところもあるだろ。先生が見に行くなら、俺もつき合っていいか?」
三田村の背の虎を丹念にてのひらで撫でながら、和彦は笑いかける。
「残念。――あんたが興味ないと言っても、無理やりつき合わせるつもりだった」
よかった、と三田村の唇が動き、そのまま深い口づけを交わす。
すでに三田村を受け入れ、精すら受け止めた和彦の内奥は、柔らかく蕩けている。それどころか、身じろいだ拍子に内奥の入り口から精を溢れさせていた。三田村は、指先を這わせてそれを確認すると、すぐに熱い欲望を擦りつけてきた。
「んうっ」
鼻にかかった声を洩らした和彦は、逞しいもので再び内奥をこじ開けられる感触に、身を捩りたくなるような肉の悦びを感じる。
「はっ……、あっ、あうっ……ぅ」
三田村の精に塗れた襞と粘膜が、三田村の欲望に絡みつき、吸い付く。深い悦びを与えてくれる大事な〈オトコ〉に対して、和彦の体は従順で、健気ですらある。
ぐうっと内奥深くを突き上げられ、自分でも恥知らずだと思うほど、和彦は感じて、嬌声を上げていた。
「ああっ、いっ、い、い……、三田村、そこ、好き――」
三田村はゆっくりと律動を繰り返しながら、必死にしがみつく和彦の耳元に深い吐息を注ぎ込んでくる。子供のように三田村の唇を求め、与えられた口づけを堪能する。
抱き合い、体の位置を入れ替えると、今度は三田村に求められ、和彦は繋がったまま上体を起こしていた。三田村の腰に跨った姿を、その三田村に見上げられ、羞恥で体を熱くしながらも、下から突き上げられるたびに快感に身を震わせる。
三田村は両てのひらを和彦の体に這わせながら話す。
「――変な感じだ。いい歳になってから、クリスマスの話を誰かとするなんて。柄にもなく、俺も少し浮かれてきた」
すでに反り返り、先端から透明なしずくを垂らしていた和彦のものが、三田村の片手に握られて扱かれる。背をしならせて乱れながら和彦は、意識しないまま内奥をきつく収縮させていた。
和彦は三田村の逞しい胸に両手を突き、緩やかに腰を揺らす。そして、息を乱しながら三田村に尋ねた。
「三田村、子供の頃、クリスマスは?」
「俺のあごに傷をつけたのは、親父だ。……つまり、そういう家庭だってことだ。あちこちたらい回しにもされたが、愛想のないガキをわざわざ喜ばせようとする物好きはいなかったしな」
「ああ、そうか……」
申し合わせたように二人は、同じ単語を口にした。
クリスマス、と。
物騒なヤクザが口にするには不似合いな言葉だなと思った途端、和彦はつい声を洩らして笑ってしまう。そんな和彦を、三田村は優しい眼差しで見つめてくる。
「クリスマスの日は、イブも含めて、先生は大忙しだろうな」
「どうかな。案外、みんな予定が入って、ぼくは一人で過ごすかもしれない」
「それはないだろう。……もし仮にそうなったら、俺が喜んで、先生の予定を押さえさせてもらう」
和彦は三田村の頬を撫でてから、囁く。
「ぼくより忙しい若頭補佐が、何言ってるんだ」
三田村は、淡く苦笑した。否定しなかったということは、実際、忙しいのだろう。こうして一晩過ごす時間も、スケジュール管理をある程度自由に行える和彦とは違い、組の都合が優先の三田村は、賢吾の命令とはいえ苦労して作っているはずだ。
「クリスマスまでの浮ついた空気は好きだけど、クリスマス自体はあまり興味はないんだ、ぼくは」
つい先日、澤村と会ったときにクリスマスの話題が出たというのも、すっかり忘れていたぐらいだ。普通の暮らしをしていれば、他愛ない世間話として耳に入ることもあるだろうが、今の和彦の生活は、そういうものとは無縁だ。
「……そんな先生と、クリスマスを過ごしたいと願う人間はいる。案外、ロマンチストな男は多い」
「あんたも含めて?」
三田村からの答えはなく、代わりに、頭を引き寄せられて唇を塞がれる。熱っぽく唇を吸い合い、焦らすように舌先を触れ合わせ、擦りつける。和彦は、穏やかなキスを堪能する。
「大きなクリスマスツリーを見るのも好きなんだ。きれいに飾りつけられて、キラキラ光って……。そのクリスマスツリーを見上げる人たちが、みんな楽しそうな顔をしてる。そういう風景を含めて、見ていると楽しくなってくる」
キスの合間に話しながら、和彦はベッドに押さえつけられ、十分に高まった三田村の熱い体にのしかかられる。和彦は甘えるように、三田村の背に両腕を回してすがりつく。
「クリスマスツリーなら、もう今から飾っているところもあるだろ。先生が見に行くなら、俺もつき合っていいか?」
三田村の背の虎を丹念にてのひらで撫でながら、和彦は笑いかける。
「残念。――あんたが興味ないと言っても、無理やりつき合わせるつもりだった」
よかった、と三田村の唇が動き、そのまま深い口づけを交わす。
すでに三田村を受け入れ、精すら受け止めた和彦の内奥は、柔らかく蕩けている。それどころか、身じろいだ拍子に内奥の入り口から精を溢れさせていた。三田村は、指先を這わせてそれを確認すると、すぐに熱い欲望を擦りつけてきた。
「んうっ」
鼻にかかった声を洩らした和彦は、逞しいもので再び内奥をこじ開けられる感触に、身を捩りたくなるような肉の悦びを感じる。
「はっ……、あっ、あうっ……ぅ」
三田村の精に塗れた襞と粘膜が、三田村の欲望に絡みつき、吸い付く。深い悦びを与えてくれる大事な〈オトコ〉に対して、和彦の体は従順で、健気ですらある。
ぐうっと内奥深くを突き上げられ、自分でも恥知らずだと思うほど、和彦は感じて、嬌声を上げていた。
「ああっ、いっ、い、い……、三田村、そこ、好き――」
三田村はゆっくりと律動を繰り返しながら、必死にしがみつく和彦の耳元に深い吐息を注ぎ込んでくる。子供のように三田村の唇を求め、与えられた口づけを堪能する。
抱き合い、体の位置を入れ替えると、今度は三田村に求められ、和彦は繋がったまま上体を起こしていた。三田村の腰に跨った姿を、その三田村に見上げられ、羞恥で体を熱くしながらも、下から突き上げられるたびに快感に身を震わせる。
三田村は両てのひらを和彦の体に這わせながら話す。
「――変な感じだ。いい歳になってから、クリスマスの話を誰かとするなんて。柄にもなく、俺も少し浮かれてきた」
すでに反り返り、先端から透明なしずくを垂らしていた和彦のものが、三田村の片手に握られて扱かれる。背をしならせて乱れながら和彦は、意識しないまま内奥をきつく収縮させていた。
和彦は三田村の逞しい胸に両手を突き、緩やかに腰を揺らす。そして、息を乱しながら三田村に尋ねた。
「三田村、子供の頃、クリスマスは?」
「俺のあごに傷をつけたのは、親父だ。……つまり、そういう家庭だってことだ。あちこちたらい回しにもされたが、愛想のないガキをわざわざ喜ばせようとする物好きはいなかったしな」
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